全国区の知名度と長い歴史を誇る道後温泉。一度は行ってみなければならないと思っていたところ、このたび念願叶って訪れることができた。数あるホテル・旅館の中から選んだ宿泊先は「大和屋本店」。
最初から大きな期待や思い入れがあったわけではない。西日本の温泉宿には疎いし。ちょっとお高いけど、せっかくだしまあいいか、くらいの軽い気持ちで予約した。…そしたら何ということでしょう、身の丈以上の良すぎるハイクラス旅館じゃないっすか。
客の要望を先回りするかのように各種の手を打ってあるのがすごい。風呂は広めでゆったり。食事も豪華で盛り上がる。加えて能舞台があるのにはびっくらこいた。
旅の初日、松山空港から大街道なる繁華街へ出て、松山城の見学などをこなした後に、大街道駅で道後温泉行きの路面電車に乗り込んだ。見ているとこんなポッポなレトロ車両も走っていた。坊っちゃん列車という別料金の観光便。乗ってみてぇ。
しかし我らが乗ったのは一般の21世紀型車両。で、終点の道後温泉駅に到着。
何気なく近くの観光案内所へ入ってみると、最近あちこちで見かける気がする温泉むすめのパネルが。ご当地のキャラは道後泉海ちゃん。21世紀型マドンナだ。お父さんが道後うらなりとか道後野だいこだったりしたら嫌だな。
駅から大和屋本店まではお土産屋などが並ぶアーケード街を通って徒歩5分くらい。すぐ近くにご当地の顔・有名な道後温泉本館がある。
ロビーをはじめとしてグレード感あふれる館内全般。客層もひと財産築いた悠々自適っぽいシニアが目立つ。こりゃあとんでもないところへ来ちまったぞ。我らが泊まっちゃっていいのか?!…伊香保のめくるめくホテル木暮で感じた戸惑いが蘇る。
館内のあちこちには陶磁器が飾ってあった。何も目利きはできないけど、これらも結構な骨董品とかなんじゃないの。キシリア様に届けてほしいわ。あれはいいものだ。
広縁にも余裕があるし、冷蔵庫のための専用区画はあるし、シャワートイレ・洗面エリアもゆったり。写真からわかる通り、和の洒落た雰囲気だし、こりゃまいった。言うまでもなく金庫ありで冷蔵庫には別途精算のドリンク・お酒。
浴衣は複数のサイズがあらかじめ置いてあった。いちいちサイズ変更をお願いしたり確認したりしなくていいので助かるね。
WiFiもばっちりだし、何の不自由もなく快適すぎる非日常感を味わえる。窓の外は温泉街で向かいのホテルなどが見える。びっくりしたのは、見下ろすと4階相当のところが能舞台になっていたこと。なんだぁあぁあ~?
17時半から30分間の能舞台体験イベントをやっているとのこと。窓からジロジロ見るわけにはいかないが一瞬チラ見した限りでは数名の参加者がいた模様。雅びすぎるぜ。
さすがだったのはタオルとバスタオルが積んであって、毎回新しいのを取って使えること。使い終わったタオルは返却箱へ。部屋に持ち帰って干しておく必要がないし、毎回手ぶらで入浴しに行ける。大変結構なり。
壁に貼ってある分析書には「アルカリ性単純温泉、低張性、アルカリ性、高温泉」とあった。
大浴槽は中央に岩を配したりして岩風呂的なムードを演出している。浴槽の縁だけでなく岩のそばにも並んでいくことで20名以上いけそうなサイズ。湯口から流れ込むお湯は無色透明。
浸かってみると適温。自分はぬる湯派なのでもっとぬるくてもいいが、万人受けするのはこの温度だろう。若干ヌルヌルするのはアルカリ性ゆえか。たぶん加水なしの循環・消毒ありだと思うんだけど塩素臭くはない。湯の花や泡付きなし。特徴薄めの道後の湯ながら、ただの沸かし湯じゃないなっていう浴感はある。
うーん、ここがぬるいととてもうれしいんだがなあ。ネット情報だとたしかにぬる湯槽という扱いになっているようだから、たまたまのコンディションだったのかしら。ぬるければ長湯したのになあ、惜しい。
続いて露天風呂へ。3名サイズの屋根付きで地下1階だけに眺望はない。外気で冷めちゃいけないと頑張って加温しているのか、はっきりと熱めだった。あつ湯好きの方はどうぞ。
ぬるくないから1回の入浴時間は短めに、回数を増やすことにして、夕方前半(夕方後半は道後温泉本館へ出撃)+夜+早朝+朝食後と計4回入った。最も混雑していたのが早朝だったのはシニア主体の宿ならでは。でもまあ大した混雑じゃない。いずれもゆったり入ることができたのは良い。
ところで我々が予約した夕食プランは「大洲ええモン御膳」。2018年西日本豪雨で大きな被害を受けた近隣の大洲市を応援する企画である。同市の食材・料理とともに、災害から復活した酒造のお酒「風の里」が1本付いてくる。
大洲といえば映画「男はつらいよ 寅次郎と殿様」(第19作)の舞台。伊予大洲城主&寅さんという意外性のある組み合わせから展開する喜劇だった。今回の旅で大洲に立ち寄ることはなかったが、寅さんを通じて地名に心当たりがあって親近感はあったので、食べて飲んで応援しようってわけだ。
お造りには期待通りに鯛があったし、刺身形態のサワラは珍しいかも。牛ロースと椎茸のパイ包み焼きなんていう和洋折衷的なのもあった。
ビールの後はいよいよ日本酒「風の里」を。ボトル1本あけるうちにすっかり酔ってしまい、写真を撮るのも忘れてしまったが、その後は焼魚がアマゴとか揚物が里芋御宝揚げとか、いずれも今まで体験してきたのとはちょっと毛色の違う料理ばかりで新鮮味があった。いいぞ大洲。
締めのご飯も大洲の麦味噌とひしおで作るいりこ味噌添えだって。デザートは大洲産の栗を使ったマロンウイスキー使用という念の入れよう。やるじゃない大洲。
鉄板で焼くのはじゃこ天だ。ほう、これが噂のじゃこ天か…いわゆる練り物ですな。さつま揚げとの違いを説明しろと言われても困るけど、そっち系のお味だった。魚肉感が強く残ってるかな、なんとなく。
あと緑色が勝ったみかんを見たらいかにも酸っぱそうで唾がたまってきた。実際はわりと甘くて(酸味がないとは言っていない)、白い筋を神経質に取らなくてもおいしくいただける。
大和屋本店。さすがですな。秘湯マニア・源泉かけ流しファーストな方にはアレだが、そういう人はそもそも道後に来ないと思われる。当宿は滞在中の全方位的な心地よさという総合力に長けているので、万事気持ちよく過ごしたい方には高い満足感を得られると思う。
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最初から大きな期待や思い入れがあったわけではない。西日本の温泉宿には疎いし。ちょっとお高いけど、せっかくだしまあいいか、くらいの軽い気持ちで予約した。…そしたら何ということでしょう、身の丈以上の良すぎるハイクラス旅館じゃないっすか。
客の要望を先回りするかのように各種の手を打ってあるのがすごい。風呂は広めでゆったり。食事も豪華で盛り上がる。加えて能舞台があるのにはびっくらこいた。
道後温泉「大和屋本店」へのアクセス
今回の四国グループ旅行の主目的は別のところにあり、本来なら道後温泉に泊まる必要はない。ただ主目的の前に四国の温泉を体験しておきたいという、温泉班とでも言うべき小グループが先行して四国入りしていて、自分もそのうちの一人だった。旅の初日、松山空港から大街道なる繁華街へ出て、松山城の見学などをこなした後に、大街道駅で道後温泉行きの路面電車に乗り込んだ。見ているとこんなポッポなレトロ車両も走っていた。坊っちゃん列車という別料金の観光便。乗ってみてぇ。
しかし我らが乗ったのは一般の21世紀型車両。で、終点の道後温泉駅に到着。
何気なく近くの観光案内所へ入ってみると、最近あちこちで見かける気がする温泉むすめのパネルが。ご当地のキャラは道後泉海ちゃん。21世紀型マドンナだ。お父さんが道後うらなりとか道後野だいこだったりしたら嫌だな。
駅から大和屋本店まではお土産屋などが並ぶアーケード街を通って徒歩5分くらい。すぐ近くにご当地の顔・有名な道後温泉本館がある。
グレードの高さを誇る館内
意図せずハイクラス旅館に来ちゃいました
フロントへ続く通路の時点でもう「ここは並みの旅館ではない」とドキドキしてきた。さり気ないお香とともにハイクラスの匂いがぷんぷん。ロビーをはじめとしてグレード感あふれる館内全般。客層もひと財産築いた悠々自適っぽいシニアが目立つ。こりゃあとんでもないところへ来ちまったぞ。我らが泊まっちゃっていいのか?!…伊香保のめくるめくホテル木暮で感じた戸惑いが蘇る。
館内のあちこちには陶磁器が飾ってあった。何も目利きはできないけど、これらも結構な骨董品とかなんじゃないの。キシリア様に届けてほしいわ。あれはいいものだ。
なんの文句もない完璧すぎる部屋
…ちょっと落ち着こう。案内された部屋は5階の10畳+広縁和室。これでも最下階の客室だ。10畳というだけでも十分な広さだが、数字以上に広く感じるのは1畳あたりが広いんじゃないかな。京間っていうやつか。広縁にも余裕があるし、冷蔵庫のための専用区画はあるし、シャワートイレ・洗面エリアもゆったり。写真からわかる通り、和の洒落た雰囲気だし、こりゃまいった。言うまでもなく金庫ありで冷蔵庫には別途精算のドリンク・お酒。
浴衣は複数のサイズがあらかじめ置いてあった。いちいちサイズ変更をお願いしたり確認したりしなくていいので助かるね。
WiFiもばっちりだし、何の不自由もなく快適すぎる非日常感を味わえる。窓の外は温泉街で向かいのホテルなどが見える。びっくりしたのは、見下ろすと4階相当のところが能舞台になっていたこと。なんだぁあぁあ~?
17時半から30分間の能舞台体験イベントをやっているとのこと。窓からジロジロ見るわけにはいかないが一瞬チラ見した限りでは数名の参加者がいた模様。雅びすぎるぜ。
雅びな旅館の雅びな大浴場
さすがのタオルサービス
大和屋本店の大浴場は地下1階にある。男湯女湯の入れ替えはなかった。脱衣所には貴重品ロッカーと服をしまう大きめのロッカーがある。鍵なしの脱衣かごも利用可能。さすがだったのはタオルとバスタオルが積んであって、毎回新しいのを取って使えること。使い終わったタオルは返却箱へ。部屋に持ち帰って干しておく必要がないし、毎回手ぶらで入浴しに行ける。大変結構なり。
壁に貼ってある分析書には「アルカリ性単純温泉、低張性、アルカリ性、高温泉」とあった。
万人向け・ゆったり入れる内湯大浴槽
浴室は当然のごとく古びてはおらず清潔感もあり、万人が安心して利用できる。洗い場は10名分。小浴槽と大浴槽からなる内湯と露天風呂が見える。大浴槽は中央に岩を配したりして岩風呂的なムードを演出している。浴槽の縁だけでなく岩のそばにも並んでいくことで20名以上いけそうなサイズ。湯口から流れ込むお湯は無色透明。
浸かってみると適温。自分はぬる湯派なのでもっとぬるくてもいいが、万人受けするのはこの温度だろう。若干ヌルヌルするのはアルカリ性ゆえか。たぶん加水なしの循環・消毒ありだと思うんだけど塩素臭くはない。湯の花や泡付きなし。特徴薄めの道後の湯ながら、ただの沸かし湯じゃないなっていう浴感はある。
ぬるめ(であるはず)の小浴槽と熱めの露天風呂
続いて隣の5名サイズの小浴槽へ。こちらは湯口なし。大浴槽との仕切りを越えてお湯の行き来があるだけ。構造からするとぬるくなりやすいはず。しかし浸かってみると大浴槽と変わらない温度だった。うーん、ここがぬるいととてもうれしいんだがなあ。ネット情報だとたしかにぬる湯槽という扱いになっているようだから、たまたまのコンディションだったのかしら。ぬるければ長湯したのになあ、惜しい。
続いて露天風呂へ。3名サイズの屋根付きで地下1階だけに眺望はない。外気で冷めちゃいけないと頑張って加温しているのか、はっきりと熱めだった。あつ湯好きの方はどうぞ。
ぬるくないから1回の入浴時間は短めに、回数を増やすことにして、夕方前半(夕方後半は道後温泉本館へ出撃)+夜+早朝+朝食後と計4回入った。最も混雑していたのが早朝だったのはシニア主体の宿ならでは。でもまあ大した混雑じゃない。いずれもゆったり入ることができたのは良い。
伊予を味わい尽くす食事
大洲を応援する夕食プラン
大和屋本店の食事は、我々のプランだと朝夕とも4階レストランで。部屋ごとに決まった席へ案内される。4階といえば先述の能舞台がある。てことは、と予想した通り、レストランの全面ガラス越しに能の舞いを眺める趣向になっていた。ところで我々が予約した夕食プランは「大洲ええモン御膳」。2018年西日本豪雨で大きな被害を受けた近隣の大洲市を応援する企画である。同市の食材・料理とともに、災害から復活した酒造のお酒「風の里」が1本付いてくる。
大洲といえば映画「男はつらいよ 寅次郎と殿様」(第19作)の舞台。伊予大洲城主&寅さんという意外性のある組み合わせから展開する喜劇だった。今回の旅で大洲に立ち寄ることはなかったが、寅さんを通じて地名に心当たりがあって親近感はあったので、食べて飲んで応援しようってわけだ。
大洲の味づくしの夕食
夕食のスターティングメンバーはこれ。洋食のフルコースぽいシャレオツな感じで提供される。さすが。前菜に鱧の南蛮漬けがあるぞ。お造りには期待通りに鯛があったし、刺身形態のサワラは珍しいかも。牛ロースと椎茸のパイ包み焼きなんていう和洋折衷的なのもあった。
ビールの後はいよいよ日本酒「風の里」を。ボトル1本あけるうちにすっかり酔ってしまい、写真を撮るのも忘れてしまったが、その後は焼魚がアマゴとか揚物が里芋御宝揚げとか、いずれも今まで体験してきたのとはちょっと毛色の違う料理ばかりで新鮮味があった。いいぞ大洲。
締めのご飯も大洲の麦味噌とひしおで作るいりこ味噌添えだって。デザートは大洲産の栗を使ったマロンウイスキー使用という念の入れよう。やるじゃない大洲。
じゃこ天を味わえる朝食
朝食は同じ席で和定食。お粥の他に頼めば白いご飯も出してもらえる。鉄板で焼くのはじゃこ天だ。ほう、これが噂のじゃこ天か…いわゆる練り物ですな。さつま揚げとの違いを説明しろと言われても困るけど、そっち系のお味だった。魚肉感が強く残ってるかな、なんとなく。
あと緑色が勝ったみかんを見たらいかにも酸っぱそうで唾がたまってきた。実際はわりと甘くて(酸味がないとは言っていない)、白い筋を神経質に取らなくてもおいしくいただける。
大和屋本店。さすがですな。秘湯マニア・源泉かけ流しファーストな方にはアレだが、そういう人はそもそも道後に来ないと思われる。当宿は滞在中の全方位的な心地よさという総合力に長けているので、万事気持ちよく過ごしたい方には高い満足感を得られると思う。
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