師走の関西遠征の最後の締めとして大阪南部で立ち寄れそうな温泉を探していたら、山里の本格派温泉を見つけた。それが泉佐野市にある犬鳴山温泉。関空から飛行機で帰るつもりだから最後の立ち寄りにちょうどいい。
いくつか観光ホテルや日帰り入浴施設が存在する中で目を引いたのが日帰り温泉「山乃湯」。湯元温泉荘という名前で宿泊もやってるみたい(そちらの風呂は山乃湯とは別で宿泊者限定)。ともかくネットでは、泉質を絶賛する口コミと、古さ・管理状態を指摘する声と、評価は両極端に真っ二つ。
どうしよう、もし自分の嗜好に合わなければ相当ヤバそうだな、しかし…。どうしても気になって行ってみたのである。さてその結果はいかに。
終点まで40分弱。途中でJR阪和線・日根野駅を通るから、日根野駅を利用するならバスの乗車時間を15分ほど短くできる。日根野を過ぎるとだんだんのどかな雰囲気になってきて、ある分岐点から先は完全に田舎の風景になった。
泉佐野といえば関空=海上の未来都市的なイメージがあったけど、車窓の外に広がるのはそんなイメージの180度逆を行く、ノスタルジックな山里。落差がすごいね。
はい、入口注意。「湯元温泉荘」の看板が出てる、こんな感じのところで左の坂を下っていきます。
マイカーで訪れる人こそ最大の要注意ポイントだろう。看板を見落として通り過ぎちゃったら、こんな道路だし、途中でUターンするところあるのかね。見落とさなかったとしても狭い急坂を下らなきゃいけない。大変そう。
一応駐車場はありまして、こんなの。サビ汚れた廃車が放置されていたりする。フォールアウト(終末世界を舞台にしたゲーム)もしくはゾンビ映画のワンシーンのようだ。
「いらっしゃい」…思いもよらぬ方向から声がする。えっ、どこ? わからん。視線をあちこちさまよわせてようやく気づいた。左手の階段を上った2階フロアで、人の良さそうな可愛げのあるおばあちゃんが椅子に腰掛けていた。
階段を上がって料金を手渡す。入湯税込みで775円だったかな。壁に「釜飯あります」のポスターが貼ってあったので、入浴の後で食べたい旨を伝えると、どれくらい入浴するか時間を訊かれ、あがった頃にちょうど炊きあがるようにしてくれるとのことだった。ナイスサービス。
脱衣所も同様。洗面台の蛇口になぜか石鹸がなすりつけてあってベトベトだったけど、前の客がやらかしたんだろうか。自分的にはまだ大丈夫、こういう日もあらあな。掲示された分析書には「単純硫黄泉、低張性、アルカリ性、冷鉱泉」とあった。
浴室には先客1名あり。予想外だ。向こうもまさか独占状態が破られるとは思ってもみなかっただろう。お気の毒だけど堪えてくいやい。
※カビじゃなくて後述の「黒い湯の花」かもしれない
あとは3名規模の内湯浴槽があるのみ。お湯はささ濁りで若干の硫黄臭がする。それが浴槽の縁からどんどんオーバーフローしていた。湯使いにこだわる人にはたまらんでしょうな。
期待を込めて浸かってみる。あちい。やや熱めのチューニングだがそのうち慣れてくる。湯口からは透明な湯が不純物を取るネットを通過して流れ込んでいるように見えるのだが、さわってみたら冷たかった。加温前の源泉かしら。加温したお湯は浴槽内の穴から噴き出している模様。
黒いのと白いのがある。白くて長い糸くず状のは見るからに湯の花。白と黒の小さい粒状のは、なんか湯垢にも見える。それで文句を言う人がいるんだろうか。湯の花だよな。そうだそうだそうに違いない。
黒くて大きいのはどうしても綿ぼこりに見えてしまう。掃除機をかけると中に綿ぼこりが圧縮されて溜まるアレを人差し指大に切り出してきた感じのが漂っていた。これはもう見た目からして、だめな人はだめだろうね。自分は気にしなかったが。「じゃあ食べてみろよ」と煽られても食べませんがね。
白くて大きい糸くずと黒くて大きい綿ぼこりが合体したキングまでいた。すげえ。量も形状も過去に経験のない湯の花だったので強く印象に残った。
熱めだから出たり入ったりを繰り返しながら、「大阪にはこれといった温泉がないんだよなー」(失礼)という先入観を覆す本格派の温泉を十分に堪能した。硫黄感があるのがいいね。
おっと、そろそろ釜飯をお願いした約束の時間だ。ていうか、それを意識して熱めのお湯なのをあえて粘ってたんだけどね。そろそろあがるとしよう。あーいいお湯だった。
熱々でうまい。冷えたビールと共にいただく。たまりませんな。
いま現在、山乃湯にいるのは自分とおばあちゃんの二人だけのようだ。物音ひとつしない静かな時間がゆっくりと流れる。おばあちゃんは椅子に座ったまま読書しているようでいて、こっくりこっくり居眠りしている。いかにも印象派の絵画の題材になりそうだ。
…なんちゃって、おじさん芸術方面はさっぱりわかりません。印象派って言ってみたかっただけ。でも、なんとも味わい深い、ほっこりする時間・空間だったのは確か。おばあちゃん込みで、あの雰囲気は癖になりそう。
万人向けとはお世辞にも言えない山乃湯だけど、個人的にはお湯良し(もっとぬるければなお良し)、味のある雰囲気良し、で記憶に残る1湯となった。自分の嗜好にマッチしそう・湯の花の外見は許容できそうだと思われたら、繁忙期を外した静かな時期に少人数、できれば一人で出かけてみることをおすすめしたい。
旅館や食事処がポツポツ並んでいるものの、異様にひっそりとしており、人の姿は数えるほどしか見かけない。さっき山乃湯でほっこりしたばかりだから、寂寥感というほどのものではないが、師走の冷たい風が吹き付ける中、ウキウキ気分とはいかない。
途中に犬鳴温泉センター(別館?)という日帰り温泉施設があった。宿泊もしようと思えばできるみたい。駐車場に繋がれてるワンちゃんが人間を見るとものすごくうれしそうに尻尾を振って近寄ってくる。やけにフレンドリーだな。なでたりして、しばし相手してあげた。
バス停から5分ほど歩くと、その先は本格的な山のハイキング&寺院の参道になる。むむ、なんか縄で結界を張ったみたいになってるぞ。ドラクエでいうトラマナの呪文がないと先へは進めないな。HPガンガン削られちゃう。
この奥には七宝瀧寺・義犬の墓・行者の滝といった見どころがあるようだ。でも結界を張られちゃ仕方ない。トラマナも覚えてないし、おとなしく引き返したのだった、
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いくつか観光ホテルや日帰り入浴施設が存在する中で目を引いたのが日帰り温泉「山乃湯」。湯元温泉荘という名前で宿泊もやってるみたい(そちらの風呂は山乃湯とは別で宿泊者限定)。ともかくネットでは、泉質を絶賛する口コミと、古さ・管理状態を指摘する声と、評価は両極端に真っ二つ。
どうしよう、もし自分の嗜好に合わなければ相当ヤバそうだな、しかし…。どうしても気になって行ってみたのである。さてその結果はいかに。
犬鳴山温泉「山乃湯」へのアクセス
関空に背を向けて山奥へ
公共交通機関で犬鳴山温泉へ行くには、南海本線・泉佐野駅から犬鳴山行きのバスに乗る。運行は1時間に1本程度。自分は泉佐野駅徒歩15分の関空温泉ホテルガーデンパレスに泊まり、朝チェックアウトしてから駅まで歩いて、バスに乗った。終点まで40分弱。途中でJR阪和線・日根野駅を通るから、日根野駅を利用するならバスの乗車時間を15分ほど短くできる。日根野を過ぎるとだんだんのどかな雰囲気になってきて、ある分岐点から先は完全に田舎の風景になった。
泉佐野といえば関空=海上の未来都市的なイメージがあったけど、車窓の外に広がるのはそんなイメージの180度逆を行く、ノスタルジックな山里。落差がすごいね。
しょっぱなからディープな予感
終点でバスを降りる。山乃湯まではバスが通ってきた道をもっと先まで、あと1~2分歩く必要があった。短い距離とはいえ、歩道のない狭い道をトラックやワゴン車が結構ばんばん行き交うから、歩行者には辛い。はい、入口注意。「湯元温泉荘」の看板が出てる、こんな感じのところで左の坂を下っていきます。
マイカーで訪れる人こそ最大の要注意ポイントだろう。看板を見落として通り過ぎちゃったら、こんな道路だし、途中でUターンするところあるのかね。見落とさなかったとしても狭い急坂を下らなきゃいけない。大変そう。
一応駐車場はありまして、こんなの。サビ汚れた廃車が放置されていたりする。フォールアウト(終末世界を舞台にしたゲーム)もしくはゾンビ映画のワンシーンのようだ。
いろんな意味で味わい深い温泉
素朴すぎてほっこりする受付
さて入口の扉を開けて入ってみると、ロッカーがあったりビール瓶のケースが積んであったり、雑然とした中に受付が見当たらない。どこだ。「いらっしゃい」…思いもよらぬ方向から声がする。えっ、どこ? わからん。視線をあちこちさまよわせてようやく気づいた。左手の階段を上った2階フロアで、人の良さそうな可愛げのあるおばあちゃんが椅子に腰掛けていた。
階段を上がって料金を手渡す。入湯税込みで775円だったかな。壁に「釜飯あります」のポスターが貼ってあったので、入浴の後で食べたい旨を伝えると、どれくらい入浴するか時間を訊かれ、あがった頃にちょうど炊きあがるようにしてくれるとのことだった。ナイスサービス。
大阪では珍しい硫黄泉
再び1階へ下りて奥へ進むと下駄箱があり、男湯と女湯の入口があった。うむ、たしかに古い。汚れもあるけど自分基準だとまあ大丈夫だ。脱衣所も同様。洗面台の蛇口になぜか石鹸がなすりつけてあってベトベトだったけど、前の客がやらかしたんだろうか。自分的にはまだ大丈夫、こういう日もあらあな。掲示された分析書には「単純硫黄泉、低張性、アルカリ性、冷鉱泉」とあった。
浴室には先客1名あり。予想外だ。向こうもまさか独占状態が破られるとは思ってもみなかっただろう。お気の毒だけど堪えてくいやい。
熱めのお湯がオーバーフロー
カランはシャワー付きが2つとシャワーなしが2つ。共用のボディソープが1つだけ置いてあった。容器に黒カビっぽいものが付着しているけど自分的にはまだ大丈夫。シャンプーの類はなかった気がする。※カビじゃなくて後述の「黒い湯の花」かもしれない
あとは3名規模の内湯浴槽があるのみ。お湯はささ濁りで若干の硫黄臭がする。それが浴槽の縁からどんどんオーバーフローしていた。湯使いにこだわる人にはたまらんでしょうな。
期待を込めて浸かってみる。あちい。やや熱めのチューニングだがそのうち慣れてくる。湯口からは透明な湯が不純物を取るネットを通過して流れ込んでいるように見えるのだが、さわってみたら冷たかった。加温前の源泉かしら。加温したお湯は浴槽内の穴から噴き出している模様。
語らずにはいられない、すごい湯の花
お湯にヌルヌル・トロトロ感はたぶんあったような気がする。言い方が曖昧なのは別のもっと強い印象で記憶が上書きされちゃったからだ。大量に舞う湯の花だ。黒いのと白いのがある。白くて長い糸くず状のは見るからに湯の花。白と黒の小さい粒状のは、なんか湯垢にも見える。それで文句を言う人がいるんだろうか。湯の花だよな。そうだそうだそうに違いない。
黒くて大きいのはどうしても綿ぼこりに見えてしまう。掃除機をかけると中に綿ぼこりが圧縮されて溜まるアレを人差し指大に切り出してきた感じのが漂っていた。これはもう見た目からして、だめな人はだめだろうね。自分は気にしなかったが。「じゃあ食べてみろよ」と煽られても食べませんがね。
白くて大きい糸くずと黒くて大きい綿ぼこりが合体したキングまでいた。すげえ。量も形状も過去に経験のない湯の花だったので強く印象に残った。
山の景色も楽しめる
やがて先客は去り独占状態となった。広い窓から外に目をやると渓谷風の川と岩が見える。その背後には山。新緑や紅葉の季節はいい感じの景色になるだろう。熱めだから出たり入ったりを繰り返しながら、「大阪にはこれといった温泉がないんだよなー」(失礼)という先入観を覆す本格派の温泉を十分に堪能した。硫黄感があるのがいいね。
おっと、そろそろ釜飯をお願いした約束の時間だ。ていうか、それを意識して熱めのお湯なのをあえて粘ってたんだけどね。そろそろあがるとしよう。あーいいお湯だった。
休憩処とセットでさらに味わい深く
静寂の釜飯タイム
湯あがりにおばあちゃんのところへ行くと、釜飯できてますよ、と休憩処のテーブルを指さした。おおこれか。熱々でうまい。冷えたビールと共にいただく。たまりませんな。
いま現在、山乃湯にいるのは自分とおばあちゃんの二人だけのようだ。物音ひとつしない静かな時間がゆっくりと流れる。おばあちゃんは椅子に座ったまま読書しているようでいて、こっくりこっくり居眠りしている。いかにも印象派の絵画の題材になりそうだ。
…なんちゃって、おじさん芸術方面はさっぱりわかりません。印象派って言ってみたかっただけ。でも、なんとも味わい深い、ほっこりする時間・空間だったのは確か。おばあちゃん込みで、あの雰囲気は癖になりそう。
記憶に残る温泉
ゴールデンウィークとか紅葉のピークとか、客がたくさん来る日はおばあちゃん一人で対応できるのかが気になる。きっと手伝いの人、もしくは本当の店主がいるんだよね。きっとそうだそうに違いない。万人向けとはお世辞にも言えない山乃湯だけど、個人的にはお湯良し(もっとぬるければなお良し)、味のある雰囲気良し、で記憶に残る1湯となった。自分の嗜好にマッチしそう・湯の花の外見は許容できそうだと思われたら、繁忙期を外した静かな時期に少人数、できれば一人で出かけてみることをおすすめしたい。
おまけ:犬鳴山温泉街をちょっとだけ探検
帰り際に、バス停そばのY字路から山乃湯へ行く方ではない左側の道を行ってみた。こっちが犬鳴山や温泉街にアクセスする標準的な道っぽい。周囲は完全に山間部の風景。旅館や食事処がポツポツ並んでいるものの、異様にひっそりとしており、人の姿は数えるほどしか見かけない。さっき山乃湯でほっこりしたばかりだから、寂寥感というほどのものではないが、師走の冷たい風が吹き付ける中、ウキウキ気分とはいかない。
途中に犬鳴温泉センター(別館?)という日帰り温泉施設があった。宿泊もしようと思えばできるみたい。駐車場に繋がれてるワンちゃんが人間を見るとものすごくうれしそうに尻尾を振って近寄ってくる。やけにフレンドリーだな。なでたりして、しばし相手してあげた。
バス停から5分ほど歩くと、その先は本格的な山のハイキング&寺院の参道になる。むむ、なんか縄で結界を張ったみたいになってるぞ。ドラクエでいうトラマナの呪文がないと先へは進めないな。HPガンガン削られちゃう。
この奥には七宝瀧寺・義犬の墓・行者の滝といった見どころがあるようだ。でも結界を張られちゃ仕方ない。トラマナも覚えてないし、おとなしく引き返したのだった、
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