船員保険会(センポス)をご存知だろうか。船員向けの健康保険組合とでも言おうか。このセンポスの運営する保養所が各地にあって、その一つが静岡県焼津市にある「やいづマリンパレス」だ。ここのお風呂には天然温泉が使われている。
自分も近親もセンポスの会員じゃないし、船業界と関係ないけれども、やいづマリンパレスでは一般客を受け入れており、温泉付きビジネスホテル的な感覚で利用させてもらうことができるのである。
2017年ラストの一人旅で焼津を訪れた際、当ホテルに宿泊してみた。けっこう普通な感じだったけど、大浴場で海の男達と居合わせるあたりはセンポスの保養所らしさが光った。
自分は静岡市側から大崩海岸沿いの道を踏破しつつ焼津市へ入り、「エキチカ温泉・くろしお」で日帰り入浴した後に焼津駅へ向かい、あらかじめコインロッカーに預けてあった荷物を回収した。
焼津駅前には足湯コーナーがあった。遠目には噴水に見える。
駅からやいづマリンパレスまでは港方面へ徒歩10分。いささか閑散とした商店街を通り、小石川という川に沿った道を数分行ったところにある白い建物だった。一見すると普通の小さめなビジネスホテルだが、オブジェとして錨が置いてあるあたりは船員の宿っぽい。
予約した部屋は5階のツイン洋室。一人でツインを使うのは気がひけるけど、それしか空いてなかったのだからしょうがない。ほかに8畳和室というタイプもあったが満室だった。空いていれば和室タイプを選んだだろう。
なお、一人泊が可能な部屋は、ほかに別館の8畳和室(トイレなし)というタイプがある。こちらはWiFiが使えないというのでやめておいた。実際にはどのみちWiFiを使えなかったのだが…。
窓の外は焼津の街並み。海は近いがオーシャンビューというほど目の前ではないし方角も違う。5階だったから視界を遮るものはなく見晴らしは良かった。
WiFiはフロアごとにアクセスポイントが用意されている。しかしアクセスポイントへの接続は成功しても、そこから先の送受信が通らない。いくら試してもだめ。あきらめてスマホのテザリングに切り替えた。
あとで気づいたエレベータ内の掲示によれば、「WiFiは不具合により使えません。復旧には1週間ほどかかります」とのこと。お日柄がよろしくなかったようだ。
脱衣所にはカゴではなく3段のロッカーが設置されていた。なぜだか上2段には鍵がなく、最下段のみ鍵がついている。まあどっちでもいいけど。壁の成分表には「カルシウム・ナトリウム-塩化物泉、高張性、アルカリ性、高温泉」とあった。加水・循環濾過あり。
浴室へ入ると、ちょうど先客が出ていくところで、いきなり独占状態となった。ラッキー。しかしまもなく1名のおやっさんがやって来たため独占はあえなく終了。
浴槽はタイル張りの内湯が一つのみ。ざっと見たところ12名くらいいけそうだ。奥の角付近の壁だけが岩風呂っぽくしてあって、湯口のパイプらしき先端が突き出しているが、そこからお湯は流れていない。浴槽の底から投入している模様。
お湯は無色透明。先に体験したエキチカ温泉では、お湯をたくさん集めると微黄色に見えるような印象を持ったが、ここではどこまでも無色にしか見えない。匂いに関してはエキチカと同様。一瞬の油性インク風な刺激の後に微かなアブラ臭の余韻が残る。
塩っぽい温泉だから傷口がちょっとしみる。それとやや熱めなので長湯はできない。休憩をはさみながらの入浴となる。
風呂場のマナーを知らず傍若無人なふるまいをするという勝手な偏見に反して、彼らはマナーを守ってわりと静かに過ごしていた。と、上述のおやっさんとの間でいきなり会話が始まった。
「お前ら泊まるのか?」「トマラナイ、フロダケ」「どんくらいの船に乗ってんだ?」「サンビャクナナジュウハチトン」のようなやり取りが交わされていった。おおお、マリンパレスならではの光景じゃん。
以上は夕方の入湯時の出来事。夜と翌朝に入ったときは一般風のおじさんが1,2名いるだけだった。
夕食は海っぽいメニューでこんな感じ。
桜えびのかき揚げが目を引く。こいつはサクサクでうまかった。新鮮な刺し身はマグロ赤身とカツオと鯛だったかなあ。それとサザエの要領で食べる巻き貝。鍋は海老入りの海鮮鍋だったと思う(味噌汁がないので鍋のスープをどうぞと言われた)。
焼津港が近いからって食べ切れないほどの舟盛りがドーンというのはないけれど、割烹旅館じゃないんだし、宿泊料金を考えたら相応かつ十分ではないだろうか。なお、あらかじめ別注で頼んでおけば豪華絢爛にもできるようだ。
やいづマリンパレスをチェックアウトした後に港まで歩いてみた。5分くらいで岸壁に着くと、数名の釣り客が竿を立てており、その向こうには小さな漁船と石油タンクの入り混じった景色が展開していた。
虚空蔵山の方に目をやれば、山の谷間から富士山の頂きが顔を覗かせていた。スマホの写真だと無理矢理な拡大が必要でしょっぱい感じだが、肉眼ならもっとはっきり雄大な姿に映る。
なかなか素晴らしい眺めなので天気が良ければおすすめのスポットだ。
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自分も近親もセンポスの会員じゃないし、船業界と関係ないけれども、やいづマリンパレスでは一般客を受け入れており、温泉付きビジネスホテル的な感覚で利用させてもらうことができるのである。
2017年ラストの一人旅で焼津を訪れた際、当ホテルに宿泊してみた。けっこう普通な感じだったけど、大浴場で海の男達と居合わせるあたりはセンポスの保養所らしさが光った。
焼津黒潮温泉「やいづマリンパレス」へのアクセス
やいづマリンパレスの最寄り駅はJR東海道線・焼津。昼間は静岡から焼津までの区間を東海道線が10分に1本くらい走っていて、あんまり接続とかを気にしないですむから便利だ。自分は静岡市側から大崩海岸沿いの道を踏破しつつ焼津市へ入り、「エキチカ温泉・くろしお」で日帰り入浴した後に焼津駅へ向かい、あらかじめコインロッカーに預けてあった荷物を回収した。
焼津駅前には足湯コーナーがあった。遠目には噴水に見える。
駅からやいづマリンパレスまでは港方面へ徒歩10分。いささか閑散とした商店街を通り、小石川という川に沿った道を数分行ったところにある白い建物だった。一見すると普通の小さめなビジネスホテルだが、オブジェとして錨が置いてあるあたりは船員の宿っぽい。
やいづマリンパレスの部屋
和室と洋室から選択可能
エントランスのところのガラスケースに入れられた船の模型を横目にチェックイン。このときも普通な感じで、保険証を見せるとかセンポスに会員登録するとか、そういう特殊な手続きはとくになかった。予約した部屋は5階のツイン洋室。一人でツインを使うのは気がひけるけど、それしか空いてなかったのだからしょうがない。ほかに8畳和室というタイプもあったが満室だった。空いていれば和室タイプを選んだだろう。
なお、一人泊が可能な部屋は、ほかに別館の8畳和室(トイレなし)というタイプがある。こちらはWiFiが使えないというのでやめておいた。実際にはどのみちWiFiを使えなかったのだが…。
一般的なビジネスホテル風のツイン洋室
さてツイン洋室に入ると、エコノミーな保養所だからという偏見を覆し、思ったよりきれいできちっとしていた(失礼)。シャワートイレ・洗面付きで空の冷蔵庫や金庫もある。ラグジュアリーとはいかないが、一般的なビジネスホテルの水準にはある。窓の外は焼津の街並み。海は近いがオーシャンビューというほど目の前ではないし方角も違う。5階だったから視界を遮るものはなく見晴らしは良かった。
WiFiはフロアごとにアクセスポイントが用意されている。しかしアクセスポイントへの接続は成功しても、そこから先の送受信が通らない。いくら試してもだめ。あきらめてスマホのテザリングに切り替えた。
あとで気づいたエレベータ内の掲示によれば、「WiFiは不具合により使えません。復旧には1週間ほどかかります」とのこと。お日柄がよろしくなかったようだ。
海の男が集う黒潮の温泉
海水50%温泉
当ホテルの1階にある大浴場には、焼津黒潮温泉として湧出する温泉が配湯されている。海水の半分の濃度で…という謳い文句の風呂へさっそく行ってみた。脱衣所にはカゴではなく3段のロッカーが設置されていた。なぜだか上2段には鍵がなく、最下段のみ鍵がついている。まあどっちでもいいけど。壁の成分表には「カルシウム・ナトリウム-塩化物泉、高張性、アルカリ性、高温泉」とあった。加水・循環濾過あり。
浴室へ入ると、ちょうど先客が出ていくところで、いきなり独占状態となった。ラッキー。しかしまもなく1名のおやっさんがやって来たため独占はあえなく終了。
軽い刺激臭がする熱めのお湯
洗い場のカランは9つ。お茶の成分入りのシャンプーやボディソープが置かれるあたりはさすが静岡。浴槽はタイル張りの内湯が一つのみ。ざっと見たところ12名くらいいけそうだ。奥の角付近の壁だけが岩風呂っぽくしてあって、湯口のパイプらしき先端が突き出しているが、そこからお湯は流れていない。浴槽の底から投入している模様。
お湯は無色透明。先に体験したエキチカ温泉では、お湯をたくさん集めると微黄色に見えるような印象を持ったが、ここではどこまでも無色にしか見えない。匂いに関してはエキチカと同様。一瞬の油性インク風な刺激の後に微かなアブラ臭の余韻が残る。
塩っぽい温泉だから傷口がちょっとしみる。それとやや熱めなので長湯はできない。休憩をはさみながらの入浴となる。
グローバル交流の場
ふうふういいながらお湯につかっていると、5,6名のガッチリ体型の外国人が入ってきた。近年ありがちな訪日観光客ではなさそう。船で働く男達とみた。後日の調べによれば、焼津発の遠洋漁業の現場には多数の外国人(主にキリバスやインドネシア)が従事しているという。風呂場のマナーを知らず傍若無人なふるまいをするという勝手な偏見に反して、彼らはマナーを守ってわりと静かに過ごしていた。と、上述のおやっさんとの間でいきなり会話が始まった。
「お前ら泊まるのか?」「トマラナイ、フロダケ」「どんくらいの船に乗ってんだ?」「サンビャクナナジュウハチトン」のようなやり取りが交わされていった。おおお、マリンパレスならではの光景じゃん。
以上は夕方の入湯時の出来事。夜と翌朝に入ったときは一般風のおじさんが1,2名いるだけだった。
海鮮中心の食事
桜えびのかき揚げが光る夕食
やいづマリンパレスの食事は朝夕とも2階の食事処で。部屋ごとに決まったテーブルが割り当てられるが、朝夕でテーブルが変わる組も若干いる。夕食は海っぽいメニューでこんな感じ。
桜えびのかき揚げが目を引く。こいつはサクサクでうまかった。新鮮な刺し身はマグロ赤身とカツオと鯛だったかなあ。それとサザエの要領で食べる巻き貝。鍋は海老入りの海鮮鍋だったと思う(味噌汁がないので鍋のスープをどうぞと言われた)。
焼津港が近いからって食べ切れないほどの舟盛りがドーンというのはないけれど、割烹旅館じゃないんだし、宿泊料金を考えたら相応かつ十分ではないだろうか。なお、あらかじめ別注で頼んでおけば豪華絢爛にもできるようだ。
予想外に米がうまかった朝食
朝はシンプルな鮭の定食に味噌汁がつく。人数に合わせた大きさのお櫃で出てくる米がうまかった。朝からガッツリ完食しそうになった。焼津港へ寄り道してみた
焼津といえば海や港のイメージ。当ホテルの部屋から海は見えなかったが、海が近いことは確かである。5階の廊下側の窓からは下の写真の通り、焼津港がチラ見できる。真ん中らへんにこんもりしてるのは虚空蔵山。その向こうに大崩海岸がある。やいづマリンパレスをチェックアウトした後に港まで歩いてみた。5分くらいで岸壁に着くと、数名の釣り客が竿を立てており、その向こうには小さな漁船と石油タンクの入り混じった景色が展開していた。
虚空蔵山の方に目をやれば、山の谷間から富士山の頂きが顔を覗かせていた。スマホの写真だと無理矢理な拡大が必要でしょっぱい感じだが、肉眼ならもっとはっきり雄大な姿に映る。
なかなか素晴らしい眺めなので天気が良ければおすすめのスポットだ。
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