春の信州グループ旅行も2日目。この日は諏訪から北上して青木村へ向かう。前夜にいろいろ検討した結果、松本を経由するルートが採用された。道中で立ち寄る先については、温泉や自然の景観ではなく、名所旧跡や博物館へ行こうと決まった。
候補のひとつとして目に留まったのが岡谷市にある岡谷蚕糸博物館。愛称は「シルクファクトおかや」。もし若い時分だったら、この手の産業系の博物館に目を向けることはなかったろうけど、年とともにこういうジャンルも興味の対象に入るようになっていた。
行ってみると、規模こそ大きくないものの、工場見学の側面もあって結構楽しめる。旅のアクセントとしていい感じだった。
我々は下諏訪温泉・旅館おくむらを出発して、時計工房儀象堂に立ち寄った後、車で当館へ向かった。下諏訪町と岡谷市はお隣り同士、そんなに時間はかからなかったけど道中に案内板がほぼなかったために、初見だとナビ誘導が欲しい。
当館に着くと桜の花びらが風に乗って舞い踊っていた。来るのがもうちょっと早ければねー、と思いつつ広い駐車場に車を止める。平日だったせいもあって駐車場は余裕ありまくり。休日もよほどのことがなければ困ることはなさそう。
正面玄関を入って受付で入館料500円を払う。左手が順路のようだ。右手に進むと蚕との“ふれあい”コーナーがあるとのこと。事前調査を通じて注目していたコーナーだ。お蚕さまとふれあいてぇー。よし、絶対あとで来よう、と心に誓ってまずは左の順路へ。
岡谷蚕糸博物館そのものは市立の施設で昭和39年に開館。ただし別の場所にあった。我々が訪れた地はもともと旧農林省の蚕糸試験場岡谷製糸試験所があった場所。そこへ岡谷蚕糸博物館が移転してきたわけだ。
蚕糸試験場岡谷製糸試験所は独立行政法人(現・国立研究開発法人)農業生物資源研究所の生活資材開発ユニットに改組され、現在は閉鎖されてしまっている模様。
そして当館の工場見学エリアの実体は株式会社宮坂製糸所である。博物館内に併設される形で工場が移転してきた。いまや日本で唯一の製糸工場だそうで貴重な存在といえる。シルクの技術と伝統を次代に伝えるために行政と研究機関と企業がタッグを組んだというところか。
機械の構造がどうなっているのかよくわからないが、蚕のまゆから糸を引き出してつかまえてより合わせるなんて、繊細な工程をよくぞ自動化したもんだ。スチームパンク風のメカニックがおじさんのロマン心をくすぐる。
それにしても眠ってる間に産生物を剥ぎ取られるとは…蚕を我が身に置き換えてみるにつけ…なんか映画「マトリクス」を思わせるのだった。おかげで絹製品があるのだからお蚕さまに感謝しなければ。
工場見学の最後はおみやげコーナー。シルク入り石鹸を買わせていただきました。お試しで使わせてもらったら、手触りがすごいサラサラだったので。ほかに蚕の佃煮(?)なんてのも。蜂の子的なアレかしら。ほかに桑の葉茶や絹製品など。
一番印象に残ったのはシルクの生産量・輸出量・輸入量を壁一面に示した大きなグラフ。戦前は生産量がぐぐーっと伸びている。その大半が輸出。戦後は生産が落ち込み、輸出はほぼゼロに張り付いてる。輸入は一時伸びかかったがすぐ頭打ちになって低迷。シルクの国内需要そのものが少ないんだろうね。
特設展示もあった。このときは源氏物語の世界を表現したきらびやかな絹織物がたくさん。貴族は優雅でおじゃるのう。糸をかし。
蚕は保温器内に置かれたトレーの中にいて、見るだけよ状態。しかも食べているのが桑の葉じゃなくて桑の葉をもとにしたカロリーメイト的なバランス栄養食。極限まで効率を追求する意識高い系のライフハック蚕ですな。
こうして見学は終了。蚕とふれあえなかったのは残念だけど、工場見学を中心になかなか興味深い体験だった。オルトファクト時代の次はシルクファクト時代が来るかもね。
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候補のひとつとして目に留まったのが岡谷市にある岡谷蚕糸博物館。愛称は「シルクファクトおかや」。もし若い時分だったら、この手の産業系の博物館に目を向けることはなかったろうけど、年とともにこういうジャンルも興味の対象に入るようになっていた。
行ってみると、規模こそ大きくないものの、工場見学の側面もあって結構楽しめる。旅のアクセントとしていい感じだった。
岡谷蚕糸博物館「シルクファクトおかや」とは
シルクファクトおかやへのアクセス
シルクファクトおかやは鉄道利用の場合、JR中央本線・岡谷駅から徒歩で20分ちょっと。車だと岡谷ICから5分。市役所のそばという便のいいところにある。我々は下諏訪温泉・旅館おくむらを出発して、時計工房儀象堂に立ち寄った後、車で当館へ向かった。下諏訪町と岡谷市はお隣り同士、そんなに時間はかからなかったけど道中に案内板がほぼなかったために、初見だとナビ誘導が欲しい。
当館に着くと桜の花びらが風に乗って舞い踊っていた。来るのがもうちょっと早ければねー、と思いつつ広い駐車場に車を止める。平日だったせいもあって駐車場は余裕ありまくり。休日もよほどのことがなければ困ることはなさそう。
正面玄関を入って受付で入館料500円を払う。左手が順路のようだ。右手に進むと蚕との“ふれあい”コーナーがあるとのこと。事前調査を通じて注目していたコーナーだ。お蚕さまとふれあいてぇー。よし、絶対あとで来よう、と心に誓ってまずは左の順路へ。
シルクファクトおかやの沿革
現地では説明板を通じてさまざまな情報が目に入る。一時に大量の情報がインプットされるので、当館が民間企業の工場なのか、公立の博物館なのか、国の研究施設なのか、よくわからなくなった。後日あらためて調査してみると以下の通り。岡谷蚕糸博物館そのものは市立の施設で昭和39年に開館。ただし別の場所にあった。我々が訪れた地はもともと旧農林省の蚕糸試験場岡谷製糸試験所があった場所。そこへ岡谷蚕糸博物館が移転してきたわけだ。
蚕糸試験場岡谷製糸試験所は独立行政法人(現・国立研究開発法人)農業生物資源研究所の生活資材開発ユニットに改組され、現在は閉鎖されてしまっている模様。
そして当館の工場見学エリアの実体は株式会社宮坂製糸所である。博物館内に併設される形で工場が移転してきた。いまや日本で唯一の製糸工場だそうで貴重な存在といえる。シルクの技術と伝統を次代に伝えるために行政と研究機関と企業がタッグを組んだというところか。
メカが並ぶ製糸工場を見学
工場は12時から13時まで昼休みに入るため見学できなくなる。到着が12時近かったから、まず最優先で工場エリアへ向かった。中は大量の機械と、たくさんの蚕のまゆと、わずかな人数の工員さん。一応、所定のルールのもとで撮影は可能。機械の構造がどうなっているのかよくわからないが、蚕のまゆから糸を引き出してつかまえてより合わせるなんて、繊細な工程をよくぞ自動化したもんだ。スチームパンク風のメカニックがおじさんのロマン心をくすぐる。
それにしても眠ってる間に産生物を剥ぎ取られるとは…蚕を我が身に置き換えてみるにつけ…なんか映画「マトリクス」を思わせるのだった。おかげで絹製品があるのだからお蚕さまに感謝しなければ。
工場見学の最後はおみやげコーナー。シルク入り石鹸を買わせていただきました。お試しで使わせてもらったら、手触りがすごいサラサラだったので。ほかに蚕の佃煮(?)なんてのも。蜂の子的なアレかしら。ほかに桑の葉茶や絹製品など。
中核の展示エリアを見学
岡谷の歴史は製糸の歴史
続いて展示エリアへ。主なテーマは岡谷の製糸の歴史と製糸機械の実物展示。我らはどうやら順路に逆らって逆順で見てしまったようだが。中はそんなに広くない。一番印象に残ったのはシルクの生産量・輸出量・輸入量を壁一面に示した大きなグラフ。戦前は生産量がぐぐーっと伸びている。その大半が輸出。戦後は生産が落ち込み、輸出はほぼゼロに張り付いてる。輸入は一時伸びかかったがすぐ頭打ちになって低迷。シルクの国内需要そのものが少ないんだろうね。
特設展示もあった。このときは源氏物語の世界を表現したきらびやかな絹織物がたくさん。貴族は優雅でおじゃるのう。糸をかし。
蚕とのふれあい…なしよ
さて期待していた蚕とのふれあいへゴー。桑の葉で餌やりとかできるのかな。ようし、おじさん超ふれあっちゃうぞ! と張り切って行ってみると…とくにふれあいはなかった。蚕は保温器内に置かれたトレーの中にいて、見るだけよ状態。しかも食べているのが桑の葉じゃなくて桑の葉をもとにしたカロリーメイト的なバランス栄養食。極限まで効率を追求する意識高い系のライフハック蚕ですな。
こうして見学は終了。蚕とふれあえなかったのは残念だけど、工場見学を中心になかなか興味深い体験だった。オルトファクト時代の次はシルクファクト時代が来るかもね。
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