週末や連休中は混むから、温泉旅行するなら平日休みを取って行きたい、などと甘っちょろいことを抜かしていたおじさんだが、頻繁にあちこち行こうとすればするほど、そうも言っていられなくなる。
やむなく週末の1泊2日でカバーするパターンが増えてきて、今回も春先の週末に那須湯本温泉を訪れた。タマゴ臭の白濁硫黄泉が久しぶりに恋しくなってきたもんでね。
宿泊先は「中藤屋旅館」。かの名湯・鹿の湯源泉を引く貴重な旅館のひとつである。いつでも外来入浴を受けるわけではないため、混雑とは無縁でゆっくりお湯を楽しむことができた。たまたま空室を見つけて泊まることにしたんだけど、我ながらいい判断だった。
一方、高速バスを使う手もある。終点が那須湯本温泉なので何も考えなくてよいから楽ちん。そこで今回は往路に高速バスを利用した。新宿から乗ると3時間半。東北道・西那須野ICを出てからは那須リゾートエリアの一般道を走る。
ところどころ「花粉ばんばん飛ばしまっせ~」と言いたげに葉先のオレンジ色を誇示する杉が…。「見ててや~」見ねえよ…いかん鼻がむずむずしてきた。標高が上って終点が近づくとオレンジ色の憎いやつも目につかなくなってきたのでひと安心。
バスを降りてから、鹿の湯への立ち寄り入浴・殺生石見学・湯泉神社見学をこなした後、中藤屋旅館を目指した。バス停から麓方向へ5分も歩けば着く。もし路線バス利用ならひとつ手前の湯本2丁目で下車すればすぐそこだ。
ではチェックイン。案内された部屋は2階の6畳和室。一人旅なら十分だ。どうやら一人泊可の設定があるのはこの部屋だけみたいね。旅行予約サイトや中藤屋旅館のホームページでも常時予約を受けているようには見えないこの部屋。たまたま運が良かったかのかな。
全般に管理状態は良く快適だし、シャワートイレと洗面台付きなので不都合はない。金庫もあるし別途精算のドリンク・お酒が入った冷蔵庫もある。ちなみに1階ロビーにもお酒含む自販機がある。暖房は大きめの温風ヒーター。
べつに日本の原風景云々のレトロ建築であるとか格安自炊宿のノリではないんだけど、そこはかとなく湯治宿の風情が漂う。シンプルに温泉を主役に据えて、あとは静かにお過ごしください的な空気感は、大変結構でござる。
禁煙部屋ではないようだけどタバコの臭いは全然しなかった。窓の外は駐車場と何かの小屋。翌朝帰りがけに小屋をチェックすると鹿の湯分湯場だった。
つまり鹿の湯源泉を引いてきてここへ溜めておき、各旅館へ配湯しているわけだね。すぐ隣りにある中藤屋はお湯の鮮度がいいんじゃないの。
壁に貼ってあったのは鹿の湯で見たのと全く同じ分析書。同じ源泉を引いてるんだから、そりゃそうか。「単純酸性硫黄温泉(硫化水素型)」だそうな。もちろん源泉そのままをかけ流し。
また当館が会員になっている「とちぎ・にごり湯の会」のポスターが貼ってあった。那須湯本・塩原・日光湯元・奥鬼怒の宿がほとんど。当館と鹿の湯を除くと、自分は奥鬼怒の加仁湯へ立ち寄りで行ったことがあるくらいで、あとは未踏ばかり。まだまだですな。
鹿の湯でいうと41℃槽くらいの温度。熱すぎずで入りやすい。いいですね。お湯は完全に白濁しており底は見えない。窓からの光の加減でちょっと緑がかって見えたり青っぽく見えたりもする。またこのタイプに典型的な細かい白い湯の花が漂っていた。
お湯をすくって鼻を近づけると見事なまでの腐卵臭。あと少しで焦げタイヤ臭に達してしまいそうなレベルだ。肌の具合がいつもと明らかに違う様相を呈しているし、確実に効いてくるお湯だね。
まあそれにしても硫黄(硫化水素)がすごいね。浴槽の縁は黄ばみのある白い析出物がびっしりだし、カランは決して古くはないのに金属部分がもう黒く腐食しつつあるし、壁板が新しめなのはすぐだめになっちゃうから頻繁に取り替えているんだろう。
脱衣所には硫化水素ガスの危険性と安全対策についてのポスターもあったしな(普通のふるまいをしている分には安全です、ねんのため)。そういえば鹿の湯には「ガス中毒のおそれがあるから床に寝転ぶな」との注書きがあったような気ガスる。
おそらく満室の週末でこの人口密度だったら全然ありでしょう。調子に乗って入ってたら、アルカリ泉とはまた違った感じでお肌が異様にすべすべ・テカテカになった。
なお、夜の時点では温度の特徴が逆転していて、小浴槽が熱め・中浴槽が適温だった。翌朝はどちらも同じくらいの適温。浴槽ごとの源泉投入量を調整して、温度を互いに逆位相で周期変動させてたりしたらすごいな。
夕食は18時すぎ。準備出来次第持ってきてくれる。基本的に一度出しで、締めのご飯は後ほど。
蓋のしてある器は茶碗蒸しと野菜の煮物。今宵の主役はすき焼きだ。牛肉はとちぎ和牛だろう。肉そのものもよろしかったし、使われている割下との相性がよく、おじさんは牛肉が(特に脂身が)胸焼けしちゃうお年頃なんだけど、これは美味しくいただけた。
量は見た目以上に多い。酒ありとはいえ、テレビもつけずに食事に専念したにもかかわらず、完食まで1時間以上を要した。デザートのいちごも栃木産かな。さっぱりして終了。
お盆に所狭しと並ぶ皿。つまり品数が多い。なんと豪勢な。いつも朝はそんなに食べないので、これだったら昼はいらないな。その通り、結果的に昼は抜くことになった(正確には中途半端な時間に昼兼夕食ですませた)。
なぜだか白菜の漬物にハマった。お口さっぱり要員として優秀な働きをしてくれた。二階級特進とす。
鹿の湯源泉を鮮度良く適温でかけ流し。なおかつ混雑知らず。それだけでも十分すぎる価値がある中藤屋旅館。今回直前に予約が取れたのは運が良かったとしか言いようがない。
いろいろと現代風じゃなかったり、ちょっと昭和チックな面はあるけど、それもまた味わい深い渋み。いわば硫黄で仕上げた“いぶし銀”ってやつだ。
やむなく週末の1泊2日でカバーするパターンが増えてきて、今回も春先の週末に那須湯本温泉を訪れた。タマゴ臭の白濁硫黄泉が久しぶりに恋しくなってきたもんでね。
宿泊先は「中藤屋旅館」。かの名湯・鹿の湯源泉を引く貴重な旅館のひとつである。いつでも外来入浴を受けるわけではないため、混雑とは無縁でゆっくりお湯を楽しむことができた。たまたま空室を見つけて泊まることにしたんだけど、我ながらいい判断だった。
那須湯本温泉・中藤屋旅館へのアクセス
東京方面から鉄道利用の場合、新幹線で那須塩原もしくは在来線で黒磯まで行ってから路線バスに乗ることになる。本数は多くないから接続に注意。一方、高速バスを使う手もある。終点が那須湯本温泉なので何も考えなくてよいから楽ちん。そこで今回は往路に高速バスを利用した。新宿から乗ると3時間半。東北道・西那須野ICを出てからは那須リゾートエリアの一般道を走る。
ところどころ「花粉ばんばん飛ばしまっせ~」と言いたげに葉先のオレンジ色を誇示する杉が…。「見ててや~」見ねえよ…いかん鼻がむずむずしてきた。標高が上って終点が近づくとオレンジ色の憎いやつも目につかなくなってきたのでひと安心。
バスを降りてから、鹿の湯への立ち寄り入浴・殺生石見学・湯泉神社見学をこなした後、中藤屋旅館を目指した。バス停から麓方向へ5分も歩けば着く。もし路線バス利用ならひとつ手前の湯本2丁目で下車すればすぐそこだ。
静かな湯治宿の風情漂う部屋
隠し玉(?)の“おひとりさま”部屋
当館は3階建てだけどパッと見はそれほど大きくない全10室。好みのタイプの小規模旅館である。この日は玄関前に「外来入浴はできません」の張り紙があったように記憶している。ではチェックイン。案内された部屋は2階の6畳和室。一人旅なら十分だ。どうやら一人泊可の設定があるのはこの部屋だけみたいね。旅行予約サイトや中藤屋旅館のホームページでも常時予約を受けているようには見えないこの部屋。たまたま運が良かったかのかな。
全般に管理状態は良く快適だし、シャワートイレと洗面台付きなので不都合はない。金庫もあるし別途精算のドリンク・お酒が入った冷蔵庫もある。ちなみに1階ロビーにもお酒含む自販機がある。暖房は大きめの温風ヒーター。
べつに日本の原風景云々のレトロ建築であるとか格安自炊宿のノリではないんだけど、そこはかとなく湯治宿の風情が漂う。シンプルに温泉を主役に据えて、あとは静かにお過ごしください的な空気感は、大変結構でござる。
お湯の鮮度は折り紙付きの好立地
WiFiはたぶんOK。室内に無線の機器が設置してあったし、スマホでチェックしたら部屋ごとにあると思われるアクセスポイントがずらっと出てきた。たぶんと書いたのは、PCを持ち込んでなかったしスマホもほとんど使わず、主に読書して過ごしたため。たまにはそういうのもいいでしょう。禁煙部屋ではないようだけどタバコの臭いは全然しなかった。窓の外は駐車場と何かの小屋。翌朝帰りがけに小屋をチェックすると鹿の湯分湯場だった。
つまり鹿の湯源泉を引いてきてここへ溜めておき、各旅館へ配湯しているわけだね。すぐ隣りにある中藤屋はお湯の鮮度がいいんじゃないの。
何度でも入りたい、名湯かけ流しのお風呂
にごり湯の会の一員
中藤屋旅館の大浴場は1階にある。深夜の一部時間帯を除いて朝9時半までいつでも入れる。さっそく浴衣に着替えて男湯へ。脱衣所へ入るなり、モワア~っと、いきなり腐卵臭。いいよいいよー。壁に貼ってあったのは鹿の湯で見たのと全く同じ分析書。同じ源泉を引いてるんだから、そりゃそうか。「単純酸性硫黄温泉(硫化水素型)」だそうな。もちろん源泉そのままをかけ流し。
また当館が会員になっている「とちぎ・にごり湯の会」のポスターが貼ってあった。那須湯本・塩原・日光湯元・奥鬼怒の宿がほとんど。当館と鹿の湯を除くと、自分は奥鬼怒の加仁湯へ立ち寄りで行ったことがあるくらいで、あとは未踏ばかり。まだまだですな。
お見事な鹿の湯源泉、しかも適温
浴室はシンプルで、4名分の洗い場と木の浴槽が2つ。2名サイズの小浴槽と4名サイズの中浴槽が隣りあって並んでいる。中浴槽には先客がいたのでまず小浴槽へ入ってみた。鹿の湯でいうと41℃槽くらいの温度。熱すぎずで入りやすい。いいですね。お湯は完全に白濁しており底は見えない。窓からの光の加減でちょっと緑がかって見えたり青っぽく見えたりもする。またこのタイプに典型的な細かい白い湯の花が漂っていた。
お湯をすくって鼻を近づけると見事なまでの腐卵臭。あと少しで焦げタイヤ臭に達してしまいそうなレベルだ。肌の具合がいつもと明らかに違う様相を呈しているし、確実に効いてくるお湯だね。
硫黄のパワーがすごすぎる
やがて先客は去って独占状態となった。鹿の湯の芋洗いを思えば同じ源泉で夢のような展開だ。空いた中浴槽へ移動すると、こちらは熱い。43℃はありそう。温泉成分のおかげか、この温度にしてはマイルドで我慢できないほどではないが、やはり短時間で休憩を余儀なくされる。まあそれにしても硫黄(硫化水素)がすごいね。浴槽の縁は黄ばみのある白い析出物がびっしりだし、カランは決して古くはないのに金属部分がもう黒く腐食しつつあるし、壁板が新しめなのはすぐだめになっちゃうから頻繁に取り替えているんだろう。
脱衣所には硫化水素ガスの危険性と安全対策についてのポスターもあったしな(普通のふるまいをしている分には安全です、ねんのため)。そういえば鹿の湯には「ガス中毒のおそれがあるから床に寝転ぶな」との注書きがあったような気ガスる。
のびのび入れる好環境
そんな妖しい魅力を持つ鹿の湯源泉を混雑知らずでじっくり楽しめたのは貴重な体験だった。夕方・夜2回・朝1回とチェックアウト直前に10分だけ入った中で、独占タイムの機会はそれほどなかったが、他の客がいてもせいぜい1名。3名グループと一緒になったのが最大瞬間風速。長湯する泉質じゃないからすぐ出るしね。おそらく満室の週末でこの人口密度だったら全然ありでしょう。調子に乗って入ってたら、アルカリ泉とはまた違った感じでお肌が異様にすべすべ・テカテカになった。
なお、夜の時点では温度の特徴が逆転していて、小浴槽が熱め・中浴槽が適温だった。翌朝はどちらも同じくらいの適温。浴槽ごとの源泉投入量を調整して、温度を互いに逆位相で周期変動させてたりしたらすごいな。
部屋でゆっくりといただく食事
ひとりすき焼きもまた良し、の夕食
中藤屋旅館の食事は朝夕とも部屋出し。食堂に全員集合のスタイルが主流の今どきとしては珍しい。レイアウト的に全員を集めるだけのスペースを確保できないという事情からくるんだろうが、図らずも湯治宿風の演出につながっている。しかし食事の内容は簡素に割り切ったものではなく、しっかりした旅館の料理だ。夕食は18時すぎ。準備出来次第持ってきてくれる。基本的に一度出しで、締めのご飯は後ほど。
蓋のしてある器は茶碗蒸しと野菜の煮物。今宵の主役はすき焼きだ。牛肉はとちぎ和牛だろう。肉そのものもよろしかったし、使われている割下との相性がよく、おじさんは牛肉が(特に脂身が)胸焼けしちゃうお年頃なんだけど、これは美味しくいただけた。
量は見た目以上に多い。酒ありとはいえ、テレビもつけずに食事に専念したにもかかわらず、完食まで1時間以上を要した。デザートのいちごも栃木産かな。さっぱりして終了。
品数多い朝食
朝食は8時すぎ。ご飯とともに一度出し。お盆に所狭しと並ぶ皿。つまり品数が多い。なんと豪勢な。いつも朝はそんなに食べないので、これだったら昼はいらないな。その通り、結果的に昼は抜くことになった(正確には中途半端な時間に昼兼夕食ですませた)。
なぜだか白菜の漬物にハマった。お口さっぱり要員として優秀な働きをしてくれた。二階級特進とす。
鹿の湯源泉を鮮度良く適温でかけ流し。なおかつ混雑知らず。それだけでも十分すぎる価値がある中藤屋旅館。今回直前に予約が取れたのは運が良かったとしか言いようがない。
いろいろと現代風じゃなかったり、ちょっと昭和チックな面はあるけど、それもまた味わい深い渋み。いわば硫黄で仕上げた“いぶし銀”ってやつだ。