函館観光といえば、函館山からの夜景や異国情緒の元町エリアや五稜郭が代表的なスポットになるだろう。だが「函館市」のくくりで考えれば、見どころは他にもある。東部の戸井・恵山エリアだ。
北海道だからなのか、梅雨前線をものともしない晴れ間・ただし強風が吹く中、函館に集結した我らグループの面々はレンタカーで東を目指した。ゴー・ゴー・イースト! ニンニキニキニキ・ニンニンニン。
道中は津軽海峡を横目に見ながらのドライブであり、奇景・絶景が随所に現れる面白いルートだった。
そしてその渡島半島も北海道全体から見れば南西にニョキッと突き出た半島である。半島の中の半島の中の半島…マトリョーシカ人形というか、フラクタルというか、とにかく我々は小半島の枠を超えて中半島スケールの周遊に出たわけである。
まずは腹ごしらえ。函館駅すぐの朝市にある有名店・きくよ食堂で、うに・いくら・ほたて丼をいただく。おおうまい。特にうにの鮮度が違うね、って、普段うになんて食べないくせにわかったような顔で論評するおじさん。うれしくて調子に乗っちゃいました。
それから戸井地区を目指してひたすら海沿いの恵山国道を東進する。地形と沿道の雰囲気から日高門別や新冠や静内をドライブしたときのことを思い出した。
戸井未成線は函館-戸井間を結ぶ鉄道として計画され、戦時中に建設が進められたものの、未完成のまま中断。戦後も復活することなく中止されて終わった「幻の鉄道路線」だ。
自分は決して鉄ちゃんではないが、こうした背景のストーリー付きだと感慨深い思いで見ることができる。
もっと先へ行くと、もっと本格的な未成線跡が待っている。アーチ型の橋脚だ。老朽化が進んで崩落の危険があるというが、橋脚の直下に建つお宅はかなり不安を感じてるんじゃないの。大丈夫なのかね。
橋脚の向かいには津軽海峡が広がっている。遠くにうっすらと下北半島が見えた。天気晴朗なれども波高し。
当地をグーグルマップで調べると、まるでトンネルの中にあるかのように見える。グーグルマップで位置のあたりをつけただけの知識で行こうとしていた我々は、どういうこっちゃと思いつつトンネルを通ったけど、もちろん何もない。往路でも復路でも目指す展望台を発見することはできなかった。
真相はこうだった。展望台はトンネルが貫く崖の上にあるのだ。グーグルマップをどんどん拡大していくと、当地からのびる薄ーい細ーい歩道(?)が表示される。歩道は海岸からやや離れた位置で、恵山国道より枝分かれしてきた細い車道にぶつかって終わる。
我々は反対側(函館市街寄り)の枝分かれ道に入ろうとして、あまりの道の狭さにすぐ断念して引き返した。それは結果的にいい判断だった。後日グーグルストリートビューで調べたら、我々が行こうとした道はどんどん狭くなって、最後は人が歩く幅しかない砂利道となる。その時点で失敗に気づいても車を転回させるスペースはない。あぶねー。
恵山側の枝分かれ道は、狭いことは狭いし、途中に道なりでなく左折しないといけない罠はあるが、車で行ける最低限の幅はある舗装道だ。ストリートビューによれば。
いきなり日浦洞門と呼ばれるすごいトンネル群が現れた。1車線幅で崖をくり抜いた素朴感あふれるトンネルの列。
崖にはネットがかけられ、落石注意の看板があちこちに立っている。トンネルを抜けた先には、人工的に作ったんでしょと突っ込みたくなるような(でも天然です)、不自然極まりない模様の絶壁が見える。あれが道南金剛だ。
近くまで行ってみてもやっぱり不自然だけど実際は柱状節理なる自然現象らしい。こんな形状がうまいことできるもんだね。
道南金剛から先ほどの日浦洞門方面を望む。海の中に取り残された岩にも柱状節理が現れていた。
ここの屋上にはちょっとしゃれたウッドデッキがあり、上がっていくと目の前にビーチが広がり、遠方には恵山の姿を拝むことができる、なかなかのパノラマスポットなのである。
隣接してキャンプ場もある。そこでは日帰りでBBQを楽しむこともできるようだ。砂浜が近い、というかまさにそこが砂浜だし、ファミリーで遊びに来るにはちょうどいいんじゃないかなと思った。
人気店らしく、昼時になると客がひっきりなしにやって来る。すぐに「ただいま満席です」ってことになるわけだが、待たされ上等みたいな感じでみんな待つ方を選択する。じゃあいいやと他へ行く者がいない。
きっと安くて美味しいに違いない。我らも待たされ上等を経た後、なんとか席についた。メニューは海鮮系の定食(数量限定)・中華・ラーメン・カレーなど。函館といえばという短絡的な考えで塩ラーメンを注文してみた。
塩らしくあっさりしててうまい。ラーメン通じゃないんで、こんな感想でご勘弁。自分としては朝がっつり食べてたからそんなに空腹でなかった割にはスルスルと完食できたし、お高めの観光地プライスということもなく、地元向けの良心的な価格だった。
かなりの勾配を持つくねくねカーブは小型のレンタカーにはちときつい。アクセルを踏み込んで進んでいくとやがて展望台に着いた。いまだ理解が混乱しており確証はないが、恵山山頂への登山道の途中にあるのが恵山展望台で、車で行けるこの場所は海峡展望台という別物のようだ。恵山の特徴的な山肌が近くに見える。
津軽海峡もよく見える。下北半島が蜃気楼のように浮かび上がっていた。
恵山は活火山。あちこちに噴気孔があって煙を上げていた。いわゆる地獄地帯ですな。色合い的には少し前の体験と重ね合わせて「視界が開けた姥湯温泉」と言いたくなってしまう風景だ。迫力たっぷりで、こりゃすごいわ。
そして風が強い。こりゃたまらん。まともに立っていられないほどだ。そんな強風の中を山頂へ向けて歩いていくグループとすれ違った。よう頑張るなあ。お気をつけて。
この後は恵山の北側に回り込んで、旧椴法華村の水無海浜温泉を見たりホテル恵風に立ち寄り入浴したりしたが、これらについては別記事で。
奥にある建物は荘厳で気高い感じ。俗にまみれたおじさんの心も洗われるようですなー。右側の壁の向こうは一般非公開エリアで立ち入ることはできない。
最後の最後に函館山の碧血碑。箱館戦争における旧幕府軍兵の慰霊碑だ。現地にはものすごい大量のヤブ蚊の群れが待ちかまえていて、あっという間に体中を刺されまくった。ちくしょー、俺の血は碧くないぞ。
ふう、盛りだくさんで「やりきった感」に満たされた周遊だったな。
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北海道だからなのか、梅雨前線をものともしない晴れ間・ただし強風が吹く中、函館に集結した我らグループの面々はレンタカーで東を目指した。ゴー・ゴー・イースト! ニンニキニキニキ・ニンニンニン。
道中は津軽海峡を横目に見ながらのドライブであり、奇景・絶景が随所に現れる面白いルートだった。
第1章:函館市街からの旅立ち
朝市で腹ごしらえ
一般に夜景とともにイメージされる市街地としての「函館」は亀田半島からニョキッと突き出た小半島のような地形にある。亀田半島の東部が今回目指す戸井・恵山で、その亀田半島はもっと大きな渡島半島からニョキッと突き出た中半島みたいなものだ。そしてその渡島半島も北海道全体から見れば南西にニョキッと突き出た半島である。半島の中の半島の中の半島…マトリョーシカ人形というか、フラクタルというか、とにかく我々は小半島の枠を超えて中半島スケールの周遊に出たわけである。
まずは腹ごしらえ。函館駅すぐの朝市にある有名店・きくよ食堂で、うに・いくら・ほたて丼をいただく。おおうまい。特にうにの鮮度が違うね、って、普段うになんて食べないくせにわかったような顔で論評するおじさん。うれしくて調子に乗っちゃいました。
最初は函館山
エネルギー充填120%でレンタカー屋を出発。どういうわけか「まず函館山からの朝景(?)を見よう」という話になり、前の晩に行ったはずの函館山展望台に再びやって来た。やっぱり朝は人が全然いない。ワンパターンは承知の上で、例のくびれの地形の朝バージョンを貼っておきますね。それから戸井地区を目指してひたすら海沿いの恵山国道を東進する。地形と沿道の雰囲気から日高門別や新冠や静内をドライブしたときのことを思い出した。
第2章:遺構へ行こうよ、戸井エリア
戸井未成線跡を追って
「ここが戸井未成線跡です」というメンバーのコメントとともに車を止めた場所にはコンクリートの橋桁がポツポツと並んでいた。つまりは作りかけで放置されてるってことね。戸井未成線は函館-戸井間を結ぶ鉄道として計画され、戦時中に建設が進められたものの、未完成のまま中断。戦後も復活することなく中止されて終わった「幻の鉄道路線」だ。
自分は決して鉄ちゃんではないが、こうした背景のストーリー付きだと感慨深い思いで見ることができる。
もっと先へ行くと、もっと本格的な未成線跡が待っている。アーチ型の橋脚だ。老朽化が進んで崩落の危険があるというが、橋脚の直下に建つお宅はかなり不安を感じてるんじゃないの。大丈夫なのかね。
橋脚の向かいには津軽海峡が広がっている。遠くにうっすらと下北半島が見えた。天気晴朗なれども波高し。
謎の観光スポット・武井の島展望台
さてお次は戸井漁港近くの「武井の島展望台(憩いの丘公園)」。結論から言うと行けずに終わったのだが、ここはぜひともコメントしておかねばなるまい。当地をグーグルマップで調べると、まるでトンネルの中にあるかのように見える。グーグルマップで位置のあたりをつけただけの知識で行こうとしていた我々は、どういうこっちゃと思いつつトンネルを通ったけど、もちろん何もない。往路でも復路でも目指す展望台を発見することはできなかった。
真相はこうだった。展望台はトンネルが貫く崖の上にあるのだ。グーグルマップをどんどん拡大していくと、当地からのびる薄ーい細ーい歩道(?)が表示される。歩道は海岸からやや離れた位置で、恵山国道より枝分かれしてきた細い車道にぶつかって終わる。
罠だらけの道
逆方向から考えると、恵山国道→枝分かれ道→終点(車を置いて歩く)→歩道→展望台、が正解ルートってわけ。ただ一点罠があって、恵山国道からの枝分かれ道はトンネルの両側に存在するのだが、武井の島展望台へ行くなら恵山側からアプローチしよう。我々は反対側(函館市街寄り)の枝分かれ道に入ろうとして、あまりの道の狭さにすぐ断念して引き返した。それは結果的にいい判断だった。後日グーグルストリートビューで調べたら、我々が行こうとした道はどんどん狭くなって、最後は人が歩く幅しかない砂利道となる。その時点で失敗に気づいても車を転回させるスペースはない。あぶねー。
恵山側の枝分かれ道は、狭いことは狭いし、途中に道なりでなく左折しないといけない罠はあるが、車で行ける最低限の幅はある舗装道だ。ストリートビューによれば。
第3章:迫力の自然がいっぱいの恵山エリア
絶対に行くべき絶景スポット・道南金剛
行かなかったスポットについてずいぶん熱く語ってしまった。お次は道南金剛。ここは絶景好きならぜひとも行くべし。恵山国道のバイパストンネルへ行かずに海沿いの旧道と思われる道道41号の方へ入る。いきなり日浦洞門と呼ばれるすごいトンネル群が現れた。1車線幅で崖をくり抜いた素朴感あふれるトンネルの列。
崖にはネットがかけられ、落石注意の看板があちこちに立っている。トンネルを抜けた先には、人工的に作ったんでしょと突っ込みたくなるような(でも天然です)、不自然極まりない模様の絶壁が見える。あれが道南金剛だ。
近くまで行ってみてもやっぱり不自然だけど実際は柱状節理なる自然現象らしい。こんな形状がうまいことできるもんだね。
道南金剛から先ほどの日浦洞門方面を望む。海の中に取り残された岩にも柱状節理が現れていた。
恵山とビーチを望む道の駅「なとわ・えさん」
なんかすごいもの見ちゃったなー、と感嘆しながら恵山国道に合流してしばらく行くと、道の駅「なとわ・えさん」に着いた。ここの屋上にはちょっとしゃれたウッドデッキがあり、上がっていくと目の前にビーチが広がり、遠方には恵山の姿を拝むことができる、なかなかのパノラマスポットなのである。
隣接してキャンプ場もある。そこでは日帰りでBBQを楽しむこともできるようだ。砂浜が近い、というかまさにそこが砂浜だし、ファミリーで遊びに来るにはちょうどいいんじゃないかなと思った。
人気の食事処「菜の花」
道の駅でお土産品とソフトクリーム的なものは売っているようだけど、残念ながら食事は提供していない。でも心配いらない。すぐ隣に「菜の花」という食事処がある。道の駅の一部ではない、独立した店舗だ。人気店らしく、昼時になると客がひっきりなしにやって来る。すぐに「ただいま満席です」ってことになるわけだが、待たされ上等みたいな感じでみんな待つ方を選択する。じゃあいいやと他へ行く者がいない。
きっと安くて美味しいに違いない。我らも待たされ上等を経た後、なんとか席についた。メニューは海鮮系の定食(数量限定)・中華・ラーメン・カレーなど。函館といえばという短絡的な考えで塩ラーメンを注文してみた。
塩らしくあっさりしててうまい。ラーメン通じゃないんで、こんな感想でご勘弁。自分としては朝がっつり食べてたからそんなに空腹でなかった割にはスルスルと完食できたし、お高めの観光地プライスということもなく、地元向けの良心的な価格だった。
山腹の絶景スポット・海峡展望台
恵山国道は道の駅の先で恵山を回り込むように内陸寄りに進路を取る。国道から分岐してなおも海沿いを行く道は御崎という町で行き止まりになるのだが、行き止まりの手前から恵山に取り付く道に入ることができる。かなりの勾配を持つくねくねカーブは小型のレンタカーにはちときつい。アクセルを踏み込んで進んでいくとやがて展望台に着いた。いまだ理解が混乱しており確証はないが、恵山山頂への登山道の途中にあるのが恵山展望台で、車で行けるこの場所は海峡展望台という別物のようだ。恵山の特徴的な山肌が近くに見える。
津軽海峡もよく見える。下北半島が蜃気楼のように浮かび上がっていた。
活火山のパワーを見せつける恵山
道を登りきったところが火口駐車場。ここから歩きの登山道が始まる。恵山は活火山。あちこちに噴気孔があって煙を上げていた。いわゆる地獄地帯ですな。色合い的には少し前の体験と重ね合わせて「視界が開けた姥湯温泉」と言いたくなってしまう風景だ。迫力たっぷりで、こりゃすごいわ。
そして風が強い。こりゃたまらん。まともに立っていられないほどだ。そんな強風の中を山頂へ向けて歩いていくグループとすれ違った。よう頑張るなあ。お気をつけて。
この後は恵山の北側に回り込んで、旧椴法華村の水無海浜温泉を見たりホテル恵風に立ち寄り入浴したりしたが、これらについては別記事で。
終章:函館市街への帰還
心洗われるトラピスチヌ修道院
残りは駆け足で紹介。帰路で立ち寄ったのがトラピスチヌ修道院。美しく整備された庭園が目を引く。奥にある建物は荘厳で気高い感じ。俗にまみれたおじさんの心も洗われるようですなー。右側の壁の向こうは一般非公開エリアで立ち入ることはできない。
ラストも函館山
この周遊は函館山に始まり函館山に終わるってことで最後に立待岬へ。対岸に函館の街を眺められる側と、崖に波ザッパーンの荒々しい光景を見せる側と、2つの性格を併せ持つ観光名所だ。最後の最後に函館山の碧血碑。箱館戦争における旧幕府軍兵の慰霊碑だ。現地にはものすごい大量のヤブ蚊の群れが待ちかまえていて、あっという間に体中を刺されまくった。ちくしょー、俺の血は碧くないぞ。
ふう、盛りだくさんで「やりきった感」に満たされた周遊だったな。
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