大地の灼熱のパワーが噴き出す地獄谷 - 玉川温泉自然研究路

玉川温泉自然研究路
令和最初の旅行から帰った翌週、今度は別のグループと温泉へ行くことになった。我ながらなかなかのハードスケジュール。GWには10連休で浮かれる世間を尻目にあくせく働いたから、これくらい楽しんだっていいでしょう。

行き先は秋田県の玉川温泉。自分は2年前に行ってるんですけどね(“新”玉川温泉の方)。テレビのドキュメンタリー番組を見て興味を持ったらしきメンバーから何度か行ってみたいと聞いており、このたび要望に応えることとなった。

初訪問時はヒット・アンド・アウェイでさくっと日帰り入浴だけを体験してきたが、今回は当温泉の別の顔=地獄谷をめぐる玉川温泉自然研究路の散策も主目的の一つだった。きっかけの番組で大きく取り上げられていたようだし、圧倒的な自然のエネルギーを感じる印象的なスポットなのである。

玉川温泉自然研究路へのアクセス

自分が2年前に新玉川温泉へ日帰り入浴しに行った時は秋田新幹線・田沢湖駅から路線バスに乗った。今回は田沢湖駅前でレンタカーを借りる。ドライバーは自分。前回の記憶によれば、夏季なら高度な技術と度胸を要するような難しい道路ではなかったはずだから、自分でも大丈夫だろうとの見立て。

ルートはシンプルで国道341号をただひたすら北上すればいい。途中には田沢湖(国道を外れて5分くらい走る)、田沢の里、秋扇湖ダム公園、玉川ダムなどの見どころがある。それらをスキップして玉川温泉へ直行するなら1時間前後の道のり。

ゴール手前に見えてくるのが新玉川温泉へ渡る橋。名前に「新」が付く通り、本家の玉川温泉に対する分家・姉妹館といえる旅館である。

そこに隣接するビジターセンターがあって、本家玉川温泉や自然研究路へ15分ほどで通じる遊歩道もあるのだが、熊に注意を要するエリアでひっそりとした林間の道を少人数で歩くのは避けたい。その意味でも車で行けるところまで行きたかった。

新から本家までは車で5分くらい。国道を外れて坂を下っていくと県営の駐車場が現れた。もっと下っていくと玉川温泉の旅館棟で行き止まりとなる。旅館の駐車スペースに余裕はないから見学のみの客は県営駐車場に止めましょう。100円。


噴気地帯をめぐる自然研究路

熱々の温泉川

車を降りて歩いて坂を下っていくと遠くに地獄谷が見えてきた。なんか所々に雪が残ってるんですけど。
地獄谷の遠景
駐車場から数分で地獄谷の入口に着いた。玉川温泉自然研究路と呼ばれる1周30分の散策コースがここから始まる。いよいよ来たぜ。
自然研究路入口付近
すぐに独特の毒々しい(?)色をした温泉の流れる川が並走する。見るからに熱そうだし強烈な成分をたんまり含んでいそう。肉眼だともっとクリアな緑色が強く、川の中に設置された木の樋を通っていく様は、草津の湯畑を思わせる雰囲気もある。
温泉の流れる川

特別天然記念物の北投石と激しい勢いの大噴

道の両脇は地獄谷らしく白い砂利の世界で、背の低い草がかろうじてわずかに生えている。またトムとジェリーに出てくるチーズのような穴の空いた岩がゴロゴロしている。北投石というらしい。
北投石
北投石はラジウムを含んでおり放射性を有し、台湾の北投温泉とここ玉川温泉でしか見られない希少な鉱物で特別天然記念物に指定されている。もちろん採取禁止だ。

そんな北投石には重い病気を治癒する効果があるといつしか広く信じられるようになった。このため道端、とくに岩のそばに、ゴザやシートを敷いて座ったり寝っ転がったりしている方々が多く見られた。みんな傘やタオルを日除けにして長時間粘る態勢。

ところで自然研究路を歩いていると腐卵臭がすごい。いや、タマゴを通り過ぎて危険な硫化水素臭だとはっきり認識できる。その臭いの元の一つと思われる、温泉がボコボコと激しく噴き出す大噴(おおぶけ)なる場所へ来た。
大噴
かなりの量が休むことなく噴き出しているし湯気の量も半端ない。風に流されてやって来た湯気の中に我ら一行がすっぽり包まれてしまう瞬間もあったほど。本家と新の玉川温泉が豊富な湧出量に支えられているってのがよくわかる迫力だ。

なんちゃって岩盤浴をちょっとだけ体験

大噴の先はいよいよ本格的な噴気地帯。あちこちに地面の黄ばんだ箇所が点在し、そこには噴気孔が口を開いて、激しい硫化水素臭のする蒸気を噴き出していた。ちょっと記憶が混乱しているがシュゴォーーという音がしていたかもしれない。
噴気孔がいっぱい
こんなところを歩いて大丈夫なのかよ。噴気孔の間を縫うようにのびる道を進んでいくとテント小屋っぽいのが3つ見える。真ん中のテントは「多量の火山性ガスが発生したため利用禁止」として入れなくなっていた。怖えよ。

残り2つのテントの中にはゴザを敷いて寝転がっている岩盤浴客の姿。おそらく闘病中の方々だろうから物見遊山で首を突っ込むのはためらわれる。我々はテントから離れたところの岩の上に持参したシートを敷き、体育座りしてみた。眼前の景色はこんな感じ。
岩盤浴テント付近の景色
…お尻が温かい。ていうか熱い。硫化水素臭も気になるし長時間は無理ですね。岩盤浴の雰囲気だけわかったところで数分で退散。

自然研究路の一番奥まったところには2体のボス噴気孔が並んでいた。派手な黄色を誇示しながら、隙あらば火山性ガスを浴びせようと虎視眈々とこちらをうかがっているかのようだ。
2体のボス噴気孔

本家玉川温泉を下見(?)する

ここを過ぎれば散策コースも残り半周。若干高い位置へ登っていった道端は砂利や岩石だけでなく笹藪になっている箇所も多い。

1周して戻ってくるあたりには薬師神社がある。遠くから見ただけだが、手前の鳥居の近くに座り込んでいる一団が見えた。あの付近も岩盤浴だか北投石効果だかに良好な場所なんだろうか。
薬師神社
以上で玉川温泉自然研究路の見学は終了。せっかくだから最後に本家の旅館をちょっと見物していこう。まず現れるのが売店。お土産からその場で買い食いできるものまでいろいろ揃ってます。
玉川温泉売店
その先に旅館のエントランス。
玉川温泉 エントランス
周囲にはたくさんの宿泊棟が連なって立っている。さすがの大規模湯治宿だ。
玉川温泉宿泊棟など
玉川温泉への宿泊や入浴はできなかったが、地獄谷を見るというより懐に入っていく感じの自然研究路は想像以上の迫力があって、間違いなく来た甲斐があったね。


おまけ:玉川の水の不思議な青さ

田沢湖駅から玉川温泉へ至る国道341号沿いに広がるダム湖の水の色が忘れられない。

秋扇湖ダム公園の展望所から見た景色がこれ。木が邪魔しちゃってますが湖面の青が身近な川や湖沼の青さじゃない。絵の具で人工的に作ったようなターコイズブルーなのだ。※一般にコバルトブルーと表現されることが多いけど当時はやや緑がかった明るい青だった。
秋扇湖
峡谷の川面に見られる濁った緑とは全然違う。青いは青いんだけど普通の青じゃない。先へ進んで玉川ダム下流公園に寄り道したらちょうど放流しているところだった。ここの水も不思議な青さ。
玉川ダム
玉川ダムの上流側へも行ってみた。水がせき止められてできた宝仙湖は秋扇湖よりも青が若干深くなっている。箱根駅伝における山梨学院大学のタスキの色くらい。
宝仙湖
なんでこんな色になるかね…なぜだか別府・由布院で入りそこねた青湯のことを思い出した。