12月。以前からの要望に応えて「越後村上鮭塩引き街道」を見に行くことになった。三面川の鮭漁が盛んな新潟県村上市では、12月になると各家の軒下に塩引き鮭がずらりと吊るされ、冬の風物詩になっているという。
新巻鮭との違いもよくわかっていなかったが、とにかく塩引き鮭がたくさん並ぶ光景を拝んでみようじゃないか。実際、主役の街道以外にもあっちに鮭、こっちに鮭、鮭鮭鮭。本当に鮭ばっか。雪はないけど鮭は大量にあった。
なお見学は2日間にわたって行われた。本記事では2日目に撮った写真が1日目のエピソードに添えられたりして、語られている天気の話と写真内の空模様が噛み合ってない箇所があります。
新幹線の越後湯沢から浦佐にかけてはすでに雪化粧ずみ。1ヶ月近く前に通った時とはすっかり様変わりしていた。長岡まで来ると雪の存在感はだいぶ薄くなり、遠くの高い山が白く見えるくらい。
新潟で特急いなほに乗り換えてからの小一時間の景色も同様。今回は雪とは無縁ですみそうだ。中条付近で目につく風力発電の風車が、今夏の「西方の湯」の思い出を蘇らせる。懐かしいなあ、とか考えているうちに村上着。天候はどんより曇り。
目的の鮭街道は駅から2キロくらい離れている。歩けなくはないしタクシーでもいいんだけど、案内所で尋ねてみると、ちょうどまもなくバスが出るタイミングだった。ラッキー。
とりあえずバスでイヨボヤ会館なる施設の最寄り停留所・小助島まで行ってみた。これで1.5キロくらい稼いだはず。
すぐ近くには和食処「悠流里」とお土産店「永徳 鮭乃蔵」。実際にお土産を買うのは翌日にまわす前提で、今日は下見のつもりで鮭乃蔵へ入店。
いきなり鮭のぶら下がりキターーー!
寒風干しブランドが甘め、塩引き鮭ブランドが昔ながらの塩辛さ。塩をすり込んで、寝かせてから水洗いして、寒風にさらして干す作り方は一緒。
ついでに新巻鮭との違いも解説されていたけど自分にはよくわからなかった。しっかり熟成させることと、凍るでも腐るでもなくちょうど良い塩梅の村上の寒風で干すことがポイントとみたが。
他にも鮭の酒浸しとか白子漬けとかの珍味系や鮭以外の魚加工品、地酒なども売っている。鮭の皮で作ったジャケットもありやしたぜ。
もう少し近くへ寄ってみましょう。
なるほど、確かに鮭だ。ここ村上は城下町であったので、鮭の干し方にも武家の文化が反映されているとのこと。頭を下にして吊るすのは首吊りを連想させるのを嫌ったためだとか。
腹を完全に切り開かずに真ん中らへんをつなげたままにしてあるのは切腹の連想回避。事情を知らなければ「わざわざ面倒な開き方をしているなあ」と誤解してしまう。口の下にかかっている木の札はよくわからん。人や学校の名前が書いてあったけど。
正直に申せば、花見時期の桜の名所みたいに見物客が列をなして歩いているのかと思ってたが、実際は全然いなくて拍子抜けした。でもそれが悪いとは言わない。混雑してるの好きじゃないんで。
また、ここでしか見られないであろう珍しい光景ではあるが、視界を埋め尽くす鮭の大群というほどの圧倒的な数ではないので、勝手に期待のハードルを上げないように。100万本のひまわり畑とかのイベントとは違うから、そこらへんは大人の対応でヨロシク。
中に入ると先述の永徳と同様に鮭関連のお土産が陳列されている。高級路線なのか、ちょっとお高い感じ。しかし当店にはまだ隠し玉があった。店の奥に「←見学こちら」の張り紙があって、そこから隣の間へ進むと…。
デターーー!!! 鮭がいっぱい。これぞ鮭の森。足元には塩漬けの鮭が詰められた樽。
空間内の鮭密度でいえば今旅の最高値を記録した。そして振り返ると伝統と格式がありそうな居間。観光用に整えたのでなく現役の居住空間だ。
こうして鮭づくしの雰囲気に圧倒されながら店を出た。結局なにも買わなくてすいません。
村上の町歩きでひとつ注意点をあげるとすれば、公衆トイレ。観光地図などで位置を確認しておこう。あちこちにあるわけではないし、商工会議所のように週末は閉じているところもあるからだ。
残った時間で近くのイヨボヤ会館を見学しに行った。村上では昔から鮭のことをイヨボヤと呼ぶ。当館は鮭に関する博物館である。大人600円。
順路に沿って最初の見どころはミニ孵化場。生育段階ごとに仕切られた稚魚や鮭の卵(はらこ)を見ることができる。他にもイワナ・ヤマメなどがいる。
詳細を語れるほどの知識はないんだけどね。鮭が生まれ故郷の川へ帰ってくることを発見し、三面川に分流を設ける「種川の制」によって、世界で初めて鮭の自然増殖システムを確立したんだとか。
スーパーマリオの無限増殖法を連想するね。武平治さんマジかっけー。しかし青砥武平治の子供が高砂武平治で孫が柴又武平治で曾孫が金町武平治、ってわけではない。もちろん印旛日本医大武平治なんていう子孫はいない。
寒風干しに吊るされた鮭を見に来た旅行とはいえ、生きて泳ぐ姿を目にしたのもまた印象に残る体験だ。よく見ると結構うようよいるぞ。
いやー、なんだか知らんが、なんとなく得した気分だ。他に鮭の生態や史料の展示、お子様向け(?)ゲームコーナーまである。ひと通りまわって見学終了。
外へ出て、先ほど観察室で水中を見た川のある方へ歩いていくと、まもなく河川敷へ到達した。これが種川ってやつか。思ってたより小さいな。写真ではわからないが、川の中にたくさんの鮭が泳いでいた。池の鯉みたいな感じ。
ところで塩引き鮭を見学したら食べてみたくなるのが人情である。町中に鮭料理の店がいくつもあるから、観光地図を頼りに食べ歩くのもいいだろう。我々も永徳鮭乃蔵の隣の悠流里を利用した。
それに村上のグルメは鮭だけじゃない。村上牛もある。観光面では笹川流れという海岸の景勝地もある。もし日程に余裕があって雪の季節でなければレンタカーで行ってただろう。今回は要望に沿って鮭塩引街道というワンテーマに注力したが、まだまだ楽しみが残されていそうな村上であった。
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新巻鮭との違いもよくわかっていなかったが、とにかく塩引き鮭がたくさん並ぶ光景を拝んでみようじゃないか。実際、主役の街道以外にもあっちに鮭、こっちに鮭、鮭鮭鮭。本当に鮭ばっか。雪はないけど鮭は大量にあった。
なお見学は2日間にわたって行われた。本記事では2日目に撮った写真が1日目のエピソードに添えられたりして、語られている天気の話と写真内の空模様が噛み合ってない箇所があります。
村上へのアクセス
村上市は新潟県の最北端。したがって東京方面からだと、まず上越新幹線で終点の新潟まで行かねばならない。それから白新線経由で新発田、さらに羽越本線で山形・秋田方面へ北上する。新幹線の越後湯沢から浦佐にかけてはすでに雪化粧ずみ。1ヶ月近く前に通った時とはすっかり様変わりしていた。長岡まで来ると雪の存在感はだいぶ薄くなり、遠くの高い山が白く見えるくらい。
新潟で特急いなほに乗り換えてからの小一時間の景色も同様。今回は雪とは無縁ですみそうだ。中条付近で目につく風力発電の風車が、今夏の「西方の湯」の思い出を蘇らせる。懐かしいなあ、とか考えているうちに村上着。天候はどんより曇り。
ひたすら鮭を見る村上の町歩き
「永徳 鮭乃蔵」でお土産の下見
改札を出たらまず駅構内のコインロッカーに荷物を預けて身軽になった。でもって駅前の観光案内所へ。目的の鮭街道は駅から2キロくらい離れている。歩けなくはないしタクシーでもいいんだけど、案内所で尋ねてみると、ちょうどまもなくバスが出るタイミングだった。ラッキー。
とりあえずバスでイヨボヤ会館なる施設の最寄り停留所・小助島まで行ってみた。これで1.5キロくらい稼いだはず。
すぐ近くには和食処「悠流里」とお土産店「永徳 鮭乃蔵」。実際にお土産を買うのは翌日にまわす前提で、今日は下見のつもりで鮭乃蔵へ入店。
いきなり鮭のぶら下がりキターーー!
寒風干し派? 塩引き鮭派?
店内の商品群には「寒風干し」と「塩引き鮭」なる2種類のラインナップがあった。その違いは?…同様の疑問を持ったらしきお客さんが店員さんに質問していた。回答に聞き耳を立てたところによると、味付けを変えてるっぽい。寒風干しブランドが甘め、塩引き鮭ブランドが昔ながらの塩辛さ。塩をすり込んで、寝かせてから水洗いして、寒風にさらして干す作り方は一緒。
ついでに新巻鮭との違いも解説されていたけど自分にはよくわからなかった。しっかり熟成させることと、凍るでも腐るでもなくちょうど良い塩梅の村上の寒風で干すことがポイントとみたが。
他にも鮭の酒浸しとか白子漬けとかの珍味系や鮭以外の魚加工品、地酒なども売っている。鮭の皮で作ったジャケットもありやしたぜ。
いよいよメインの鮭塩引き街道へ
お次は10分ほど歩いて、鮭塩引き街道のメイン会場となる通りへ。町家の風情を残す街道筋の家々をよく見ると、軒下に鮭が連なっているのがわかる。もう少し近くへ寄ってみましょう。
なるほど、確かに鮭だ。ここ村上は城下町であったので、鮭の干し方にも武家の文化が反映されているとのこと。頭を下にして吊るすのは首吊りを連想させるのを嫌ったためだとか。
腹を完全に切り開かずに真ん中らへんをつなげたままにしてあるのは切腹の連想回避。事情を知らなければ「わざわざ面倒な開き方をしているなあ」と誤解してしまう。口の下にかかっている木の札はよくわからん。人や学校の名前が書いてあったけど。
正直に申せば、花見時期の桜の名所みたいに見物客が列をなして歩いているのかと思ってたが、実際は全然いなくて拍子抜けした。でもそれが悪いとは言わない。混雑してるの好きじゃないんで。
また、ここでしか見られないであろう珍しい光景ではあるが、視界を埋め尽くす鮭の大群というほどの圧倒的な数ではないので、勝手に期待のハードルを上げないように。100万本のひまわり畑とかのイベントとは違うから、そこらへんは大人の対応でヨロシク。
たくさんの鮭が吊るされる「千年鮭 きっかわ」
続いて観光案内所で入手した地図を頼りに「千年鮭 きっかわ」へ移動。鮭製品を製造販売しているお店だ。中に入ると先述の永徳と同様に鮭関連のお土産が陳列されている。高級路線なのか、ちょっとお高い感じ。しかし当店にはまだ隠し玉があった。店の奥に「←見学こちら」の張り紙があって、そこから隣の間へ進むと…。
デターーー!!! 鮭がいっぱい。これぞ鮭の森。足元には塩漬けの鮭が詰められた樽。
空間内の鮭密度でいえば今旅の最高値を記録した。そして振り返ると伝統と格式がありそうな居間。観光用に整えたのでなく現役の居住空間だ。
こうして鮭づくしの雰囲気に圧倒されながら店を出た。結局なにも買わなくてすいません。
トイレの位置は要把握のこと
この後は吉川酒舗さんの町家造りの店内を見せていただくなどしつつ(なにも買わなくてすいません)、歩いて駅まで戻った。村上の町歩きでひとつ注意点をあげるとすれば、公衆トイレ。観光地図などで位置を確認しておこう。あちこちにあるわけではないし、商工会議所のように週末は閉じているところもあるからだ。
鮭の博物館「イヨボヤ会館」の見学
鮭だけじゃないミニ孵化場
翌日は晴れ。宿泊した瀬波ビューホテルの送迎車で村上駅へ送ってもらった後は、バスの時間が合わず、タクシーで再び「永徳 鮭乃蔵」へ。今度こそお土産を購入して、ひとまず旅の目的は完遂された。残った時間で近くのイヨボヤ会館を見学しに行った。村上では昔から鮭のことをイヨボヤと呼ぶ。当館は鮭に関する博物館である。大人600円。
順路に沿って最初の見どころはミニ孵化場。生育段階ごとに仕切られた稚魚や鮭の卵(はらこ)を見ることができる。他にもイワナ・ヤマメなどがいる。
村上の鮭の父・青砥武平治
さらにミニ水族館風のエリアを抜けて先へ進むと、江戸時代の村上藩士・青砥武平治のコーナーがあった。これがまた、この方なくして村上の鮭はない、というくらいの偉いお人なんですわ。詳細を語れるほどの知識はないんだけどね。鮭が生まれ故郷の川へ帰ってくることを発見し、三面川に分流を設ける「種川の制」によって、世界で初めて鮭の自然増殖システムを確立したんだとか。
スーパーマリオの無限増殖法を連想するね。武平治さんマジかっけー。しかし青砥武平治の子供が高砂武平治で孫が柴又武平治で曾孫が金町武平治、ってわけではない。もちろん印旛日本医大武平治なんていう子孫はいない。
川を泳ぐ鮭もしっかりチェック
それから長めの通路を通ったつきあたりには三面川分流を水槽に見立てた観察室がある。時期的には鮭の遡上シーズンのはずだ、と期待した通りに、鮭の泳ぐ姿を見ることができた。寒風干しに吊るされた鮭を見に来た旅行とはいえ、生きて泳ぐ姿を目にしたのもまた印象に残る体験だ。よく見ると結構うようよいるぞ。
いやー、なんだか知らんが、なんとなく得した気分だ。他に鮭の生態や史料の展示、お子様向け(?)ゲームコーナーまである。ひと通りまわって見学終了。
外へ出て、先ほど観察室で水中を見た川のある方へ歩いていくと、まもなく河川敷へ到達した。これが種川ってやつか。思ってたより小さいな。写真ではわからないが、川の中にたくさんの鮭が泳いでいた。池の鯉みたいな感じ。
鮭以外のテーマでも訪れたい村上
あとは駅まで歩いて戻って帰路についた。ところで塩引き鮭を見学したら食べてみたくなるのが人情である。町中に鮭料理の店がいくつもあるから、観光地図を頼りに食べ歩くのもいいだろう。我々も永徳鮭乃蔵の隣の悠流里を利用した。
それに村上のグルメは鮭だけじゃない。村上牛もある。観光面では笹川流れという海岸の景勝地もある。もし日程に余裕があって雪の季節でなければレンタカーで行ってただろう。今回は要望に沿って鮭塩引街道というワンテーマに注力したが、まだまだ楽しみが残されていそうな村上であった。
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