春のみちのく一人旅、2日目は東鳴子温泉に宿を取った。東鳴子温泉は、鳴子・東鳴子・川渡・中山平・鬼首という5つの温泉地からなる鳴子温泉郷のうちのひとつである。
鳴子温泉郷は初めてみたいなものだし、特にこれといったこだわりもなく、正直なんとなくで東鳴子に決めた。その中で宿泊先を「久田(きゅうでん)旅館」にしたのは、泉質の異なる2種類の源泉が提供されていることと、ぼっちのおじさんも安心の「部屋出しの定食システム」があったからだった。
温泉は加水されているとはいえ適温~ぬるめで、熱めが苦手な自分にはありがたい。定食による2食付き格安プランは、都会の下手なビジネスホテル素泊まり(もちろん温泉なし)より安いくらいで、お値段以上だと思った。
したがって、駅から川の方に出て橋を渡った後、下流方向へ進む。駅から徒歩15分くらいだろうか。橋の上から見た川がこれ。
自分がこのルートを(逆向きに)通ったのは翌日の帰路だったが、途中にはこれといったお店が見当たらなかった。駅前は閑散としており繁華街ではない。外で食事や買い出しをしたければ一帯を探索してあたりをつけておこう。
自分が実際に久田旅館へ向かったときは、まず隣の鳴子温泉駅で降りて旅館姥の湯へ立ち寄り入浴した後、列車の時刻が合わなかったため1駅分…3キロちょっとで45分程度…を国道沿いに歩いた。進路の左手は下の写真のような景色が延々と続く。
ゴールデンウィークといっても過言ではない時期だったし、繁忙期の一人泊に割り当てられる部屋なのかもしれないな。まあ一人で使う分には不都合はないし、どっちでもいいや。トイレ・洗面所は共同。空の冷蔵庫と金庫あり。空調はエアコンとヒーター。格安プランなので布団は自分で敷く。
全体に古びてきているが、清掃はしっかりされており問題なし。ただ窓の網戸がガタついて完全に締めきれず隙間ができてしまう。窓を開けて網戸だけにすると、隙間から羽虫が入ってくるフラグが立っていたので、窓は締め切りにした。
それから2面ある窓の一方から陸羽東線の線路が間近に見えることに気づいた。自分は決して鉄ちゃんではないけれども、ローカル線がのんびり通り過ぎるこのようなロケーションは嫌いじゃない。
ネットで時刻表を調べると快速「リゾートみのり」号が間もなくやって来ることがわかった。スマホを手にインスタ映えの瞬間を待つ。そして…来た! 今だ! パシャ。
上りと下りをあわせて1時間にだいたい2本やって来る。ガタンゴトンの音が徐々に近づいてきて、目前を通過する際に最大となり、徐々に遠ざかるところでポヒィーと鳴る汽笛がなんかかわいい。
男湯女湯の時間入れ替えなし。たぶんどっちも同じつくり。掲示されている分析書によれば、内湯が「ナトリウム-炭酸水素塩泉、低張性、中性、高温泉」、いわゆる純重曹泉だ。露天風呂は「含硫黄-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉、低張性、中性、高温泉」、重曹硫黄泉とのこと。
暦の上では繁忙期と思われる日だけど、夕方・夜・朝と入った限りで浴室はそんなに混んでない。子連れファミリーと居合わせるときだけ5~6名になるのを除けば自分以外にせいぜい1~2名、独占状態の時間も多かった。
入ってみるといい具合の適温。自分の好みを言えばもう少し低くても良いが、このくらいでも悪くない。何十分も長湯することはないにしても、しばらくは気持ち良くつかっていたい感じ。
お湯の匂いを嗅いでみると、木材系アブラ臭のはしりのような匂いを感知した。そしてお湯が肌に引っかかるような感触。肌に付いたお湯は粘膜のようにヌルっとした手触りになるのだった。
やっぱり露天とか硫黄というアピールポイントがある分、人々はどうしても露天風呂へ流れがちだけど、こちらの内湯もなかなかのもの。よろしいんじゃないでしょうか。
温度は内湯よりもぬるめ。長湯も可能で、こりゃいいや。もちろん硫黄特有の匂いもはっきりとわかる。正確には焦げ硫黄臭だ。うっわー焦げくさい。だがそれがいい。さっきまで内湯を絶賛していたのに露天派に鞍替えする節操のないおじさん。
肌に引っかかる感じと粘膜のようなヌルつきは内湯と同様。お湯は基本的に青白く濁るも、朝入ったときだけ透明に近くて湯の花がより多く、温度は一段とぬるくなっていた。
露天エリアは目隠しの塀で囲まれ、見晴らしは望めない。そのかわりと言ってはなんだが、塀の向こうのすぐそばを線路が通っている。何度めかの露天風呂のとき、例のガタンゴトンとポヒィーが本当に間近に聞こえた。鉄ちゃん大喜びの風呂だ。
あれは単に宴会場の写真だったのかもしれない。それに食事は客ごとに個室を用意するとの情報もある。でも繁忙期はイレギュラー対応で何があるかわからない。大広間にポツンぼっちならまだしも耐えられるが、カップルやファミリーとお膳を挟んで差し向かいなんてことになったら、いたたまれなさすぎて爆弾岩のように砕け散っちゃいそう。
※上記は妄想上の心配事です。実際にどういう形態になるのかは不明です。
ということで安全策で素泊まり。となると食事は買い出しするか外食するか断食するか。いや、もう一つ、当館に定食を頼むという手があった(要予約、夕1500円、朝500円)。定食だと食事はお膳に乗って部屋まで運ばれる。つまり部屋食だ。これなら安心だね。
胃が破裂しそうな盛りだくさんの会席コースはもちろんいいけど、これくらいの腹八分目も個人的には歓迎だ。晩酌の入る余地が残るし。
真ん中の黄色い器にあるのは鳴子名物のしそ巻き。しその中にくるみ味噌が入っている。甘辛と思わせて甘い。味が濃いからご飯がすすむ。
繁忙期に一人泊するKYなおじさんにも親切にてきぱき対応してくれ、かつ過度に干渉することなく放置してくれたのが好印象。温泉でスッキリサッパリし、清々しい気分で帰路についた。
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鳴子温泉郷は初めてみたいなものだし、特にこれといったこだわりもなく、正直なんとなくで東鳴子に決めた。その中で宿泊先を「久田(きゅうでん)旅館」にしたのは、泉質の異なる2種類の源泉が提供されていることと、ぼっちのおじさんも安心の「部屋出しの定食システム」があったからだった。
温泉は加水されているとはいえ適温~ぬるめで、熱めが苦手な自分にはありがたい。定食による2食付き格安プランは、都会の下手なビジネスホテル素泊まり(もちろん温泉なし)より安いくらいで、お値段以上だと思った。
東鳴子温泉「久田旅館」へのアクセス
東鳴子温泉の最寄り駅はJR陸羽東線・鳴子御殿湯。駅前の通り沿いに主だった旅館がポツポツと並ぶ中で、久田旅館は少し毛色の違う場所にある。駅から見て、鉄道や国道47号に並行して流れる江合川の向こう岸にあるのだ。したがって、駅から川の方に出て橋を渡った後、下流方向へ進む。駅から徒歩15分くらいだろうか。橋の上から見た川がこれ。
自分がこのルートを(逆向きに)通ったのは翌日の帰路だったが、途中にはこれといったお店が見当たらなかった。駅前は閑散としており繁華街ではない。外で食事や買い出しをしたければ一帯を探索してあたりをつけておこう。
自分が実際に久田旅館へ向かったときは、まず隣の鳴子温泉駅で降りて旅館姥の湯へ立ち寄り入浴した後、列車の時刻が合わなかったため1駅分…3キロちょっとで45分程度…を国道沿いに歩いた。進路の左手は下の写真のような景色が延々と続く。
旅情を誘う久田旅館の部屋
湯治プランにありそうな雰囲気
歩くのにも飽きて疲れた頃、ようやく久田旅館に着いた。フロントでチェックインをすませて案内された部屋は2階の8畳和室。いや、予約したプラン名はそうなんだが、でも手元のメモには6畳と書いてある。畳4.5+カーペット1.5だった気が。ゴールデンウィークといっても過言ではない時期だったし、繁忙期の一人泊に割り当てられる部屋なのかもしれないな。まあ一人で使う分には不都合はないし、どっちでもいいや。トイレ・洗面所は共同。空の冷蔵庫と金庫あり。空調はエアコンとヒーター。格安プランなので布団は自分で敷く。
全体に古びてきているが、清掃はしっかりされており問題なし。ただ窓の網戸がガタついて完全に締めきれず隙間ができてしまう。窓を開けて網戸だけにすると、隙間から羽虫が入ってくるフラグが立っていたので、窓は締め切りにした。
鉄ちゃん大喜びのロケーション
ここで自分が重大なミスを犯していたのに気づいた。浴衣がない…やべえ忘れてた。このプランだと浴衣は別料金(350円)で申し込んでおかなければならなかったのだ。あわてて近くのスタッフさんに相談すると、その場で浴衣サイズを見繕って持ってきてくれた。親切な対応に感謝感激。※もちろん規定の料金を支払いました。それから2面ある窓の一方から陸羽東線の線路が間近に見えることに気づいた。自分は決して鉄ちゃんではないけれども、ローカル線がのんびり通り過ぎるこのようなロケーションは嫌いじゃない。
ネットで時刻表を調べると快速「リゾートみのり」号が間もなくやって来ることがわかった。スマホを手にインスタ映えの瞬間を待つ。そして…来た! 今だ! パシャ。
上りと下りをあわせて1時間にだいたい2本やって来る。ガタンゴトンの音が徐々に近づいてきて、目前を通過する際に最大となり、徐々に遠ざかるところでポヒィーと鳴る汽笛がなんかかわいい。
重曹泉の二重奏が光る、久田旅館のお風呂
繁忙期でも余裕あり
部屋でちょっと落ち着いてから風呂へ。久田旅館の大浴場は1階にある。通路の途中には共同のトイレと洗面所。自販機も置いてあり、お酒が欲しければここで買う。男湯女湯の時間入れ替えなし。たぶんどっちも同じつくり。掲示されている分析書によれば、内湯が「ナトリウム-炭酸水素塩泉、低張性、中性、高温泉」、いわゆる純重曹泉だ。露天風呂は「含硫黄-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉、低張性、中性、高温泉」、重曹硫黄泉とのこと。
暦の上では繁忙期と思われる日だけど、夕方・夜・朝と入った限りで浴室はそんなに混んでない。子連れファミリーと居合わせるときだけ5~6名になるのを除けば自分以外にせいぜい1~2名、独占状態の時間も多かった。
琥珀色のヌルっとした内湯
浴室には4名分の洗い場。奥に4名規模の長方形タイル張り浴槽があり、湯口からドボドボと投入されるお湯は紅茶っぽいクリアな琥珀色を呈している。もちろん源泉かけ流し。ただし源泉が熱すぎるので加水して温度調整されている。入ってみるといい具合の適温。自分の好みを言えばもう少し低くても良いが、このくらいでも悪くない。何十分も長湯することはないにしても、しばらくは気持ち良くつかっていたい感じ。
お湯の匂いを嗅いでみると、木材系アブラ臭のはしりのような匂いを感知した。そしてお湯が肌に引っかかるような感触。肌に付いたお湯は粘膜のようにヌルっとした手触りになるのだった。
やっぱり露天とか硫黄というアピールポイントがある分、人々はどうしても露天風呂へ流れがちだけど、こちらの内湯もなかなかのもの。よろしいんじゃないでしょうか。
ある意味で鉄成分多めの露天風呂
続いて奥の扉を抜けて露天風呂へ。こちらは内湯よりふたまわり小さい3名規模。青みがかって白濁したお湯がかけ流されている。湯の花も見られたと思う。見た目だけでもう人を惹きつける。温度は内湯よりもぬるめ。長湯も可能で、こりゃいいや。もちろん硫黄特有の匂いもはっきりとわかる。正確には焦げ硫黄臭だ。うっわー焦げくさい。だがそれがいい。さっきまで内湯を絶賛していたのに露天派に鞍替えする節操のないおじさん。
肌に引っかかる感じと粘膜のようなヌルつきは内湯と同様。お湯は基本的に青白く濁るも、朝入ったときだけ透明に近くて湯の花がより多く、温度は一段とぬるくなっていた。
露天エリアは目隠しの塀で囲まれ、見晴らしは望めない。そのかわりと言ってはなんだが、塀の向こうのすぐそばを線路が通っている。何度めかの露天風呂のとき、例のガタンゴトンとポヒィーが本当に間近に聞こえた。鉄ちゃん大喜びの風呂だ。
ぼっちおじさんの食事作戦
私は如何にして心配するのを止めて定食を頼むようになったか
今回はあえて素泊まりにした。標準的な2食付きだと、繁忙期だから食事時に全員を大広間に集める方式かもしれなかった。それでも別にかまわないんだが、どこかのサイトで見たお座敷部屋の写真が気になった。見知らぬ客と差し向かいで座ることになりそうな、お膳を並べたレイアウト。あれは単に宴会場の写真だったのかもしれない。それに食事は客ごとに個室を用意するとの情報もある。でも繁忙期はイレギュラー対応で何があるかわからない。大広間にポツンぼっちならまだしも耐えられるが、カップルやファミリーとお膳を挟んで差し向かいなんてことになったら、いたたまれなさすぎて爆弾岩のように砕け散っちゃいそう。
※上記は妄想上の心配事です。実際にどういう形態になるのかは不明です。
ということで安全策で素泊まり。となると食事は買い出しするか外食するか断食するか。いや、もう一つ、当館に定食を頼むという手があった(要予約、夕1500円、朝500円)。定食だと食事はお膳に乗って部屋まで運ばれる。つまり部屋食だ。これなら安心だね。
ジンギスカン付きの夕食
夕食はこれ。定食だからとなめちゃいけない。ちゃんとジンギスカン風の焼き肉が付くぞ。それに茶碗蒸しと焼き魚と道明寺みたいなやつ。米はうまいし文句なし。胃が破裂しそうな盛りだくさんの会席コースはもちろんいいけど、これくらいの腹八分目も個人的には歓迎だ。晩酌の入る余地が残るし。
ご飯にめっちゃ合う、鳴子名物しそ巻き
朝食はこれ。笹かまぼこに宮城らしさがある。玉子は温泉玉子だったかな。真ん中の黄色い器にあるのは鳴子名物のしそ巻き。しその中にくるみ味噌が入っている。甘辛と思わせて甘い。味が濃いからご飯がすすむ。
お得な気分にさせてくれる旅館
久田旅館は冒頭にも書いた通り、いろいろとお得な気分になる。お風呂は内湯と露天があって異なる泉質だから飽きが来ない。素泊まりに定食を朝夕付けたら、擬似的な部屋出し2食付きプランぽくなって、お代は驚きの7000円ちょっと。繁忙期に一人泊するKYなおじさんにも親切にてきぱき対応してくれ、かつ過度に干渉することなく放置してくれたのが好印象。温泉でスッキリサッパリし、清々しい気分で帰路についた。
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