ぬる湯とお得感でイチオシの宿 - 中塩原温泉 赤沢温泉旅館

中塩原温泉 赤沢温泉旅館
広い範囲にまたがる塩原温泉郷の中塩原地区。ここにぬる湯の宿を見つけた。まだ残雪が気になる時期だったから、山の奥の方を避けて国道沿いの温泉街かその近辺で探すと、どうしても熱めの湯が多い。しかし赤沢温泉旅館だけはぬるいという評判が目立った。我らぬる湯派一味が選ぶとしたらここしかない。

比較的負担感の小さいお値段だったので民宿や合宿所系なのかなと思ってたら、わりと普通の旅館だった。コスパはかなりいいんじゃないだろうか。

ぬるいのが好きというバイアス込みで、ここの温泉はとても良い。長時間ゆっくり浸かればまさに極楽。しかもすごくぬるいのから普通に近い温度まで幅があるから、いろいろ切り替えて楽しむことができる。もちろん源泉かけ流しだ。

赤沢温泉旅館へのアクセス

旅の2日目。我ら一行は西那須野・大鷹の湯に立ち寄り湯した後、「森林の駅」へ向かって国道400号を走った。もみじ谷大吊橋という有名スポットに隣接する道の駅的な施設だ。雨だから吊り橋を渡る気はなく、売店を物色。やがて当館のチェックイン時刻が近づいてきたので出発。

引き続き国道を西へ、大網・福渡・畑下・門前・古町と各地区を抜けて中塩原地区まで来た。ハンターマウンテン塩原とかのスキー場があるあたりはわからないけど、国道沿いの温泉街はもう雪の気配は全然ない。今年は妙に暖かくて首都圏ではもう桜が咲いちゃったりしてたからなあ。

いったん木の葉化石園へ向かう感じで箒川を渡ると看板が出ているので右折する。つきあたりが赤沢温泉旅館だ。

車を使わない場合は、JR東北本線・西那須野駅から路線バスで終点の塩原温泉バスターミナルまで行ってから徒歩30分。あるいは鬼怒川ルート…野岩鉄道・上三依塩原温泉口駅から「ゆーバス」に乗って木の葉化石園入口下車で徒歩10分。

旅館やホテルが立ち並ぶエリアの対岸だから静かで落ち着いた雰囲気だ。川が近くて、隣接する他の施設もなく、塩原の中でもさらに緑豊かでのどかな印象を受ける。


静かな立地のお宿

猫ちゃんと温泉むすめ

正面入口の前には「赤沢」の大きな文字の看板と謎の立像。拡大してみましょう。
謎の立像
奥の方からワンちゃんの鳴き声が聞こえてきた。上の写真にある犬の像と関係あるのか?…深まる謎とともにチェックイン。結局ワンちゃんを見かけることはなかった。かわりに複数の猫ちゃんが館内を歩き回っている。見知らぬ客にも慣れたもので悠然と我が道を行く。近づいたり触ったりしても逃げないが、すり寄ってくることもない。

フロント前のグッズコーナーに温泉むすめのパネルがあった。たぶん塩原八弥ちゃん。着ているものと犬猫を従えてるあたりのアレンジは、もしかすると赤沢特別バージョンかもしれない。
温泉むすめ
チェックインから部屋の案内までを対応していただいたのは女将さんかな。話し方からすると事前調査で中国の方だと知っていた通りだけど、対応はさすがに手慣れたもの。スムーズに連れて行かれたのは2階の客室。と、その前に、2階の廊下にはコミック棚と浴衣コーナーがある。ここから自分にあったサイズの浴衣を持っていく。
コミックと浴衣のコーナー

箒川の見える部屋

さて、我々が入った部屋は10畳+広縁の和室。布団は最初から敷いてあった。エアコンに加えてファンヒータも設置され、真冬でも万全だと推察する。室内のつくりは完全に一般的な旅館のそれであり、宿泊料金を考えたらかなり頑張っているのではないかな。
赤沢温泉旅館 10畳和室
シャワートイレや洗面台は新しくて快適。金庫あり、空の冷蔵庫あり(水の容器があったかも)、フリーWiFiあり。何の文句もありません。ウエルカムお菓子の温泉まんじゅうも旅情があって良いね。翌朝すっきり晴れた状態で窓の外に見えた景色がこちら。
窓からの景色
駐車スペースの奥に柵があって、その向こうは箒川だ。対岸には数軒のホテル。建物の密集でごちゃこちゃした様子もなくてスカッとする。よろしおすな。


はげしく肯定したい赤沢の湯

はたして…期待通りぬるいのか

赤沢温泉旅館の大浴場は1階にある。大浴場へ続く廊下の一番手前にコーヒーマシンやトースターが置かれ、宿泊客は無料で利用できる。一番奥にはマッサージチェアもあるぞ。利用率はそこそこ高い。
1階の廊下
廊下からは滝のある庭園が見える。いや本当にいろいろ頑張っているのがわかる。感心しつつ廊下奥を曲がるとお酒やジュースの自販機に続いて女湯・男湯の入口がある。時間による男女の入れ替えはない。

脱衣所に掲示された分析書によれば「ナトリウム・カルシウム-塩化物泉、中性、低張性、高温泉」。高温泉か…評判通りぬるいのかな、大丈夫かな…今回の旅で体験した温泉は、ここまで41~42℃くらいの普通に熱いところばかりだった。いわばあて外れ。自分が「ぬる湯チョイス」として企画提案した手前、もしここもぬるくなかったら面目丸つぶれになってしまう。頼むぞ~。

ぬるめのお湯が豊富に投入される内湯

浴室は全然古くなく、やっぱり手抜かりなしの頑張りが見て取れる。カランは5台。ファミリー客は貸切風呂を主に使ったのか、他のグループと遭遇することが非常に少なく、密になることはまったくなかった。

内湯は木の浴槽がひとつ。4名サイズの湯船に無色透明のお湯が源泉かけ流しにされている。浸かってみたら、ぬる湯ではないけれども相当ぬるめだった。のぼせることなく長時間粘れそう。よしよし、ひとまず完全敗北の結末は回避したぞ。

人が入るたびにザッパーーーと勢いよくお湯があふれ出す。何度やってもそうなるので、お湯の補充ペースが速い=源泉投入量が結構あるのだろう。お湯の匂いを嗅ぐと微妙に金気臭があった。それとも浴槽の木の香りを誤認しただけなのか? よくわからんが第一印象は金気臭だった。

すばらしいぬる湯の露天風呂

お次は露天風呂へ。岩風呂風のつくりで手前と奥との2区画からなっている。どちらの区画も4~5名サイズ。面白いことに、露天風呂の向こう側がもうひとつの露天風呂に見えるのだが、そっちは鯉が悠々と泳いでいた。つまり池であった。

では手前の区画から。おおー、こいつはぬるい、ぬる湯といってよいレベル。ちょっとぬくぬくするから体温よりは高くて37~38℃ってとこかな。訪れた季節には冷たすぎずでぴったりだ。

まったくのぼせないし、いくらでも入っていられる。ほんのり温かさを感じるため、寒いとか体か冷えるといった感覚もない。むしろ冬の朝に布団から出られなくなる時のような心地よさがある。いやー、すばらしい。うっかりするとウトウトして眠りそうになるからね。たまりませんな。

たまに他の客がやって来ても数分で見切って内湯へ戻ってしまう。一般人の感覚だとぬるすぎるのだろうが、もったいないなあ。こっちに30分や1時間浸かってた方が満足度高いけどなあ。まあ個人の趣向なんでとやかく言う筋合いではない。かえってうまく棲み分けできるなら密にならなくてよい。

お湯の基本的な特徴は内湯と同じで、金気臭がしなかったのと、湯の花の白い粒が多く見られた点が違ってた。

さらにぬるい区画もあるよ

奥の区画はもっとぬるい。手前区画から少しずつお湯が流れ込む設計になっていて、いわば投入量を絞った状態になっているからだ。わずかずつ体温が逃げていく感じから35~36℃だと思われる。夏だったら爽快感のあるベスト温度といえるだろう。

最初は少しブルっとくるけどすぐ慣れて、こっちはこっちで気持ち良いと思えてくる。しばらく浸かってから手前区画へ戻るとかなり温かく感じるから面白い。ぬるいのが平気ならぜひ交互に入って楽しみたいところ。

なお、男湯の露天風呂は開けっぴろげで、川や対岸のホテル群が丸見え。開放感は申し分ない。女湯は目隠しを配慮した作りになっていると思う。


食事面も頑張ってます

夕食はヤシオマスとちょっぴり中華

赤沢温泉旅館の食事は朝夕とも1階の大広間で。適度に仕切りを入れて2組で1区画ぽい感じのテーブル席が設けられていた。ソーシャルディスタンスは十分に保たれている。夕食のスターティングメンバーがこちら。
赤沢温泉旅館の夕食
ヤシオマスの刺身キターーー。なかがわ水遊園でも見たブランド物のニジマスだ。料理の面でも頑張ってるんじゃないですかね。量的にもちょうど良さそう。鍋の中身は肉と野菜。あとから出てきた蒸し餃子とのツーショットがこれ。
赤沢温泉旅館の夕食その2
他に天ぷらも出てきたし、締めのご飯とデザートまでいただいて、すっかり満腹になった。いやー、よろしいじゃないの。ちなみに我々が予約した標準プランだと中華風なのは餃子だけだが、お客様に合わせて作る創作中華プランてのもある。

卵が存在感を示す朝食

朝食も同じ席で。いろいろなおかずが少しずつ盛られた皿を中心に展開する。サラダが結構ボリュームあり。
赤沢温泉旅館の朝食
途中で卵焼きが追加されたから、温泉玉子・納豆用の生卵とあわせて卵がいっぱい。量の面でふだんたくさん食べる人には物足りない可能性はあるけど、ご飯をおかわりできるし、自分にはおかわりなしでちょうどよかった。帰路は朝の分でお腹が空かず、昼抜きでも大丈夫だったし。

食後はお茶が出てくる。コーヒーが欲しければ先に紹介したコーヒーマシンへ行ってセルフでどうぞ。

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赤沢温泉旅館は二つの点が印象に残った。ひとつはコスパの良さ。訪れる前はハード面・ソフト面について正直なところ割り切ったというか、ハードルを下げた期待値だったのに、実際は予想をずっと超えてしっかりしていた。このお値段でいいんですかって感じ。おそれいりました。

もうひとつはぬるい温泉。自分の好みがあるにしても、あの絶妙な温度での長湯は最高すぎる。まだまだ入り足りないくらいだ。客商売だから「お湯がぬるい」とクレームが入ることもあるんじゃないかと想像するが、世間の常識にとらわれず今の設定を維持してもらいたい。宿自身が「ぬるめの温泉です」とアピールしているから、まあ心配ないだろう。