源泉かけ流し&海鮮自慢の庶民派民宿 - 弓ヶ浜温泉 清水屋

弓ヶ浜温泉 清水屋
伊豆半島の南端エリアにある弓ヶ浜には温泉付きの民宿が数多く集まっている。夏の海水浴に来る若者グループやファミリーが主要な客層なのかなという気がするが、冬でも普通に営業している。

自分が弓ヶ浜の「温泉民宿 清水屋」に泊まったのは、季節が冬から春へと移る頃に催されたグループ旅行の時だった。

このお値段でこんなに?!ってくらい、新鮮な海の幸がどっさり出てきたし、風呂は小さめながら温泉の特徴がしっかりと感じられる。口コミ通りの良好な宿である。

弓ヶ浜温泉・清水屋への道

実はこの旅行のほんのちょっと前に弓ヶ浜温泉「季一遊」というハイクラス寄りの旅館に別の面子と泊まっていた。そちらも弓ヶ浜へ行くならおすすめしたい良宿である一方、気取らない小ぢんまりした民宿もなかなかいいものだ。

しかも土地柄、地元の漁師さんとのつながりで仕入れた、他では味わえない絶品の魚料理がこれでもかと食卓に並ぶ、というような妄想をつい抱いてしまう。想像するだけでもうお腹いっぱい。

そんなワクワク感を胸に、下田・須崎から南伊豆・石廊崎へ至る観光を終えた我ら一行は弓ヶ浜へとやって来た。

民宿が集まる地区は道路が狭くて運転が大変なので、できるだけメインの県道を使うことをおすすめする。カーナビが近道を指示しても無視して可能な限り県道で行って、最後の最低限の距離だけ地区内の道を走るとよい。

清水屋は玄関前が駐車スペースになっている。車利用の客で満室になると全台は置けないようにも見えるけど、第2駐車場があるとか、ご近所と融通しあうとかでどうにかするんだろう。


小ぢんまりした温泉民宿

機能的には十分なシンプルなお部屋

チェックインして通された部屋は2階の8畳和室。ゴテゴテした飾りなどがない、民宿らしいシンプルな部屋である。そこそこ年季は入っているものの、きれいに管理されており居住性は十分だ。
清水屋 8畳和室
トイレ・洗面台なし。2階に共同のがある。トイレは洋式と和式があるうちの洋式しか使わなかった。もちろんシャワートイレ。部屋に金庫はない。また冷蔵庫もないかわり、飲料・お酒類は1階の業務用冷蔵ケース的なやつに入っている(申告制の別途精算)。

言うまでもなくエアコンあり。令和時代にふさわしくWiFiもあります。当宿はセルフサービスの部分が多めで、布団の上げ下げや食事の配膳は自分たちでやる。個人的にはなんら文句ない。

また外の景色はこんな感じ(翌朝撮影、天気は雨)。写真からわかる通り、タオルを干すハンガーは窓の外に固定されている。ひさしがあるから雨でもまあ大丈夫。
清水屋 窓の外
写真の左手前に写っている二つ並びの小屋風がお風呂場だ。

弓ヶ浜へは散歩がてらにちょうどいい

前回の旅行と同じく「明るいうちに弓ヶ浜を見ておこう」ということで浜まで散歩してみた。こんなすぐ再訪することになるとはね。

清水屋の脇の小路をまっすぐに100メートルも歩いたら着いてしまった。まだ記憶に新しい弓ヶ浜はマリンブルーの海と白い砂浜が続く、日本の渚100選にも選ばれている景勝地だ。
弓ヶ浜
前回よりは風が強くて波があって人が多いかな。ゴミや漂流物の少ないきれいな砂浜だという印象は変わらず。晴れてるうちに行っておいて正解だった。


貸切風呂的に利用できる温泉

ぬるいのはむしろ好都合

清水屋のお風呂は母屋の外にある。裏口から中庭へ出ると、上で書いたように小屋が二つ並んでいる。泊まった日は客が我々1組だけだったから、いつでも好きなように利用できた。ふだんも予約制ではなくて、空いていれば自由に鍵をかけて使う方式だと思うけど、ねんのため現地で確認されたい。

泉質は母屋1階に貼ってあった分析書によれば「ナトリウム・カルシウム-塩化物泉、高張性、弱アルカリ性、高温泉」。弓ヶ浜温泉全般が近隣の下賀茂温泉からの引湯だから、ここもそうじゃないかな。引湯パイプが詰まって源泉が通りにくくなり、当地区の旅館業が困っているとニュースになっていたな。

そのせいなのか、お湯はぬるめになっちゃってますと説明されたが、ぬる湯派の自分にはむしろ好都合。ぬるいのは大歓迎。

温泉感はしっかりある

夕方には奥の方の小屋を使ってみた。2台のカランがあって浴槽は1名サイズ。ファミリーならどうにか2名ってところ。壁から突き出た金属管が湯口になっている。お湯の出口付近は白い析出物がびっちりこびりついていた。

浸かってみると確かにぬるめの適温。上の方が熱くて下の方が冷たい状態なので、腕をぐるぐる回してかきまぜよう。

浴感はなかなか良い。投入量がチョロチョロなかわり、かけ流しされている。この泉質に特有の匂いがしっかりあるし、若干ぬるっとした感触もあるから、無色透明でも「温泉に入った~」という気分になる。

必然的に一人か、知り合いや家族と二人で入ることになるはずなので、ある意味では誰にも邪魔されずにゆっくり入浴を楽しめるんじゃないかな。

ぬるくなりやすい手前側

夜には手前の小屋へ行ってみた。こちらはカランが1台だけのかわりに浴槽は若干広くて2名入れそう。湯口が金属管ではなく、それっぽく作り込まれた普通な感じのやつになっている。

お湯の特徴は先ほどと一緒。ただし宿の説明によれば、お湯を通す設計上、手前側の方がどうしてもぬるくなりやすいみたい。とくに朝方はぬるいですよ、少しでも温かくしたければ奥のを利用してください、とのこと。

それを聞いたぬる湯派のあるメンバーは「我が意を得たり」とばかりに手前側を利用していた。需給が見事に噛み合いましたな。

あとは朝食前と後に奥の方を利用した。ふだん他の客もいる状況を考慮すると、ずっと長湯するよりは細かく刻んでちょいちょい入りに行く方がいいと思う。


さすがと思わせる食事

期待通りに魚介たっぷりの夕食

清水屋は朝夕とも部屋食。部屋の前までは運んできてくれるので、それを卓に並べたり、食後に食器類を1階の調理場前まで運ぶのはセルフでやる。夕食は18時、朝食は7時半と決まっている。

夕食がこれ。キターーー! 期待に違わぬ魚介類のオンパレードだ。伊豆すごいよ伊豆。目がチカチカしてきた。
清水屋の夕食
さざえのお造りと刺身5点盛りプランにしたおかげ、とはいえ1万円札で余裕でお釣りが来る料金だからね。それでこれだからね。しかもうまい。テンションが上ってしまうのも無理はない。

調子に乗ってビール瓶を次々と空けた。そのたびにセルフで1階の冷蔵ケースからビールを引っこ抜く(もちろん申告メモを書く)。そうしてついにケース内のビールをすべて飲んでしまったのだった。

さざえと海老が一人3つずつってのが破壊力あったな。おかげでお櫃のご飯をたくさん残してしまった。すまんす。

朝食には定番のアジの干物

朝食が運ばれてくる前に布団を上げてシーツを廊下に出して卓の位置を戻しておかねばならない。準備万端で迎え入れた朝食がこれ。
清水屋の朝食
アジの干物は伊豆の定番。オーソドックスな和定食だが、ご飯のお供になりそうな旨味成分高めのやつが結構あるから、ご飯をつい食べすぎてしまう。実際この日は昼食抜きとなった。


チェックアウトの際にはお土産にみかんをいただいた。具体的な品種はわからないけど黄色くて皮の厚い夏みかん系。帰って家で食べたら酸味のあるフレッシュな味わいだった。

弓ヶ浜温泉の清水屋。覚えておきたい良宿だ。夏の繁忙期は混雑で大変かもしれないけど、温泉や料理が目当てなら、そういう時期を外してうまく立ち回ればいい思い出ができるはずだ。

引湯パイプと一緒ですな → つまらないはずがない。