佐渡観光の拠点として、お値段以上 - 椎崎温泉 ホテルニュー桂

椎崎温泉 ホテルニュー桂
佐渡島へ行きたいとの要望を受けて成立した秋のグループ旅行。佐渡に温泉のイメージがなかったから、旅に温泉要素を求めたい自分には正直どうなんだろうと思ったが、調べてみると島内にいくつか温泉地があるようだった。

その中で選んだ宿が椎崎温泉「ホテルニュー桂」。メンバーの意向により、今回は湯めぐりよりも観光重視の旅だったので、腰を据えて2連泊とした。

当宿の売りは部屋から見えるのどかな加茂湖と、食べきれないほどの海の幸を中心とした地産地消料理。お値段以上である。温泉は、ぬる湯とまでは言えないものの、やや低めの適温で入りやすく、なおかつ出た後はいつまでも身体がポカポカする。結構でございますな。

椎崎温泉・ホテルニュー桂へのアクセス

佐渡島の地図を見ると両津のあたりに佐渡空港というのがあるけど、残念ながら現在運行されている航空便はない。一般には新幹線で新潟へ行って、新潟駅万代口から佐渡汽船行きのバスで10分ちょっとの船乗場へ。バスは1時間に3~4本、なんにせよ接続には十分に余裕を見ておこう。

そこからはカーフェリーだと2時間半、ジェットフォイルなら約1時間の船旅。ジェットフォイルには初めて乗ったが、速いだけでなく揺れが少ない。船酔いを誘うユッサユッサした上下動がないのがいい。

新潟の港を出た直後から佐渡の島影が見える。ボーッと見ている内に影はどんどん大きく、ディテールがはっきりしてきて、気がつけばもう接岸態勢。あっという間の快適な船旅だった。

到着した両津港からホテルニュー桂までは車で5~6分。送迎のマイクロバスを手配して乗せてもらうがよかろう。我々は観光タクシーでトキの姿を追い求めた後、ホテルまで送り届けてもらった。


加茂湖が広がる、眺望の良い部屋

チェックインしてロビーでしばし待つ。窓の向こうには加茂湖が広がっている。なかなか恵まれたロケーションだ。やがて案内されて入った部屋は本館4階の10畳+広縁の和室。

いきなり各メンバーが好きな場所でくつろぎ始めちゃって、人物なしの室内写真をいいアングルで撮れなかったため、2枚に分けて掲載。まず窓側。
ホテルニュー桂の部屋
そして入口側。
ホテルニュー桂の部屋
洗面所・シャワートイレ付き。トイレはちょっと臭うのと、ガガガガッという振動音がするのは、換気まわりがいくぶん怪しくなってたのかな。今は直っているかもしれない。我々は気にせず普通にすごした。

金庫あり。別精算の酒・ドリンクが入った冷蔵庫あり。庫内には500mlペットボトル数本を入れるくらいの余裕はある。自分は利用しなかったけどフリーWiFiもある。

窓から見えるのは一面に広がる加茂湖。ちょうど夕日が沈んでいくところで、いい雰囲気だった。
夕暮れの加茂湖

ホテルニュー桂のお風呂・別館編

長い廊下の先にある別館大浴場

連泊だからいくらでも風呂に入れるぜと油断していたら、団体行動に流されて夕方・朝・夕方・朝と、2泊3日で4回しか入れなかった。情に棹させば流されるってやつ。

ホテルニュー桂では環境保護の一環として、タオルのリユースに取り組んでいる。だから各地の旅館でよくあるようにタオルを持ち帰ることはできない。そのかわりと言っちゃなんだが、タオルは真っ白でなくベージュっぽい色が淡く入り、やや厚手のしっかりしたものであった。

大浴場は本館地階と別館1階に分かれており、時間で男湯と女湯が切り替わる。2泊とも夕方は別館が男湯だった。この別館への移動が結構長い。右へ左へ折れながらどこまでも続く廊下を進む。※下の写真は朝食の際に会場への移動時に撮ったもの。スマホを持って風呂場へ行ったわけではない。
別館へ続く廊下
廊下の途中に美術品が陳列されていた。
ホテルニュー桂 廊下の展示品

新しい雰囲気の風呂場

ふー、やっと着いた。廊下のつきあたりの暖簾をくぐって脱衣所へ。別館は総じて本館よりも新しい雰囲気で、風呂場も例外ではない。最終的に好みの問題とはいえ風呂に関しては、おおむね別館の方に人気が集まるものと予想される。

脱衣所の窓から花をつけたそばの畑と刈り取りのすんだ田んぼが見えた。あそこにトキが降り立つのが見えたらロマンチックだな…まあ現実はそんなに甘くない。

掲示されている分析書には「ナトリウム-塩化物泉、弱アルカリ性、低張性、高温泉」とあった。いわば海水みたいな温泉だ。加水なし、加温・循環・消毒あり。

円形の内湯はややぬるめ

浴室は円形の洒落たつくり。湾曲した壁に沿って12台のカランが並び、中央に円形のタイル張り浴槽があった。8名規模のやや深い浴槽の中心には、これまた円形の湯口があって、ゆったりとお湯があふれ出していた。

お湯の見た目は無色透明で湯の花は見られず。入ってみるといくぶんぬるめの適温。40℃とみた。これくらいだとゆっくり浸かれるからありがたい。お湯をすくって鼻を近づけると、消毒の塩素臭はとくに意識されず、この泉質にありがちな匂いを感知した。

かすかにヌメリのあるお湯に浸かっていると、ギャアとグワッの中間のような連続音による鳥の鳴き声があたりに響いた。カラスとは微妙に違う。もしやトキか?! トキの鳴き声はカラスに近いという説明だったしな、と勝手に想像を膨らませるも、正体は結局わからずじまい。

人が集まる人気の露天風呂

浴室に隣接して露天風呂もある。4名で芋洗い状態になる大きさだが、タイル張り浴槽の縁に木が使われており、雰囲気はいい。また縁の一部に切り欠きがあって源泉かけ流し風の演出になっている(実際はそこからお湯があふれ出るまではいかず、そうなる前に循環口から吸い込まれているようだ)。

外は木立ちや草の茂みが重なりあって、それが目隠しの役割を果たしていると思われる。なので加茂湖や両津湾の海がドーンと見えるとかはない。

別館の露天風呂だけ、入ってしばらくすると二の腕のうぶ毛に細かい泡が付着していたのは、目の錯覚だろうか。内湯や本館の風呂では見かけなかったなあ。ともかく夕方に見た限りでは、人がよく出入りする人気の露天風呂であった。


ホテルニュー桂のお風呂・本館編

広く使える内湯

朝は本館地階の大浴場が男湯となる。入浴時間は6時から9時までだから入りそびれないように気をつけましょう。

初見はちょっと面食らった。脱衣所が2箇所あるのだ。その先は同じ浴室につながっており、浴室内にも内湯浴槽が2箇所。変わったレイアウトだ。

…謎が解けたぜ。もともとは浴室の中央が壁で仕切られて男湯・女湯にわかれていたに違いない。別館ができたときに仕切り壁を取り去って、いわば二間続きにしたってわけだ。

おかげで現在の浴室は広々としており、14台あるカランが埋まる事態は考えられない。浴槽の一方は6~7名規模でお湯の特徴は別館と同じ。ゆっくりゆったり入るにはちょうどいいお湯。朝食後の8時台に行ったら誰もいなくて完全独占だったからなおさらだ。

他方の浴槽はひと回り小さい。お湯は基本的に同じだけど一段階熱くなっているように感じた。自分はほとんど利用せず。

屋外的要素は別館以上の露天風呂

本館側にも露天風呂がある。別館の露天風呂が建物の窪みにすぽっと収まった感じなのに対して、こちらは堂々と外に出ている感じ。屋根はついている。

サイズはやはり大きいものではなく定員3名といったところ。独占状態だったからサイズなど関係なくのびのびと入らせてもらったが、途中で蜂が1匹にじり寄って来たため、やむなく撤退した。泣く子と地頭と蜂と熊には勝てぬでな。

総論としては、温泉マニア、ことに源泉かけ流しファーストを貫く人はいろいろ言いたくなるかもしれないが、一般には十分に温泉気分を楽しめる風呂だといえよう。


ボリュームたっぷり、品数いっぱいのお食事

いきなりカニがキター!…夕食その1

ホテルニュー桂の夕食は本館1階の大広間で。18時を標準として、開始時間に多少の融通はきくようだ。たとえば近所の神社で夜に薪能を開催する日があり、見学したいから夕食時間を早めの17時半にする、といったカスタマイズが可能。

行ってみると部屋ごとにテーブル席が用意されていた。初日のスターティングメンバーがこれ。あとは御飯と味噌汁。
ホテルニュー桂 夕食1
ズワイガニ丸々1匹てのがすごい。皆しばらくはカニにかかりきりで、言葉を発することもなくひたすら身をほじくっていた。刺身はプリプリでうまい。鍋の中身は、なんだっけ、イカの丸焼きだったと思う。

なんにせよお腹いっぱいだ。品数とボリュームがやばい。デザートは佐渡のブランド「おけさ柿」のシャーベット。おけさ柿には、かためのときに食べる・柔らかくなったら食べる・冷凍してシャーベットにして食べる、の3通りの食べ方があるそうな。

ながもに目覚めた…夕食その2

2日目のスターティングメンバーがこれ。あとは御飯と味噌汁とムースっぽいデザート。この日も品数とボリュームがやばい。食べきるのに初日以上に手こずった。
ホテルニュー桂 夕食2
鍋の中身は牡蠣。加茂湖で牡蠣を養殖しているという話だから、それかもしれない。2つの牡蠣殻の各々に身が2つずつ、計4つ入っていた。出血大サービスね。

こういうメニューに囲まれると揚げ物の存在感が薄くなってしまうが、食べてみると海老のすり身揚げのようなやつで、ちょっと癖になりそうな味。また、味噌汁の具の「ながも」という海藻が結構いける。あるメンバーはながもをいたく気に入ってお土産に買い求めていた。

しそジュースが好評…朝食その1

朝食は別館1階の宴会ホールでバイキング。7時開始の8時半終了。長テーブルの適当な位置を自由に陣取る。天気が良ければ外のテラス席も利用できる。

2日目の朝に取ってきたのがこれ。ご飯はお腹にやさしい茶粥を選択。
ホテルニュー桂 朝食1
しそジュースが甘くてさっぱりしてメンバー内で好評だった。おかわりしようとしたら下げられちゃってて補充もされず。残念。

おおむね前日と同じ…朝食その2

3日目の朝がこれ。この日のジュースはしそではなくりんご。
ホテルニュー桂 朝食2
温泉玉子がないとか、ジュースや焼き魚の種類とか、微妙な違いはあるものの、おおむね前日と同じ料理が提供される。基本は和食であり、パン・洋食志向でお膳を組み立てるのは難しい。

なお、食後のコーヒーはありません。本館ロビーの一角にコーヒーを提供するコーナーがあるから(400円)、そちらをどうぞということだろう。


館内ミニ朝市もあるよ

ロビー横にはお土産売店があるのだが、それとは別に朝6時半から朝市と称して主に海産物を売っている。ながも・のしイカ・塩辛・焼き鮭パックなど。家で自炊しない自分は扱いに困るので買わないが、見ていると多くの客が興味深そうに覗き込み、喜々として買っていった。人気あるね。

最後のチェックアウト前に昼の明るい加茂湖を撮影。
加茂湖
ホテルニュー桂は昔ながらの観光旅館の風情を残しつつ、今風のスタイルにもそれなりに対応し、立地もいいので佐渡島観光の拠点として十分候補になり得る。

周辺でトキを見かけることもあるという話だし、たしかにそんな雰囲気はある。朝の散歩でトキと遭遇した! なんて出来すぎのストーリーを体験してみたかったなあ。でも朝は風呂だ食事だで散歩の余裕がなかった。早起きは三文の徳ということわざが身にしみる。