乳頭温泉の鶴の湯といえば泣く子も黙る人気の秘湯宿。あまりに人気なのでそう簡単に予約は取れない(と思う)。そんな鶴の湯から2キロほど離れたところに「別館 山の宿」という姉妹館がある。今回のグループ旅行ではそちらへお邪魔することにした。
森の中にひっそりと佇む一軒宿で、静かな秘湯感を十二分に味わえる。喧騒を離れて落ち着いた時間をゆっくり過ごしたい大人のための宿だ。
温泉は鶴の湯本館から引いてきてるから文句なし。しかもすべての風呂が貸し切り制。加えてみんなの憧れ・本館の風呂にも無料で入れちゃう。まあ、自分は本館へは行かずじまいだったんですけどね…。
もっと手前の「アルパこまくさ」で下車すれば迎えの車が来てくれる。※田沢湖駅に着いた時点で連絡して欲しいそうだ。
ちなみにアルパこまくさの建物は火山防災ステーションなのだが、秋田駒ヶ岳の自然を紹介する展示館にもなっているし、日帰り温泉もやっている。田沢湖を見下ろす露天風呂が売りだ。
アルパこまくさを過ぎて、先ほどの「鶴の湯温泉入口」バス停から先は県道を外れて狭い林道へ入っていく。対向車来るなよと祈りつつ、おそるおそる進んでいった。
どんどん森が深くなる中を1キロあまり走り、先達川にかかる橋を渡ると、当館の敷地が現れた。ふー、どうにか無事に着いたぜ。車から外へ出ると羽虫がいっぱい。もうそういう季節か。
外観に違わず内部も名前の通りに山の宿の風情たっぷり。ここは日本秘湯を守る会の会員宿であり、自分は当会のスタンプ帳を持っているのだが、今回はスタンプ押印なしの一般のプランで予約していた。たしか予算の都合だったっけかな。
案内された部屋は8畳和室+大きめの広縁。シャワートイレに洗面所、内風呂が付いていて、自己申告精算のドリンクやビールが入った冷蔵庫が置いてある。ウェルカムお菓子の「つるまん」(鶴の湯まんじゅうの略?)がやたらうまい。
広縁側にはなんと掘りごたつがあった。当時はゴールデンウィークと梅雨の間に挟まれた時期、あたりの雪はすっかり消えていたけど、話を聞くとつい最近まで雪があったとのこと。へー。さすが秋田の山の中。
そんな場所だから冷房はありません。テレビもない。あやうく吉幾三の世界だが、静かにこの環境を味わって欲しいってことだろう。かわりにWiFi完備でネットはできる。あと金庫あり。でもって窓の外はこんな景色。
敷地が林道に面するところはミズバショウの群生地になっている。トレードマークの白い花…正確には仏炎苞…をいくらかでも見ることができて良かった。ここだけは少し雪が残っている。
しかし緑の葉っぱが大きすぎないか。白いアレを覆い隠さんばかりの勢いだ。などと感想を言いあって散歩終了。
別館の宿泊客は本館の風呂にも入れる。朝から夜までわりと幅広くOKだから、一般の日帰り客を受け入れていない時間帯を狙うと混雑や騒々しさを回避できて、より豊かな気持ちで入れるんじゃないかと思う。
本館まで2キロ近く離れているから歩いていくのは厳しい。マイカーで来たなら車で行ってもいいし、1時間に1本程度で巡回している送迎バスに乗ってもいい。秘湯の雄ともいえる露天風呂は超おすすめだ。
自分が2年前に泊まった駒ヶ岳温泉も鶴の湯系列の宿で、そこでやってた鶴の湯ナイトツアーに参加して本館露天風呂を一応体験ずみである。あわよくば今回も、と狙っていたものの「そこまでしなくていいんじゃない」的な団体行動の流れであえなく頓挫。※今回のメンバーはとくに温泉通というわけではない。鶴の湯の名前も知らなかったし。
かつては浴場へ行くためにいったん外へ出る必要があったようだ。そのための出入口は現在「浴場は移転しました」と張り紙されて締め切られている。そばのガラス窓から外に目を向けると小屋がふたつ。あれが旧湯小屋なんだろうか。
現在の浴場は食堂脇の廊下でつながっていて外へ出ることなく移動できる。廊下から先は壁の具合なんかを見るとまだまだ新しい感じ。近年作られたようだった。突き当たりに湯あがり休憩処あり。
でも中から鍵をかけるのに手にした鍵は使わないんだけどね。って何が言いたいのかわからないでしょうな。詳しくは現地でどうぞ。予約制じゃないから気楽ではあるけど、実際にボードまでてくてく歩いて行かないと空きがあるのか埋まってるのかわからないのが痛し痒し。
我々が最初に入ったのは内湯東。脱衣所に分析書はなく、上述の休憩処に貼ってあった。「含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物・炭酸水素塩泉(硫化水素型)」と書かれていた。PH6.6だから中性の部類か。
浴室はそんなに広くない。2つのカランに2~3名規模の木の浴槽があるのみ。用意されているシャンプーやボディソープは日本秘湯を守る会の宿でよく見かける「秘湯くまざさ」シリーズだった。
浴槽の木の縁は、温泉の析出物が付着して黄みがかった白い層でコーティングされており、もはや木とはいえないコンクリ素材のようになっていた。
内湯といえども大きく取られた窓の向こうは柵や塀がなく、森の中を流れる川がよく見える。実質的な景観は露天風呂に準ずるものがあって結構なり。
翌朝に入った内湯西も同じつくりであった。
灯りのおかげでまったくの暗闇ではないが、昼間だったら内湯から見えた景色をもっと臨場感を持って受け取っただろう。その点を差し引いても大変結構な、スペシャル感のある空間だった。やってくれますな。
なお露天風呂にカランはないので洗い場を求める方は内湯へどうぞ。
山菜といぶりがっこしかないって? そうですけどそれが何か? これらの山菜が想像を突き抜けてうまかったのだ。もっと苦いとか青臭いとか味がしないもんだと思ってたんだけど全然違った。いきなりの先制パンチ。
もちろん天ぷら・刺身など他の料理も次々出てくる。八幡平ポークの炭火焼きやイワナは囲炉裏で仕上げる趣向になっている。同行メンバーもお喜び。
この時点でなんだかもうお腹いっぱいなんですけど…。しかし鶴の湯といえばこれを抜きには語れない、山の芋鍋キターーー! 大きな鍋を囲炉裏の自在鉤に吊るす演出がたまらない。
いやもう本当に胃袋の限界っす。しかしあきたこまちのご飯と稲庭うどん風自家製麺があると聞いてはスルーできない。久しぶりにチャクラを開いて胃袋を覚醒させ、ひと通り食べきった。
比内地鶏の生卵を卵かけご飯にして食べたような気がする。しかも1名が卵いらないってことで譲ってもらい2個入り。二倍ニバーイ(CV:高見山)。贅沢しちゃった。囲炉裏で焼く魚は鮎の一夜干しだったと思う。
きのこたっぷりの味噌汁もまた良し。きのこだけは鍋をさらって全部捕捉したはず。
キャッチコピー的に表現するなら「上質な大人の時間を味わう宿」だと思う。当館に泊まったからといって上質な大人になるわけじゃないけど、気分だけは上質な大人になったつもりで山の宿を後にした。
森の中にひっそりと佇む一軒宿で、静かな秘湯感を十二分に味わえる。喧騒を離れて落ち着いた時間をゆっくり過ごしたい大人のための宿だ。
温泉は鶴の湯本館から引いてきてるから文句なし。しかもすべての風呂が貸し切り制。加えてみんなの憧れ・本館の風呂にも無料で入れちゃう。まあ、自分は本館へは行かずじまいだったんですけどね…。
鶴の湯別館 山の宿へのアクセス
「アルパこまくさ」への送迎あり
別館山の宿へ公共交通機関で行くならJR田沢湖駅から乳頭温泉行きのバスに乗る。「鶴の湯温泉入口」という停留所があるけど下車すべきはそこじゃない。バス停から当館まで徒歩は無謀、林道をひいこらハイキングすることになってしまう。もっと手前の「アルパこまくさ」で下車すれば迎えの車が来てくれる。※田沢湖駅に着いた時点で連絡して欲しいそうだ。
ちなみにアルパこまくさの建物は火山防災ステーションなのだが、秋田駒ヶ岳の自然を紹介する展示館にもなっているし、日帰り温泉もやっている。田沢湖を見下ろす露天風呂が売りだ。
最後は狭い林道を行く
実際の我々は前泊地の新玉川温泉からレンタカーで田沢湖・角館観光を経て乳頭温泉郷を目指した。途中通過した水沢温泉郷は2年前に一人旅で泊まった駒ヶ岳温泉のあるあたりだ。懐かしいなあ。アルパこまくさを過ぎて、先ほどの「鶴の湯温泉入口」バス停から先は県道を外れて狭い林道へ入っていく。対向車来るなよと祈りつつ、おそるおそる進んでいった。
どんどん森が深くなる中を1キロあまり走り、先達川にかかる橋を渡ると、当館の敷地が現れた。ふー、どうにか無事に着いたぜ。車から外へ出ると羽虫がいっぱい。もうそういう季節か。
秘湯感たっぷりの館内と周辺環境
掘りごたつ完備の部屋
ではチェックイン。さっそく玄関のところに熊が…。外観に違わず内部も名前の通りに山の宿の風情たっぷり。ここは日本秘湯を守る会の会員宿であり、自分は当会のスタンプ帳を持っているのだが、今回はスタンプ押印なしの一般のプランで予約していた。たしか予算の都合だったっけかな。
案内された部屋は8畳和室+大きめの広縁。シャワートイレに洗面所、内風呂が付いていて、自己申告精算のドリンクやビールが入った冷蔵庫が置いてある。ウェルカムお菓子の「つるまん」(鶴の湯まんじゅうの略?)がやたらうまい。
広縁側にはなんと掘りごたつがあった。当時はゴールデンウィークと梅雨の間に挟まれた時期、あたりの雪はすっかり消えていたけど、話を聞くとつい最近まで雪があったとのこと。へー。さすが秋田の山の中。
そんな場所だから冷房はありません。テレビもない。あやうく吉幾三の世界だが、静かにこの環境を味わって欲しいってことだろう。かわりにWiFi完備でネットはできる。あと金庫あり。でもって窓の外はこんな景色。
すぐ近くにミズバショウの群生地あり
夕方の風呂の後にちょっと散歩してみた。母屋の隣になにやら風格ある茅葺屋根の建物が。あれも宿泊棟なのかな。敷地が林道に面するところはミズバショウの群生地になっている。トレードマークの白い花…正確には仏炎苞…をいくらかでも見ることができて良かった。ここだけは少し雪が残っている。
しかし緑の葉っぱが大きすぎないか。白いアレを覆い隠さんばかりの勢いだ。などと感想を言いあって散歩終了。
さすがの上質な白濁硫黄泉
鶴の湯本館の入浴について
当館のお風呂について語る前に鶴の湯本館についてちょっとコメント。別館の宿泊客は本館の風呂にも入れる。朝から夜までわりと幅広くOKだから、一般の日帰り客を受け入れていない時間帯を狙うと混雑や騒々しさを回避できて、より豊かな気持ちで入れるんじゃないかと思う。
本館まで2キロ近く離れているから歩いていくのは厳しい。マイカーで来たなら車で行ってもいいし、1時間に1本程度で巡回している送迎バスに乗ってもいい。秘湯の雄ともいえる露天風呂は超おすすめだ。
自分が2年前に泊まった駒ヶ岳温泉も鶴の湯系列の宿で、そこでやってた鶴の湯ナイトツアーに参加して本館露天風呂を一応体験ずみである。あわよくば今回も、と狙っていたものの「そこまでしなくていいんじゃない」的な団体行動の流れであえなく頓挫。※今回のメンバーはとくに温泉通というわけではない。鶴の湯の名前も知らなかったし。
新たに移転した? 浴場エリア
でも大丈夫。別館の風呂も負けてはいない。温泉そのものは本館から引いてきてるうえ、貸し切りで楽しめる。もともとは内湯2+露天2の計4種類あったようだが、露天の片方は不調により閉鎖されており、計3種類を利用できた。かつては浴場へ行くためにいったん外へ出る必要があったようだ。そのための出入口は現在「浴場は移転しました」と張り紙されて締め切られている。そばのガラス窓から外に目を向けると小屋がふたつ。あれが旧湯小屋なんだろうか。
現在の浴場は食堂脇の廊下でつながっていて外へ出ることなく移動できる。廊下から先は壁の具合なんかを見るとまだまだ新しい感じ。近年作られたようだった。突き当たりに湯あがり休憩処あり。
貸し切りで入る3つの風呂
3つの風呂の名前は失念してしまったが、「内湯東」「内湯西」「露天」としておこう。休憩処の前に鍵をぶら下げるボードがあって、鍵の現物がない風呂は誰かが利用中。鍵がある風呂は利用可能で、その鍵を持って対応する脱衣所へ入り、中から鍵をかける方式。でも中から鍵をかけるのに手にした鍵は使わないんだけどね。って何が言いたいのかわからないでしょうな。詳しくは現地でどうぞ。予約制じゃないから気楽ではあるけど、実際にボードまでてくてく歩いて行かないと空きがあるのか埋まってるのかわからないのが痛し痒し。
我々が最初に入ったのは内湯東。脱衣所に分析書はなく、上述の休憩処に貼ってあった。「含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物・炭酸水素塩泉(硫化水素型)」と書かれていた。PH6.6だから中性の部類か。
浴室はそんなに広くない。2つのカランに2~3名規模の木の浴槽があるのみ。用意されているシャンプーやボディソープは日本秘湯を守る会の宿でよく見かける「秘湯くまざさ」シリーズだった。
露天風呂並みに景色がよく見える内湯
では入湯。青白く濁ったお湯は万人向けの適温。思ったほどタマゴ臭はきつくない。匂いの個性が強すぎるよりもこれくらいマイルドなのを好む人も多いだろうね。感触はヌルヌルしていなくてむしろキシキシ感がある。ただし床にオーバーフローしたお湯の上を歩くと相応の滑りがあるから注意。浴槽の木の縁は、温泉の析出物が付着して黄みがかった白い層でコーティングされており、もはや木とはいえないコンクリ素材のようになっていた。
内湯といえども大きく取られた窓の向こうは柵や塀がなく、森の中を流れる川がよく見える。実質的な景観は露天風呂に準ずるものがあって結構なり。
翌朝に入った内湯西も同じつくりであった。
空いていれば狙いたい露天風呂
夜は露天風呂へ行ってみた。そこに待っていたのは2名規模の岩風呂。湯小屋の外壁に取り付けられた電灯の強い光で照らされている。湯口から注がれるお湯の特徴は他と同じ。ふぃー、効くー、と思わず声が出そうになる浴感は文句なし。いやー、いいねー。灯りのおかげでまったくの暗闇ではないが、昼間だったら内湯から見えた景色をもっと臨場感を持って受け取っただろう。その点を差し引いても大変結構な、スペシャル感のある空間だった。やってくれますな。
なお露天風呂にカランはないので洗い場を求める方は内湯へどうぞ。
囲炉裏端で楽しむ名物たくさんの食事
夕食は山の芋鍋キターーー!
別館山の宿の食事は朝夕とも食事処で。少なくとも我々の予約したプランでは囲炉裏端が食事場所になっていた。こんなの初めてだ。夕食のスターティングメンバーがこれ。山菜といぶりがっこしかないって? そうですけどそれが何か? これらの山菜が想像を突き抜けてうまかったのだ。もっと苦いとか青臭いとか味がしないもんだと思ってたんだけど全然違った。いきなりの先制パンチ。
もちろん天ぷら・刺身など他の料理も次々出てくる。八幡平ポークの炭火焼きやイワナは囲炉裏で仕上げる趣向になっている。同行メンバーもお喜び。
この時点でなんだかもうお腹いっぱいなんですけど…。しかし鶴の湯といえばこれを抜きには語れない、山の芋鍋キターーー! 大きな鍋を囲炉裏の自在鉤に吊るす演出がたまらない。
いやもう本当に胃袋の限界っす。しかしあきたこまちのご飯と稲庭うどん風自家製麺があると聞いてはスルーできない。久しぶりにチャクラを開いて胃袋を覚醒させ、ひと通り食べきった。
比内地鶏の生卵が贅沢な朝食
朝食も前夜と同じ囲炉裏を囲んでいただく。比内地鶏の生卵を卵かけご飯にして食べたような気がする。しかも1名が卵いらないってことで譲ってもらい2個入り。二倍ニバーイ(CV:高見山)。贅沢しちゃった。囲炉裏で焼く魚は鮎の一夜干しだったと思う。
きのこたっぷりの味噌汁もまた良し。きのこだけは鍋をさらって全部捕捉したはず。
上質な大人の時間を味わう宿
鶴の湯別館山の宿、さすがです。自分だけの一人旅だと、憧れはあってもなかなか泊まってみる決心がつかなかっただろうから(つねに一人泊OKではないようだし)、今回ちょうどよい機会であった。キャッチコピー的に表現するなら「上質な大人の時間を味わう宿」だと思う。当館に泊まったからといって上質な大人になるわけじゃないけど、気分だけは上質な大人になったつもりで山の宿を後にした。