新潟県魚沼市(旧湯之谷村)にある湯之谷温泉郷の中でも最大規模を誇るのが大湯温泉。近くの栃尾又温泉を訪れるとたいがい、ぶらぶらと大湯温泉まで散歩するのが常だが、温泉街を歩き回るだけで一度も入浴したことがなかった。
あちこちの温泉を体験してみたいとか言っておいて、そりゃあいけませんな。てことで、2019年晩秋にも大湯温泉へ散歩する局面を迎えたので、この機会に立ち寄り入浴をやってみた。
選んだ先は伊東園系列の「ホテル湯元」。ぬる湯の栃尾又温泉とは対照的に、むしろ熱いくらい。きりっと・さっぱりとしたお湯を好む人にはいいだろう。あとタオルが手に入ります。
しかし今回は一つの問題があった。湯之谷温泉郷ならびに玄関口となる小出地区の一帯で熊の出没が相次いでいたのである。ネットで検索してみると、住民が熊に襲われたという記事がたくさんヒットした。怖えー。
車道を歩くだけで山に入るわけじゃないから遭遇するおそれはない、などと果たして断言できるか? 全国的には住宅街や学校、民家の庭にも現れたなんてニュースもあるしな。楽観はできない。困ったなあ。
栃尾又温泉を出るとさっそく人っ子一人いない自然豊かな山道。振り返れば雪を頂いた越後駒ヶ岳が見事なのはいいんだけどね。
でもこれ出そうじゃん。熊さんウエルカムじゃん。どうすんだおい…出会い頭がまずいので、音を出して人間の存在をアピールすれば向こうから離れていくっていうからな…結果、手拍子を叩きながら歩く羽目になってしまった。どうみても不審者である。
見返り橋を渡り、大湯温泉街が近づくにつれて人里ぽくなってきた。もう不審者のようなマネをしなくても大丈夫。往路は無事クリア。スキー場の紅葉を眺める心の余裕が出てきた。
すぐ隣には源泉所と共同浴場「雪華の湯」。ただし地元民か当温泉の宿泊者しか入れない。雪華の湯の目の前には足湯がある。昔いたドクターフィッシュはいなかったけど、暖かい季節ならいるのかな。
佐梨川の方へと下っていって、合わせ湯橋を渡った。合わせ湯=大湯温泉+栃尾又温泉。両者をハシゴする湯治スタイルを指すらしい。
奥に見える青い頭、あそこがホテル湯元だ。川沿いの未舗装の散策路から行けそうではあるが、安全策で舗装道を行く。だがそのためには急坂もしくは屋根付きの急階段を上らなくてはならない。
雪や凍結によって坂が使えなくなるための階段と思われる。温泉街を利用するスキー客向けに導線を確保しないといけないし。とにかく過激なまでの急傾斜だ。
そんなこんなでホテル湯元に着いた。
ロビーではシロクマがお出迎え。写真を撮るのはいいけど触らないでね。
伊東園は各地で立て直しが必要となったホテル・旅館を買い取り、低コストな運営スタイルへと合理化したうえで、エコノミーで気軽を売りにした宿として再出発させる。ハード面は元の建物を生かすから必ずしも「エコノミー=ボロい」ではない。ここも見た感じは一定の水準を保っているように見える。
エレベーターでフロントのある3階から1階へと下りていくと大浴場。湯あがり休憩所とマッサージコーナーが一応あります。はい、スマホの利用はここが限界。電源オフ。
男湯の脱衣所にあった分析書によれば「アルカリ性単純温泉、低張性、アルカリ性、高温泉」。あとウォーターサーバーが置いてあった。鍵付きのロッカーに服をしまう。
内湯は30名いけそうなくらいのサイズ。中央の柱に岩が寄せ集まっていて、下から突き出した管を通して無色透明のお湯が投入されている。
では浸かってみよう。あちい。熱めの適温といったところか。あつ湯好きや、「風呂はやっぱり熱いくらいじゃないといけねえや」という江戸っ子にはいいと思うけど、長湯には向かない。
時おり白い小さい粒が漂っているのは湯の花だろうか。泡付きはなく、特徴的な匂いもない。裏を返せば消毒の塩素臭は感じない。1名いた先客が出ていくと、妙に広い空間にただ一人、独占状態となった。
奥の隅っこに旧湯口と思われるものがあった。今はすっかり枯れている。そこには内湯とほぼ一体化してつながった6名サイズの小浴槽もあった。なんだろう、昔まだ小規模でやってた頃の旧内湯ですかね。底にはなぜか吸込口みたいな穴がいっぱい開いていた。大差ないとはいえ、少しでもぬるい方がよければ、湯口から遠いここを陣取るのがいいかも。
お湯の見た目の特徴は内湯と同じ。浸かってみたところ…熱ぅ!! 激熱すぎィ。まともに入っていられないぞ。足の皮膚がヒリヒリする。外気に触れて内湯よりぬるい、っていうシナリオが良かったなあ。まだ正午くらいだし、宿泊客向けにちゃんと温度をチューニングする前段階だったのかもしれない。
残念。まあいいや、内湯へ戻ろう。とその時、防災行政無線のアナウンスが響き渡った。「熊の出没が続いています。外出や屋外作業には十分注意しましょう」…うわあ、やっぱり出るんじゃないか。
びびって内湯へ戻り、しばし過ごしてから入浴終了。温泉効果か、やけにのどが渇いた。脱衣所のウォーターサーバー大活躍。
露天風呂の激熱は残念だったが、夕方までには相応に整うんだろう。それでも熱め寄りのお温だと思う。高温泉だし。まあしかし、栃尾又温泉から1kmあまり離れただけなのに、これほど温度が違うとは、佐梨川さん多芸ですな。
ピラミッド型の屋根が目を引く「交流センター ユピオ」にも初めて入ってみた。お土産でも売ってないかと期待したんだが、直売野菜しかなかった。道の駅のようなものではなくて、あくまで地域の交流拠点って感じ。ちなみにユピオ内にも日帰り温泉施設がある。
注目すべきは自動ドアの張り紙。「熊警戒中につき自動ドア停止中」…うわあ、やっぱり出るんじゃないか。
気がつけば雲がもくもく湧き出して日は陰り、13時台なのに早くも夕刻のような雰囲気が漂っていた。これ出るじゃん。熊さんウエルカムじゃん。早く帰んないとやばいぞ、と慌てて栃尾又温泉へ戻っていった。手拍子を打ちながら。
【この旅行に関する他の記事】
あちこちの温泉を体験してみたいとか言っておいて、そりゃあいけませんな。てことで、2019年晩秋にも大湯温泉へ散歩する局面を迎えたので、この機会に立ち寄り入浴をやってみた。
選んだ先は伊東園系列の「ホテル湯元」。ぬる湯の栃尾又温泉とは対照的に、むしろ熱いくらい。きりっと・さっぱりとしたお湯を好む人にはいいだろう。あとタオルが手に入ります。
大湯温泉「ホテル湯元」への道
想定外のハードル
旅の3日目。栃尾又温泉に2泊3日滞在するうちの中日は幸いにも晴れてくれた。そこで今年も大湯温泉への散歩を企てた。片道1km・15分ほどの距離感だ。しかし今回は一つの問題があった。湯之谷温泉郷ならびに玄関口となる小出地区の一帯で熊の出没が相次いでいたのである。ネットで検索してみると、住民が熊に襲われたという記事がたくさんヒットした。怖えー。
車道を歩くだけで山に入るわけじゃないから遭遇するおそれはない、などと果たして断言できるか? 全国的には住宅街や学校、民家の庭にも現れたなんてニュースもあるしな。楽観はできない。困ったなあ。
緊張の単独行
えーい、こうなったら覚悟を決めて歩くしかない。せめて真昼なら出現確率が低いはずだから、11時に出発して13時すぎには戻る計画で決行。栃尾又温泉を出るとさっそく人っ子一人いない自然豊かな山道。振り返れば雪を頂いた越後駒ヶ岳が見事なのはいいんだけどね。
でもこれ出そうじゃん。熊さんウエルカムじゃん。どうすんだおい…出会い頭がまずいので、音を出して人間の存在をアピールすれば向こうから離れていくっていうからな…結果、手拍子を叩きながら歩く羽目になってしまった。どうみても不審者である。
見返り橋を渡り、大湯温泉街が近づくにつれて人里ぽくなってきた。もう不審者のようなマネをしなくても大丈夫。往路は無事クリア。スキー場の紅葉を眺める心の余裕が出てきた。
大湯温泉街をぶらり散歩
前回の散歩は雪の中だった。今回の方がコンディションがいいからちょっと寄り道を。大湯温泉バス停近くの熊野神社は、神社だけどなぜか薬師如来を祀っている。もう雪対策か何かの板で囲われちゃってますな。すぐ隣には源泉所と共同浴場「雪華の湯」。ただし地元民か当温泉の宿泊者しか入れない。雪華の湯の目の前には足湯がある。昔いたドクターフィッシュはいなかったけど、暖かい季節ならいるのかな。
佐梨川の方へと下っていって、合わせ湯橋を渡った。合わせ湯=大湯温泉+栃尾又温泉。両者をハシゴする湯治スタイルを指すらしい。
奥に見える青い頭、あそこがホテル湯元だ。川沿いの未舗装の散策路から行けそうではあるが、安全策で舗装道を行く。だがそのためには急坂もしくは屋根付きの急階段を上らなくてはならない。
雪や凍結によって坂が使えなくなるための階段と思われる。温泉街を利用するスキー客向けに導線を確保しないといけないし。とにかく過激なまでの急傾斜だ。
そんなこんなでホテル湯元に着いた。
熱めのさっぱりしたお湯を提供する大浴場
日帰り入浴でもタオルをもらえる
フロントで650円を払って入館。その際にタオルが提供された。立ち寄り入浴というとタオル要持参か、あるいは別料金でレンタルするのが一般的なのだが、ここでは持ち帰りOKのタオルをくれる。こいつはありがてえ。ロビーではシロクマがお出迎え。写真を撮るのはいいけど触らないでね。
伊東園は各地で立て直しが必要となったホテル・旅館を買い取り、低コストな運営スタイルへと合理化したうえで、エコノミーで気軽を売りにした宿として再出発させる。ハード面は元の建物を生かすから必ずしも「エコノミー=ボロい」ではない。ここも見た感じは一定の水準を保っているように見える。
エレベーターでフロントのある3階から1階へと下りていくと大浴場。湯あがり休憩所とマッサージコーナーが一応あります。はい、スマホの利用はここが限界。電源オフ。
男湯の脱衣所にあった分析書によれば「アルカリ性単純温泉、低張性、アルカリ性、高温泉」。あとウォーターサーバーが置いてあった。鍵付きのロッカーに服をしまう。
広々とした内湯
浴室はホテルの規模なりにでかい。洗い場は14名分。ボディソープやシャンプーはいくつかの種類が置いてあって、どれもなかなか良さげ。馬油とか。なのでこの日の洗髪と洗身はこちらで行った。内湯は30名いけそうなくらいのサイズ。中央の柱に岩が寄せ集まっていて、下から突き出した管を通して無色透明のお湯が投入されている。
では浸かってみよう。あちい。熱めの適温といったところか。あつ湯好きや、「風呂はやっぱり熱いくらいじゃないといけねえや」という江戸っ子にはいいと思うけど、長湯には向かない。
時おり白い小さい粒が漂っているのは湯の花だろうか。泡付きはなく、特徴的な匂いもない。裏を返せば消毒の塩素臭は感じない。1名いた先客が出ていくと、妙に広い空間にただ一人、独占状態となった。
奥の隅っこに旧湯口と思われるものがあった。今はすっかり枯れている。そこには内湯とほぼ一体化してつながった6名サイズの小浴槽もあった。なんだろう、昔まだ小規模でやってた頃の旧内湯ですかね。底にはなぜか吸込口みたいな穴がいっぱい開いていた。大差ないとはいえ、少しでもぬるい方がよければ、湯口から遠いここを陣取るのがいいかも。
たまたま? おそろしいほど激熱の露天風呂
露天風呂もある。5~6名サイズの岩風呂で屋根付き。周囲は庭園風に整えられており、目隠しの塀越しに越後駒ヶ岳の肩口にあたる一部がどうにか見える。お湯の見た目の特徴は内湯と同じ。浸かってみたところ…熱ぅ!! 激熱すぎィ。まともに入っていられないぞ。足の皮膚がヒリヒリする。外気に触れて内湯よりぬるい、っていうシナリオが良かったなあ。まだ正午くらいだし、宿泊客向けにちゃんと温度をチューニングする前段階だったのかもしれない。
残念。まあいいや、内湯へ戻ろう。とその時、防災行政無線のアナウンスが響き渡った。「熊の出没が続いています。外出や屋外作業には十分注意しましょう」…うわあ、やっぱり出るんじゃないか。
びびって内湯へ戻り、しばし過ごしてから入浴終了。温泉効果か、やけにのどが渇いた。脱衣所のウォーターサーバー大活躍。
露天風呂の激熱は残念だったが、夕方までには相応に整うんだろう。それでも熱め寄りのお温だと思う。高温泉だし。まあしかし、栃尾又温泉から1kmあまり離れただけなのに、これほど温度が違うとは、佐梨川さん多芸ですな。
交流センター・ユピオを見学してみた
帰りには大湯公園をまわってみた。散策コースや芝生の広場などが整備されている。前回は雪に阻まれて足を一歩踏み入れることすらできなかったロックガーデンも、これこの通り。ピラミッド型の屋根が目を引く「交流センター ユピオ」にも初めて入ってみた。お土産でも売ってないかと期待したんだが、直売野菜しかなかった。道の駅のようなものではなくて、あくまで地域の交流拠点って感じ。ちなみにユピオ内にも日帰り温泉施設がある。
注目すべきは自動ドアの張り紙。「熊警戒中につき自動ドア停止中」…うわあ、やっぱり出るんじゃないか。
気がつけば雲がもくもく湧き出して日は陰り、13時台なのに早くも夕刻のような雰囲気が漂っていた。これ出るじゃん。熊さんウエルカムじゃん。早く帰んないとやばいぞ、と慌てて栃尾又温泉へ戻っていった。手拍子を打ちながら。
【この旅行に関する他の記事】