話のきっかけはもうはっきりと覚えていないが、あれよあれよという間に秋田グループ旅行の計画が具体化していた。紅葉が見頃の時期のことである。どこを巡るかについて自分が温泉の観点から意見を申し述べた結果、初日は県南の湯沢市と決まった。やりい。
湯沢なら日中の観光スポットはあたりがついてる。小安峡と川原毛地獄だ。温泉との関連も深い場所だし、ここしかないでしょう。
天候に恵まれず魅力がいくらか減殺された感はあるけど、想像していた以上に迫力があって興味深いスポットであった。そして本来ならもっとたっぷり時間を取って回るべきだとわかった。そこらへんは諸事情あったからやむを得ない。
稲庭うどんの聖地・湯沢へ
一関からの大回りルート
旅の初日の朝、メンバー一同は東北新幹線・一ノ関駅に降り立った。ここでレンタカーを借りる。当初は平泉中尊寺に寄るとか厳美渓を見るとか、いろいろな案が出ていたので、プランの柔軟性を考慮して起点を一関とした。
しかし計画を詳細に詰めるにつれ、半日では小安峡と川原毛地獄だけで精一杯だと判明。しかも厳美渓→須川高原を経由して小安峡へ下る国道342号~398号ルートは距離・時間とも最短ではあるものの、二度の山越えを要するから運転がきつい、ということで却下。
結局、高速で一関→北上→横手→湯沢という壮大な大回りルートを走ることになった。だったら北上起点で良かったんじゃないのとか、古川起点で鳴子経由もあるよとか、突っ込みどころはあれどすべて後知恵にすぎない。一関ありき、話はそれからだ。
老舗の稲庭うどんを食す
湯沢市街で国道398に入り小安峡を目指す。その前に、湯沢といえば稲庭うどん。中でも有名な「佐藤養助 総本店」が国道沿いにあるから、そこでランチタイム。中でうどん製造現場も見学できるみたい。大型観光バスが何台も乗り付けて観光スポット化しております。
幸いにも待ち時間なしで着席できた。自分は変化球すぎず基本形に近い「2玉+しょうゆ・ごまだれ」セットを注文。麺がすごくつやつやしてる。いぶりがっこ付き。
うどんにしては細く、そうめんにしては太い麺。もっちり感よりはスルスルっとした喉越しを味わう。2玉は実際多いんだけど2種のたれを行ったり来たりして楽しむうちに苦もなく完食できた。
大変な上り下りをするだけの価値がある小安峡
無人の皆瀬ダム
引き続き国道398を走っていくと皆瀬ダムがあった。このメンバーでダム見学は外せない。雨にも負けず車から外へ出て天端へ向かう。うむ、この形状はロックフィルですな。
ダム湖側(小安峡湖)がこちら。このあと見学する小安峡での皆瀬川はとても幅が狭くて峡谷を形成している一方、そこからちょっとだけ下ってきた場所がこのように湖状に広がっているというのは、なんだか奇妙にも思えてくる。
下流側はまだらの紅葉が見られていい雰囲気になってた。
ダムにいたのは我々だけ。他に見学者の姿はなくひっそりとしていた。平日だったせいかもしれない。晴れた休日ならもっと混んでるのかな。
迫力たっぷりの小安峡大噴湯
皆瀬ダムから10分ほどで小安峡「あぐり館みなせ」の駐車場に到着。しっかり調べずに来たから、駐車場から川まで階段を60mも下っていかなければならないことに現地で初めて気づいた。こいつは…帰りが大変だぞ…帰りどころか行きもなかなか大変だった。休み休み下ってようやく川沿いの遊歩道に到達。
皆瀬川がめっちゃ狭い。ダム周辺とは大違い。川の水は澄んでいながらも緑色を呈しており、こんな見え方の温泉あったよなと思う。柱状節理とはまた違う様相の岩も特徴的だ。
遊歩道をしばらく進むと、もくもくと白い湯気が立ち込めている場所があった。小安峡大噴湯だ。
小安峡のハイライトともいえる場所で、岩の裂け目から熱湯が噴き出しているんだとか。近づくにつれてシャーッという鋭い音が耳に入ってくる。また湯気の中に突っ込むと一瞬視界不良になってしまう(熱くはない)。湯気をかき分けてついに大噴湯の現場に来た。
…おわかりだろうか。写真の手前側に1箇所、奥に1箇所、消防車からの放水のごとき勢いで水平に飛んでくる湯が認められる。あやうく遊歩道にまで届きそうだし、たまには勢い余って届いちゃうんじゃないのと思ってしまう。こりゃあすごい光景だ。
河原湯橋からの景色もおすすめ
岩のあちこちがどす黒く変色していたり鮮やかな緑色がこびりついていたりするのはやはり温泉成分のせいに違いない。せっかくのお湯を温泉として利用したりはしないのだろうか。近くには小安峡温泉という温泉地があるから、ここ大噴湯のではないにせよ、別の場所で噴出している同系統のお湯を提供しているものと想像する。
遊歩道をさらに進むと遠くに不動滝が見えてきた。しかし道ははるか手前で上り階段となって、川沿いに滝まで行くことはできない。いったん階段を上って国道へ出て別のアプローチをする必要があるようだ。我々は時間の都合で不動滝をパス、来た道を引き返した。
遊歩道で見上げたら橋が見えたのが気になって、帰る前に歩いて近くの河原湯橋へ。深い峡谷の上にかかる橋はなかなかにスリリング。はるか下に大噴湯が見えるのが売りだろうけど、撮影しても湯気もくもくで何がなんだかよくわからない画になってしまう。見栄え的には反対側の下流方向の紅葉がきれいだった。
雨風に翻弄された川原毛地獄
火山性ガスが漂う真っ白な丘
お次は川原毛地獄へ。国道を外れて秘境感あふれる狭いくねくね道を進み、泥湯温泉という別の地獄谷の中の温泉地を過ぎると、やがて川原毛地獄が見えてきた。
もっと近づくと冒頭写真のような景色が広がってる。うっわー、やばそう。火山性ガスで雪のように白くなった地肌の上に遊歩道がついているが、歩いて大丈夫なのか。足を踏み入れてもいない段階ですでに硫化水素ぽいタマゴ臭がとんでもないんですけど。
遊歩道は白い丘の上まで続いている。あそこまでいけば川原毛地獄の全体を俯瞰できるかもしれない。
しかしよく見たら立入禁止らしき看板が立ってて封鎖されている模様。まあ雨は降ってるし、そのくせ風が強くて傘を差してられないし、寒いし、すっかり戦意喪失。ちょこまか動き回る気になれない。
なお、丘に登らず谷へ下って回り込むような道も見える。そちらは封鎖されてない模様。しかし早く旅館に着いて温泉に入りてえやという思いが勝って探索してみる気も起きなかった。川原毛地獄は比較的あっさりめに終了。
余裕があれば川原毛大湯滝もどうぞ
補足すると、丘の向こうまで回り込んで先へ進むと、川原毛大湯滝というもう一つのスポットがある。滝を流れるのが水でなく温泉で、滝つぼに入浴することもできるそうだ。野湯なので無料(要水着着用)。
地獄地帯を突っ切って歩く必要は必ずしもなく、車でアプローチすることも可能。ただし川原毛地獄から川原毛大湯滝駐車場までぐるーっと大回りする車道で30分ほどかかるみたい。さらに駐車場から滝まで徒歩15分。気軽にワンセットで体験できるほど甘くない。
我々にそこまでやる時間的余裕はなかった。やるならもっと暖かい時期の好天の日に、ちゃんと時間を確保した計画を立てて、それなりの装備で臨む必要があるだろう。