湯田中渋温泉郷といえば全国区の知名度を誇る一大温泉地。志賀高原レジャーの基地としても機能し、冬にはスキー・スノボと絡めて泊まりに来る人もいるだろう。それに地獄谷野猿公苑まで行けば温泉に入るお猿さんを見ることができる。あそこは特に海外での人気が高く、コロナ前には大勢の訪日客でごった返していたという。
電車で行けるのも利点だ。長野電鉄の終着・湯田中駅まで行けばいいのだが、その駅に日帰り温泉施設「楓の湯」がある。駅と直接つながってはいなくても、ホームの隣といっていいくらいの場所。究極の駅前温泉だ。
施設の規模は小さい。でも露天風呂はあるし、しっかり源泉を感じられるお湯を提供しているから、大したもんだ。気楽に「ちょっとひと風呂」のノリで利用するのが合っている。
湯田中駅前温泉「楓の湯」へのアクセス
旅の2日目、戸倉上山田温泉・有田屋旅館をチェックアウトし、今日はこれから湯田中へ向かう。しなの鉄道・戸倉駅に観光列車「ろくもん」が留置されてたから撮り鉄してみた。真田の六文銭アピール。
自分が乗ったのはいたって普通の普通列車。終点長野で降りてお次は長野電鉄だ。のどかなローカル線をイメージしていたら、地下駅なんだね。このあたりは都市鉄道っぽい雰囲気。ダイヤの関係上、乗るべき便はA特急「ゆけむり」号になった。普通列車より100円高くて全席自由席。
これ小田急ロマンスカー…。まさか気づいたら箱根湯本に着いてるんじゃないだろうな。おじさんが入りたい温泉は湯田中だぞ。
やがて発車時刻が来てホームをすべり出したゆけむり号。数駅過ぎて地上に出ると、のどかな田園風景の中にも住宅地があちこちに広がっている。長野市中心部への通勤圏ってとこかな。そのうちだんだん緑が多くなってきて、農地になっているところはかなりの部分が果樹園。実がなってないのでわからんが、やっぱりりんごですかね。
須坂・小布施とくれば途中下車して街歩きでもしてみたくなるってもんだが、今回は余裕がないのでまたの機会に。で、そろそろ進行方向右手に志賀高原まわりの高山がよく見えてくるかと思えばそうでもなく、むしろ左手に見える妙高戸隠連山の方が存在感あった。上の方はまだ雪で真っ白。
湯田中駅まわりをちょっと探索
はい、終点・湯田中でございます。ホームに接するように壁と窓が並んでいる。それこそが当湯の建物の一部だ。だがもちろん直接入っていけるわけじゃない。いったん駅改札を出て、ぐるーっと反対側へ回り込むように移動すべし。
まず目に入ったのは半透明のシートに覆われた一角。足湯コーナーだ。つねに5名前後が滞在している様子だった。どうせ旅館でたっぷり風呂に入るし、ここは足湯だけですますこともできた。しかしここまで来て楓の湯をスキップする気はない。初志貫徹。
振り返るとレトロな佇まいの「楓の館」なる建物が。有形文化財にも登録された旧湯田中駅舎とのことだ。
ちょっと中に入ってみるべ…おっ、主要温泉地でよく見かける温泉むすめ発見。ご当地は湯田中渋穂波ちゃん。
温泉名が長くなるとどうしても無理が出てくるな。磐梯熱海とか、南紀勝浦、松江しんじ湖までくるとかなり厳しい。黄金崎不老ふ死なんてどうすんの。
小ぢんまりとした駅前温泉
熱めのお湯が効いてくる内湯
いいかげん温泉に入ろうか。楓の館のすぐ隣が楓の湯だ。場所柄、観光客狙いのようでもあり(混んでたらやだな)、地元向けのローカルな雰囲気もあり(よそ者は大丈夫かな)、よくわからんが気にせず行ってみよう。
下足箱は鍵付き。利用料は券売機に300円を投入。廊下の奥に男湯の入口があった。脱衣所にはたしか貴重品ロッカーもあるし、服をしまうのは100円リターン式の鍵付きロッカーだ。このへんはやはり出入りの多い一見さん観光客を念頭に置いてのことだろう。
張り出された分析書には「ナトリウム-塩化物・硫酸塩泉、弱アルカリ性、低張性、高温泉」とあった。温度を下げるための加水あり。
浴室の右手に洗い場。おそらく4名分だったかと思う。使用率はわりと高いから空いてるうちに使っておこう。左手に5名規模の浴槽がひとつ。湯口からの投入量は結構あって、お湯の見た目は無色透明。加水されているとはいえ、それっぽい温泉臭を感じることはできた。
浸かってみた感じでは熱め。のぼせてくるので、クールダウンするための椅子とか脇へ避ける場所があればいいんだけど、そうするだけのスペースの余裕がないのは惜しい。
好みの場所をキープしたい露天風呂
じゃあ露天風呂の方へ行ってみるか。露天風呂は細長いくねくねした形をしており、横並びで6~7名規模とみた。先客は1名。空いていた湯口近くに場所を取ったところ内湯よりは入りやすい適温だった。お湯自体は内湯と同様の無色透明。
周りは高い壁に囲まれていて外は見えない。見えたところで駅とか駅前の光景なんだろうけど。まあそれなりに露天風呂気分を味わえるし、お湯そのものは悪くない。
しかしだんだん熱さが気になってきたため湯口から徐々に離れていった。急にぬるくなるわけではないが、たまに熱い流れがやってくる湯口のそばよりは適温の安定感が増す気がする。完全に湯尻の方へ行ったらどうなるのか、試してみてもよかったけど、まあいいやと真ん中付近をキープ。
もともと楓の湯に関しては長く粘ろうとは思ってなかったし、適度に満足したところであがった。やっぱり気合を入れてじっくり浸かるというよりは軽いノリで立ち寄るのが向いてるなと思う。帰り際、休憩所の窓から駅のホームが見えた。さっきとは逆の立場だ。
こうして見ると本当に駅の中にあるといっても過言ではない温泉ですな。
おまけ:温泉街の大湯チェック
湯田中駅を離れ、今宵の宿へ向けて歩き出した。せっかくだから温泉街を見物しながら行こう。湯田中渋温泉郷には大湯という名の共同湯が多い。湯田中地区でさっそく見つけた。周辺は歴史を感じさせる風格ある建物が多くてタイムスリップ感あり。
いったん旅館街が途切れて再び現れだすあたりが安代温泉。…って、おい、旅館の屋根の上を猿が歩いてるぞ。こんなところまで温泉入りに来てるわけじゃないよな。
猿発見地点のすぐ隣が安代の大湯。
ほどなくして渋温泉地区に入る。ここには千と千尋の神隠しに出てくる油屋のモデルと言われるうちのひとつ・金具屋がある。通りかかる旅行者はたいがい写真を撮っている。自分も。
うーん、さすがの存在感ですね。夜のライトアップも幻想的だ(リアルでは見たことない、ネットの画像を見ただけ)。で、渋温泉の大湯がこちら。
飛び込みでは利用できず宿泊者のみに開放された共同湯の中で、渋の大湯は一般利用が可能。自分はさっき楓の湯に入ったばかりだからな。また今度。