山梨県市川三郷町にある「みたまの湯」は絶景温泉として知られている。とくに日没から夜景に変わる頃がおすすめらしい。移動途中の立ち寄りだから真昼の時間帯になっちゃうけど、有名な絶景を見てやろうじゃないかということで、当湯へ行ってみた。
高台から下界の街や遠くの山々を一望できるロケーションはたしかにすごい。お湯に入らず景色をずーっと見ている人が結構いた。温泉も紅茶色のモール系でなかなかのもの。
基本的には車で行くところですね。真夏に駅から歩くという決断が熱中症との厳しいたたかいを招いたのだった。温泉とは別の意味でのぼせてしまった。
みたまの湯への道
甲斐上野駅から徒歩30分
山梨で絶景温泉といえば、ほったらかし温泉とみたまの湯。ほったらかしは昔行ったことがある(どんなだったか、記憶はすっかり薄れているが)。ならば、みたまにもいつか行っておかなければと思っていた。
この旅の2日目は下部温泉・甲陽館をチェックアウトして甲府へ向かう。電車で直行するだけだと時間が余ってしまうので、どこか立ち寄り湯できないかなーと探したら、みたまの湯が駅から歩けなくもないことに気づいた。この機会に行っとくか。
そんなわけで身延線・甲斐上野駅に降り立つ。くそ暑ちいー。サウナ状態で早くもやばい。みたまの湯は駅から2kmだから30分で着くはずだ。なんとか耐えきれるだろう。熱中症か、俺か。
灼熱の上り坂
スマホのナビを頼りに線路沿いの道を甲府方面へ数分、踏切を渡ってしばらく道なり。考えるまでもなく当たり前のことだが、高台へ向かっていくわけだから、ずっと上り坂が続く。ってことを甘くみてた。炎天下でこれはしんどい。
道が大きくカーブしたところで1本隣の筋の道へシフトする。その連絡路をナビが指示してくれるんだけど、すごくわかりにくい。迷ったあげく少し遠回りの車道を進むはめになった。正解は果樹園を突っ切る農作業道(?)のことだと気づいたのは帰り道。
こんな調子でいちいち迷って行きつ戻りつしていたら、どんどん時間を食ってHPを削られると観念して、最短じゃなくてもわかりやすい広めの道優先で進むことにした。まあそのおかげで「みたまの湯 温泉スタンド」なるスポットを発見。
坂はいよいよきつくなり、暑さでだいぶのぼせてきた。まだか、まだなのか。歩いても歩いても着かねーという焦りがマックスに達した頃、ようやく目的の館が現れた。意識して早足で歩いて25分。駅から歩いて行った客が体験した最高気温を更新してしまったかもしれんな。
露天風呂で写真を撮るわけにいかないので、入館前に駐車場の金網越しに景色を撮影しておいた。実際の露天風呂から見える景色はもっとパノラマチックである。
これがみはらしの丘の絶景温泉だ
景色目当てにいきなり露天風呂
では入館。下足箱は100円リターン式。受付で料金780円を払って左へ進むと突きあたりが大浴場。つくりは近年一般的な日帰り温泉施設のフォーマット通り。脱衣所のロッカーも100円リターン式だった。小銭のご用意を。掲示された分析書には「アルカリ性単純温泉、低張性、アルカリ性、高温泉」とあった。加水なし、加温・循環・消毒あり。
浴室へ入ると濃い茶色が目に飛び込んできた。おっ、結構はっきりした色のお湯なのね。と思いつつ洗い場へ。カランの数はチェックし忘れた。10人分以上はあるはず。隣との間に仕切りが設けてあって、このご時世にはちょうどいい。
いつもは内湯から順に試していくんだけど、この時はいきなり露天風呂へゴー。右側に高温風呂、左側に中温風呂があって、その奥は遮るものがなく視界がパーッと開けている。ほう、これは気分爽快ですな。先ほどの写真をもっとインスタ映えに仕上げたような景色が広がっていた。
紅茶色のモール泉
最初は中温風呂へ。お湯は茶色というか赤っぽくて、まさに濃いめに入れた紅茶というべき色。見方を変えてご当地らしさを織り込むなら赤ワイン色といってもよい。濁りはないから浴槽の底は見えるけど色が濃いためギリギリ見えるって感じ。
浸かってみると思ったより熱い。真夏だからにしても中温がこれだけ熱いと高温風呂はどんだけ熱いのか、ちょっと腰が引けてきた。まあでも暑い中苦労して歩いてきたから逃げるわけにはいかんとです。お湯の匂いを嗅いでみると山梨の温泉によくあるモール臭が感じられた。
お湯に浸かりながらでも景色は見える。この点はポイント高い。
絶景見ながらクールダウン、そして高温風呂へ
いったん体制を整えるべく休憩用の椅子へ移動。腰掛けながらボーッと景色を見てクールダウンに努めた。わりと長い時間そうしてたと思う。同様の行動を取る人は多く、椅子の人気は高い。絶景が売りの温泉ならではの光景か(季節が季節だからってのもあるだろう)。
クールダウンしたところで意を決して高温風呂へ。さあどうだ、熱いのか?…熱い。でも中温風呂とあまり変わらないような。思ったよりは大丈夫だけど長く浸かれるわけじゃない。
たしか高温風呂の方に景色の説明板があって、鳳凰三山とか八ヶ岳とか山の名前がいろいろ書いてあった。あと山梨の温泉ではおなじみの、フォッサマグナでガイアの体液が~の解説パネルもあった。
温度差のメリハリがある内湯
続いて内湯へ。水風呂は冷温交互浴に使えるんだけど、この日の体調だと冷たさに耐えられなくてパス。内湯にも高温風呂と中温風呂があり、こっちの高温はどうなんだと入ってみたら熱かった。露天を含めてすべての中で一番熱い。爆速で出た。
最後に試したのが内湯の中温風呂。…おっ、ぬるめだぞ。露天の中温と違って明らかにぬるい。40℃を下回っているはず。夏にぴったりですな。あとはここにロックオン。内湯にいてもガラス越しに外の景色は大体わかるから問題なし。
しかも中温風呂の一部は浅くなっていて寝湯状態になれる。浅いから余計にぬるく感じるというおまけ付き。みんな露天に集まるから空いてるしね。こりゃいいやと寝湯で仕上げて入浴完了。
* * *
紅茶色のモール泉+高台からの絶景は、なるほど一見の価値ありだ。ベストとされる日没・夜景の時間に体験できなかったのは、自分が早めに旅館に入ってゆっくりするスタイルだから、まあしょうがない。
当湯からの帰りも猛暑とたたかいながら甲斐上野駅まで歩き、すっかりのぼせ上がって汗ダラダラ、加えて下り坂のダメージでスネのあたりが筋肉痛になってしまった。温泉に入っておきながら満身創痍な気分(自業自得だけど)。次来ることがあれば絶対に車のある時にしようっと。