厳しい残暑が収まって本格的な秋が始まる頃。あ~、このところ一人旅成分が不足気味だなあ…。グループ旅行やさまざまなイベントでそれなりに忙しくしていたのだが、どうにもムズムズする。
そろそろ一人旅がしたい。折しもフリーの週末が迫っていた。どうする? やるか? ミー、やっちゃいなよ。
よしきた。と、急いで週末の空室を探した。幸いなことに以前から気になっていた宿に予約を入れることができた。千葉県の温泉第1号に認定された旭市「矢指ヶ浦温泉館」である。
第1号ですよ、第1号。つまり本郷猛でありシンジ君の乗るやつだ(ん?)。これは行かねばなるまい。歴史ある温泉とうまい魚とかわいい猫の待つ矢指ヶ浦温泉館へと旅立った。
しかし自分は特急しおさいを使った。これだと1時間半くらい。しかも「えきねっと」で35%引きのチケットを購入できたため、各停を利用する場合とほぼ同じ料金ですんだ。
さて問題は駅から宿までだ。4キロ近く離れているから、歩いたら小一時間かかってしまう。バスが通っているのかどうかもよくわからない。今回は宿にお願いして送迎してもらえることになった。
駅で拾ってもらい、女将の手慣れた運転で約10分、矢指ヶ浦温泉館に到着した。マイカーで行く場合はゴール手前のすれ違い困難な細い道が最後の関門となるだろう(このあと近所にもっと道が広くて行きやすい駐車スペースがあるのを発見した)。
客室は2階にある。部屋は4つあるものの、さまざまな状況から考えて、1日最大3組までの客を取っている模様だ。自分の部屋は南東角の8畳間。古いっちゃ古いけどガラス窓が若干ガタついてるくらいで快適さを損なうものではない。エアコン完備。金庫はない。
トイレ・洗面・冷蔵庫は共同だ。廊下を出てすぐのところにある。トイレは男女共用じゃないかな。まあ昔ながらの小さい旅館のつくりである。
鄙び宿とはいえWiFi環境が提供されており、問題なく我がChromebookをインターネットに接続して利用することができた。出張のビジネス客もターゲットになっているようだ。
他に気づいた点として、窓にカーテンがなく代わりに障子が付いている。障子だと朝早くから部屋が明るくなって、それで目を覚ますことになった。健康的でいいけどね。どうしても朝寝坊を楽しみたい人にはアイマスクの持参をおすすめする。
風呂場は1階の奥にあって右手が女湯・左手が男湯。男女の入れ替えはない。小規模宿なので脱衣所にあるのは細かく区切られたカゴのない棚と洗面台が1つ。浴室の大きさからして、時間を融通しあって1組ずつ入るのがよかろう。今回は深く考えず入りたい時にふらりと行ったにもかかわらず、誰の出入りもなかった。
お湯は比較的クリアでやや黄味を帯びている(浴槽の水色のタイルがお湯を通すと緑に見える)。湯の花は見当たらず。特徴的な匂いもないが単なる沸かし湯とは明らかに違う感覚はあった。
全般に適温なのだが、一箇所に取り付けられた器具から時おりボコボコッと熱せられたお湯が出てきて、油断するとすぐに「上が熱くて下がぬるい」状態になる。意識して湯船の中で腕をぐるぐる回してかき混ぜてやる必要がある。
しばらくつかっていると、加熱した冷鉱泉とはいえ結構いい感じだ。なんか疲れが取れるっぽいのがじわじわくる。あーいいわー。
傍らにコップが置いてあって源泉を飲んでもいいみたい。自分は飲まなかったが。
なお、壁の2面は大きなガラス窓で、下半分は青い目隠しフィルムで覆われている。上半分はそのまま素通しで、男湯側は窓の向こうに畑がどーん。実際のところ農作業をしている人の姿はなく、誰かに見られるような状況にはならないと思う。
ふだん食べる機会のない金目鯛の煮付けまるまる1尾が主役。そして刺身2種、天ぷら、カタクチイワシ(背黒)のゴマふり酢の物、ミモザサラダ、栗ご飯、鮭つみれとタケノコの椀物、お櫃の白米。こいつはすごいや。
そこに地ビール「九十九里オーシャンビール」と後の晩酌用の山形「雪むかえ」という完璧な布陣にご満悦。
魚は期待通りにうまい。やっほう~、おさかな祭りだぜい、と調子よく食べ進むも、なかなかのボリューム。金目鯛をやっつけた頃にはお腹がかなり苦しくなっていた。1時間経過してもまだ食べきれない。
けっきょく最後に残ったお櫃のご飯は茶碗に半分だけしか食べられず。ああもったいないけど、もうギブアップ。満足度120%。ごちそうさまでした。
一般的な鮭の和定食と侮ってはいけない。さりげなくイクラの小鉢が付いてきた。しかも味噌汁には蟹が1匹使われている。地元で獲れる小さい蟹。せっかく名前を教えてもらったんだが、出てこない。どこかに書いておけばよかった。
鮭・イクラ・青海苔トリオのおかげでご飯何杯でもいけそう。しかし体質的に朝からそんなに食べられない。2杯で打ち止めとした。秋らしい柿と梨のデザートがまた良い。
1泊2食税込み1万円級で朝夕あれだけのものをいただけるなら超満足である。
背中をさすれ的な感じですり寄ってきたからさすってあげた。気持ち良さそうにしていたのでどんどんやってあげたら、何かがレッドラインを超えたらしく、いきなり猫パンチをくらってしまった。
どちらかというとつれない感じ。気が向いたときだけふらっと来る。名前通りのフーテンのとらさんだ。
部屋に入れてあげたとたん、あぐらをかいた上に丸まって、ごろごろ喉を鳴らして寝始めた。やべえ、かわいさに引きずり込まれちまう。何十分もこの体勢で猫かわいがりしてしまった…。
朝食のときも、にゃあにゃあいいながらやって来て、膝の上にジャンプしてきた。猫を膝に乗せての朝ごはん。これぞ本当の猫まんま。猫好きにとって至福の時を過ごした。
今は~、もう秋~、誰も~、いない海~♪
…いや、いる、いっぱいいるぞォ! サーファーのみなさんがいっぱい、波乗りに興じていらっしゃった。
主演の中村雅俊になりきって宿へ戻る途中に当宿の別の駐車スペースを発見した。旅館付近は道が狭くてごちゃついているから、大きい車はこちらへ停めるのかもしれない。
浜辺の工場の屋根にたむろするノッポな鳥たちに睨まれながら帰路を急ぐ。
そうして宿へ戻り、例のとら・さくらと出会った。こちらはもうメロメロで彼らの言いなりだ。どこかほっとする優しさに包まれるご当地「やさしが浦の総理大臣」を首班指名するとしたら、このニャンコたちを推すだろう。
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そろそろ一人旅がしたい。折しもフリーの週末が迫っていた。どうする? やるか? ミー、やっちゃいなよ。
よしきた。と、急いで週末の空室を探した。幸いなことに以前から気になっていた宿に予約を入れることができた。千葉県の温泉第1号に認定された旭市「矢指ヶ浦温泉館」である。
第1号ですよ、第1号。つまり本郷猛でありシンジ君の乗るやつだ(ん?)。これは行かねばなるまい。歴史ある温泉とうまい魚とかわいい猫の待つ矢指ヶ浦温泉館へと旅立った。
矢指ヶ浦温泉館へのアクセス
当宿の最寄りはJR総武本線・旭駅。東京からは総武線快速で千葉駅へ、そこから銚子行きの各駅停車に乗り換える。接続が良ければ2時間くらいで着く。しかし自分は特急しおさいを使った。これだと1時間半くらい。しかも「えきねっと」で35%引きのチケットを購入できたため、各停を利用する場合とほぼ同じ料金ですんだ。
さて問題は駅から宿までだ。4キロ近く離れているから、歩いたら小一時間かかってしまう。バスが通っているのかどうかもよくわからない。今回は宿にお願いして送迎してもらえることになった。
駅で拾ってもらい、女将の手慣れた運転で約10分、矢指ヶ浦温泉館に到着した。マイカーで行く場合はゴール手前のすれ違い困難な細い道が最後の関門となるだろう(このあと近所にもっと道が広くて行きやすい駐車スペースがあるのを発見した)。
昔ながらの小旅館の部屋
家族経営の当館は小じんまりとした建物で民宿に近い感じ。EV充電スタンドだけが妙に新しい。玄関側はごちゃっと家屋が密集しているが裏は畑が広がっている。客室は2階にある。部屋は4つあるものの、さまざまな状況から考えて、1日最大3組までの客を取っている模様だ。自分の部屋は南東角の8畳間。古いっちゃ古いけどガラス窓が若干ガタついてるくらいで快適さを損なうものではない。エアコン完備。金庫はない。
トイレ・洗面・冷蔵庫は共同だ。廊下を出てすぐのところにある。トイレは男女共用じゃないかな。まあ昔ながらの小さい旅館のつくりである。
鄙び宿とはいえWiFi環境が提供されており、問題なく我がChromebookをインターネットに接続して利用することができた。出張のビジネス客もターゲットになっているようだ。
他に気づいた点として、窓にカーテンがなく代わりに障子が付いている。障子だと朝早くから部屋が明るくなって、それで目を覚ますことになった。健康的でいいけどね。どうしても朝寝坊を楽しみたい人にはアイマスクの持参をおすすめする。
千葉県第1号温泉を体験
独占しやすいスタイルのお風呂
さて千葉県第1号温泉だ。夕方・夜・朝に入ってみた。女将さんに聞いてみると夜は22時まで、朝は7時からでお願いしますとのことだった。風呂場は1階の奥にあって右手が女湯・左手が男湯。男女の入れ替えはない。小規模宿なので脱衣所にあるのは細かく区切られたカゴのない棚と洗面台が1つ。浴室の大きさからして、時間を融通しあって1組ずつ入るのがよかろう。今回は深く考えず入りたい時にふらりと行ったにもかかわらず、誰の出入りもなかった。
じわじわくるお湯でまったり
浴室内は5人分の洗い場と横長の浴槽。横一列に並べば4~5人は入れそうだ。出入りする引き戸の上のところに手書きの分析書が掲げてあり、「含ヨウ素・ナトリウム-食塩泉」と書いてあった。そして冷鉱泉を加温したものらしい。お湯は比較的クリアでやや黄味を帯びている(浴槽の水色のタイルがお湯を通すと緑に見える)。湯の花は見当たらず。特徴的な匂いもないが単なる沸かし湯とは明らかに違う感覚はあった。
全般に適温なのだが、一箇所に取り付けられた器具から時おりボコボコッと熱せられたお湯が出てきて、油断するとすぐに「上が熱くて下がぬるい」状態になる。意識して湯船の中で腕をぐるぐる回してかき混ぜてやる必要がある。
しばらくつかっていると、加熱した冷鉱泉とはいえ結構いい感じだ。なんか疲れが取れるっぽいのがじわじわくる。あーいいわー。
源泉蛇口が癖になる
さらに温泉気分を盛り上げる仕掛けが壁際の蛇口である。ここから出てくるのはただの水ではない。源泉だ。軽く手にすくって鼻を近づけると…うわタマゴくさっ! かなりはっきりした硫黄臭がする。癖になって何度もやってしまった(蛇口全開でドバドバ入れるのはさすがに行き過ぎだと思ってやってない)。傍らにコップが置いてあって源泉を飲んでもいいみたい。自分は飲まなかったが。
なお、壁の2面は大きなガラス窓で、下半分は青い目隠しフィルムで覆われている。上半分はそのまま素通しで、男湯側は窓の向こうに畑がどーん。実際のところ農作業をしている人の姿はなく、誰かに見られるような状況にはならないと思う。
おさかな祭りの食事
地ビールと金目鯛に大満足の夕食
矢指ヶ浦温泉館の夜は部屋食になる。土地柄うまい魚を期待してしまう。すごい刺身盛りのコースもあったが、同じ値段の金目鯛コースにした。ふだん食べる機会のない金目鯛の煮付けまるまる1尾が主役。そして刺身2種、天ぷら、カタクチイワシ(背黒)のゴマふり酢の物、ミモザサラダ、栗ご飯、鮭つみれとタケノコの椀物、お櫃の白米。こいつはすごいや。
そこに地ビール「九十九里オーシャンビール」と後の晩酌用の山形「雪むかえ」という完璧な布陣にご満悦。
魚は期待通りにうまい。やっほう~、おさかな祭りだぜい、と調子よく食べ進むも、なかなかのボリューム。金目鯛をやっつけた頃にはお腹がかなり苦しくなっていた。1時間経過してもまだ食べきれない。
けっきょく最後に残ったお櫃のご飯は茶碗に半分だけしか食べられず。ああもったいないけど、もうギブアップ。満足度120%。ごちそうさまでした。
朝も海の幸たっぷり
朝食は1階ロビー隣の広間で。他の客はみなチェックアウトした後で、一人黙々と食べることになった。一般的な鮭の和定食と侮ってはいけない。さりげなくイクラの小鉢が付いてきた。しかも味噌汁には蟹が1匹使われている。地元で獲れる小さい蟹。せっかく名前を教えてもらったんだが、出てこない。どこかに書いておけばよかった。
鮭・イクラ・青海苔トリオのおかげでご飯何杯でもいけそう。しかし体質的に朝からそんなに食べられない。2杯で打ち止めとした。秋らしい柿と梨のデザートがまた良い。
1泊2食税込み1万円級で朝夕あれだけのものをいただけるなら超満足である。
2匹の猫に癒やされる
気まぐれフーテンの「とら」
矢指ヶ浦温泉館について記しておかねばならないのが2匹の猫。最初に出会ったのは「とら」。夕方の散歩を終えて宿に戻ってきたら玄関にいた。背中をさすれ的な感じですり寄ってきたからさすってあげた。気持ち良さそうにしていたのでどんどんやってあげたら、何かがレッドラインを超えたらしく、いきなり猫パンチをくらってしまった。
どちらかというとつれない感じ。気が向いたときだけふらっと来る。名前通りのフーテンのとらさんだ。
愛想の良い営業部長「さくら」
もう1匹は「さくら」。こちらは寅さんの妹と同じく愛想が良い。女将さんいわく営業部長だそうだ。人間のそばが好きみたいでグイグイ来る。夜になると各部屋の戸の前で「入れろ入れろ」と、にゃあにゃあ鳴くのだった。部屋に入れてあげたとたん、あぐらをかいた上に丸まって、ごろごろ喉を鳴らして寝始めた。やべえ、かわいさに引きずり込まれちまう。何十分もこの体勢で猫かわいがりしてしまった…。
朝食のときも、にゃあにゃあいいながらやって来て、膝の上にジャンプしてきた。猫を膝に乗せての朝ごはん。これぞ本当の猫まんま。猫好きにとって至福の時を過ごした。
秋の海でたそがれタイム
ゆうべ浜辺をもとおれば
当宿から海へは歩いて数分。ちょうどいい機会だと夕方に海まで散歩してみた。秋らしく少し寂し気な、おセンチな気分にひたるつもりだった。今は~、もう秋~、誰も~、いない海~♪
…いや、いる、いっぱいいるぞォ! サーファーのみなさんがいっぱい、波乗りに興じていらっしゃった。
矢指ヶ浦は「優しが浦」
それでも日暮れどきの海は十分に感傷的だ。太平洋側なので海に沈む夕日とはいかないが、下の写真くらいのシーンには出会える。気分はもう、懐かしの青春ドラマ「ゆうひが丘の総理大臣」である(原作はコミック)。主演の中村雅俊になりきって宿へ戻る途中に当宿の別の駐車スペースを発見した。旅館付近は道が狭くてごちゃついているから、大きい車はこちらへ停めるのかもしれない。
浜辺の工場の屋根にたむろするノッポな鳥たちに睨まれながら帰路を急ぐ。
そうして宿へ戻り、例のとら・さくらと出会った。こちらはもうメロメロで彼らの言いなりだ。どこかほっとする優しさに包まれるご当地「やさしが浦の総理大臣」を首班指名するとしたら、このニャンコたちを推すだろう。
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