いつまでも長居したくなる心地よいお湯 - 正徳寺温泉 初花

正徳寺温泉 初花
いやあ、山梨はぬるい良泉がいっぱいあるなあ。今回の旅行でまたしてもその実力を見せつけられた。帰途に訪れた「正徳寺温泉 初花」もそのひとつ。抜群の美味なる鰻を食べられるという評判を知りつつ、しかし今回は完全に温泉目当て。

自分がぬる湯派だからぬるいのを喜ぶのは当然として、お湯の感触や風呂の雰囲気が良い。いつまでいても飽きない感じ。長時間居心地良く過ごせるというのは大きな魅力だ。旅行も温泉も久しぶりだからリハビリ気分で軽く楽しむつもりでいたら、いつも以上にガッツリ入浴することになったほど。

おかげさまですっかり体が軽くなった。いい温泉だ。同行メンバーもすっかり気に入ったようだ。我々が山梨へ遠征するときには定番の立ち寄り先になるのだろう。

正徳寺温泉・初花へのアクセス

ワイナリーへ寄り道

遠方から車でアクセスする場合、中央道・勝沼ICか一宮御坂ICから一般道を北上していくことになる。一発で通じる幹線道路はないからナビを頼ったほうがよい。

実際の我々は石和温泉・ホテル八田をチェックアウトし、まず近くのワイナリーをのぞいてみるかとモンデ酒造の工場へ。だがこのご時世で工場内の見学は中止だった、残念。
モンデ酒造(売店)
そこで売店でお土産の物色とワインの試飲(ドライバーは飲んでません、ねんのため)。ふだんは渋めの赤ワインを好むことが多いが、このときはフルーティーで甘い白ワインを最も気に入った。なんだろう、体が甘味を欲してたのかね。飲み切りやすいお手頃な缶3本セットを買ってみた。
缶ワイン3本セット
続いて焼酎やウイスキーも作っている本坊酒造のマルス山梨ワイナリーへ。やっぱり工場見学できずで売店をのぞいただけ。何も買わずにすいません。
マルス山梨ワイナリー

現地周辺は迷いやすい

いよいよ初花へ向かう。石和からだと結構近い。距離よりも道がわかりにくいことに注意しなければならない。場所的にはJR春日居駅と山梨市駅の中間、線路の少し北側というイメージなんだけど、現地周辺は対向車が来たらアウトみたいな細い道ばっかり。

石和温泉駅から線路の南側に沿って走っていたらどんどん道が狭くなって、ついには左折する際に車体をこすりそうなレベルになっていた。踏切を渡るあたりとかまじやばい。ひやひやしつつ現地へ到着。

鉄道で行く場合は春日居駅からの歩きになる。15~20分くらい。やっぱり最後は見通しのきかない狭い道を進むことになるので、スマホで現在位置を確認しながら方向感覚をしっかり保つことが必要だ。


ぬるい源泉を楽しめる内湯

爽快感がやみつきになる源泉浴槽

駐車場には地元だけでなく近県ナンバーもちらほら。やっぱり狙って来る人いるんだな。では入館。下足箱の鍵と引き換えに料金を払って腕輪を受け取る。入浴目的には十分な3時間700円。大広間での休憩は別料金になる。右手の廊下を進むと飲泉所があった。張り紙を読む限り少量の持ち帰りは可能なようだ。
初花 飲泉所
廊下の突きあたりが男湯。脱衣所では腕輪の鍵番号に対応したロッカーを使う。分析書を探して泉質をチェックすると「アルカリ性単純温泉、低張性、アルカリ性、低温泉」とあった。一部を除き加温あり(のちに体験した感じだと弱い加温)、循環あり、消毒あり。

浴室には8名分の洗い場。中央にかけ湯コーナーがあり、右側に2つの浴槽が見える。ひとつは8名サイズで「源泉浴槽36℃」の札が掲げてある。ここは加温していないんだろう。浸かってみると相当ぬるい。36℃の源泉を投入したあと冷める分があるからか、明らかに体温より低いと感じる。

訪れた季節だと最初だけ「うぉりゃ」と身構えて入っていくが、すぐに慣れて爽快感が勝ってくる。夏だったらやみつきになって出られなくなりそうだ。ぬる湯の気持ち良さをストレートに味わうことができる好浴槽だ。

高温風呂との組み合わせでさらにハッピー

お湯の見た目は無色透明。積極的な泡付きはないものの何かの拍子にふと見られることがある。主張の強い匂いもない。とはいえ真湯とは違う、単純温泉でしばしば体験する種類の匂いを感知した。一番意識に入ってきたのはヌルヌルした感触だ。アルカリ性によるものか、かなりはっきりとしたヌメリ感があった。

それにしても気持ちの良い温度。お湯に身を預けていると、すぐにウトウトしてしまう。旅館でさんざん眠ったはずなのに。やばいっす。通好みの浴槽かもしれない。

隣の浴槽は高温風呂。高温という札があったかどうかは覚えてないが入ればわかる。一般向けの適温だった。あちこちからジャグジー的なあぶくがポコポコ浮かんでいて、たまに体を温める以外に気泡風呂としても使える。

サイズとしては6名規模。源泉風呂よりもこちらを好んで入る人もいたようだし、頻繁に両者を行き来する人もいる。自分も何度か行ったり来たりした。冷温交互浴がクセになるのよ。すぐれたバディ映画のような絶妙の組み合わせだ。


こちらもぬるくて気持ちの良い露天風呂

寝湯と樽風呂で夢心地

続いて露天へリアへ。一番手前にやや温かい(推定38℃)浴槽。ジェットが出ている2~3名用の区画と寝湯体勢をとれる2名用の区画に分かれている。寝湯を試してみたら、ああー、これもいいですね。ぬくぬくと楽な姿勢でいると天国のような気分。たまらんち。

目の前のサウナ小屋をパスして右奥の樽風呂へ。仲間同士なら2名、無理して3名いけるけど、知らない人が1名だけいるときに加わるのは気が引けるくらいのサイズ。ここもおそろしいほどに当たりだった。

温度は源泉浴槽と先の寝湯との中間といったところ。やっぱり浸かっているうちに眠りに誘われた。当たりすぎて出るに出られねー。さらに視線の先の露天エリア奥には梅だかなんだかの花に鳥がやって来てたのが絵になる。※花鳥の種類については詳しくないからあいまい、雰囲気だけで言ってる奴。まあいいじゃないの。

やがてあたりが煙臭くなってきた…近所で野焼きでもしてるんか?…いや、初花名物・自慢の鰻を焼き始めたのではなかろうか。今回は旅館の朝食でお腹いっぱいだったし、鰻のお値段もお値段なのでパス。でも口コミ評価がすごくいいから、グルメが何より楽しみという方はお試しを。

これは良い、迷わず「延長で」

露天風呂の主役は余裕で10名以上いける岩風呂だ。奥の高い位置から突き出たパイプから相当量のお湯がドボーーーッという勢いで投入されている。あわせて先ほどの寝湯付き浴槽からあふれた分の流れ込みもあり、両者のミックス具合と外気で冷める分とのバランスで、ぬるかったり適温に近かったり、場所ごと時間ごとの温度変化が大きい。

開放感があって、変動幅は大きくても全般にぬるくて、ヌメリある肌触りも健在で、ここも大変結構な内容だ。全部の浴槽がいい風呂ってのはすごいね。

そんなこんなで1時間が経過。時計を確認して同行メンバーと顔を見合わせた…どうする?…まだまだ入っていたい…じゃああと30分。互いの思いは同じだった。あっさり決定。この日はあと帰るだけでおしりが決まってなかったのは幸いだった。ようし、目一杯入っちゃうぞ。

 * * *

…ふう。入湯90分、大満足して浴場から出てくると、鰻を焼いた香ばしい匂いが漂ってきた。あー、いいですねー。風呂上がりに鰻、そして可能ならちょっと一杯、最高でしょうな。そんな妄想を抱きながら帰路についた。

同行メンバー共々かなり満足度が高かった初花。感想を言い合ううち、当湯を含む“山梨ぬる湯ラインの旅”なんていう構想まで飛び出した。良泉のおかげで体が軽くなったばかりでなく、脳みそまで活性化しちゃったんだろうか。