熊本県の八代エリアにある日奈久温泉。“ひなぐ”っていう音の響きがいいですね。なんとなく惹かれるものがあったので、旅の途中で寄ってみることにした。レトロな共同浴場から風格ある老舗旅館まで数ある中から選んだ立ち寄り先は「旅館幸ヶ丘」。名前に旅館と付いているが現在は日帰り営業のみ。
ご当地の他の施設と直接比較したわけじゃないけど、ここのお湯は一般の日奈久温泉のイメージからすると個性が強いんじゃないかと思う。もちろんいい意味です。お湯の良さは間違いない。特にあつ湯が好きならベストマッチだろう。
オーシャンアローの船内はやたらゴージャス。だだっ広いフラットな床の上に各自が毛布で場所取りをするなんていうアレではない。1階にはゆったりしたシートが並んでいるし、洒落たバーみたいなカウンター席もあるし、2階なんてこれだからね。
30分で有明海を横断してしまうんだから速い。とはいえ熊本港から熊本駅までの連絡バスを待ったり乗ったりすると、熊本駅に着いたのは結局正午に近かった。
駅前がすぐに温泉街ではない。国道に沿って3分くらい行くとY字の分岐があって、左側の旧薩摩街道と思われる細い道に入って5~6分。突如ランドマークになり得る大きな建物が目に飛び込んできた。共同浴場ばんぺい湯だ。
ここは地域のメイン浴場らしく人の出入りが多い。新しい建物だし好まれそうね。だが今回のターゲットは旅館幸ヶ丘だ。ばんぺい湯の右の路地を温泉神社へ向かうようにしてほんのちょっと進めば当館に到着する。
さあ入浴するぞ…と玄関のガラス戸を見ると…「本日の営業は14:30から」の張り紙。ええええーーーー!!! まだあと50分あるぞ。ふざくんな~、って営業状況をちゃんと調べずに来てしまった自分に腹を立ててもしょうがない。ばんぺい湯で代替するか? いやしかし今さら諦めきれない。ここは初志貫徹。
というわけで後述の町歩きを先にすませて時間をつぶし、14時半になってから入館した。
「八十八湯で来たの?」と訊かれたのは、当館は九州八十八湯めぐりという企画の対象施設に選ばれているからだ。つまり温泉通が認める湯質であり、八十八湯めぐりのために訪れる客が多いことのあらわれだろう。期待大。
ご主人に利用料500円を渡し、飲泉できる・銀製品は変色するから要注意との説明を受けて2階の男湯へ向かう。館内はレトロな木造旅館の風情が色濃く残る。まさに通好みってやつですな。
風呂場前の休憩コーナーに分析書的な紙が貼ってあり、「アルカリ性単純温泉、弱アルカリ性、低張性、高温泉」とあった。加水・加温・循環・消毒なしの見事な源泉かけ流し。
カランは4つ。L字型をした浴槽は3名サイズ。仲良し5人組なら何とか詰めて入れるかも。一方の端は浅くなっていて半寝湯状態で浸かることになる。残りの部分はむしろ深め。全般に白基調の浴室に薄緑色タイルの浴槽は、明るくソフトな印象を与えて、なかなか良い。
では入湯。あちい。適温の範疇を超えた熱さだ。慣れれば数分は浸かっていられるが頻繁に休憩を挟まないと粘れない。浅い方で半寝湯になれば少しは入りやすい温度に感じる。
しかしさすがにお湯は良いね。熱いのは苦手でもお肌は喜んでおります。お湯はしっかりとタマゴ臭がするしね。深い部分では泡の微粒子が行き場を求めて湯の中を大量に漂っており、浸かるとすぐに肌に付着する。
おっと、そうだ、飲泉できるんだった。湯口のコップを使って源泉を飲んでみた。苦みエグみはなくて普通に飲める。
熱いからいつまでも長湯はできない。さてどうしようかなと思い始めた頃に若者グループが入ってきた。やっぱり熱い熱いと唸っている。そりゃそうだろうなー。まあ後は託すからごゆっくり、と脳内でバトンタッチして上がることにした。
幸ヶ丘のお湯は熱いかわりに出た後の温まりが半端ない。冬の装備の服を着たら熱気がこもって真夏のように汗がダラダラ出てきた。なんやこれ。そして体中が温泉くさい。それっぽい匂いをぷ~んと撒き散らすことになってしまった。やってくれますな。脱帽です。
ばんぺい湯の近くに白いなまこ壁が特徴的な村津邸がある。すべてがこうではないけど、温泉街には昔の宿場町の雰囲気を感じさせるデザインの建物が多い。
国道を越えて海の方へ出てみると、官軍上陸の地碑があった。西南戦争の折に官軍がここから上陸したことを伝えている。おおそうか。2年前に大河ドラマ西郷どんを見てなかったら何の感慨も湧かなかっただろうが、見ておいてよかったぜ。
日奈久温泉で最も風格ある旅館は金波楼で異論あるまい。なにせこのお姿ですよ。創業110年、国の登録有形文化財だって。日帰り入浴も受け付けている。
一方で地元密着型の温泉銭湯・松の湯がこちら。もともとは警察分署の建物だったそうな。近くには西湯という共同浴場もあったけど閉鎖されちゃってた。
…すぐそばの水産加工品の店が気になってきた。日奈久はちくわが名物らしい。昼飯がわりに1本100円で買ってみた。製品状態の袋から取り出してくるので風情は今ひとつだが、その場で食べると告げればレンジでチンしてくれる。
お味は、うん、ちくわですね。ただし魚肉感というか魚市場の匂いが強くて、ふだん食べ慣れたちくわとは味わいの深さが違う。忍者ハットリくんに出てくる犬のようにガツガツ食べてしまった。うまい。日奈久 - 温泉 - ちくわのトライアングル、覚えておこう。
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ご当地の他の施設と直接比較したわけじゃないけど、ここのお湯は一般の日奈久温泉のイメージからすると個性が強いんじゃないかと思う。もちろんいい意味です。お湯の良さは間違いない。特にあつ湯が好きならベストマッチだろう。
日奈久温泉「旅館幸ヶ丘」へのアクセス
島原から高速フェリーで熊本へ
旅の2日目。朝8時半に雲仙小地獄温泉・青雲荘をチェックアウトしたおじさんはバスに乗って島原港まで下山してきた。ここから高速フェリー「オーシャンアロー」で熊本へ渡るのだ。さらば島原半島。オーシャンアローの船内はやたらゴージャス。だだっ広いフラットな床の上に各自が毛布で場所取りをするなんていうアレではない。1階にはゆったりしたシートが並んでいるし、洒落たバーみたいなカウンター席もあるし、2階なんてこれだからね。
30分で有明海を横断してしまうんだから速い。とはいえ熊本港から熊本駅までの連絡バスを待ったり乗ったりすると、熊本駅に着いたのは結局正午に近かった。
地域を代表する共同浴場「ばんぺい湯」
先を急ごう(昼飯抜き)。JRで八代まで南下し、肥薩おれんじ鉄道に乗り換えて2つ目の日奈久温泉駅に着いたのは、13時半頃だった。この日はひたすら移動だったなあ。駅前がすぐに温泉街ではない。国道に沿って3分くらい行くとY字の分岐があって、左側の旧薩摩街道と思われる細い道に入って5~6分。突如ランドマークになり得る大きな建物が目に飛び込んできた。共同浴場ばんぺい湯だ。
ここは地域のメイン浴場らしく人の出入りが多い。新しい建物だし好まれそうね。だが今回のターゲットは旅館幸ヶ丘だ。ばんぺい湯の右の路地を温泉神社へ向かうようにしてほんのちょっと進めば当館に到着する。
さあ入浴するぞ…と玄関のガラス戸を見ると…「本日の営業は14:30から」の張り紙。ええええーーーー!!! まだあと50分あるぞ。ふざくんな~、って営業状況をちゃんと調べずに来てしまった自分に腹を立ててもしょうがない。ばんぺい湯で代替するか? いやしかし今さら諦めきれない。ここは初志貫徹。
というわけで後述の町歩きを先にすませて時間をつぶし、14時半になってから入館した。
熱いがクオリティは間違いない温泉
風情あるレトロな旅館の建物
入ると右手に受付窓口があるように見えて人は常駐していない。インターホンで呼び出す方式だ。自分の時はタイミングよくご主人がいて「いらっしゃい」と声をかけてもらった。「八十八湯で来たの?」と訊かれたのは、当館は九州八十八湯めぐりという企画の対象施設に選ばれているからだ。つまり温泉通が認める湯質であり、八十八湯めぐりのために訪れる客が多いことのあらわれだろう。期待大。
ご主人に利用料500円を渡し、飲泉できる・銀製品は変色するから要注意との説明を受けて2階の男湯へ向かう。館内はレトロな木造旅館の風情が色濃く残る。まさに通好みってやつですな。
風呂場前の休憩コーナーに分析書的な紙が貼ってあり、「アルカリ性単純温泉、弱アルカリ性、低張性、高温泉」とあった。加水・加温・循環・消毒なしの見事な源泉かけ流し。
タマゴ臭と泡付きのする本格派
脱衣所は浴室と一体化したスタイル。ちょうど先客が服を着て出ていくところと入れ違いだったから独占だ。やったぜ。浴室内ははっきりわかるタマゴ臭が充満しており、単純泉にしては主張が強い。カランは4つ。L字型をした浴槽は3名サイズ。仲良し5人組なら何とか詰めて入れるかも。一方の端は浅くなっていて半寝湯状態で浸かることになる。残りの部分はむしろ深め。全般に白基調の浴室に薄緑色タイルの浴槽は、明るくソフトな印象を与えて、なかなか良い。
では入湯。あちい。適温の範疇を超えた熱さだ。慣れれば数分は浸かっていられるが頻繁に休憩を挟まないと粘れない。浅い方で半寝湯になれば少しは入りやすい温度に感じる。
しかしさすがにお湯は良いね。熱いのは苦手でもお肌は喜んでおります。お湯はしっかりとタマゴ臭がするしね。深い部分では泡の微粒子が行き場を求めて湯の中を大量に漂っており、浸かるとすぐに肌に付着する。
半端なく温まる力強いお湯
昇り鯉の背中に子供がつかまっているような白い像が湯口。鯉の口から勢いよく源泉が吐き出され、口の下から喉元にかけては茶色く変色していた。すげえ。浴槽のサイズに対する投入量はかなり多い部類。おっと、そうだ、飲泉できるんだった。湯口のコップを使って源泉を飲んでみた。苦みエグみはなくて普通に飲める。
熱いからいつまでも長湯はできない。さてどうしようかなと思い始めた頃に若者グループが入ってきた。やっぱり熱い熱いと唸っている。そりゃそうだろうなー。まあ後は託すからごゆっくり、と脳内でバトンタッチして上がることにした。
幸ヶ丘のお湯は熱いかわりに出た後の温まりが半端ない。冬の装備の服を着たら熱気がこもって真夏のように汗がダラダラ出てきた。なんやこれ。そして体中が温泉くさい。それっぽい匂いをぷ~んと撒き散らすことになってしまった。やってくれますな。脱帽です。
おまけ:日奈久温泉街の散策
いつか入ってみたい金波楼
14時半の営業開始までに50分近くも時間が余ってしまったので、日奈久温泉街をぶらぶら散歩してみた。ばんぺい湯の近くに白いなまこ壁が特徴的な村津邸がある。すべてがこうではないけど、温泉街には昔の宿場町の雰囲気を感じさせるデザインの建物が多い。
国道を越えて海の方へ出てみると、官軍上陸の地碑があった。西南戦争の折に官軍がここから上陸したことを伝えている。おおそうか。2年前に大河ドラマ西郷どんを見てなかったら何の感慨も湧かなかっただろうが、見ておいてよかったぜ。
日奈久温泉で最も風格ある旅館は金波楼で異論あるまい。なにせこのお姿ですよ。創業110年、国の登録有形文化財だって。日帰り入浴も受け付けている。
一方で地元密着型の温泉銭湯・松の湯がこちら。もともとは警察分署の建物だったそうな。近くには西湯という共同浴場もあったけど閉鎖されちゃってた。
日奈久名物・ちくわを食す
そんなこんなで散歩終了。ばんぺい湯前まで戻って来た。残り15分ほどはベンチで適当に休んで時間をつぶそう。…すぐそばの水産加工品の店が気になってきた。日奈久はちくわが名物らしい。昼飯がわりに1本100円で買ってみた。製品状態の袋から取り出してくるので風情は今ひとつだが、その場で食べると告げればレンジでチンしてくれる。
お味は、うん、ちくわですね。ただし魚肉感というか魚市場の匂いが強くて、ふだん食べ慣れたちくわとは味わいの深さが違う。忍者ハットリくんに出てくる犬のようにガツガツ食べてしまった。うまい。日奈久 - 温泉 - ちくわのトライアングル、覚えておこう。
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