師走の静岡への一人旅で梅ヶ島温泉を訪れた際、近くの観光スポットである安倍の大滝へ行ってみた。近くといっても山の中のハイキングコースを片道40分ほど歩くことになる。あまりに軽装だとちょっと厳しいだろう。
ハイライトはもちろん主役である安倍の大滝。豪快さと繊細さを兼ね備え、上から下まで見事な姿。そしてもう一つのハイライトがスリルたっぷりの、道中にかかる2番目の吊り橋。怖気づかせるに十分な高さと揺れ、これはもう、絶対にアウトな人がいてもおかしくない。君は渡ることができるか。
JR静岡駅から梅ヶ島温泉行きのバスで約2時間、安倍大滝入口停留所が最寄りだ。バスは安倍川に沿って狭い道を延々と北上していくが、車窓からは安倍川にかかる長い吊り橋をいくつか見ることができる。結構吊り橋を活用してる川なんだなあ、とのん気に眺めていたが、これは後の伏線であった。
なお、安倍大滝入口ではなく終点・梅ヶ島温泉で降り、その先の林道からアプローチする別ルートがあるものの、道があまり整備されてなく急斜面で危ないそうだから、本記事で紹介するルートが無難だ。
自分は梅ヶ島温泉で降りて、温泉街の湯元屋というお店で温泉入浴や静岡おでんを楽しんだ後、バスで来た道を安倍大滝入口まで10分弱歩いて戻った。
バス停から坂を下ってすぐのところに赤くて目立つ最初の吊り橋がある。安倍川の源流(三河内川)にかかる長くて丈夫そうな橋だ。少しは揺れるし高さもかなりあるけど、がっちり安定感のおかげでそれほど怖くない。
両岸の間に張られた数本のワイヤー。その上に置かれた細い板。1名ずつ渡るようにとの看板が立っている。手すりもワイヤーでいささか頼りなく、がっちり支えてくれる感じではない。
こりゃあスリルたっぷりだ。写真から受けるであろう印象以上に高さがあるし、高所がだめな人はここでギブアップ必至。揺れ方も最初の橋の比ではない。さっさか歩くのはとても無理。頼りにならない手すりのワイヤーを握りしめ、へっぴり腰の体勢で一歩一歩、ゆっくり進んでいった。
旅の全荷物を入れたリュックを背負っているせいで、重心の位置が高くなっていたのもバランスを取りづらい一因だった。おかげで渡りきるまでにずいぶんと時間を要してしまった。
対岸に着いてから見た吊り橋がこれ。板が途中でずれているし、しかも一部が欠けてやがる…。
地盤は不安定そうで、ところどころ崩れが発生している箇所も見られた。
川側は柵やガードレールが設置されているわけではなく、ロープを張った箇所も一部あるにはあるが、基本的には何もない。気を抜けば足を踏み外して滑落、ハイそれまでよ。前後に人の姿が見えない中、こんな道を一人で進んでいくのはさすがに心細い。
そういえば登山者は熊よけに鈴を付けて人間の存在を知らせながら歩くんだったっけ…鈴がないので、手をパンパン叩きながら歩く怪しいおじさんがここに誕生した。
※のちに宿泊先の旅館で聞いたところによると、「このあたりで熊が出るという話は聞かないですね」とのことだった。でもネット情報だと梅ケ島地域にも生息しているみたい。本格登山で行くような山中には出るんだろう。
川の対岸に大規模な斜面保護工事が行われたところもあった。崩れまくってますなあ。
行程の8割方来たかな、というあたりで登場するのが、今度こそ第3の吊り橋。がっちり安定のつくりで比較的新しい。もともとあった橋は2014年2月の雪で落ちてしまい、復旧したのは2017年春だそうだ。
そしてついに…キター! 苦節40分。
滝の落口から滝壺までを一望できる観瀑台が設置されており、安倍の大滝をじっくり見学させてもらった。なかなかの絶景だ。高さもさることながら、落ちる水の姿が美しい。
ドドドッと塊で勢いよく落ちるんじゃなくて、幾筋にも細かく分かれた水の糸が、優雅に滑り下りてくるように見える。耳に入ってくる音もあくまで優雅に、サーッという感じ。
滝の中間に大きな横穴が開いているようだ。あれは自然にできたのか。到達する術はあるのだろうか。そして一部につららができている。真冬になれば滝そのものが凍るんじゃないだろうか。
帰りは下り坂基調の分だけいくらか楽だった。第2吊り橋は相変わらずのへっぴり腰で一歩ずつだったが。
三段の滝がこちら。見ようによっては3段あると解釈できなくもないが、どうしても2段に見える。
安倍の大滝とスケールを比べるのはちとかわいそうだけど、とにかく気軽に行ける場所だから、梅ヶ島温泉を訪れたついでに立ち寄ってみてはいかがだろう。
ハイライトはもちろん主役である安倍の大滝。豪快さと繊細さを兼ね備え、上から下まで見事な姿。そしてもう一つのハイライトがスリルたっぷりの、道中にかかる2番目の吊り橋。怖気づかせるに十分な高さと揺れ、これはもう、絶対にアウトな人がいてもおかしくない。君は渡ることができるか。
安倍の大滝へのアクセス
安倍の大滝は安倍川の支流・逆川にあるスケールの大きな滝で、落差80メートルといわれ、日本の滝百選にも選ばれている。それほどの滝があることは旅行前の下調べで初めて知った。梅ヶ島温泉まで行くからには滝へも足を延ばしてみるしかあるまい。JR静岡駅から梅ヶ島温泉行きのバスで約2時間、安倍大滝入口停留所が最寄りだ。バスは安倍川に沿って狭い道を延々と北上していくが、車窓からは安倍川にかかる長い吊り橋をいくつか見ることができる。結構吊り橋を活用してる川なんだなあ、とのん気に眺めていたが、これは後の伏線であった。
なお、安倍大滝入口ではなく終点・梅ヶ島温泉で降り、その先の林道からアプローチする別ルートがあるものの、道があまり整備されてなく急斜面で危ないそうだから、本記事で紹介するルートが無難だ。
自分は梅ヶ島温泉で降りて、温泉街の湯元屋というお店で温泉入浴や静岡おでんを楽しんだ後、バスで来た道を安倍大滝入口まで10分弱歩いて戻った。
前半に待つ難所・揺れる吊り橋
第1の吊り橋は怖くない
時刻は13時半。雲一つない快晴だというのに、お日様は山の裏へ隠れてしまい、早くも夕刻っぽい雰囲気が漂い始めていた。こういうところはあっという間に暗くなってしまうんだろうな。15時までには戻りたい。バス停から坂を下ってすぐのところに赤くて目立つ最初の吊り橋がある。安倍川の源流(三河内川)にかかる長くて丈夫そうな橋だ。少しは揺れるし高さもかなりあるけど、がっちり安定感のおかげでそれほど怖くない。
最大難関・第2の吊り橋に挑む
渡りきったら右へ折れて、ほどなくして第2の吊り橋がある。こいつが曲者。見よ、この素朴なつくりを。両岸の間に張られた数本のワイヤー。その上に置かれた細い板。1名ずつ渡るようにとの看板が立っている。手すりもワイヤーでいささか頼りなく、がっちり支えてくれる感じではない。
こりゃあスリルたっぷりだ。写真から受けるであろう印象以上に高さがあるし、高所がだめな人はここでギブアップ必至。揺れ方も最初の橋の比ではない。さっさか歩くのはとても無理。頼りにならない手すりのワイヤーを握りしめ、へっぴり腰の体勢で一歩一歩、ゆっくり進んでいった。
旅の全荷物を入れたリュックを背負っているせいで、重心の位置が高くなっていたのもバランスを取りづらい一因だった。おかげで渡りきるまでにずいぶんと時間を要してしまった。
対岸に着いてから見た吊り橋がこれ。板が途中でずれているし、しかも一部が欠けてやがる…。
一人で行くには心細い道
2番目の吊り橋がまたいだのは安倍川支流の逆川。この先のハイキングコースは逆川に沿っている。登りの険しさはまだましな方で路面状態も悪くはない。けど楽勝ともいえない。道の山側の斜面には倒木がごろごろ転がっていた。地盤は不安定そうで、ところどころ崩れが発生している箇所も見られた。
川側は柵やガードレールが設置されているわけではなく、ロープを張った箇所も一部あるにはあるが、基本的には何もない。気を抜けば足を踏み外して滑落、ハイそれまでよ。前後に人の姿が見えない中、こんな道を一人で進んでいくのはさすがに心細い。
歩き通した先に現れる美しい滝
脳内だけの“熊出没注意”
結局、滝の近くに行くまで他の人と出会うことはなかった。そんな山道を黙々と歩いていると、12月といはいえ、まさか熊が出てこないだろうなと勝手な妄想が膨らんでくる。おらちょっとドキドキしてきたぞ。そういえば登山者は熊よけに鈴を付けて人間の存在を知らせながら歩くんだったっけ…鈴がないので、手をパンパン叩きながら歩く怪しいおじさんがここに誕生した。
※のちに宿泊先の旅館で聞いたところによると、「このあたりで熊が出るという話は聞かないですね」とのことだった。でもネット情報だと梅ケ島地域にも生息しているみたい。本格登山で行くような山中には出るんだろう。
新しく架け替えられた第3の吊り橋
しばらく進むと第3の吊り橋…じゃなくて、金属製の足場をかけた斜面に出くわした。斜面があまりに急で、もともとそうなのか、それとも崩落でやられたのか、とにかくもはや路盤を作ることができず、こうしてトラバースさせるのであろう。川の対岸に大規模な斜面保護工事が行われたところもあった。崩れまくってますなあ。
行程の8割方来たかな、というあたりで登場するのが、今度こそ第3の吊り橋。がっちり安定のつくりで比較的新しい。もともとあった橋は2014年2月の雪で落ちてしまい、復旧したのは2017年春だそうだ。
ついに安倍の大滝とご対面
さあ目的の滝まであと少し。逆川もだいぶ幅が狭く原初的な姿になってきた。そしてついに…キター! 苦節40分。
滝の落口から滝壺までを一望できる観瀑台が設置されており、安倍の大滝をじっくり見学させてもらった。なかなかの絶景だ。高さもさることながら、落ちる水の姿が美しい。
ドドドッと塊で勢いよく落ちるんじゃなくて、幾筋にも細かく分かれた水の糸が、優雅に滑り下りてくるように見える。耳に入ってくる音もあくまで優雅に、サーッという感じ。
滝の中間に大きな横穴が開いているようだ。あれは自然にできたのか。到達する術はあるのだろうか。そして一部につららができている。真冬になれば滝そのものが凍るんじゃないだろうか。
帰りは下り坂基調の分だけいくらか楽だった。第2吊り橋は相変わらずのへっぴり腰で一歩ずつだったが。
三段の滝もあるよ
翌日、「三段の滝」というスポットにも行ってみた。こちらは梅ヶ島温泉街から10分もかからない。湯元屋から奥へ続く舗装された車道を歩いて行くだけだから楽ちん。途中に安倍川の起点を示す標識が立っており、なぜだか感慨深いものがあった。三段の滝がこちら。見ようによっては3段あると解釈できなくもないが、どうしても2段に見える。
安倍の大滝とスケールを比べるのはちとかわいそうだけど、とにかく気軽に行ける場所だから、梅ヶ島温泉を訪れたついでに立ち寄ってみてはいかがだろう。
(2023.3追記)2022年末に安倍の大滝を5年ぶりに再訪した。体力が衰えたのか、ものすごく疲れた。