北薩の名湯は天界に一番近い風呂?! - 紫尾温泉 神の湯

紫尾温泉 神の湯
2泊3日の旅の2日目に熊本県南部の芦北町・湯浦温泉に泊まった。ここまで来たら帰りは熊本空港も鹿児島空港も大差なかろう、と開き直って、鹿児島の温泉に立ち寄ってから帰ることにした。

いろいろ紆余曲折あって結果的には、さつま町にある紫尾温泉の共同浴場「神の湯」を訪れることになった。神…だと…? 名前がすごいのも無理はない。温泉が神社の下から湧き出しているというのだ。神妙に入らねば。

外観はいかついが、中は地元の方々が集うアットホームな温泉銭湯といった風情。お湯は大変結構、そしてとても熱い。

紫尾温泉「神の湯」へのアクセス

おじさん、ついにレンタカーに頼る

旅の3日目。湯浦温泉の亀井荘をチェックアウトしたおじさんは肥薩おれんじ鉄道に乗って出水まで移動した。途中の水俣から県境を越えて米ノ津へ至る区間は、不知火海の向こうに天草諸島を望む車窓の景色を楽しめる。

※絶景ポイントとしては八代寄りの肥後二見~肥後田浦間の方がよく知られているかも。

問題は出水から先。出水駅から紫尾温泉までは20km以上も離れているうえにバス便もない。この距離をタクシーに乗ったら料金がかなりやばい。

なので人生初の奥の手を使ってしまった。ひとりレンタカーである。運転慣れした人からすれば「なにを大げさな」と思われるだろうが、ペーパードライバーを卒業してまだ1~2年程度の者にとっては冒険だ。鹿児島県とはいえ真冬の北薩山地で雪・凍結リスクが0ではないだろうから、一種の賭けでもあった。

国道328号平川経由がおすすめ

ちなみに、同じエリアで同様にバス便がなくて行きづらい名湯に湯川内温泉「かじか荘」というのもあるけど、調べたら狭い未舗装の林道をずっと行かねばならず、自分の運転技量を考慮して今回は断念。

紫尾温泉までのルートにも注意が必要だ。前半は国道328号をずっと進むだけでいい。途中で県道397号との分岐があり、ナビによっては近道に見える県道397を指示するかもしれないが、そっちはすれ違い困難な狭いくねくね道にはまる。後半もそのまま国道328を進み、平川から回り込むようにして紫尾へ至る方がずっと走りやすくて早いはず。

という注意点を事前に仕込んでいたし、幸いにも交通量が少なくて神経を使う場面がほとんどなかったおかげで、予想以上にスムーズに紫尾温泉に着いた。出水から40分くらい。


霊験あらたかな神の湯を体験す

足湯と飲泉場あり

神の湯へ行くなら近くにある大きめの無料駐車場を利用できる。神社参拝ならびに区湯を利用する方向けって書いてあったな。

神の湯は、特に屋根が社殿ぽいデザインになっている。裏手にある神社とワンセットのように見えなくもない。また共同浴場らしからぬ足湯が併設されている。
神の湯の足湯
飲泉場もある。ペットボトルに汲んで帰る人を見た。自分も寸志を入れて一口いただいてみると、わりかし飲みやすい感じ。もちろんただのお湯の味とは全然違うが。
神の湯の飲泉場

地元向けの小ぢんまりした浴場

では入館。コンパクトな館内は完全にジモティ向けの気取らない雰囲気。こういうのが好きな人にはたまらないだろうし、小ぎれいでモダンな大型施設ばかり行ってる人は身構えてしまうかもしれない。

自動券売機で利用券を買って受付へ。200円だからめちゃ安い。地域住民は半額だし。ありがたい反面、ちゃんと事業費をまかなえてるといいのだが。

男湯の脱衣所には4~5人の客の姿があった。広さからすると人口密度は高い。まだ午前中でこの盛況ぶりは人気ありますな。客層を反映してか、脱衣所内にはド演歌・懐メロの類が温泉さながらのかけ流しだ。記憶にあるのは坂本九。

鍵付きロッカーがあるのは助かるね。掲示された分析書には「アルカリ性単純硫黄温泉、低張性、アルカリ性、高温泉」とあった。

硫黄が香る大変結構なお湯

浴室の扉を開けると、さっそく硫黄の匂いがプーン。ほほう、これはこれは。カランの数は失念したが5つ以上あったんじゃないかな。新しすぎず古すぎずの浴室内は、木造の雰囲気が感じられ、強引に妄想を膨らませれば神殿の中の風呂場だと思い込めなくもない。

手前に6名規模の主浴槽、奥に3~4名規模のサブ浴槽が並んでいる。満たされたお湯は半濁りのエメラルドグリーンをしており、過去の体験から月岡温泉を連想させた。壁がややパステル調のエメラルドグリーンだから、その色が映り込んでいるのかなあ…そうじゃなくて温泉の素の色だとは思うが。

主浴槽に浸かってみると熱い。いやまじで熱い。お湯をすくって鼻を近づけるとはっきりした硫黄香がして素晴らしい、のだが、とにかく熱い。そんな中でも常連と思しき皆様方は平然と浸かっている。すげえ。

お隣さんとちょっと会話をする機会があり、「このあたりの温泉ではここが一番だ」と胸を張っていた。自分は比較したわけじゃないけど、たぶんそうなんだろうなと納得できる。でも熱いっす。

あつ湯好きにはたまらない一品

奥のサブ浴槽はぬるいかもしれない。温度の違う複数の浴槽を運用するのはよくある話。救いを求めてサブ浴槽へ…もっと熱かった。誰も入ってないわけだよ。すぐに退散。

サブ浴槽の後だと主浴槽の温度がだいぶマシに思えてくる。この錯覚を利用してしばらく粘った。慣れないレンタカーを運転してまで来たんだもの、熱いからってすぐ出るわけにはいきません。

ある程度粘った後、もういいだろうとあがることにした。自分がぬる湯派なので熱い熱いと強調してしまったが、あつ湯好きならべつに普通だと思うかもしれないし、お湯そのものは大変結構なお点前であった。シャキッとして身体が軽くなったし。これぞ神の恵み。


おまけ:紫尾温泉地区をぶらぶらしてみた

実を言うと、紫尾温泉で立ち寄ろうとしていた当初の候補は「旅籠しび荘」だった。ぬるめの浴槽もあるとのことだったのでね。
旅籠しび荘
ところが玄関前には「本日休業」の札。

 しまったァーーーー!!!

ドカベンで見開きいっぱいのドアップで叫んだ敵軍エースのような表情で立ち尽くすおじさん。そういうわけで神の湯へ行った。

神の湯の後には裏手の紫尾神社へ行ってみた(神の湯の方が神社の裏手というべきか)。歴史は古く社格は高そう。いわゆるパワースポット的な雰囲気がある。
紫尾神社
一般に拝殿の中は見えなかったり見えにくかったりするものだが、ここは違う。十分に光が差し込んで明るいし、いろいろ飾ってあって解説も付いているように見える。もしかして中に入れるのか、そんなわけないよな、で当然立ち入らず。

この拝殿の下から紫尾温泉の源泉が湧出しているらしい。なんというロマンのある話だ。しびれるね、紫尾だけに。