諏訪湖や諏訪大社だけでなく温泉でも有名な信州・諏訪地区の温泉街は、大ざっぱにいって上諏訪と下諏訪に分かれる。この春の信州グループ旅行の1泊目は下諏訪の「旅館おくむら」。
小ぢんまりした少人数向けの宿で、大規模ホテルのような設備、とくに巨大な浴場だの露天風呂だのがあるわけではない。だが温泉の質は本物だ。しかも食事がうまいし、なんといっても量がものすごい。
ネットでの口コミ評価が高く、食事がすごいすごいと評判だったので、自分の心の中の「行きたい宿リスト」には入っていた。それが今回実現したわけだが、実際のところ本当に評判通りの良宿であった。
我々は車で諏訪入りした。途中で片倉館へ立ち寄り湯したり、諏訪大社四社めぐりをしたりしながら、おくむらに夕方到着。付近は建物が密集していて道が狭いから注意しよう。
宿の隣にやや大きめの駐車場があって、ある医院の駐車スペースとかいくつかの区画に分かれているが、そのうち手前右の6台分が当宿の客向けだ。立て札があるからすぐわかるはず。
おくむらの向かいの民家(?)にはミニ鳥居が立っていた。大社が近いこのあたりの雰囲気によく馴染んでいると思った。
こたつの他にエアコンあり。金庫なし。WiFi完備。部屋はよく手入れされ、十分に清潔で快適だ。窓を開けると隣家との仕切りしか見えない。建物が密集しているところだから当然か。別に景観を求めてはいないから無問題。
冷蔵庫は玄関付近に共同のがある。ジュースや烏龍茶やビールがあらかじめ冷やされており、抜いたらその場で現金精算するか、備え付けのメモに書いておいてチェックアウト時に一括精算する。トイレと洗面所も共同。トイレに行ってみたら灯りはセンサーで自動点灯するやつだった。
実はここへ来る途中の昼どき、山梨を通るならってんで、小淵沢インター近くの松木坂というお店でほうとうをがっつり食べてしまったのだ。結構量が多かったなあ。夕食までに消化しきれるかなあ。汁あっさりめの山菜五目ほうとうの写真を貼っておきますね。
それはそれとして男湯へ。脱衣所に江戸時代の温泉番付が貼ってあり、東の大関(当時の最高位は大関)が草津、関脇が那須、小結が諏訪だった。ほほう、やるじゃない。ちなみに西は大関・有馬、関脇・城崎、小結・道後ね。
ほかに恋札なる占いの説明があった。札をお湯に沈めて、浮かんできた面の表裏で運勢を占うみたいだ。札は500円で売っているとのことだけど、おじさんには無縁だからスルー。また掲示された分析書には「ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物泉、アルカリ性、低張性、高温泉」とあった。
浴室の右隅に4名で一杯になるサイズのタイル張り浴槽。我々は夕方・早朝・朝食後に利用して、他の客とはまったくかち合わなかったから、つねに余裕を持って入ることができた。
お湯は無色透明。お湯をすくって鼻を近づけると最初にぷ~んと漂ってきたのと同じ匂いを感知した。感触はつるつるでもキシキシでもなく中庸な感じ。湯口にはカルシウムらしき白い析出物がこびりついて温泉気分を盛り上げる。
諏訪の温泉に対して抱いていたイメージ通り、お湯は熱め。しかしつかってしまえばわりと慣れてまろやかさが前面に出てくるようだ。細かく言えば夕方が熱め、早朝が適温で好みに近く、朝食後のときが一番熱くてあまり入っていられなかった。短時間で結構コンディションが変わるもんだね(早朝時は前の客が水を足した可能性もあるが)。
夕食は桜鍋コースを注文してあった。桜鍋なんて食べたことないから興味あるし、ネットの書き込みでもこのコースを選ぶ人が多くて当宿のイチオシっぽいので、我々もならってみた。
食前酒の梅酒と小鉢のきのこ、馬刺し、桜鍋がどーん。後から焼いたニジマスが一皿。最後にご飯と味噌汁と漬物とデザート。以上がすべてだ。
品数が少ない? いやいやいやいやいやいやいやいや。とんでもねー、これで十分すぎるほど十分だ。実際食べてみるとわかるが、馬刺しの切り身の数は多いし、ニジマス一尾だって腹にたまるし、加えて桜鍋のボリュームがぶっ飛んでる。一人あたりの肉の量がまあすごいこと。
途中で日本酒を頼んだりして、満腹感をおぼえつつもいい調子で食べ進んだのだが、うどんに手を出すあたりで急にずしんと腹に来た。ここから大失速。うどんが、うどんがぁぁ、胃を圧迫するぅぅぅ。
どうにか鍋を片付けたものの、もう無理っす。締めのご飯は申し訳程度に2,3口だけ食べてギブアップ。ご飯をあれだけ盛大に残してしまったのは初めてじゃないか。
いやー本当に噂通りで大満足。量のことは関係なく料理それ自体としてもおすすめしたいので、もしボリュームが気になるなら「少なめに」と伝えるとか、うどんを抜いてもらうとか、事前にお願いしておくとよいだろう。
ふわふわの卵焼きがうまい。ワカサギもいい感じの味付けでうまい。また諏訪には酒蔵や味噌蔵が多いから、もしやと思って訊いてみたら、味噌汁の味噌はこのあたりで作っているものだそうだ(名前は失念)。
朝食の後は玄関前の休憩室でセルフのコーヒーサービスをいただく。部屋には諏訪出身の美術家の作品がいくつも展示されていた。
そしてなによりも、気さくで親切なご主人と丁寧でこれまた親切な女将さん。チェックアウトのときにはわざわざ駐車場まで見送りに来てくれた。しかもドライバーによれば、走り去る車に向かってふたりが「ずっと手を振っていたよ」と。バックミラー越しに見えたのだろう。これぞおもてなしの鑑。おそれいりました。
小ぢんまりした少人数向けの宿で、大規模ホテルのような設備、とくに巨大な浴場だの露天風呂だのがあるわけではない。だが温泉の質は本物だ。しかも食事がうまいし、なんといっても量がものすごい。
ネットでの口コミ評価が高く、食事がすごいすごいと評判だったので、自分の心の中の「行きたい宿リスト」には入っていた。それが今回実現したわけだが、実際のところ本当に評判通りの良宿であった。
(追記)本記事は先代が経営していた時期の体験談です。現在は「三代目おくむら旅館」として新体制に移行しています。料金・サービス内容などは当時から変わっていると思います。
下諏訪温泉「旅館おくむら」へのアクセス
旅館おくむらは諏訪大社下社の秋宮と春宮のちょうど中間(やや秋宮寄り)に位置しており、周辺にも下諏訪温泉の旅館が点在している。最寄り駅のJR中央本線・下諏訪からだとずーっと北へ進む感じで徒歩10分くらい。我々は車で諏訪入りした。途中で片倉館へ立ち寄り湯したり、諏訪大社四社めぐりをしたりしながら、おくむらに夕方到着。付近は建物が密集していて道が狭いから注意しよう。
宿の隣にやや大きめの駐車場があって、ある医院の駐車スペースとかいくつかの区画に分かれているが、そのうち手前右の6台分が当宿の客向けだ。立て札があるからすぐわかるはず。
おくむらの向かいの民家(?)にはミニ鳥居が立っていた。大社が近いこのあたりの雰囲気によく馴染んでいると思った。
懐かしい雰囲気のある「おくむら」の部屋
WiFi完備がちょっと意外?
旅館のチェックインは15時からというところが多いと思うけど、おくむらは16時から。玄関でご主人と女将に迎えられ、案内されたのは1階奥の8畳和室。部屋の真ん中にはこたつがあった。昼間は夏のような暑さとはいえ朝晩はまだ冷えるんですかね。こたつの他にエアコンあり。金庫なし。WiFi完備。部屋はよく手入れされ、十分に清潔で快適だ。窓を開けると隣家との仕切りしか見えない。建物が密集しているところだから当然か。別に景観を求めてはいないから無問題。
冷蔵庫は玄関付近に共同のがある。ジュースや烏龍茶やビールがあらかじめ冷やされており、抜いたらその場で現金精算するか、備え付けのメモに書いておいてチェックアウト時に一括精算する。トイレと洗面所も共同。トイレに行ってみたら灯りはセンサーで自動点灯するやつだった。
さあ、胃袋を空けるんだ
さて、最初に案内されたときに女将さんがお茶を入れてくれた。そうして夕食の希望時間をたずねられた。通常は18時だけど融通がきくようだ。食事の量についての評判を知っていたので、少しでもお腹を空かせるべく、遅めの19時にしてもらった。実はここへ来る途中の昼どき、山梨を通るならってんで、小淵沢インター近くの松木坂というお店でほうとうをがっつり食べてしまったのだ。結構量が多かったなあ。夕食までに消化しきれるかなあ。汁あっさりめの山菜五目ほうとうの写真を貼っておきますね。
小ぶりながらしっかりした源泉かけ流し風呂
温泉番付は東の小結
おくむらの風呂は1階の奥。我々の泊まった部屋のすぐそばである。風呂へ行こうとしてまず目につくのが手前にあるコミック置き場。下の写真の倍くらいの冊数が置いてあったのではないかと思う。それはそれとして男湯へ。脱衣所に江戸時代の温泉番付が貼ってあり、東の大関(当時の最高位は大関)が草津、関脇が那須、小結が諏訪だった。ほほう、やるじゃない。ちなみに西は大関・有馬、関脇・城崎、小結・道後ね。
ほかに恋札なる占いの説明があった。札をお湯に沈めて、浮かんできた面の表裏で運勢を占うみたいだ。札は500円で売っているとのことだけど、おじさんには無縁だからスルー。また掲示された分析書には「ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物泉、アルカリ性、低張性、高温泉」とあった。
熱めでまろやかな湯
浴室は宿の規模相応のサイズ。一度に5名までの利用がいいところだろう。それでカランが4つあるのは相対的にみて多い方だ。入るなりぷ~んと、何臭というのかわからんが、いかにもこの泉質らしいお湯の匂いが漂ってきたのはうれしい。浴室の右隅に4名で一杯になるサイズのタイル張り浴槽。我々は夕方・早朝・朝食後に利用して、他の客とはまったくかち合わなかったから、つねに余裕を持って入ることができた。
お湯は無色透明。お湯をすくって鼻を近づけると最初にぷ~んと漂ってきたのと同じ匂いを感知した。感触はつるつるでもキシキシでもなく中庸な感じ。湯口にはカルシウムらしき白い析出物がこびりついて温泉気分を盛り上げる。
諏訪の温泉に対して抱いていたイメージ通り、お湯は熱め。しかしつかってしまえばわりと慣れてまろやかさが前面に出てくるようだ。細かく言えば夕方が熱め、早朝が適温で好みに近く、朝食後のときが一番熱くてあまり入っていられなかった。短時間で結構コンディションが変わるもんだね(早朝時は前の客が水を足した可能性もあるが)。
ぜひ一度体験してみたいただきたい、おくむらの食事
イチ押しの桜鍋コースがおすすめ
おくむらの食事は朝夕とも別室で。大広間に全部の客を集めるのではなく個室対応の部類。サービス頑張ってますな。我ら一行に割り当てられたのは二間続きの調度品がいろいろ置かれた客間。こっちの部屋に泊まりたいという声もメンバーからちらほら。夕食は桜鍋コースを注文してあった。桜鍋なんて食べたことないから興味あるし、ネットの書き込みでもこのコースを選ぶ人が多くて当宿のイチオシっぽいので、我々もならってみた。
食前酒の梅酒と小鉢のきのこ、馬刺し、桜鍋がどーん。後から焼いたニジマスが一皿。最後にご飯と味噌汁と漬物とデザート。以上がすべてだ。
品数が少ない? いやいやいやいやいやいやいやいや。とんでもねー、これで十分すぎるほど十分だ。実際食べてみるとわかるが、馬刺しの切り身の数は多いし、ニジマス一尾だって腹にたまるし、加えて桜鍋のボリュームがぶっ飛んでる。一人あたりの肉の量がまあすごいこと。
幸せいっぱいのギブアップ
量のことばっかり書くとアレなんで、もちろんお味もグッド。脂身たっぷりの牛肉をしつこいと感じる歳になってしまったせいか、このときの赤身でしまった馬肉は結構自分の口に合っているようだ。甘めの味付けがしてあって、生卵とからめてすき焼きの要領でいただく。途中で日本酒を頼んだりして、満腹感をおぼえつつもいい調子で食べ進んだのだが、うどんに手を出すあたりで急にずしんと腹に来た。ここから大失速。うどんが、うどんがぁぁ、胃を圧迫するぅぅぅ。
どうにか鍋を片付けたものの、もう無理っす。締めのご飯は申し訳程度に2,3口だけ食べてギブアップ。ご飯をあれだけ盛大に残してしまったのは初めてじゃないか。
いやー本当に噂通りで大満足。量のことは関係なく料理それ自体としてもおすすめしたいので、もしボリュームが気になるなら「少なめに」と伝えるとか、うどんを抜いてもらうとか、事前にお願いしておくとよいだろう。
朝もしっかり完食
朝はオーソドックスな和定食。前夜の分がまだ消化しきれず、全然お腹空いてないわー、とか言いながら全部平らげた。ふわふわの卵焼きがうまい。ワカサギもいい感じの味付けでうまい。また諏訪には酒蔵や味噌蔵が多いから、もしやと思って訊いてみたら、味噌汁の味噌はこのあたりで作っているものだそうだ(名前は失念)。
朝食の後は玄関前の休憩室でセルフのコーヒーサービスをいただく。部屋には諏訪出身の美術家の作品がいくつも展示されていた。
鏡越しに見えた、おもてなしの鑑
旅館おくむら。なるほどすばらしい。ネットの温泉掲示板やブログでよく名前があがるだけのことはある。小ぢんまりとして昔ながらの風情を残すところは自分好み。風呂に入って部屋でゴロゴロすごすには最高だ。今回はグループで泊まったが一人泊OKなのも個人的にありがたい。そしてなによりも、気さくで親切なご主人と丁寧でこれまた親切な女将さん。チェックアウトのときにはわざわざ駐車場まで見送りに来てくれた。しかもドライバーによれば、走り去る車に向かってふたりが「ずっと手を振っていたよ」と。バックミラー越しに見えたのだろう。これぞおもてなしの鑑。おそれいりました。
(参考) 2022年・三代目おくむら旅館訪問記