金色に輝く熱めの湯がジワリ効く - 黄金温泉 カルデラ温泉館

黄金温泉カルデラ温泉館
今年の春は忙しい。相続くグループ旅行の合間をぬって、もっぱら温泉に入るだけの一人旅に出た。まあ毎度そんなもんだが今回は純度が違う。本当に移動と温泉だけ。観光めいたことは最小限に抑えられている(当社比)。

最初の目的地は山形県大蔵村の肘折温泉郷。有名な肘折温泉の近くにある黄金温泉「カルデラ温泉館」という日帰り施設が旅の1湯目である。黄金色といえなくもないお湯を見て、ああそれで黄金温泉なわけね、と勝手に納得していたら違った。どうやら近くに大蔵鉱山なる金山があったことに由来している。

熱めのお湯だったのだが、ジーンと効いてくるような感じがよかったし、いろいろなことも重なって予想外に長湯してしまった。お肌がすっかりツルスベになった。

カルデラ温泉館へのアクセス

新庄からバスで大蔵村へ

カルデラ温泉館へ行くためにはまず肘折温泉に行かねばならない。山形新幹線の終点・新庄から肘折温泉行きのバスに乗る。このバスは2017年3月まで山交バスが運行する路線バスであった。現在は大蔵村の村営バスとして引き継がれている。もし廃止されてたら鉄道派は詰んでしまうところだった。あぶねー。

ともかくバスで約55分、肘折温泉に着いた。当館へ直行するなら終点2つ前の第一停留所で降りるとよい。

いでゆ館にちょっと寄り道

自分はまっすぐカルデラ温泉館へは向かわず、近くにある「いでゆ館」なる別の日帰り温泉施設へ寄り道してみた。入浴するつもりはなく偵察だけね。いでゆ館の駐車場前には有志が作った巨大雪だるま「おおくら君」の勇姿があった。平屋の建物をゆうに超えるくらいの高さがあり、本館よりも目立つ。
おおくら君
いでゆ館はこちら。結構新しくて立派な建物だ。
肘折温泉いでゆ館
休日にしては客の気配がなくてちょっと寂しい。温泉施設としては申し分なさそうだがなあ。歴史と風情で勝る肘折温泉街の立ち寄り入浴と競合しちゃってるのかなあ。

とりあえず食事処で推しメニューのちまきとコーヒーによる軽い昼食をとり、一息ついたらさあ出発。もし次来ることがあるなら、いでゆ館に入浴してみよう。

いでゆ館からカルデラ温泉館まで歩く

いでゆ館や肘折温泉街からカルデラ温泉館まで1.5キロ以上。徒歩20分はみておきたい。ゴールデンウィークといっても過言ではない時期なのに車道以外の地面は残雪だらけ。日差しは暑いくらいだけど風は冷たい。
カルデラ温泉館への道
自然の緑よりも雪の白ばかりが視界を占める中を歩き続けて目的地に着いた。冒頭の写真にあるような玄関がある本棟の隣に八角形をした棟があった。そこが湯小屋。特徴的なシルエットで写真に収めたくなるけど、浴室が絡んでいるし、まあちょっとやめとこう。かわりにすぐそばを流れる川の写真を貼っておきますね。
カルデラ温泉館そばの川
こういうロケーションにカルデラ温泉館がある。ちなみに肘折温泉一帯は大昔の火山活動により形成されたカルデラの中にある。


飲泉できる炭酸泉

休憩の敷居は高い

中の受付で利用料450円を払う。驚いたのは休憩所が別料金だったことだ(420円)。湯上がりに休むところって普通は無料だよね。ここは有料なの? うぬぬ。どのみち今回は使わないけども。

後述の通り当館は炭酸水もウリにしており、冷えた肘折サイダーを売っている。湯上がりに飲んでみたくはあったが、椅子とテーブルがある食堂は11時~13時だったかの限られた時間しかやってないみたいで、訪れたときはもうCLOSEDだった。あららら。

こうなったら風呂に集中するしかない。廊下を進むとまず現れるのが露天風呂への出口。ここの露天風呂は1箇所のみで、1時間交代(毎時00分~50分)で男性タイム・女性タイムが切り替わる。最初の時点では女性タイムだったから後回し。

炭酸泉のシュワシュワ感はいまひとつ

廊下の突き当り、男湯と女湯に分かれるところに炭酸泉がチョロチョロと流される飲泉所があった。風呂に提供されているのとは別の源泉であり、当館のもうひとつの目玉だ。分析書には「単純冷鉱泉(二酸化炭素型)、低張性、弱酸性、冷鉱泉」とあった。

備え付けのひしゃくで受けた炭酸泉を口に含んでみると、期待していたようなシュワシュワはない。自分の感覚だと微炭酸どころか無炭酸。たまたまこの日のコンディションだったのかなあ。

効能は、内臓の働きを活発にすることと利尿作用。あんまりゴクゴク飲んで効きすぎるとトイレコントロールがやばくなるので少量で自重しておいた。


八角棟の中の内湯

緑色っぽいお湯

ここからようやく一般的な意味での温泉体験となる。内湯の脱衣所が妙に斜めったごちゃつき感のある形状をしているなと思って考えてみたら、外で見た八角棟の8分の1の形だ。分析書を探すと「ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉、低張性、中性、高温泉」とあった。

浴室は八角棟の4分の1の周に沿って7~8名規模の浴槽と5つのカランが並ぶ。見たところ3,4名の先客がいた。

お湯は緑色のささ濁り。茶色っぽい細かい湯の花がたくさん泳いでいた。ああ温泉って感じ。入ってみるとやや熱め。ぬるめが好きなんだけど、まあ高温泉ですから。ただし慣れてくると熱さが気にならなくなって、良い感じに変わってくる。いいお湯だ。

思わず唸る気持ち良さ

炭酸水素塩泉特有の肌にまとわりつく感触はなかったと思う。ついで匂いを嗅いでみた。なんというか甘い匂いがした。ほほう、結構じゃないですか。そんなお湯がかけ流しにされている。温度調整のために加水しているほかは加温・循環・消毒なしだ。

お風呂に入ると「あ゛ー」とか「う゛ー」と気持ち良さそうに唸る人がよくいる。そうなる気分は自分もわかる。カルデラ温泉館のお湯にはその種の気持ちよさを引き出す浴感があった。


黄金の露天風呂

内湯よりも黄色っぽい

内湯だけでも十分満足だったが、あがる頃には露天風呂の男性タイムが始まっていた。よし行くぞう。サンダルに履き替えて外へ出る。ちょっと進むとすぐにミニサイズの八角形にぶつかった。その中にちょっとした脱衣スペースと露天風呂があった。

露天といっても完全な屋根付きで、目隠しの壁に囲まれている。ただし目隠し効果は完璧ではないから油断しないように(周囲に人の往来はまったくないが)。

こちらの浴槽は詰めれば10名いけそう。お湯の特徴は内湯と同じ。光の加減なのか、濁った緑はやや黄味がかっており、黄金色と表現してもよさそうに思える。加えて茶色い湯の花が明るく見えて、金粉のようでもあった。それで黄金温泉と呼ばれるのかと勘違いしてしまった次第。

なんだかんだで長湯してしまう

先客は結構な年配のおじさん1名。みんな露天狙いで来るかと思えばそうでもない。やがてこのおじさんに話しかけられて雑談が始まった。おじさんは山形県内の方で肘折には時々来るらしい。いでゆ館はここよりもぬるめで、おおくら君は最盛期には今の倍の高さだったとか。へー。

ほかに山形でおすすめの温泉なんかを尋ねてみたりして、いろいろな話を聞いた。そうしてずいぶんと長湯してしまった。結局、次の男女交代の時刻を過ぎそうになっていたことに気づき、あわてて服を着て出ていったほどである。

最後に肘折サイダーかビールで締められれば最高だったなー。湯上がりのフォローの部分だけが惜しい。でもレトロな木造の雰囲気は好印象だし、温泉の質は文句ない。ツルスベのお肌と半端ない温まり感で、肘折温泉街への帰路は足取りも軽やかだった。