春の九州旅行に向けて佐賀県のぬる湯をいろいろ調べたところ、アンテナに引っかかったのが佐賀市の山間部(旧富士町)にある熊の川温泉だった。近隣の古湯温泉とともに「ふるくま」の愛称でプロモーションを仕掛けたり、温泉めぐりに使える「ぬる湯手形」を発行したりしている。
そんな熊の川温泉の中でも特に興味を引いたのが硬派な本格ぬる湯を誇る「元湯 熊ノ川浴場」。ここはやってくれそうな予感がしたから立ち寄ることにした。
果たして、芯がしっかり通ったと表現したくなる良質のぬる湯で大いに満足した。1時間でも足りないくらいに長湯できるパラダイスだ。
そんなわけで当地の滞在可能時間は遅延で10分削られて約80分間。ぬる湯を1時間は楽しむつもりだから、帰りに乗る予定のバスを逃さないように早めの行動を心がけるとすれば、決して余裕があるとは言えない。結果的に帰りのバスも10分遅れて来たんだけど、そんなのをあてにするわけにはいかないからね。
さっそく行こう。下の写真の建設会社の看板にしたがって右の細い道へ入っていくのだが、熊ノ川浴場とは書いてないから、バスにせよマイカーにせよ初見だと迷いそう。
細い道の突きあたりの角に駐車場がある。そこを右に曲がって熊の川温泉に関する説明板の少し先へ行くと当湯の建物が見えてくる。バス停から徒歩3分。いかにも地元民が足繁く通ってそうな雰囲気だ。こういうところのお湯は間違いなくいいはず。
ちなみに、ネットに転がってる当館の写真はたいがい本記事冒頭の写真と同じアングルで撮られているが、ここに掲載している写真はもちろんパクリではない、本人撮影のオリジナルである。
脱衣所にはコインロッカーがずらりと並ぶ。100円があとで返ってこないやつ。掲示された分析書には「アルカリ性単純弱放射能温泉」とあった。また「あつ湯--約40℃、ぬる湯--約30℃」と追記されていた。
他に自家源泉かけ流しであるとか蛇口の水も源泉使用と書かれていた気がする。湯使いに関しては文句なしだ。
またそれら蛇口のそばには「水は外で汲んで下さい」という謎のメッセージが…外ってなんだ? 水の汲み方にこの地域独特のお作法があるのか?…一瞬意味がわからなかった。
どうやら「温泉を汲んで帰るつもりなら外でやって下さい、この蛇口から取水しないで下さい」という注意書きのようだ。なるほど、外に温泉スタンドがあるのね。
最初はどっちでもいいやと中浴槽に入ってみた。おお、これはかなりの冷涼感、30℃の方だな。ただし冷たさに体を慣らしながらゆっくり沈めていく必要もなくスッと入れたし、山梨の下部温泉なんかと比べて明らかにとっつきやすい。体温よりは低いけど30℃ってこともなくてもっと上じゃないかな。
お湯の見た目は無色透明で湯の花の存在や強い匂いは感じなかった。とにかく最も印象深いのは、お湯のぬるさからくる気持ちよさである。長く浸かるほど、だんだん出たくなくなってくる、魔性のお湯だ。こいつはやばい。
気がつけば腕や胸のあたりにたくさんの泡が付着していた。こんなに泡付きがいいなんて予想外だ。すごいなあ。うれしくなってますます出る気がなくなる。
30分が過ぎ、40分が経過した。まだまだ出たくない、いくらでもいけるぜ。しかしバスの時間もあるし大浴槽にも入ってみなくてはなるまい。そんなことを考えながら「指先もすっかりしわしわだ~」と手のひらに注目すると…なんだこの黒い筋は?!
正確には気味悪いくらいに青黒い何本もの筋が手のひらや指先や腕のあたりに浮かんでいた。ぬる湯効果で静脈が露わになったんだとしても、こんな露骨なの初めてだぞ。なんじゃこりゃあ。
中浴槽の直後だと熱めに感じるが、すぐに慣れて「ああ、ぬるめだ」とわかる。たしかに40℃くらいの感触。もうちょっと低いかもしれない。
こちらも結構なお点前。温度以外は中浴槽と似た特徴で全然いけますね。寒い時期には大活躍なんじゃないか。時間が気になって10分か15分しか浸かれなかったが、その気になればもっといけた。
ここは窓の外の景色もなかなかのもの。すぐそばを嘉瀬川が流れており、ちょっとした渓谷の風情がある。いいね。
「熱くしすぎないように。熱くて入れないと苦情が出ています」との注意書きがあったのは、せっかくのぬる湯浴場なのに熱湯大好きっ子さんがいるのかね。自分は40℃の方をあがり湯にするくらいで十分だ。
さっぱりして建物の外へ出ると、先ほどの「外で汲んで下さい」の温泉スタンドを発見。
注意書きがあるくらいだから、みんな汲んでいくんだろうね。たしかにいい湯だったからな。最初の中浴槽の方はすごい心地よかったし、泡付きという予想外のギフトもあって、特に印象深かった。もしいつかまた機会があるなら今日以上にゆっくり入りたいくらいだ。熊の川温泉おそるべし。
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そんな熊の川温泉の中でも特に興味を引いたのが硬派な本格ぬる湯を誇る「元湯 熊ノ川浴場」。ここはやってくれそうな予感がしたから立ち寄ることにした。
果たして、芯がしっかり通ったと表現したくなる良質のぬる湯で大いに満足した。1時間でも足りないくらいに長湯できるパラダイスだ。
熊の川温泉「元湯 熊ノ川浴場」へのアクセス
熊ノ川浴場は佐賀駅バスセンターから古湯温泉方面のバスで約40分、熊の川温泉前で下車する。同路線は行き帰りで合計3回あった乗車機会のうち3回とも10分程度の遅延があった。鉄道やバスの旅を計画するならギリギリすぎる乗り継ぎは避けた方がいいかもしれない。そんなわけで当地の滞在可能時間は遅延で10分削られて約80分間。ぬる湯を1時間は楽しむつもりだから、帰りに乗る予定のバスを逃さないように早めの行動を心がけるとすれば、決して余裕があるとは言えない。結果的に帰りのバスも10分遅れて来たんだけど、そんなのをあてにするわけにはいかないからね。
さっそく行こう。下の写真の建設会社の看板にしたがって右の細い道へ入っていくのだが、熊ノ川浴場とは書いてないから、バスにせよマイカーにせよ初見だと迷いそう。
細い道の突きあたりの角に駐車場がある。そこを右に曲がって熊の川温泉に関する説明板の少し先へ行くと当湯の建物が見えてくる。バス停から徒歩3分。いかにも地元民が足繁く通ってそうな雰囲気だ。こういうところのお湯は間違いなくいいはず。
ちなみに、ネットに転がってる当館の写真はたいがい本記事冒頭の写真と同じアングルで撮られているが、ここに掲載している写真はもちろんパクリではない、本人撮影のオリジナルである。
ぬる湯の王道を行く熊ノ川浴場
夕方に行くとお得
靴を脱いでスリッパに履き替えるとすぐに入場券の自販機がある。700円なり。これが15時を過ぎて入館すれば500円、17時過ぎには300円になる。館内はモダンではないけど朽ちかけたレトロってほどでもなく、わりあい小ざっぱりしている。脱衣所にはコインロッカーがずらりと並ぶ。100円があとで返ってこないやつ。掲示された分析書には「アルカリ性単純弱放射能温泉」とあった。また「あつ湯--約40℃、ぬる湯--約30℃」と追記されていた。
他に自家源泉かけ流しであるとか蛇口の水も源泉使用と書かれていた気がする。湯使いに関しては文句なしだ。
源泉が噴き出す蛇口
浴室内にカランは1つ。蛇口そのものは他にもいくつかあるのだが、いずれもシャワーも温度調節もついてなくて源泉がそのままジャーッと噴出するタイプであり、いきなりだと冷たく感じて髪や体を洗うのは辛い。またそれら蛇口のそばには「水は外で汲んで下さい」という謎のメッセージが…外ってなんだ? 水の汲み方にこの地域独特のお作法があるのか?…一瞬意味がわからなかった。
どうやら「温泉を汲んで帰るつもりなら外でやって下さい、この蛇口から取水しないで下さい」という注意書きのようだ。なるほど、外に温泉スタンドがあるのね。
中浴槽は一度入ると出られない、魔性の湯
あらためて浴室を見渡すと、右奥に4~5名規模の中浴槽、左奥にひと回り大きな6名規模の大浴槽、左手前に1名規模の小浴槽があった。小は風呂を出る前にあがり湯として使う、熱いお湯のやつだろう。中と大のどちらかが30℃でどちらかが40℃ってわけだ。最初はどっちでもいいやと中浴槽に入ってみた。おお、これはかなりの冷涼感、30℃の方だな。ただし冷たさに体を慣らしながらゆっくり沈めていく必要もなくスッと入れたし、山梨の下部温泉なんかと比べて明らかにとっつきやすい。体温よりは低いけど30℃ってこともなくてもっと上じゃないかな。
お湯の見た目は無色透明で湯の花の存在や強い匂いは感じなかった。とにかく最も印象深いのは、お湯のぬるさからくる気持ちよさである。長く浸かるほど、だんだん出たくなくなってくる、魔性のお湯だ。こいつはやばい。
泡付き豊富というおまけつき
中浴槽にいた先客1名は途中で大浴槽へ移り、我が独占状態となった。ふと隣接する蛇口に目をやると「飲用」の札がついていた。飲泉できるってことかな。ちょっとだけ出したのを手で受けて口に含んでみると、わりと普通の水みたいな味。気がつけば腕や胸のあたりにたくさんの泡が付着していた。こんなに泡付きがいいなんて予想外だ。すごいなあ。うれしくなってますます出る気がなくなる。
30分が過ぎ、40分が経過した。まだまだ出たくない、いくらでもいけるぜ。しかしバスの時間もあるし大浴槽にも入ってみなくてはなるまい。そんなことを考えながら「指先もすっかりしわしわだ~」と手のひらに注目すると…なんだこの黒い筋は?!
正確には気味悪いくらいに青黒い何本もの筋が手のひらや指先や腕のあたりに浮かんでいた。ぬる湯効果で静脈が露わになったんだとしても、こんな露骨なの初めてだぞ。なんじゃこりゃあ。
あつ湯という名のぬる湯…大浴槽もいい感じ
面白いから中浴槽にもっと浸かっていようという考えと、このへんが潮時だとの考えが競い合った結果、後者が勝ったため大浴槽へ移動した。中浴槽の直後だと熱めに感じるが、すぐに慣れて「ああ、ぬるめだ」とわかる。たしかに40℃くらいの感触。もうちょっと低いかもしれない。
こちらも結構なお点前。温度以外は中浴槽と似た特徴で全然いけますね。寒い時期には大活躍なんじゃないか。時間が気になって10分か15分しか浸かれなかったが、その気になればもっといけた。
ここは窓の外の景色もなかなかのもの。すぐそばを嘉瀬川が流れており、ちょっとした渓谷の風情がある。いいね。
1時間でも入り足りない、おそるべきぬる湯
すっかり満足しつつも早めの行動を優先して1時間弱であがった。最後に小浴槽のお湯を触ってみたらやっぱり熱かった。脇に温度調節できる蛇口がついていて自分でお湯を投入するようだ。「熱くしすぎないように。熱くて入れないと苦情が出ています」との注意書きがあったのは、せっかくのぬる湯浴場なのに熱湯大好きっ子さんがいるのかね。自分は40℃の方をあがり湯にするくらいで十分だ。
さっぱりして建物の外へ出ると、先ほどの「外で汲んで下さい」の温泉スタンドを発見。
注意書きがあるくらいだから、みんな汲んでいくんだろうね。たしかにいい湯だったからな。最初の中浴槽の方はすごい心地よかったし、泡付きという予想外のギフトもあって、特に印象深かった。もしいつかまた機会があるなら今日以上にゆっくり入りたいくらいだ。熊の川温泉おそるべし。
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