山梨県南部町にある秘湯・船山温泉。初めて訪れた時、いかにも「大人の休日をゆっくり過ごすためのハイクラス宿」な風情にすっかり魅了されたことを覚えている。
あれから2年、あちこちの温泉に行きまくり、もっとお高い宿に泊まったりもしたが、自分の中で船山温泉は今でもハイクラス組の主要な一角を占めている。経済面を考えるとそう簡単にはリピートできないだろうと思っていたのだが、その機会は突然巡ってきた。
また身延の桜を見て船山温泉に泊まりたい---前回のメンバーから再訪の要望を承ったのである。え~、ご予算の方は大丈夫ですか~、もう~、しょうがないな~。本心では渡りに船とばかり、話に乗った。
ひとつは中央道双葉JCTから中部横断道を南下して下部温泉早川ICへ至り、あとは国道52号を行く。身延山や山梨県央のスポットへ立ち寄るならこちらのルート。
もうひとつは新東名新清水JCTから中部横断道を北上して富沢ICへ至り、あとは国道52号。余談になるが、こちらのルートで立ち寄れそうな温泉として佐野川温泉がある。泡付き豊富なぬる湯が素敵だと聞いている。いつか行ったるで。
どちらにせよ将来、中部横断道が全通すれば、格段に行きやすくなるだろう。実際の我々は下部温泉に1泊した翌日、身延山久遠寺で桜を見学し、国道52号を南下して南部町へ入った。
とあるトンネルの手前(南下ルートの場合)に川と橋があって当宿の看板が出ているから、国道を外れて川を遡る方角へ7~8分。最後の最後は秘湯らしい、すれ違い困難な狭い道となる。一軒宿で他に民家もないから対向車はめったに来ないが。
チェックインを待つ間、洒落たロビーから洒落た庭を眺めることができる(下の写真は翌朝撮ったもの)。桜も満開で風流この上なし。
客室が並ぶ2階への階段前には2年前と同じく熊の剥製があった。お前さん変わってないねー。
収納部分はフラットなつくりで機能美を感じさせる。左の扉がクローゼット、中央の広い列がテレビ、その右隣は忘れた。金庫とかだったかなあ。右端の上段がコーヒーサービス、下段が冷蔵庫。
洗面台と自動照明のシャワートイレあり。前回は携帯通信がプチプチ切れる電波状況だったけど今回はまあまあ良好。買い替えたスマホ本体のアンテナ性能が良くなったのかもしれないが。それにWiFiのアクセスポイントがある。
相変わらず文句なしの快適な部屋だ。
踏み固めた土ではなく石・落ち葉・枝がゴロゴロしているため一般の観光地ほど歩きやすい道ではない。どんどん登っていく先にゴールが見えないのですぐに引き返してきた。それにしても桜とミツマタの組み合わせがあまりにバッチリだ。
こちらは当館の手前にかかる橋から見た駐車場脇の桜。本当にいい時期に来たもんだ。
桃ではないけれど一種の桃源郷に来てしまったような気分だった。俗世間から隔絶された雰囲気もあるしね。都会の喧騒を忘れるには最適だ。はい、散歩終了。
まず夕方は勝手知ったる奥の男湯大浴場へ。夕食中に男女が入れ替わるから男性は夕方のうちにどうぞ。脱衣所に掲示された分析書によれば「弱アルカリ性単純硫黄泉、低張性、弱アルカリ性、冷鉱泉」。
タオルとバスタオルは脱衣所にたくさん用意されており、行くたびに新しいのを使ってかまわない。洗面台には男女入れ替えに備えて女性用のを含む各種アメニティグッズがずらり。鏡も三面鏡効果のある洒落た並べ方で心憎い。
もちろん4名以上が同時に入ってもかまわないのだが、そういうシチュエーションはまずない。限られた客室数に貸切風呂の誘引力もあって、大浴場はほぼ独占状態、他の客がいても1~2名。このゆったり感も当宿のいいところ。
無色透明の適温のお湯は甘い硫黄香が感じられ、なかなか結構なお点前。普通に浸かるのもよいが寝湯がまた気持ちいい。他のメンバーが露天風呂へ出ていく中、自分だけがしばらく寝湯で粘っていた。
露天風呂から見る景色が実にうまくできている。川、砂防ダム(?)による人工の滝、山林、そして訪れた時期には満開の桜。なんだか自分がジオラマ作品の中にすっぽり収まってしまった感もあり、いやあ大したもんだ。
一軒宿という立地に加えて、川向こうの林道脇に立てられた黒いネットが目隠しの役割を果たし、こちら側に囲いを作っているわけじゃないから、眺望が確保されている。贅沢な思いのできる露天風呂だ。
印象的だったのは露天風呂から見える夜のライトアップ。川向こうとこちら側に設置されたライトが幻想的な光景を浮かび上がらせる。近くの木々は間接照明風に光が当てられていて、いちいちオシャレである。
うわー、すごいねこりゃ。再訪までの2年間、俗世間の垢にまみれ、確実に薄汚れた大人の度を増していたおじさんといえど、このポエムな空間にはすっかり心が洗われた。風呂場の写真を撮るわけにはいかないので、代わりにライトアップされた庭の写真をどうぞ。ガラス越しなのでいろいろ映り込んじゃってますが。
翌朝には他のメンバーとともに同じ大浴場へ。思い残すことのないよう露天風呂と寝湯を半々で楽しんだ。いやー良かった。
前回は奮発してジビエコースにしたが、今回は茜鱒のしゃぶしゃぶコース。山梨の食材を生かした役者揃い。見るからに美味しそう。手の込んだものばかりで、温かいものは温かく、冷たいものは冷たく、しっかり提供される。醤油につける本わさびを自分ですりおろすという本格派。
見栄を張ってウンチクを垂れたいところだが、ふだんのベースがないんで無理っす。でも大変素晴らしい料理だったのは確か。なにしろ全員、会話もそこそこに黙々と食べ続けてたからね。
途中で岩魚の塩焼きと手打ち蕎麦が出てくる。うわあボリュームたっぷり。
デザート前の釜飯がやって来る頃にはもうお腹パンパンだった。もうお腹に入らねー。となるのを見越してか、残った釜飯はおにぎりにして部屋まで届けてくれる。至れり尽くせりだ。
鍋の一方は味噌汁、もう一方は豆乳から作る豆腐。ドリンク・ご飯・パンはバイキング形式で好きなのを取りに行く。お腹にやさしいお粥もあり、蕎麦粥と地元「まるわ茶園」の茶粥から選べるのはうれしいね。
コーヒーは部屋でも飲めるし、ロビー近くにマシンがあって、食事時に限らず風呂上がりや思い立った時にいつでも飲める。
しかし散歩をする余裕はあったものの、今回も観光の中継地点的な、せわしない利用になってしまった。本来は欧米のバカンスと聞いてイメージするような、優雅で余裕たっぷりの落ち着いた過ごし方をすべき宿なんだとわかっちゃいるけど、身に染み付いた日本人的せかせか旅行スタイルは一朝一夕には直らない。
3度めの正直を目指して、今後も他力本願に努めてまいる所存であります。
(参考)2017年・船山温泉への初訪問記
あれから2年、あちこちの温泉に行きまくり、もっとお高い宿に泊まったりもしたが、自分の中で船山温泉は今でもハイクラス組の主要な一角を占めている。経済面を考えるとそう簡単にはリピートできないだろうと思っていたのだが、その機会は突然巡ってきた。
また身延の桜を見て船山温泉に泊まりたい---前回のメンバーから再訪の要望を承ったのである。え~、ご予算の方は大丈夫ですか~、もう~、しょうがないな~。本心では渡りに船とばかり、話に乗った。
高速道路で便利になった船山温泉へのアクセス
ちょうどうまい具合に、旅行の直前になってアクセスに便利な高速道路=中部横断自動車道が延伸していた。これを利用した東京方面からのルートは2つ考えられる。ひとつは中央道双葉JCTから中部横断道を南下して下部温泉早川ICへ至り、あとは国道52号を行く。身延山や山梨県央のスポットへ立ち寄るならこちらのルート。
もうひとつは新東名新清水JCTから中部横断道を北上して富沢ICへ至り、あとは国道52号。余談になるが、こちらのルートで立ち寄れそうな温泉として佐野川温泉がある。泡付き豊富なぬる湯が素敵だと聞いている。いつか行ったるで。
どちらにせよ将来、中部横断道が全通すれば、格段に行きやすくなるだろう。実際の我々は下部温泉に1泊した翌日、身延山久遠寺で桜を見学し、国道52号を南下して南部町へ入った。
とあるトンネルの手前(南下ルートの場合)に川と橋があって当宿の看板が出ているから、国道を外れて川を遡る方角へ7~8分。最後の最後は秘湯らしい、すれ違い困難な狭い道となる。一軒宿で他に民家もないから対向車はめったに来ないが。
優雅に滞在するにはぴったりの船山温泉
洒落た雰囲気の一軒宿
そして到着。よく手入れされた自然環境の中に、秘湯の一軒宿というにはモダンな建物が現れた。さり気なく玄関もオシャレな作りである。チェックインを待つ間、洒落たロビーから洒落た庭を眺めることができる(下の写真は翌朝撮ったもの)。桜も満開で風流この上なし。
客室が並ぶ2階への階段前には2年前と同じく熊の剥製があった。お前さん変わってないねー。
相変わらずハイソな部屋
案内された部屋は前回と同じ、駐車場側の若干エコノミーな17.5畳。とはいえマッサージチェアが置いてあったりしてハイソな感じ。今回はリピート客向けの謝恩プランで予約したため、最初から布団が敷いてあった。収納部分はフラットなつくりで機能美を感じさせる。左の扉がクローゼット、中央の広い列がテレビ、その右隣は忘れた。金庫とかだったかなあ。右端の上段がコーヒーサービス、下段が冷蔵庫。
洗面台と自動照明のシャワートイレあり。前回は携帯通信がプチプチ切れる電波状況だったけど今回はまあまあ良好。買い替えたスマホ本体のアンテナ性能が良くなったのかもしれないが。それにWiFiのアクセスポイントがある。
相変わらず文句なしの快適な部屋だ。
桜を見ながら散歩する
早めの時間に着いたので周辺を散歩してみた。こういうことでもしてゆっくり過ごさないともったいない宿なのである。駐車場の脇から遊歩道が続いている。踏み固めた土ではなく石・落ち葉・枝がゴロゴロしているため一般の観光地ほど歩きやすい道ではない。どんどん登っていく先にゴールが見えないのですぐに引き返してきた。それにしても桜とミツマタの組み合わせがあまりにバッチリだ。
こちらは当館の手前にかかる橋から見た駐車場脇の桜。本当にいい時期に来たもんだ。
桃ではないけれど一種の桃源郷に来てしまったような気分だった。俗世間から隔絶された雰囲気もあるしね。都会の喧騒を忘れるには最適だ。はい、散歩終了。
のびのびリラックスできる大浴場
貸切風呂は人気あり
では風呂です。船山温泉には2箇所の貸切風呂がある。予約なしで空いていれば使えるが、メンバーがそれほどこだわりを見せなかったこともあって利用しなかった。どのみち今回は貸し切り中のことが多かったように思う。まず夕方は勝手知ったる奥の男湯大浴場へ。夕食中に男女が入れ替わるから男性は夕方のうちにどうぞ。脱衣所に掲示された分析書によれば「弱アルカリ性単純硫黄泉、低張性、弱アルカリ性、冷鉱泉」。
タオルとバスタオルは脱衣所にたくさん用意されており、行くたびに新しいのを使ってかまわない。洗面台には男女入れ替えに備えて女性用のを含む各種アメニティグッズがずらり。鏡も三面鏡効果のある洒落た並べ方で心憎い。
内風呂は寝湯が穴場
浴室内のカランは4つだったと思う。内湯は4名がすごく余裕を持って入れるサイズ。なんでそんな書き方をするかというと、4つの区画に分かれているからだ。普通に浸かるタイプの区画が2つ、浅くなっていて寝湯ができる区画が2つ。もちろん4名以上が同時に入ってもかまわないのだが、そういうシチュエーションはまずない。限られた客室数に貸切風呂の誘引力もあって、大浴場はほぼ独占状態、他の客がいても1~2名。このゆったり感も当宿のいいところ。
無色透明の適温のお湯は甘い硫黄香が感じられ、なかなか結構なお点前。普通に浸かるのもよいが寝湯がまた気持ちいい。他のメンバーが露天風呂へ出ていく中、自分だけがしばらく寝湯で粘っていた。
眺望が素敵な露天風呂
続いてメンバーの後を追って露天風呂へ。のびのび入ろうとしたら2名サイズかなあ。お湯はややぬるくなっている。自分はぬる湯好みだから願ったり叶ったり。露天風呂から見る景色が実にうまくできている。川、砂防ダム(?)による人工の滝、山林、そして訪れた時期には満開の桜。なんだか自分がジオラマ作品の中にすっぽり収まってしまった感もあり、いやあ大したもんだ。
一軒宿という立地に加えて、川向こうの林道脇に立てられた黒いネットが目隠しの役割を果たし、こちら側に囲いを作っているわけじゃないから、眺望が確保されている。贅沢な思いのできる露天風呂だ。
幻想的な夜のライトアップ
夜は男女入れ替わった手前の大浴場へ。他のメンバーは食事と酒の力で睡魔に襲われ動けなくなってたので一人で行った。レイアウトの違いはあれど基本的な特徴は奥の大浴場と一緒だった。印象的だったのは露天風呂から見える夜のライトアップ。川向こうとこちら側に設置されたライトが幻想的な光景を浮かび上がらせる。近くの木々は間接照明風に光が当てられていて、いちいちオシャレである。
うわー、すごいねこりゃ。再訪までの2年間、俗世間の垢にまみれ、確実に薄汚れた大人の度を増していたおじさんといえど、このポエムな空間にはすっかり心が洗われた。風呂場の写真を撮るわけにはいかないので、代わりにライトアップされた庭の写真をどうぞ。ガラス越しなのでいろいろ映り込んじゃってますが。
翌朝には他のメンバーとともに同じ大浴場へ。思い残すことのないよう露天風呂と寝湯を半々で楽しんだ。いやー良かった。
思い出通りに素晴らしすぎる食事
山梨の食材を生かした夕食
船山温泉の食事は朝夕とも個室食事処で。夕食は18時、朝食は8時と決まっている。夕食のスターティングメンバーがこれ。相変わらずきらびやかだ。前回は奮発してジビエコースにしたが、今回は茜鱒のしゃぶしゃぶコース。山梨の食材を生かした役者揃い。見るからに美味しそう。手の込んだものばかりで、温かいものは温かく、冷たいものは冷たく、しっかり提供される。醤油につける本わさびを自分ですりおろすという本格派。
見栄を張ってウンチクを垂れたいところだが、ふだんのベースがないんで無理っす。でも大変素晴らしい料理だったのは確か。なにしろ全員、会話もそこそこに黙々と食べ続けてたからね。
途中で岩魚の塩焼きと手打ち蕎麦が出てくる。うわあボリュームたっぷり。
デザート前の釜飯がやって来る頃にはもうお腹パンパンだった。もうお腹に入らねー。となるのを見越してか、残った釜飯はおにぎりにして部屋まで届けてくれる。至れり尽くせりだ。
朝食のお粥がいい感じ
朝食も洒落た感じですな。焼魚はヤマメの一夜干し。鍋の一方は味噌汁、もう一方は豆乳から作る豆腐。ドリンク・ご飯・パンはバイキング形式で好きなのを取りに行く。お腹にやさしいお粥もあり、蕎麦粥と地元「まるわ茶園」の茶粥から選べるのはうれしいね。
コーヒーは部屋でも飲めるし、ロビー近くにマシンがあって、食事時に限らず風呂上がりや思い立った時にいつでも飲める。
心の余裕が試される宿
他力本願ぽい展開に助けられたとはいえ、念願の再訪叶って大満足。相変わらずの身に余るクオリティだった。しかし散歩をする余裕はあったものの、今回も観光の中継地点的な、せわしない利用になってしまった。本来は欧米のバカンスと聞いてイメージするような、優雅で余裕たっぷりの落ち着いた過ごし方をすべき宿なんだとわかっちゃいるけど、身に染み付いた日本人的せかせか旅行スタイルは一朝一夕には直らない。
3度めの正直を目指して、今後も他力本願に努めてまいる所存であります。
(参考)2017年・船山温泉への初訪問記