2018年暮れの関西にやって来たおじさん。旅の3湯目かつ1泊目の宿が京丹後市にある木津温泉「金平楼」だった。木津温泉の歴史は古く、1200年前に遡るともいわれる。どんなお湯なのか、ちょっと興味があった。
なおかつ訪れたのがちょうどカニの時期だった。冬=日本海=カニの図式は頭ではわかっていたけど、実際に現地で食べたことはない。それも楽しみの一つであった。
不思議とよく効く感じのするお湯と絶品のカニ。贅沢しちゃったけど、まあいいか。
経済的な理由もあった。木津温泉や近隣の夕日ヶ浦温泉の各宿は冬になると「カニ料理プラン」へ移行する(カニ以外のプランを提供しなくなるところも多い)。必然的に料金はお高くなり、1泊2食付きだと2万3万4万は当たり前。それだけの価値はあるんだろうけど…うーん…。
そんな中、当宿には1万円台半ばのプランがあった。しかも“おひとりさま”だって全然OK。加えて金平楼のホームページによれば電話予約で1000円キャッシュバックとある(カニのシーズン限定っぽい)。温泉とカニ、おじさんの財布で両方手に入れようと思えばここしかない。
東京方面からだと京都まで行き、福知山・宮津・天橋立を経由する東ルートと、福知山・豊岡を経由する西ルートが考えられる。大阪からなら西ルートだろうね。
自分は東ルートで途中、京丹後大宮の小野小町温泉と小天橋の久美浜温泉湯元館に立ち寄ってから、久美浜温泉始発のバスに乗って夕日ヶ浦木津温泉駅前で下車した。夕暮れ時の駅舎はこんな感じ。
雨が降っていたけど傘をささずに強行突破で金平楼へ到着した。
案内されたのは2階の8畳間+広縁の客室。畳数以上に広く感じたのは京間だから? とにかく一人で利用するには十分すぎるほどの広さだ。
ピカピカの築浅物件とはいかないけど、快適に過ごせるようによく手入れされている。冷蔵庫の中身は別途精算のお酒やドリンク。金庫はなかった気がする。WiFiもなくてテザリングでカバーした。
予約時にトイレ付きとトイレなしの部屋から選択できたので、ねんのためトイレ付きにしておいた。シャワートイレではなく、便座も温かくならないやつ。広縁のところに洗面台あり。
暖房はエアコンで。パワーは強力で、付けたらすぐに室内が暖かくなった。
最初に希望時間を訊かれる。基本的に早い者勝ちだから、まだ埋まってない時間から選ぶことになる。この日は比較的余裕があり、「極端な時刻しか空いてない」などということもなく、夕食の前と後と翌朝の3回分を押さえてもらった。
割り当ての時間になり前の人が出たのを確認されると、フロントから連絡が来るので、1階奥の風呂場へ行く。脱衣所に掲示されていた分析書には「単純温泉、低張性、弱アルカリ性、温泉」とあった。
お湯の見た目は清澄な無色透明。湯の花的なものは見られず。ヌルヌル感はなくサラッとしている。温泉らしい匂いを除けば沸かし湯と区別がつきにくい。でもなぜだかじわっと効いてくるのだ。「うあーキクー」と思わず声が出そうになる。体の芯まで温まり、いかにも疲れが取れそうな感触。
ドボドボとお湯が落ちるタイプの湯口はなく、側面から流し込んでいるようだ。投入量はなかなかの多さと思われ、湯船を出て1~2分休憩してまた入り直すと、半端ない量のお湯が一気にあふれ出すのがわかる。
そういえば朝6時台に入ったときは最初からぬるかったな。お湯のオーバーフローもなかったから溜め置き状態だったのかもしれない。温度的にはあれくらいがちょうどいい。
他にミニ露天風呂もある。外へ出る扉があったから開けてみたら、囲いに挟まれた、お湯を張っていない2名サイズの浴槽が見えた。その日は悪天候だから閉鎖しているとのことだった。
まあそれにしてもやけに「キクー」なお湯だったな。
種類とか産地とか、素人おやじが知ったかで語るのは危ないので、やめておきます。中央のが茹でたやつで、その右が刺身。奥にあるのは焼き用と鍋用のスタンバイ。女将による「カニのきれいな食べ方講座」あり。
刺身を食べてみた。なんじゃこりゃあ。トロリとして甘い。舌の上で溶けるような食感。カニの刺身ってこんな味だったのかー。まったく縁がなかったから知らなかったわ。おそろしすぎる美味だ。
それから焼きガニ。部屋に持ち込んだ炭火焼き装置で女将自ら焼いてくれる。殻が赤くなったら食べ頃だ。熱を通したカニの身はまた別種のおいしさがある。ほっとする温かさがあるし、うまみが増したような気がして、茹でより好きかも。
カニを食べる者はみな無口になるというが、やはり自分もカニに夢中になってまわりが見えなくなっていった。お供のビールもそこそこに一心不乱にカニの身をほじくり出す。
とどめは鍋の汁で作ったカニ雑炊。ふんわり玉子とカニの風味。あーやばいやばいやばい。幸せすぎる。
デザートの果物と漬物以外はすべてカニメニュー。最初から最後までカニだけで完結する食事なんて初めてだ。しかもカニがこんなに美味なるものだったなんてね。ちくしょう、節足動物のくせにやってくれるぜ。
玉子焼きがでかくてうまい。テレビで朝ドラ「まんぷく」を見ながらのんびりと食べ進み、こちらもすっかり満腹。栄養は十分に摂取したからダネイホンは要りません。
木津温泉や夕日ヶ浦温泉は、冬はカニ・夏は海水浴が主要テーマになるようだ。近辺には夕日ヶ浦の海岸はもちろんのこと、天橋立や丹後半島、小天橋を擁する久美浜湾などがあり、今回は雨のせいで手も足も出なかったが、あちこち見どころのあるエリアである。
もし当エリアへの旅に温泉要素を求めるなら、そして昭和の懐かしテイストを好むならなおさら、駅近でリーズナブルな金平楼を検討してみてはいかがだろうか。
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なおかつ訪れたのがちょうどカニの時期だった。冬=日本海=カニの図式は頭ではわかっていたけど、実際に現地で食べたことはない。それも楽しみの一つであった。
不思議とよく効く感じのするお湯と絶品のカニ。贅沢しちゃったけど、まあいいか。
木津温泉「金平楼」へのアクセス
おひとりさまOKのリーズナブルな旅館
金平楼は「日本一周3016湯」(高橋一喜、幻冬舎新書、2014)という本の中で紹介されていた。本を出すほどの温泉通が宿泊先に選んだのだから間違いはあるまい、との見立てで自分も真似して泊まってみることにした。経済的な理由もあった。木津温泉や近隣の夕日ヶ浦温泉の各宿は冬になると「カニ料理プラン」へ移行する(カニ以外のプランを提供しなくなるところも多い)。必然的に料金はお高くなり、1泊2食付きだと2万3万4万は当たり前。それだけの価値はあるんだろうけど…うーん…。
そんな中、当宿には1万円台半ばのプランがあった。しかも“おひとりさま”だって全然OK。加えて金平楼のホームページによれば電話予約で1000円キャッシュバックとある(カニのシーズン限定っぽい)。温泉とカニ、おじさんの財布で両方手に入れようと思えばここしかない。
鉄道派にはうれしい立地
金平楼の最寄り駅は京都丹後鉄道・夕日ヶ浦木津温泉。駅から徒歩5分とかからない。悪天候でも強行突破できる距離だ。鉄道旅のおじさんにとって、駅からの近さも選んだ理由の一つ。東京方面からだと京都まで行き、福知山・宮津・天橋立を経由する東ルートと、福知山・豊岡を経由する西ルートが考えられる。大阪からなら西ルートだろうね。
自分は東ルートで途中、京丹後大宮の小野小町温泉と小天橋の久美浜温泉湯元館に立ち寄ってから、久美浜温泉始発のバスに乗って夕日ヶ浦木津温泉駅前で下車した。夕暮れ時の駅舎はこんな感じ。
雨が降っていたけど傘をささずに強行突破で金平楼へ到着した。
昭和の趣だけど快適な部屋
ではチェックイン。ホームページで触れられている通り、館内は昭和の趣が感じられる。とはいえ単にボロいというのではなく、21世紀風じゃないというだけであり、個人的にこういうのは嫌いじゃない。案内されたのは2階の8畳間+広縁の客室。畳数以上に広く感じたのは京間だから? とにかく一人で利用するには十分すぎるほどの広さだ。
ピカピカの築浅物件とはいかないけど、快適に過ごせるようによく手入れされている。冷蔵庫の中身は別途精算のお酒やドリンク。金庫はなかった気がする。WiFiもなくてテザリングでカバーした。
予約時にトイレ付きとトイレなしの部屋から選択できたので、ねんのためトイレ付きにしておいた。シャワートイレではなく、便座も温かくならないやつ。広縁のところに洗面台あり。
暖房はエアコンで。パワーは強力で、付けたらすぐに室内が暖かくなった。
歴史ある木津温泉を体験
貸切風呂のような運用
一般的な旅館の風呂は、定められた時間内であればいつでも好きなときにどうぞ、ってなものだ。一方、金平楼は疑似貸切風呂というか、30分単位で1組ずつ入るようになっている。最初に希望時間を訊かれる。基本的に早い者勝ちだから、まだ埋まってない時間から選ぶことになる。この日は比較的余裕があり、「極端な時刻しか空いてない」などということもなく、夕食の前と後と翌朝の3回分を押さえてもらった。
割り当ての時間になり前の人が出たのを確認されると、フロントから連絡が来るので、1階奥の風呂場へ行く。脱衣所に掲示されていた分析書には「単純温泉、低張性、弱アルカリ性、温泉」とあった。
体の芯まで温まる、やけに効くお湯
浴室内は微弱ながら温泉らしい温泉の匂いが立ち込めていた。100%源泉かけ流しとのことである。洗い場は3名分。幅よりも奥行きが長い浴槽は、幅方向に体を向けて奥行き方向に並ぶことで4名まで入れそうなサイズ。お湯の見た目は清澄な無色透明。湯の花的なものは見られず。ヌルヌル感はなくサラッとしている。温泉らしい匂いを除けば沸かし湯と区別がつきにくい。でもなぜだかじわっと効いてくるのだ。「うあーキクー」と思わず声が出そうになる。体の芯まで温まり、いかにも疲れが取れそうな感触。
ドボドボとお湯が落ちるタイプの湯口はなく、側面から流し込んでいるようだ。投入量はなかなかの多さと思われ、湯船を出て1~2分休憩してまた入り直すと、半端ない量のお湯が一気にあふれ出すのがわかる。
ミニ露天風呂もあるよ
温度はやや熱めに調整されていた。奥の壁に熱い/冷たいの2つの栓が取り付けてあり、ぬるくしたければ冷たい方の栓をひねると、蛇口から冷めた源泉(?)が出てくる。ぬるめが好きなので重宝しました。そういえば朝6時台に入ったときは最初からぬるかったな。お湯のオーバーフローもなかったから溜め置き状態だったのかもしれない。温度的にはあれくらいがちょうどいい。
他にミニ露天風呂もある。外へ出る扉があったから開けてみたら、囲いに挟まれた、お湯を張っていない2名サイズの浴槽が見えた。その日は悪天候だから閉鎖しているとのことだった。
まあそれにしてもやけに「キクー」なお湯だったな。
部屋食で楽しむ金平楼の食事
夕食は夢のカニづくし
さあお楽しみ、カニづくしの夕食だ。おひとりさまでも部屋食になる。まずスターティングメンバーがこれ。種類とか産地とか、素人おやじが知ったかで語るのは危ないので、やめておきます。中央のが茹でたやつで、その右が刺身。奥にあるのは焼き用と鍋用のスタンバイ。女将による「カニのきれいな食べ方講座」あり。
刺身を食べてみた。なんじゃこりゃあ。トロリとして甘い。舌の上で溶けるような食感。カニの刺身ってこんな味だったのかー。まったく縁がなかったから知らなかったわ。おそろしすぎる美味だ。
一心不乱にカニと格闘
続いて茹でガニをいただく。おお、味がしまっていて濃い。今まで水っぽいのを食すことが多かったから(貧相な食体験しかないもんでね…)、ある意味新鮮だった。大衆がカニというとテンションが上がるのはこの水準を知っているからだったのか。この歳にして大衆の気持ちがわかった(下から目線です)。それから焼きガニ。部屋に持ち込んだ炭火焼き装置で女将自ら焼いてくれる。殻が赤くなったら食べ頃だ。熱を通したカニの身はまた別種のおいしさがある。ほっとする温かさがあるし、うまみが増したような気がして、茹でより好きかも。
カニを食べる者はみな無口になるというが、やはり自分もカニに夢中になってまわりが見えなくなっていった。お供のビールもそこそこに一心不乱にカニの身をほじくり出す。
やばすぎるシメのカニ雑炊
その間に女将が鍋を作ってくれた。カニの出汁がしみ込んだ野菜がうまい。鍋に投入したカニは鍋が仕上がったら取り出され、もちろん全部ほじくっていただきました。とどめは鍋の汁で作ったカニ雑炊。ふんわり玉子とカニの風味。あーやばいやばいやばい。幸せすぎる。
デザートの果物と漬物以外はすべてカニメニュー。最初から最後までカニだけで完結する食事なんて初めてだ。しかもカニがこんなに美味なるものだったなんてね。ちくしょう、節足動物のくせにやってくれるぜ。
やさしい朝食で満腹
朝はあっさり和定食。前夜がおそろしいまでのカニづくしだったから、これくらいでちょうどいい。玉子焼きがでかくてうまい。テレビで朝ドラ「まんぷく」を見ながらのんびりと食べ進み、こちらもすっかり満腹。栄養は十分に摂取したからダネイホンは要りません。
木津温泉や夕日ヶ浦温泉は、冬はカニ・夏は海水浴が主要テーマになるようだ。近辺には夕日ヶ浦の海岸はもちろんのこと、天橋立や丹後半島、小天橋を擁する久美浜湾などがあり、今回は雨のせいで手も足も出なかったが、あちこち見どころのあるエリアである。
もし当エリアへの旅に温泉要素を求めるなら、そして昭和の懐かしテイストを好むならなおさら、駅近でリーズナブルな金平楼を検討してみてはいかがだろうか。
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