満男の成長著しい「男はつらいよ」第16~22作鑑賞記

男はつらいよ タコ社長
某定額動画配信サービスで「男はつらいよ」シリーズを1作目から順番に見始めて半年。ようやく22作目まで見終わった。週に1作もいかない超スローペースである。

全48作だから、これでもまだ折り返し地点まで到達していない。マラソンでいうと20キロ地点の手前あたりか。なんというボリュームだ。

シリーズも20作目を数えるようになるとだいぶ安定感が出てくる。しかし単調なワンパターンではなく、それぞれに特徴がある。寅さんのフラれ方も手を変え品を変え、よくもまあいろいろと。そうこうするうちに、満男もずいぶん大きくなったもんだ。

16~22作目までの特徴

寅次郎の帰還

シリーズ作品のラストシーンはフラれて旅に出た寅さんの姿。初期の作品だと、ラストに出てくる場所はその作品に関係する舞台や柴又と関係ない地方で、「フーテンの寅は今日もひとり旅路をゆく」みたいな終わり方だった。

ところがだんだんと、その作品に関係する舞台やゲストキャラの元へひょっこり現れて、「よっ、元気でやってるか? 心配で来ちゃったよ」みたいな再会パターンが増えてきた。

寅さんのアフターフォローが手厚くなってきたのは時代の変化であろうか。

夢のシーンがぶっ飛び始める

定番化した冒頭の夢のシーン。当初は時代劇風の内容ばかりだったのが、だんだんバリエーションが増えてきた。とらやが超金持ちになる回もあったけど、屋敷の中でぶどうをちぎって食べるとか、金持ちのイメージがちょっとおかしい。

当時のヒット映画のパロディ要素を取り入れたりもしている。中でもジョーズの回がぶっ飛んでる。源吉が人食い鮫に襲われて胴体真っ二つ。しょっぱい特殊効果による衝撃、いや笑劇のシーンだ。よくこんなの思いついたな。

だが現時点でのぶっ飛び大賞は、E.T.? 未知との遭遇? ぽいSFの回。なぜか柴又にUFOがやって来る。寅さんを迎えに来たようなのだが、その寅さんが妙な宇宙人コスプレで目のやり場に困るレベル。あと源吉が猿みたいだったからベースは猿の惑星かも。

とらや大爆破!

大事件勃発だ。ある意味で自爆テロ。とらやをガス爆発で吹き飛ばしたのだ。20作目のゲストキャラの若者が失恋(と勘違い)し、下宿先のとらやの2階の部屋でガス自殺を試みた。ガス栓を開いた後、遺書をしたためようとしたもののうまく書けず、煮詰まってタバコで一服しようとしてマッチで着火→爆発。だめだこりゃ。

当の部屋を破壊した程度の被害ですんだとはいえ、修繕に保険を使おうにも厳しい状況だったようだ。タコ社長には「いっそ全壊してくれたほうがスッキリしたんだよ」と言われる始末。まあこの事件のおかげで寅さんとマドンナが出会えたわけだが。

寅次郎 温泉めぐり

寅さんは各地の温泉を訪れている。うらやましい。16~22作目までのはっきりしている範囲だと、別所温泉と田の原温泉。実際に行った場面はないけど会話の内容から行きそうな予感を漂わせていた赤石温泉(静岡県の方)。それと木曽の紅葉館という名前で出てきた旅館も温泉設定のはずだが何温泉だかは不明。いいなあ、行きたい。

別所温泉では無銭飲食したあげく警察の厄介になるも、人心を巧みに掌握して、さくらが迎えに来た頃には署員をすっかり手なずけていたという、おそるべき能力を見せつけた寅さん。それくらいでなきゃテキ屋商売はできないってことか。


各作品を軽くご紹介

簡単なコメントとともに。

No.16:男はつらいよ 葛飾立志編
マドンナは考古学の研究者。とらやに下宿したため、例によって例の如し。しかしマドンナのボスにあたる教授(男)と寅さんの方が妙にウマが合ってしまい、最後は二人で旅をするまでの仲に。第10作でマドンナにフラれた東大の学者が巡査役で再登場したのも何かの因縁か。今となっては微妙にコメントしづらい桜田淳子も出演。

No.17:男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け
マドンナは芸者。ただし寅さんの恋愛対象というよりは相棒的存在。なので珍しく、惚れた・フラれた話のない作品となっている。また注目すべき点として、宇野重吉と寺尾聰が親子で出演している。宇野演じる大物画家の存在感がすごい。ラスト、東京の方角がどっちかくらい、西日本の人間だってさすがにわかるだろう…。

No.18:男はつらいよ 寅次郎純情詩集
マドンナは満男の学校の先生。と思わせてからの、そのお母さん。どうやってフラれるのかと思ったら、なんと衝撃の結末。哀感あふれる落とし方はシリーズ屈指。本作品では寅さんが過去の作品で絡んだ旅の一座と再会する場面があり、この一座は以後ちょいちょい出てくる。座長は冒頭でおなじみ夢のシーンの常連だ。

No.19:男はつらいよ 寅次郎と殿様
マドンナは伊予大洲の殿様の子孫の嫁だった未亡人(わかりにくいな)。殿様にいたく気に入られた寅さん、マドンナの再婚相手として殿様に推挙されるまでになったのだが…。最初の、おもちゃのこいのぼりで一悶着するシーンは、過去作のおもちゃのピアノで喧嘩したシーンを思い出させる。どっちかいうと、とらやの面々が学習してない。

No.20:男はつらいよ 寅次郎頑張れ!
マドンナは食堂の給仕。というのはフェイク。彼女のお相手は寅さんでなく、電気工事関係の仕事に就いていたワット君というあだ名の青年である。ネーミングが時代を感じさせる。ワット君て。とらやに一時下宿していた彼がシリーズ史上最大のテロ行為に及んだ件は上記の通り。ああそうそう、マドンナはワット君のお姉さんです。

No.21:男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく
マドンナはSKD(AKB一派じゃないよ、松竹歌劇団てのが昔あったのだ)のスター。さくらの元同級生という設定。この作品は他とちょっと異質な感じがする。寅さんよりもSKDにスポットが当たってる感じ。もうひとつ印象が強かったのが若き日の武田鉄矢。彼の登場シーンでは、びよよーん・びよよーんという妙ちきりんなテーマ曲が流れる。

No.22:男はつらいよ 噂の寅次郎
マドンナは旦那と別れる寸前の婦人。これはもしかしたら、別の男ひとりに泣いてもらえば、寅さんとうまくいったんじゃないかと思わせる展開であった。でもこういうときに限って引いてしまうのが寅さん。なお今回久しぶりに博のお父さんが登場。この人も存在感がすごい。あと泉ピン子ね。新婚旅行で南アルプス赤石温泉に行くって発想がすごい。

お時間あれば見ておくんなせえ。