今回の旅行に絡めて那須塩原で立ち寄りできる温泉を探していたら「大鷹の湯」が目に留まった。那須や塩原の奥の方まで行かない場所…高速のインターやJRの駅からそう遠くない場所にあって、行程面から考えてちょうどいい具合だ。
それに温泉の質がかなり本格的でよさげに思えた。五ツ星源泉の宿というサブタイトルを冠するくらいだから相当自信があるんだろう。星の数の正確な定義は把握してないけど、何らかの基準による格付けで最高評価を受けたに違いない。こういうのに弱いおじさん。
調べてみると湯温は40℃前後で熱くなさそうな点も好感した。あつ湯は苦手なんでね。旅行参加メンバーに提案して旅程に組み入れ、実際に訪れたところ、たしかに源泉100%かけ流しの“本物”を感じ取ることができるお湯だった。思ってたよりは熱かったけれども。
大鷹の湯へのアクセス
大鷹の湯は車なら首都圏の人にも行きやすい。東北道・西那須野塩原ICを出て、JR那須塩原駅へ向かう感じで県道55号を進むと5分で着く。
実際の我々は前泊地の馬頭温泉・元湯東家をチェックアウトした後、いったん南下して那須烏山の「龍門の滝」や「どうくつ酒造」を見学してから、あらためて西那須野方面へ北上した。雨が降ってきたから屋外を歩き回るタイプの観光はもう難しい。湯めぐりがちょうどいい。付近は道がわかりにくいとか走りにくいこともなくてスムーズに行けた。
電車だとJR東北本線・西那須野駅を下車して西口で塩原温泉バスターミナル行きのバスに乗る。本数注意。高速のインターまで達しないところの下赤田あるいは中赤田停留所からは徒歩。東の方へ30分ほど歩くことになる。
ゆーバスというローカルバスの西那須野線に乗ることができれば、井口北下車で目の前すぐ。あるいは西那須野外循環線・東赤田なら下車徒歩7分ですむ。しかしどちらも本数は非常に少ない。
敷地内にも見どころあり
入場前に手湯・足湯を体験できる
敷地内へ入り、BOBBYというライダーズカフェ横の駐車スペースに車を止める。目の前に「まずは手湯」の札とともにミニ車両が設置されていた。塩原電車・開拓1號だ。
塩原電車はかつて実在した軽便鉄道のようですね。ただし展示車両は本物じゃなくて復元したもの。中に手湯コーナーがあったので指を突っ込んでみた。うむ、ぬるい。続いて現れたのは足湯コーナー。ここは見るだけでスルーした。早く全身お湯に浸かりたい。
続いて正面玄関となるが、ずーっと奥に別の棟が見える。別邸鷹山の文字が掲げてあるな。露天風呂付き客室だそうだし、見るからにハイクラスっぽい。自分には夢のお部屋ですな。
待ち時間に飲泉を
いよいよ入館。しかし入口に「ただいま立ち寄り湯が大変込み合っておりますので入場制限をしております」と注意書きが出ていた。密を避けるための措置だろう。それともクオリティを保つために以前からやってたのかな。とにかく待たされる状況であった。
どうせ今日はもう行くところもないし時間はたっぷりある。立ち寄り受付で700円を払い、入場できるまでロビーで待つことにした。先に飲泉をどうぞと案内されて近くの飲泉所へ。
額に飾られた分析書には「ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉、アルカリ性、低張性、高温泉」とあった。紙コップに源泉を注いで飲んでみると、強く主張してくる特徴はなく無味無臭。水道水の沸かし湯以上にスルッと飲めてしまう。
ロビーには気功に関する説明パネルやビデオが並ぶ。へー。とかいってる間に数名の客が出ていって我々の順番が回ってきた。
いよいよ大鷹の湯を体験する
五ツ星の条件を満たす源泉
本館からいったん外へ出て、すぐ隣の浴場棟へ入る。通路をちょっとだけ進んだ先に男湯があった。脇に無料の貴重品ロッカーが設置されている。小さなリュック程度の荷物であれば脱衣所内の100円有料ロッカーに入れておくこともできる。
脱衣所はそんなに広くない。これは入場制限するのもわかる気がする。風呂場への扉が2つあってそれぞれ内湯と露天風呂へ続いているようだ。
内湯はべつに狭いわけじゃないけどコンパクトにまとまっている印象。洗い場は6名分。奥の壁に大きなパネルが掲げられており、温泉の効能や特徴がびっしりと書いてあった。裸眼の視力と湯気のためにあまりはっきりとは判読できなかったが、当湯は五ツ星の条件を満たす稀有な温泉とのことだ。
加水なし・循環なし・消毒なし・毎日湯を入れ替える、とかそういう感じだったかな。条例で塩素消毒を指導される県だと条件を満たすのがなかなか厳しそう。源泉が高温だと入浴可能なレベルまで冷ますのも大変な手間だし、自然環境・社会環境・施設の努力すべての条件がそろわないといけないから、たしかに稀有なんだと思う。
短時間でばっちり効いてくる内湯
そんな五ツ星源泉かけ流しのお湯が6名サイズの浴槽に満たされていた。入ってみたら予想してたよりは熱い。40℃とは思えない。もうちょっと熱いんじゃないかな。一般人の信奉する適温ってやつだ。
先ほどのパネルには39~42℃と書いてあり、訪問時はたまたま42℃の日だったと解釈している。湧出する温泉そのものは自ら温度を一定にしようなんていう意思を持たない。ある範囲で気まぐれに温度を上げ下げしているはず。源泉かけ流しにこだわるほど温度を一定に保つのは難しいのだ。
お湯は半濁りで浴槽の底がうっすら見えるくらい。緑色っぽいのはタイルの色のせいかもしれない。この後に入った露天風呂の体験を加味すると実際は黄褐色だと思われる。あちこちに漂う黒っぽいつぶつぶは湯の花だ。匂いの面ではいくらかの土気臭があった。
浴室にこもる熱気のせいなのか、お湯の特徴なのか、この体感温度にしてはやけにのぼせてくる。他の入浴者たちも少し浸かっては縁に腰掛けて休憩、を繰り返していた。休憩の方が長いくらいで正味の入湯時間はわりと短い。見方を変えればパワフルな温泉といえる。
露天風呂は熱めのチューニング
気分を変えるために露天風呂へ行ってみた。こちらは3名サイズの岩風呂。内湯よりも若干透明度のある黄褐色のお湯。岩風呂の向こうにもうひとつの風呂…じゃなくて池です。魚が泳いでいたような。
とにかく入ってみよう。あちい。内湯よりも熱かった。これは適温の中でもかなり熱い方ですな。雨が天然の加水になっていたとはいえ焼け石に水。のぼせ感はないものの、じっくり浸かっていることはできない。ワンポイントのアクセント的に使うのが向いているんじゃないかな。
ひと通り堪能してあがることにし、脱衣所へ戻ってくると、いくらタオルで拭いても体が乾かない。汗があとからあとから出てくるのだ。こりゃすげえ。もし仮にもっとぬるいコンディションで、調子こいて長湯していたら大変なことになってたかも。五ツ星源泉は半端ないね。
おまけ:那須烏山の観光
横幅のある龍門の滝
距離的に「ついで」にならないとは思うが、大鷹の湯へ行く前に寄り道した見学スポットについて少しだけ。那須烏山にある龍門の滝は見学者用の無料駐車場から徒歩数分。高さよりも幅のある滝だ。
階段を下りてもっと近くまで行ける。なんなら滝壺のそばの中洲まで歩いていける。
周辺には桜並木の遊歩道があり、季節が合えば滝見と花見を同時に楽しめてしまう。JR烏山線の最寄り駅が「滝」っていうのもストレートすぎて面白い。駅からは徒歩5分。なお、龍門の滝のそばを線路が通っており、通過する列車と滝の組み合わせがいい感じの撮影スポットにもなっている。
たくさんのボトルが眠るほら穴…どうくつ酒造
龍門の滝から車で2~3分のところには「どうくつ酒造」がある。東力士なる銘柄の日本酒(1年前に塩原の温泉宿で飲んだ)を作ってる島崎酒造が一般開放している施設だ。平日は要予約。第二次大戦末期に戦車を製造するために掘った地下工場跡からの転用で、日本酒の熟成に適しているんだとか。
洞窟内の空気はひんやりとしていて、一年を通じてこの温度に保たれているんだろう。熟成が進むとウイスキーのように琥珀色に近づいていくとのこと。また、3年後・5年後・10年後…のお祝いに開けて飲むためのボトルを預かるサービスもやっている。粋な趣向ですな。
那須烏山といえば映画「男はつらいよ 寅次郎の縁談」(第46作)にも出てきた山あげ祭で知られる。街なかに山あげ会館という観光施設があるからお立ち寄りの際はどうぞ。