9月の休日。日帰り温泉施設へ遠征するついでに葛飾・柴又へ行ってみた。かのフーテンの寅さんの出身地である。参道→帝釈天→寅さん記念館→山本亭→矢切の渡しと、ゆっくり回って3時間といったところだ。
あちこち見て歩くうちに映画のテーマソングが脳内で無限ループし始め、気分はすっかり寅さんになってしまったのだった。奮闘努力の甲斐もなくぅ、今日も涙の陽が落ちるぅー。
わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又ではございません。寅さん映画もろくに見てません。思い入れもないのになぜ柴又へ行くのか? 本人にも謎である。気まぐれとしか言いようがない。
最寄りの柴又駅へはJR常磐線・金町駅か京成本線・高砂駅からどちらも京成金町線に乗り換えて1駅。今回は後者のルートで行った。
その近くには妹・さくらの像も。兄を見つめる姿がいじらしい。本物の倍賞千恵子の方が美人だな。
駅から帝釈天までの参道は、各地の門前通りや仲見世的な感じで、みやげ物屋・お茶屋・食事処などが並ぶ。佃煮・せんべい・だんごの店が多い印象。
目を引いたのが昭和レトロを狙った「ハイカラ横丁」という駄菓子屋さん。店内ところ狭しと並ぶ駄菓子のほか、懐かしの映画スターのブロマイドや鄙びた温泉街で見られそうなピンボールなどがあった。2階はおもちゃ博物館になっている。どうしようか迷ったもののスルー。
もう1軒の、第4作まで撮影に使われたという「とらや」も中は満席ぽかったものの、テイクアウトの焼草だんごには数人しか並んでいなかったから、こちらで1本お願いしてみた。
草だんごといえばアンコが定番だが、ここのは焼いて醤油に浸して海苔をまぶすところが変わっている。なかなかいける。これが唯一の朝昼兼用食となった。
お堂の左手にある手水舎のところだけ妙に行列ができていた。海外からの観光客の姿も目立ったから、作法がわからなくて戸惑っていたために詰まってしまったのかもしれない。
と思ったら、後日ネットで調べたところによると、これが寅さんの口上「帝釈天で産湯を使い…」の御神水だそうな。へー。だから人が群がってたのかな。
お堂に上がって参拝し、中を軽くひと回り。御朱印はお堂の中でもらえる。また、脇の廊下の先に庭園と彫刻ギャラリーの入口があった(拝観料400円)。しかし自分は行かずに踵を返す。我ながらテキトーだ。なお、御前さまはいなかった模様。
厳しい残暑に水分を奪われすぎたので、門前で売り子をやってたおばあちゃんが「工場直送ですよー」との掛け声で売っていたラムネを飲んだ。ふぅー潤ったぜ。これが唯一の朝昼兼用水分補給となった。
中は映画「男はつらいよ」シリーズに関する展示。時間軸で第1作より前の時期にあたる寅さんの生い立ちを説明するカラクリ装置みたいなのが凝っていて面白かった。10歳くらいまでの寅さんはしっかり者だったのね。
続いては「くるまや」のセット。いまにも寅さんがひょっこり顔を出しそうだ。ファンと思われる方々がしみじみと眺めつつ映画のワンシーンを追体験しているようだった。
その先にはタコ社長の印刷所も。
ほかに街並みのミニチュアセットや鉄道模型など。現在の京成金町線のルーツはなんと人車軌道だと知ってびっくり。車両を人力で押してたのかよ。
最後は作品ごとのマドンナたちのご紹介。そうそうたる顔ぶれが並ぶさまはまさしく大女優史。自分はここの説明で知ったようなものだけど、寅さんはリリーと一緒になっておけばねえ。そんなリリーもいまじゃ今川の寿桂尼だもんねえ。
こちらは山田洋次監督の経歴・作品・作風についてを語るワンルームのミニ展示室。中央にカメラと作品のテープが山と積まれている。
こうしてみると結構多作だな。しかも名作・良作揃いなのはすごい。とりわけ初期作品の「馬鹿が戦車(タンク)でやって来る」ってタイトルのインパクトがすごい。どんな話なのか見てみたい。
ここは富豪の邸宅だったところで美しい庭園が見どころ。なんでも日本庭園ランキングで3位になったことがあるとか、張り紙でアピールされていた。ここ単独で入場すると100円かかる。
大正~昭和初期な感じの日本家屋だけど1室だけ鳳凰の間という大正ロマンな洋室がある。また大広間が休憩所になっていて、そこから庭園を眺めることができる。
窓口で券を買うとお茶+和菓子セットのサービスを受けられる。風流な庭を見ながらお茶休みと洒落たいところだったが、人がいっぱいいたからやめた。芋洗い絶対避けるマンなので。
土手を下って川の近くまで行くと、そこだけ木がこんもり茂ったところがある。矢切の渡しの船着き場だった。気分は金八先生から細川たかしへスイッチ(忙しいな、おい)。そこにはすでに20名くらいの行列ができていた。
10分くらい待っていると対岸から小舟がやってきた。降りる客と入れ替わりで乗り込んで出発。片道200円。
舟はゆっくりとZ字を描くようなコースで対岸を目指す。のんびりのんびり、ひたすらのんびりだ。青空と風と川の組み合わせは爽快だけれども、水はすっかり濁っており、手をつける気にはなれない。
あまりにゆっくりまったりなので、いつのまにか気がついたら岸が近づいていたという感じで、ゴール。近くにはアオサギがいた。船頭さんによればカワセミを見ることもあるという。
矢切駅までの道は「野菊のこみち」と名づけられた標識が立っている。矢切を舞台にした小説「野菊の墓」から取ったものだろう。コースの前半は田畑のあぜ道。天候次第では結構ぬかるんでいたりして、カジュアルすぎる靴だと苦戦するから、しっかり準備しておこう。
途中には文学碑があった。それと庚申塚があった。どうやら矢切という地名は昔の合戦の悲劇から由来しているようである(→矢が切れる、矢切れ)。こりゃヘビーだね、ドク。などとバック・トゥ・ザ・フューチャーの真似事を言ってるうちに30分弱で矢切駅へ到着。
ふー、やっと着いた。…おや、いつのまにかせっかくの寅さん気分が抜けてしまってるぞ…まあいい。寅さんの魂は満男が受け継いだ。あっしはあっしのフーテンの道をゆく。渡世人のつれえところよ。
(追記)後日、映画「男はつらいよ」を見たらハマってしまい、シリーズ全作の鑑賞へと突き進むことになった。
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あちこち見て歩くうちに映画のテーマソングが脳内で無限ループし始め、気分はすっかり寅さんになってしまったのだった。奮闘努力の甲斐もなくぅ、今日も涙の陽が落ちるぅー。
気まぐれで寅さんのふるさと柴又へ
急きょ思い立って埼玉・三郷の日帰り温泉「めぐみの湯」へ行くことにした。その際、ただ直行するのも芸がないなと思い、あっち方面で寄り道するところはないかなと考えて決めたのが柴又である。わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又ではございません。寅さん映画もろくに見てません。思い入れもないのになぜ柴又へ行くのか? 本人にも謎である。気まぐれとしか言いようがない。
最寄りの柴又駅へはJR常磐線・金町駅か京成本線・高砂駅からどちらも京成金町線に乗り換えて1駅。今回は後者のルートで行った。
懐かしさを感じさせるにぎやかな参道
レトロでハイカラな横丁
駅を出るといきなり寅さんの像が立っていた。顔が影になってちょっとわかりにくいか。大勢が群がって写真を撮っていた。その近くには妹・さくらの像も。兄を見つめる姿がいじらしい。本物の倍賞千恵子の方が美人だな。
駅から帝釈天までの参道は、各地の門前通りや仲見世的な感じで、みやげ物屋・お茶屋・食事処などが並ぶ。佃煮・せんべい・だんごの店が多い印象。
目を引いたのが昭和レトロを狙った「ハイカラ横丁」という駄菓子屋さん。店内ところ狭しと並ぶ駄菓子のほか、懐かしの映画スターのブロマイドや鄙びた温泉街で見られそうなピンボールなどがあった。2階はおもちゃ博物館になっている。どうしようか迷ったもののスルー。
やっぱり草だんごでしょ
映画との絡みでいえば、寅さんの実家のモデルといわれる「高木屋」だが、さすが休日の昼だけあって激混み。予約の団体様で店員さんもいっぱいいっぱいの様子。テイクアウトのだんごを頼むのすら難しそうな情勢。もう1軒の、第4作まで撮影に使われたという「とらや」も中は満席ぽかったものの、テイクアウトの焼草だんごには数人しか並んでいなかったから、こちらで1本お願いしてみた。
草だんごといえばアンコが定番だが、ここのは焼いて醤油に浸して海苔をまぶすところが変わっている。なかなかいける。これが唯一の朝昼兼用食となった。
庭園やギャラリーを併設する帝釈天
帝釈天に到着。お堂の左手にある手水舎のところだけ妙に行列ができていた。海外からの観光客の姿も目立ったから、作法がわからなくて戸惑っていたために詰まってしまったのかもしれない。
と思ったら、後日ネットで調べたところによると、これが寅さんの口上「帝釈天で産湯を使い…」の御神水だそうな。へー。だから人が群がってたのかな。
お堂に上がって参拝し、中を軽くひと回り。御朱印はお堂の中でもらえる。また、脇の廊下の先に庭園と彫刻ギャラリーの入口があった(拝観料400円)。しかし自分は行かずに踵を返す。我ながらテキトーだ。なお、御前さまはいなかった模様。
厳しい残暑に水分を奪われすぎたので、門前で売り子をやってたおばあちゃんが「工場直送ですよー」との掛け声で売っていたラムネを飲んだ。ふぅー潤ったぜ。これが唯一の朝昼兼用水分補給となった。
映画の世界へようこそ
寅さんが蘇る「寅さん記念館」
続いて徒歩5分ほどのところにある寅さん記念館へ向かった。入場料は500円。近くの山本亭という庭園とのセット券が550円。中は映画「男はつらいよ」シリーズに関する展示。時間軸で第1作より前の時期にあたる寅さんの生い立ちを説明するカラクリ装置みたいなのが凝っていて面白かった。10歳くらいまでの寅さんはしっかり者だったのね。
続いては「くるまや」のセット。いまにも寅さんがひょっこり顔を出しそうだ。ファンと思われる方々がしみじみと眺めつつ映画のワンシーンを追体験しているようだった。
その先にはタコ社長の印刷所も。
ほかに街並みのミニチュアセットや鉄道模型など。現在の京成金町線のルーツはなんと人車軌道だと知ってびっくり。車両を人力で押してたのかよ。
最後は作品ごとのマドンナたちのご紹介。そうそうたる顔ぶれが並ぶさまはまさしく大女優史。自分はここの説明で知ったようなものだけど、寅さんはリリーと一緒になっておけばねえ。そんなリリーもいまじゃ今川の寿桂尼だもんねえ。
小規模だが作品ぎっしりの山田洋次ミュージアム
寅さん記念館の隣には山田洋次ミュージアムがあった。寅さん記念館のチケットがあれば無料で入れるみたいだ。こちらは山田洋次監督の経歴・作品・作風についてを語るワンルームのミニ展示室。中央にカメラと作品のテープが山と積まれている。
こうしてみると結構多作だな。しかも名作・良作揃いなのはすごい。とりわけ初期作品の「馬鹿が戦車(タンク)でやって来る」ってタイトルのインパクトがすごい。どんな話なのか見てみたい。
山本亭の風流な庭園
この頃にはすっかり寅さん気分のおっさんが1名できあがっていた。妄想が作りあげた源吉を従えてさっそうと近所の山本亭へ。山本山じゃないよ、ありゃ海苔だぜ、源公。こっちは山本亭。ここは富豪の邸宅だったところで美しい庭園が見どころ。なんでも日本庭園ランキングで3位になったことがあるとか、張り紙でアピールされていた。ここ単独で入場すると100円かかる。
大正~昭和初期な感じの日本家屋だけど1室だけ鳳凰の間という大正ロマンな洋室がある。また大広間が休憩所になっていて、そこから庭園を眺めることができる。
窓口で券を買うとお茶+和菓子セットのサービスを受けられる。風流な庭を見ながらお茶休みと洒落たいところだったが、人がいっぱいいたからやめた。芋洗い絶対避けるマンなので。
矢切の渡しで対岸へ
のんびりゆっくり渡し舟
山本亭から少し歩くと江戸川の土手に出る。気分は寅さんから金八先生にスイッチ(あっちの舞台は荒川の土手だけど)。土手を下って川の近くまで行くと、そこだけ木がこんもり茂ったところがある。矢切の渡しの船着き場だった。気分は金八先生から細川たかしへスイッチ(忙しいな、おい)。そこにはすでに20名くらいの行列ができていた。
10分くらい待っていると対岸から小舟がやってきた。降りる客と入れ替わりで乗り込んで出発。片道200円。
舟はゆっくりとZ字を描くようなコースで対岸を目指す。のんびりのんびり、ひたすらのんびりだ。青空と風と川の組み合わせは爽快だけれども、水はすっかり濁っており、手をつける気にはなれない。
あまりにゆっくりまったりなので、いつのまにか気がついたら岸が近づいていたという感じで、ゴール。近くにはアオサギがいた。船頭さんによればカワセミを見ることもあるという。
のどかな野菊のこみちをゆく
到着した千葉県・松戸側の土手の向こうは田畑が広がるのみ。多くの人はそのまま舟で柴又へ引き返す。だが自分は松戸側の最寄り駅である北総線・矢切駅を目指して2キロ弱を歩き始めた。矢切駅までの道は「野菊のこみち」と名づけられた標識が立っている。矢切を舞台にした小説「野菊の墓」から取ったものだろう。コースの前半は田畑のあぜ道。天候次第では結構ぬかるんでいたりして、カジュアルすぎる靴だと苦戦するから、しっかり準備しておこう。
途中には文学碑があった。それと庚申塚があった。どうやら矢切という地名は昔の合戦の悲劇から由来しているようである(→矢が切れる、矢切れ)。こりゃヘビーだね、ドク。などとバック・トゥ・ザ・フューチャーの真似事を言ってるうちに30分弱で矢切駅へ到着。
ふー、やっと着いた。…おや、いつのまにかせっかくの寅さん気分が抜けてしまってるぞ…まあいい。寅さんの魂は満男が受け継いだ。あっしはあっしのフーテンの道をゆく。渡世人のつれえところよ。
(追記)後日、映画「男はつらいよ」を見たらハマってしまい、シリーズ全作の鑑賞へと突き進むことになった。
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