新潟県の新津温泉。温泉ファンでその名を知らぬ者はいない、というほどの強烈な個性を持つ。簡単に言えば石油のニオイがする温泉なのである。難しく言っても石油くさい。
そんな温泉が本当にこの世に存在するの? すごく興味を持って、いつか行ってみたいと思っていたものの、他の観光地を差し置いて新津温泉目的の旅を許容してくれそうな人は周囲にいない。グループ旅行の立ち寄りで体験する可能性はゼロだった。
ならば一人旅で実現させるしかない。梅雨の真っ只中になぜかふらっと新潟へ行くことになったので、やるなら今しかねぇという黒板五郎さん(富良野市・自由業)の教えに従って、未知の世界への扉を開いたのだった。
新潟県といえば中越地方の貝掛温泉・栃尾又温泉の二大巨頭の誘引力が強くて、他の温泉地へ行く機会をなかなか持てなかった。そこで今回は意識して下越地方まで突き抜けることにした。
てことは、もしかして、あの伝説の新津温泉に立ち寄れるのでは?…もしかしてアタックチャンス来ちゃった?…そう、スーパーひとし君を出すなら今しかない。北の国から黒板五郎の「やるなら今しかねぇ」が聞こえてくるような気がした。
遅い動き出しをカバーするため、普通列車や高速バスで安くあげるのはあきらめて新幹線を利用。さすがに速い。さくっと長岡に到着。在来線に乗り換えて新津に着いた時点で夕方までまだまだ余裕がある。
天気予報の通り、関東では久しく見なかった青空が目に入る。晴れやかな気分で新津駅を出て歩き出した。
人通りは少なく、花壇が整備されていたりして散歩気分でリラックスできる。やがてベルシティ新津なるショッピングセンターの建物が見えてくる。
そしたらベルシティ新津の裏手の駐車場へ入り込むべし。下の写真の場所まで来たら右手の階段を上がればOK。
駐車場の先はこのようになっている。
少しだけまっすぐ行ってからガードレールのある右斜めの道へ。最後は砂利の駐車場になって、突きあたりの建物が新津温泉だ(上の写真だと右奥に見える建物)。
わかりやすさを優先するなら、川のやや手前で右折して商店街通り経由でベルシティ新津の表口を目指すのがいいかもしれない。そこから回り込むように進めば、下のようなわかりやすい温泉入口に着くはずだ。
入ってすぐに右へ。まるで古い自炊湯治宿のような風情の廊下を少し進んだところでまた右へ折れる。一番奥の突きあたりが男湯の入口だ。扉の向こうが脱衣所で、もちろん鍵付きロッカーだの脱衣カゴなんてものはなく、四角く区切られた木の棚があるだけ。
しかしトイレはきれいにリフォームされているし、ただの昔ながらそのままってわけじゃなく、手を入れるべきところは入れてある。失礼ながらおみそれしました。壁に貼られた分析書には「ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉、弱アルカリ性、高張性、高温泉」とあった。高張性かあ、効きそう。しかも源泉かけ流し。
脱衣所と浴室を隔てる扉はガラス張りなので早い段階で中の様子はわかる。先客は2名だった。芋洗いでなくてよかったー。
洗い場は3名分。ただし、うち2箇所は水の蛇口しかない様子で、手前の1箇所だけに温泉が出てくる蛇口が追加されているように見える。いずれもシャワーは付いてないしシャンプーや石鹸の類も置いてない。
とりあえず手前の洗い場で丁寧にかけ湯をしたが、蛇口から出てくるお湯がもうすでにくさい。温度調節のために別の蛇口から水を加えていてもくさい。
浸かってみるとやや熱め。残念ながら自分の好みのレンジからは外れている。それ以外はわりといい感じで、「石油だー、うぇぇー」というようなものではない。
ベトベトとかドロドロといった感触はなく、アルカリ泉特有の軽いヌルヌル感が前面に出ている。光の加減で湯の表面に油膜が見えたりするけど、こういう温泉はたまにある。泡付きや湯の花はとくに見られなかった。
石油を連想させるのはとにかくニオイだ。室内にはモワーッと石油臭が漂い、お湯をすくって鼻を近づけるとまた違ったテイストの、なんとも表現し難い石油臭がする。刺激臭だからそのうちめまいや胸焼けがしてくるんじゃないかとの心配をよそに、意外と長居できた。換気はしっかりしているのかも。
そのパイプのそばにコップが置いてあった。もしかして飲泉できるのか?…よくわからんので湯口から出てくるお湯をコップに受けて、口に含んでから飲まずにペッと吐き出した。
後味がすんごい塩辛いしタマゴの風味が強い。すぐに吐き出したせいか石油の刺激臭はほとんど感じなかった。まあとにかく塩辛い。
なるほど、これが新津温泉か。たしかに噂通りの石油臭だった。こういうお湯が本当に世の中に存在して、しかも普通に浸かることができちゃうなんてね。湯あがりはなかなか汗が引かない。さらに時間が経つと、ベタつくどころかむしろサラサラ感のある肌になった。最後まで意外性のある温泉だ。
新津駅へ歩いて戻りながら、何度も気になって腕に鼻をくっつけてクンクンしてみた。うわあー、石油くせえ。でもあえて接近して嗅いでみたからであって、周囲にプ~ンと発散させているわけじゃなかろう。きっと大丈夫だ。たぶん。
ニオイが服に移ることを気にする方は、2軍の安Tシャツなど、ある意味「どう転んでもいい」のを着ていくと良い。タオルも使い古して「今回で引退させてもいい」やつを選んで持っていくことをおすすめする。
地元の常連客が毎度そんな準備をして行くとは思えないし、気分の問題なんでしょうけどね。
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そんな温泉が本当にこの世に存在するの? すごく興味を持って、いつか行ってみたいと思っていたものの、他の観光地を差し置いて新津温泉目的の旅を許容してくれそうな人は周囲にいない。グループ旅行の立ち寄りで体験する可能性はゼロだった。
ならば一人旅で実現させるしかない。梅雨の真っ只中になぜかふらっと新潟へ行くことになったので、やるなら今しかねぇという黒板五郎さん(富良野市・自由業)の教えに従って、未知の世界への扉を開いたのだった。
新津温泉へのアクセス
「梅雨からの逃避行」が導いた新津温泉
前回の温泉旅行からはや1ヶ月。そろそろ温活したいんですけど、梅雨の真っ只中で来る日も来る日も雨雨雨雨曇雨、そしてまた雨雨権藤雨権藤。天気を気にしてたらまったく身動き取れない。とにかく関東・静岡・山梨を離れないとダメだ。そこで少し視野を広げてみたら、ある週末に日本海側なら晴れることがわかった。じゃあ新潟に行ってみるか。新潟県といえば中越地方の貝掛温泉・栃尾又温泉の二大巨頭の誘引力が強くて、他の温泉地へ行く機会をなかなか持てなかった。そこで今回は意識して下越地方まで突き抜けることにした。
てことは、もしかして、あの伝説の新津温泉に立ち寄れるのでは?…もしかしてアタックチャンス来ちゃった?…そう、スーパーひとし君を出すなら今しかない。北の国から黒板五郎の「やるなら今しかねぇ」が聞こえてくるような気がした。
自分史上最大の緊急発進
今回ほどの急展開は他に例がない。なにせ新潟行きを決めたのが出発当日の朝。朝ドラでなっちゃんを見た後だった。2日目の計画は旅の途中で立てることにして、初日の大まかな計画と宿泊先を決めて予約を入れ、大急ぎで荷物をまとめて家を出た。遅い動き出しをカバーするため、普通列車や高速バスで安くあげるのはあきらめて新幹線を利用。さすがに速い。さくっと長岡に到着。在来線に乗り換えて新津に着いた時点で夕方までまだまだ余裕がある。
天気予報の通り、関東では久しく見なかった青空が目に入る。晴れやかな気分で新津駅を出て歩き出した。
新津温泉までの道
新津駅から新津温泉までは徒歩15分。まず駅東口からのびるメインの通りをまっすぐ行くと、新津川にぶつかる。そこを右折するように川沿いの遊歩道へ入っていく。人通りは少なく、花壇が整備されていたりして散歩気分でリラックスできる。やがてベルシティ新津なるショッピングセンターの建物が見えてくる。
そしたらベルシティ新津の裏手の駐車場へ入り込むべし。下の写真の場所まで来たら右手の階段を上がればOK。
駐車場の先はこのようになっている。
少しだけまっすぐ行ってからガードレールのある右斜めの道へ。最後は砂利の駐車場になって、突きあたりの建物が新津温泉だ(上の写真だと右奥に見える建物)。
わかりやすさを優先するなら、川のやや手前で右折して商店街通り経由でベルシティ新津の表口を目指すのがいいかもしれない。そこから回り込むように進めば、下のようなわかりやすい温泉入口に着くはずだ。
これがアブラの聖地・新津温泉だ!
素朴な館内だけど手入れはしっかり
正面扉の左側が受付窓口ぽくなっていて、中におやっさんが座っていたから400円を差し出して取引完了。では入ります。外観から想像される通り、中は素朴なつくりである。ロッカー型の下足箱なんてものはない。入ってすぐに右へ。まるで古い自炊湯治宿のような風情の廊下を少し進んだところでまた右へ折れる。一番奥の突きあたりが男湯の入口だ。扉の向こうが脱衣所で、もちろん鍵付きロッカーだの脱衣カゴなんてものはなく、四角く区切られた木の棚があるだけ。
しかしトイレはきれいにリフォームされているし、ただの昔ながらそのままってわけじゃなく、手を入れるべきところは入れてある。失礼ながらおみそれしました。壁に貼られた分析書には「ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉、弱アルカリ性、高張性、高温泉」とあった。高張性かあ、効きそう。しかも源泉かけ流し。
脱衣所と浴室を隔てる扉はガラス張りなので早い段階で中の様子はわかる。先客は2名だった。芋洗いでなくてよかったー。
蛇口からのお湯も石油臭
いよいよ浴室へ。さっそくツンと石油っぽい刺激臭キターーー! なにこれ石油じゃん。いや“石油”だと主語が大きいかもしれない。自分の記憶にマッチするのは灯油臭の後を引く余韻のやつかな。とにかく以後は石油と称することにする。洗い場は3名分。ただし、うち2箇所は水の蛇口しかない様子で、手前の1箇所だけに温泉が出てくる蛇口が追加されているように見える。いずれもシャワーは付いてないしシャンプーや石鹸の類も置いてない。
とりあえず手前の洗い場で丁寧にかけ湯をしたが、蛇口から出てくるお湯がもうすでにくさい。温度調節のために別の蛇口から水を加えていてもくさい。
石油の存在感がスゴい
正面には3名規模の陸上トラック形のタイル浴槽。底のタイルの色につられてくすんだ青のお湯だと早とちりしそうになるが、冷静に見れば微濁りの無色透明だろう。浸かってみるとやや熱め。残念ながら自分の好みのレンジからは外れている。それ以外はわりといい感じで、「石油だー、うぇぇー」というようなものではない。
ベトベトとかドロドロといった感触はなく、アルカリ泉特有の軽いヌルヌル感が前面に出ている。光の加減で湯の表面に油膜が見えたりするけど、こういう温泉はたまにある。泡付きや湯の花はとくに見られなかった。
石油を連想させるのはとにかくニオイだ。室内にはモワーッと石油臭が漂い、お湯をすくって鼻を近づけるとまた違ったテイストの、なんとも表現し難い石油臭がする。刺激臭だからそのうちめまいや胸焼けがしてくるんじゃないかとの心配をよそに、意外と長居できた。換気はしっかりしているのかも。
ちょっとだけ味見…とにかく塩辛い
やがて先客が去って独占状態となったので湯口の近くへ移動した。壁から生えている源泉パイプを引っ張ってきただけのシンプルな湯口である。パイプの先端にネットがかけられていたのは不純物を通さないためだろう。そのパイプのそばにコップが置いてあった。もしかして飲泉できるのか?…よくわからんので湯口から出てくるお湯をコップに受けて、口に含んでから飲まずにペッと吐き出した。
後味がすんごい塩辛いしタマゴの風味が強い。すぐに吐き出したせいか石油の刺激臭はほとんど感じなかった。まあとにかく塩辛い。
かなり珍しい体験をしてしまった
やや熱いお湯なので長湯向きではない。ニオイも強いし。せっかく来たんだからと、多少無理して粘りつつも、後から新たにやって来た客と入れ替わるようにして出た。なるほど、これが新津温泉か。たしかに噂通りの石油臭だった。こういうお湯が本当に世の中に存在して、しかも普通に浸かることができちゃうなんてね。湯あがりはなかなか汗が引かない。さらに時間が経つと、ベタつくどころかむしろサラサラ感のある肌になった。最後まで意外性のある温泉だ。
新津駅へ歩いて戻りながら、何度も気になって腕に鼻をくっつけてクンクンしてみた。うわあー、石油くせえ。でもあえて接近して嗅いでみたからであって、周囲にプ~ンと発散させているわけじゃなかろう。きっと大丈夫だ。たぶん。
ニオイが服に移ることを気にする方は、2軍の安Tシャツなど、ある意味「どう転んでもいい」のを着ていくと良い。タオルも使い古して「今回で引退させてもいい」やつを選んで持っていくことをおすすめする。
地元の常連客が毎度そんな準備をして行くとは思えないし、気分の問題なんでしょうけどね。
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