四万十川源流の渓谷を見下ろす露天風呂 - ホテル松葉川温泉

ホテル松葉川温泉
秋の四国旅行の3泊目は高知県四万十町の「ホテル松葉川温泉」。四万十川源流をなす支流のひとつ・日野地川の渓谷沿いに立つ山あいのホテルだ。評判が良さそうなので泊まってみた。

まわりの環境からすると秘湯の一軒宿的なポジションにも思えるが、ホテルそのものはわりと近代的で不便を感じるところはない。渓谷を見ながら入れる露天風呂がなかなかいい感じである。

今回は温泉目当てと周遊旅行の中継点として宿泊したため、ヒットアンドアウェイのような滞在だった。周辺は自然豊かで散策や登山ができるようだから、そういった要素も求める方には、さらに楽しみが広がるだろう。

ホテル松葉川温泉へのアクセス

旅の3日目、沈下橋をチェックしながら四万十川を河口から遡っていった我ら温泉班一行。窪川付近で県道322号へ入り北上していった。ただし一部区間では川を挟んで並走する県道19号の方を走った。そっちの方が道路状態が良くて走りやすい。

途中で一斗俵沈下橋を見学してこの日の観光メニューは終了。いよいよ本格的に松葉川温泉を目指す。ところどころで看板が出ているから、それに従えばいい。基本的には四万十川から分岐する日野地川に沿って進むことになる。

県道322を外れて山里の道を走るようになると、1車線の幅しかないから結構緊張する(自分は助手席に座ってただけだけど)。そんな道が数キロ続いた後に目的のホテル松葉川温泉が現れた。

なお、高知市方面から行く場合、当時は高知自動車道が窪川手前の四万十町中央ICまで開通していた。一方、翌朝に高知市へ向かった際は終点の一つ手前の四万十町東ICで高速に乗ったから、そういう行き方もありそう。

冒頭写真に示したホテル本館の前の敷地が駐車場になっている。


秘湯でありつつも近代的な館内

渓谷にかかる吊り橋

ホテルの隣には日帰り温泉施設が併設されていた。これがホテルの宿泊客も使う大浴場だった。ホテル本館2階の渡り通路からつながっている。
ホテル松葉川温泉 浴場棟
敷地の奥には赤い吊り橋が見えた(つづら橋)。付近一帯は「遊湯の里」と呼ばれているらしく、つづら橋を渡った先にも遊歩道が整備され、キャンプ場や桜の公園などがあるようだ。
つづら橋
つづら橋の上からみた渓谷下流側。橋は揺れるっちゃあ揺れる。
つづら橋 下流側
上流側はこちら。いかにも水がきれいそう。我々は時間の都合で深くは探検できなかった。時間があればあちこち散策してみるとよいだろう。
つづら橋 上流側

優雅にまったりできる部屋

さてチェックイン。案内された部屋は4階の8畳相当+広縁和室。古びてくたびれたようなところはなく、管理状態も十分で快適に過ごせる。シャワートイレ・洗面所あり。ホテルなのでユニット式というかバスルームに同居してるやつ。
ホテル松葉川温泉 客室
金庫と空の冷蔵庫あり。ジュースは2階、お酒は3階に自販機がある。WiFiは可能だったと思う。また、季節柄カメムシが発生しています・対処していますが追いつきません・窓は開けないでください、という注意書きがあった気がする。でもこの日は見なかった。

窓の外はベランダ風になっており、状況が許せば優雅にまったりできそう。見える景色は先ほど吊り橋の奥に見た緑豊かな山。見下ろすとホテルの庭の向こう、木々の間に川の流れがちらっと見える。
窓から見下ろした庭と渓流

日帰り温泉施設を兼ねる新しめの大浴場

二種類の源泉を提供

では温泉を体験しに行こう。エレベーターで2階へ下りて渡り通路へ。渓谷の方角を向いたマッサージチェアが置いてあった。
マッサージチェア
日帰り温泉施設にもなっている浴場棟へ移ると、休憩所があった。ここから階段を下りて1階に男湯女湯の入口がある。浴場棟はまだ新しくてきれいな感じ。もちろん宿泊客は何回でも自由に行っていい。
浴場棟の休憩室前
脱衣所はすでに複数人の気配あり。日帰り客もちょいちょい来るから当たり前か。とはいえ混んでるわけじゃない。窮屈な思いをする状況には一度もならなかった。

掲示された分析書を見ると、内湯と露天風呂で源泉が違うようだ。内湯は「アルカリ性単純硫黄冷鉱泉、低張性、アルカリ性、冷鉱泉」。露天は温泉法上の温泉ってやつで泉質名なし。フッ化物イオン・メタホウ酸・炭酸水素イオンの項をもって適合とのこと。

熱めの内湯メイン浴槽とぬるめの小浴槽

浴室内に洗い場は9名分。全然十分です。一番奥に8名サイズの内湯浴槽があった。段々畑のような形状の湯口から無色透明のお湯が流れ込んでいる。浸かってみるとやや熱めの適温。

浴槽内で手ですくったお湯には泉質名からイメージされる硫黄の匂いを感じなかった。循環・消毒はしていると思われ、若干の塩素臭がするのはまあしょうがない。ややヌルヌル・ヌメヌメとした感触には温泉らしさを感じる。

自分がぬる湯好きでもあるし、熱めの湯にそうそう長くは粘れない。そばにある3~4名サイズの小浴槽の方が気になって移動してみた。「四万十の湧水」とのパネルがあったから非温泉の沸かし湯である。

しかし温泉じゃないからと馬鹿にはできない。いい水を使っているし、なによりぬるい。水風呂というんじゃなくほんのり人肌の温度なのがいいね。クールダウン用として浴槽ローテーションの一角に加えたくなった。

なお、この浴槽に隣り合って1名サイズのジェットバスがある。

渓谷を望む、景色の良い露天風呂

浴室に入ってすぐ脇のところから露天風呂へ出られる。御影石と岩を組み合わせた10名サイズの四角い浴槽は屋根付き。視界を遮る目隠しの塀などは最小限に抑えられ、ちゃんと渓谷が見えるようになっていた。

お湯はこちらも無色透明。自分には感じられないくらいのレベルまで塩素臭が後退しているのは良い。お湯の中で微細な泡が行き場を求めて漂っている様が見受けられ、ときどき腕などに泡が付くことがある。

露天風呂の方はぬるくはないが熱くもない適温といったところで、そこそこ長く粘ることが可能だ。景色もいいし、ここはなかなか大したもんだ。

結局、滞在中に夕方2回・翌朝2回入った。珍しいことに夜は入らなかった。飲んで食べたらなんだかグッタリして「もういいや。寝よう」になってしまったのだった。


四万十のイメージにあった食事

食べごたえ十分の鰹と子持ち鮎に蹂躙された夕食

ホテル松葉川温泉の食事は朝夕とも1階の食事処で。朝と夕で同じテーブルに案内される。夕食のスターティングメンバーがこれ。前菜は前泊地・足摺テルメの夕食でも見た皿鉢料理的なスタイル。
ホテル松葉川温泉 夕食
お造りは見事なまでに鰹のタタキ。数が多い上、一つ一つがやたら分厚い。うひょーっと声には出さなくても高知へ来たぜと気分が盛り上がる。塩かポン酢でいただく。こりゃいけるわ。

続く米豚の生姜鍋までくるとだいぶお腹が膨れてくるが、予約したのは子持ち鮎プランである。満を持して子持ち鮎の塩焼きが登場。うひょーっ。
子持ち鮎
この子持ちっぷりが半端ない。身の部分のほとんどが卵じゃないかと思うくらいにびっちりと詰まっていた。食べても食べてもなくならねー。普通の鮎塩焼きで想定される倍の時間をかけたと思う。

おそろしいことにまだ天ぷらが控えていた。うわあもうお腹パンパンす。どうにかやっつけて締めのご飯はブランド米の仁井田米。満腹すぎておかわりできなかったのが悔やまれる。…いや待て、おかわりしたかもしれん。…が、たぶんしてないと思う。してないんじゃないかな。ま、ちょっと覚悟はしておけ。

さっぱりといただく朝食

朝はさっぱりと。品数と量は十分だ。鍋は湯豆腐だったかな。
ホテル松葉川温泉 朝食
甘露煮の魚が何かは正直わかりません。玉子は生だったので、なんとなくの気分で軽く溶いて鍋の中にぶち込んで玉子とじ湯豆腐にしてやった。

そういえば鰹のタタキを除くと、夜も朝も四万十のイメージに沿った山・川の食材が提供されていた。鰹も高知のイメージだし、さすがですな。今さらながら思い至った次第。


なんでか知らぬが昔から四万十川という名前にはロマンの香りがする。松葉川温泉はそんな勝手に抱いたロマンにもきっちり応えてくれる環境と雰囲気だし、それでいて不自由を感じるところもない設備とサービス。いいんじゃないでしょうか。


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