八丁の湯を“もう一丁”…思い出を追って再訪した奥鬼怒の秘湯

奥鬼怒温泉郷 八丁の湯
栃木県の奥鬼怒温泉郷といえば、昨年の梅雨入りするかしないかくらいの時期に「八丁の湯」という秘湯宿に泊まったのがいい思い出だ。すばらしい温泉と秘境感いっぱいの環境が印象深い。

あれから1年。ほとんど同じ時期に八丁の湯を再訪することになったのである。またあの露天風呂に入れるなんて、幸せだなあ。と浮かれて乗り込んだところ、お湯の温度が自分の好みのレンジから外れてたもんで、あてが外れちゃった。

だがその他の要素については昨年と変わらぬクオリティを保っており、気軽にアクセスしにくいところを頑張って行ってみるだけの価値はある。

昨年に引き続き八丁の湯へ

霧降高原ルートより鬼怒川沿いルートの方が走りやすい

八丁の湯へ行くにはまず女夫渕駐車場というところまで行く必要がある。かつて女夫渕温泉があった場所だ(現在その温泉はなくなってしまった)。昨年の我々は車で日光宇都宮道路・日光IC→霧降高原→大笹牧場を通るルートを選んだのだが、山岳ドライブそのものを楽しみたい方は別として、一般にはおすすめできない。

アップダウンの激しい急カーブ続きの道なのだ。しかも霧降っていうくらいで霧が出やすいと思う。5,6年前に別件で通った際にはまったく前が見えないほどの濃い霧の中でかなり怖い思いをした。

今年は途中で龍王峡を見学する予定もあったので今市IC→鬼怒川温泉→龍王峡ルートを取った。こっちの方が圧倒的に走りやすいじゃないの。所要時間の面で不利があるわけでもないし。日光東照宮に立ち寄りたいとかの希望がないならこちらですな。

気軽に立ち入れない山奥の秘境

いずれにせよ川俣ダム付近から先はどんどん道が狭く人家もまばらになって秘境へ突っ込んでいく感覚が強くなる。龍王峡から1時間で女夫渕駐車場に到着。
女夫渕駐車場
ここから先は一般車両の乗り入れ不可。駐車場に車を置いたら、あとはハイキングコースを90分歩くか、宿の送迎車に乗せてもらって30分の道のり。ハイキングコースの入口はこんな感じ。熊に注意。
奥鬼怒歩道入口
送迎車に乗っても未舗装の林道だからガタガタと揺れながら非常にゆっくり進む。快適にサーッと連れてってくれると思ってはいけません。それほどの山深い秘境なのだ。

道中の最後、加仁湯という別の旅館を過ぎたところで鬼怒川源流部とこんにちは。川幅はすっかり狭くなっちゃってます。
鬼怒川の源流部

素朴ながら洒落たつくりの館内

快適なログハウス

やがて八丁の湯に着いてチェックイン。木の素材感を前面に押し出した館内は本館とログハウス棟に分かれており、我々はログハウス棟を予約していた。フロントからまず本館の部屋が並ぶ廊下を進む。本館はトイレなしの和室でWiFiが使える。
本館廊下
本館とログハウス棟の境目にあった談話室がこちら。
談話室
上り階段といくつかの曲がり角を越えてようやく部屋まで来た。中はたしかにログハウスでありながらも床は10畳相当の畳。ベランダもある。
ログハウス室内
シャワートイレと洗面台付き。しかしWiFiは使えない。本館とは対照的だ。
洗面台とトイレ
部屋の写真もう1枚いっときましょうか。山小屋のような質素なつくりではなく、鄙びレトロでもなく、なかなか洒落た雰囲気である。
ログハウス室内
天井はかなり高くて開放感がある。南国リゾートにありそうなサーキュレーターが取り付けられていた。照明は白熱電球的なやつなので室内は暖色系の光に満ちていた。
天井のサーキュレーター

ヒマーリカフェを活用せよ

12時の送迎車に乗る際、昼食希望の有無を訊かれた。うどん・そば・カレーからの選択となる。ちなみに奥鬼怒温泉郷は4つの一軒宿がポツンポツンと点在するのみで、他の店舗や民家は存在しない。

昼食会場はフロントを挟んで宿泊棟と反対側にあるカフェ・バー「ヒマーリカフェ」。なかなかのシャレオツ空間だ。
ヒマーリカフェ
主にテーブルと椅子が並んでいるが、畳の一角もあり、マッサージチェアが置いてあったりする。超まったり・リラックスできそう。下の写真のはしご段を上っていくと屋根裏部屋みたいな空間がある。大人の隠れ家ってやつか。
ヒマーリカフェ 畳部屋
さて、しばらくすると昼食にオーダーしたそばが出てきた。シンプルなきのこそば。旅館の夕食はボリューム満点なのがわかっているので、昼はこれくらいで十分。
昼食のきのこそば
なおヒマーリカフェ内ではWiFiが使える。ログハウスに泊まる場合、ネットをしたければPCやスマホを持ってヒマーリカフェへ向かうことになる。カフェだからといって必ず飲み物を注文する必要はなく、休憩スペースとして気兼ねなく使える雰囲気だった。


滝が近い、野趣あふれる露天風呂

ぬる湯でなくなるもクオリティは変わらぬ滝見の湯

風呂について。まず昼食後に徒歩10分弱の加仁湯へ遠征したが、この件については割愛します。体験記としては昨年の加仁湯訪問時とほとんど同じだったのでそちらをどうぞ。今年もやっぱり激熱のお湯だった。いや、さらに熱かった。キビシー。

そして夕食前に満を持して当宿の風呂へ。狙いは心地よいぬる湯がまだ記憶に新しい露天風呂・滝見の湯。一年ぶりに、さあて入るぞ…あれ? ぬるくない。決して熱くはないものの自分の好みである40℃を下回る温度とは思えない。明らかに40℃オーバーのいわゆる適温になっていた。あらら。

しかし、わりあいはっきりした硫黄香にたくさんの湯の花、入浴後の肌のスベスベ感といい、お湯そのものはさすがのクオリティ。それが源泉かけ流しでドバドバと投入されているんだから文句のつけようがない。

しかも20名規模の岩風呂をほとんど我々だけで独占できて、温泉に浸かりながら目の前にある滝を見物できた。ぬるければこの天国状態を1時間続けていられるのだが、今回は休み休みでの体験となった。

雨に強い石楠花の湯

続いては石段を上った先にある石楠花の湯。3~4名規模の石造り。滝見の湯よりも気持ちぬるめだった。言われてみればそうかなという程度の差だけど。

こちらは滝のすぐ真横だから、落ちる水の迫力を最も感じ取ることができる。湯船の外に首を出して下を覗き込むと、はるか下の方に滝壺が見える。風呂の設置場所としてはかなりユニークではないだろうか。

あと今回は屋根が付いていることに助けられた。翌朝入りに来た時は雨だったからね。

脱衣所からすぐのところにある雪見の湯は昨年と同様に最も熱めだったのでスルーした。以上3つの露天風呂は混浴であり、20:30~21:30までが女性専用時間になっていた。なお、女性専用の露天風呂が別にある。

洗い場を求めるなら内湯へ

他に男女別の内湯もある。洗い場は内湯にしかないので滞在中に一度は利用することになると思う。

中はそんなに広くない。カランは1名分のみ。2名規模×2区画に仕切られた湯船があり、区画ごとに若干の温度差がある。内湯は洗い場と割り切って利用するところであって、長湯して粘るようなところではない。

やはり主役は露天風呂だ。夜になれば幻想的なライトアップがされるし、晴れていれば夜空に輝く星がよく見える。


1年前の記憶が蘇る食事

八丁の湯といえば猪鍋

八丁の湯の食事は朝夕ともフロント近くの食事処で。部屋ごとに決まったテーブル席に案内される。夕食は18時でスターティングメンバーがこれ。昨年と同じメニューだと思われる。
八丁の湯 夕食
他にグラタンと猪鍋が出てきた。予約時に猪鍋プランを選択したんだけど、湯葉鍋プランも選べるようになっていたから湯葉好きな方はどうぞ。

昼に食べたそばの影響ですぐ満腹になるんじゃないかと思っていたところ、たしかに満腹にはなったが意外と食べ続けることができて、ギブアップすることなく完食した。米が美味しかったのに軽く一杯が限界だったのだけが悔やまれる。

行者にんにくとの再会

朝はこれ。温泉蒸しと行者にんにくの効いた漬物に1年前の記憶がよみがえる。
八丁の湯 朝食
ご飯のお供には事欠かないが、朝からそんなに食べないのでやっぱり一杯だけ。他のメンバーはうまいうまいと言っておかわりしてたっけ。

日本秘湯を守る会のスタンプ集めにも

最後に、八丁の湯は日本秘湯を守る会の会員宿である。今回は秘湯会のホームページ経由で予約してスタンプ帳に押印してもらった。3年以内にスタンプを10個集めると、その中から選んだ宿への1泊ご招待特典があるのだ。

これで野望にまた一歩近づいた。