湯治場として有名な長野県の鹿教湯(かけゆ)温泉。実はそう遠くない過去に訪問ずみだったのだが、ひょんなことから再訪の機会を得た。
グループ旅行で宿泊したのが、便利な立地の「みやこ旅館」。ご当地の性格を反映して、観光客というより湯治客に寄せた運営スタイルではあったが、鹿教湯のやさしいお湯を十二分に堪能できることは間違いない。
(2019.2追記)閉館したとの情報をキャッチした。現在ホームページはつながらない。もし本当なら残念だ。
よし、その夢かなえようじゃないか。個人的には2016年末にすでに訪問ずみなのだが、まあ何回行ったっていいところですよ、それじゃあレッツゴー。
我々は乗り継ぎの時間をうまく見計らって後者の便で行った。鹿教湯温泉停留所で下車して終点方向へ1分歩くとみやこ旅館に着く。散策道の起点や土産物屋や観光案内所が集積する、鹿教湯温泉の「へそ」のようなエリアで便の良いところだ。
チェックインして通された部屋は3階の茶蔵(さくら)と名付けられた特別室。夢・憧れと聞いて、張り切って奮発しちゃったんである。とはいえベラボーな値段ではない。目ん玉はどうにか飛び出ることなく今も顔の中に収まっている。
部屋は和モダン風。特別室は食事が部屋出しとなり、ダイニングテーブルに提供される。
隣室にベッドが2つ。その奥に洗面所と檜の内風呂。内風呂のお湯も温泉だ(専ら大浴場を利用したため結局未使用)。
トイレは最新式のウォシュレットでセンサーによる自動点灯・消灯。こいつは贅沢だぜ…。
本来この特別室は高級志向の観光客というよりもリハビリ客やガチ湯治客を想定しているんだと思う。バリアフリーが徹底されているし、和モダンなのは膝を曲げるのが辛いケースを考えたんじゃないかな。想像ですが。
なんにせよ部屋のしつらえは素晴らしく良くできており満足度は高い。
脱衣所の分析書には「弱アルカリ性単純温泉」とあった。脱衣所と浴室との間には透明なガラスが張られており、中の様子がよくわかると同時に広さを感じさせる。
中は古びたところがなくむしろ新しい感じ。洗い場のカランは4つ。内湯の浴槽はそこそこの広さで、もし10室前後の規模で運営しているなら十分なサイズだ。湯口にはコップが置いてあって飲泉できるようになっていた。
お湯は完全に無色透明。湯の花的なものもない。入ってみると、そうそう、鹿教湯はこんな感じだった。色や匂いに特徴はない。でも家の沸かし湯とは感触が違う。やはりやわらかいというか、角が取れて丸くなった感じがする。適温~ぬるめ寄りなのとあわせて長湯に向いている。
みやこ旅館の建物は中庭を口の字型に囲むように建っている。内湯の奥の扉から外へ出ると中庭に作られた5名規模の露天風呂があった。
日本庭園風に石や草木を配した環境の中にある露天風呂はムードたっぷり。周囲の建物からの視線を気にしなければ(実際そんな視線は存在しない)、ゆっくりとリラックスできる場所だ。
お湯の具合は内湯と同じ。こちらにもコップが置いてあったので試しに飲泉してみた。マイルドで素直なぬるいお湯だからたくさん飲める。整腸作用があるそうだ。たしかに、うん、効いたね、整腸しちゃった。
なおこの露天風呂は本来混浴のようだ。混浴になる場面はそうそうないと思うが一応そのつもりで利用されたい。大浴場へは夜にも行った。やさしいお湯にゆっくりつかり、前日が万座の酸性硫黄泉だったから、ちょうどよい仕上げ湯となった。
浴室の床が畳敷きになっている風呂の存在は知っていたが体験するのは初めてだ。お湯を流して良いものかどうか、わかっちゃいてもつい迷ってしまうね。
窓の外は例の中庭。おしゃれな庭園を見ながらやさしいお湯の源泉掛け流しを独占させてもらった。こりゃいいですなー。内湯・露天・貸切と、現在の運営規模からしたらとても贅沢で充実したお風呂環境といえよう。
夕食は配膳盆に乗せられての一度出し。よくある旅館の会席料理風というよりは素朴な家庭料理風。
野菜なんかは地元食材を使っていそうだが、信州らしさを演出する信州サーモン・鯉・馬刺し・きのこなどはない。固形燃料で温める鍋物や川魚の塩焼きもないから、ちょっと寂しく感じる人がいるかもしれない。
だが湯治滞在という観点で見れば合点がいくメニューだ。毎日会席料理ってわけにはいかないからね。ハレの要素が少なくてケの要素が多いというだけで、美味しくいただけることには変わりない。
食事にハレの要素を譲れない方は、もっと観光ホテル然とした宿を探した方がいいかもしれない。鹿教湯温泉街にそんなタイプがあるのかどうかわからないが。
個人的に食事への不満はとくにないが、唯一、夕食時のお酒のメニューがもうちょっと多彩だとよかった。まあ宴会旅館じゃないから仕方ない。
さすがに鹿教湯のお湯はいい。とくに露天風呂や貸切風呂の雰囲気をぜひ味わっていただきたい。また飲泉もぜひ味わっていただきたい。
なお、夢と憧れを持っていた同行者に鹿教湯温泉の感想を聞いてみたところ、温泉街・旅館・泉質いずれにも満足しており上々の評価であった。よかった、張り切ってセッティングした甲斐があったぜ。
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グループ旅行で宿泊したのが、便利な立地の「みやこ旅館」。ご当地の性格を反映して、観光客というより湯治客に寄せた運営スタイルではあったが、鹿教湯のやさしいお湯を十二分に堪能できることは間違いない。
(2019.2追記)閉館したとの情報をキャッチした。現在ホームページはつながらない。もし本当なら残念だ。
鹿教湯温泉・みやこ旅館へのアクセス
鹿教湯温泉ふたたび
2017年夏の避暑企画としてグループ旅行を計画する際、メンバーの約1名が鹿教湯温泉に行ってみたいという夢を持っていることが判明した。誰かにいい話を聞いたのか、テレビで取り上げられたのか、とにかく憧れを持っている様子。よし、その夢かなえようじゃないか。個人的には2016年末にすでに訪問ずみなのだが、まあ何回行ったっていいところですよ、それじゃあレッツゴー。
ショートカットのバス便あり
鹿教湯温泉は北陸新幹線/しなの鉄道の上田駅から鹿教湯車庫行きのバスに乗る。丸子経由と平井時経由の2ルートあって、前者の70分に対し、後者はショートカット気味に45分で行ける。我々は乗り継ぎの時間をうまく見計らって後者の便で行った。鹿教湯温泉停留所で下車して終点方向へ1分歩くとみやこ旅館に着く。散策道の起点や土産物屋や観光案内所が集積する、鹿教湯温泉の「へそ」のようなエリアで便の良いところだ。
みやこ旅館のハイソな特別室・茶蔵
ちょっと張り切ってしまいました
みやこ旅館は背後に4階建ての箱を構えており、正面玄関の印象だけだと規模を見誤ってしまう中規模旅館。しかし楽天トラベルや一休.comでは全7室とか10室と書いてあるな。一部の部屋を閉鎖して現状のリソースで回せる規模でやっているのかもしれない。チェックインして通された部屋は3階の茶蔵(さくら)と名付けられた特別室。夢・憧れと聞いて、張り切って奮発しちゃったんである。とはいえベラボーな値段ではない。目ん玉はどうにか飛び出ることなく今も顔の中に収まっている。
部屋は和モダン風。特別室は食事が部屋出しとなり、ダイニングテーブルに提供される。
湯治客向けの設計思想
ダイニングの横に小上がりの座敷がある。3名で泊まる場合は1名がここに布団を敷いて寝ることになる。隣室にベッドが2つ。その奥に洗面所と檜の内風呂。内風呂のお湯も温泉だ(専ら大浴場を利用したため結局未使用)。
トイレは最新式のウォシュレットでセンサーによる自動点灯・消灯。こいつは贅沢だぜ…。
本来この特別室は高級志向の観光客というよりもリハビリ客やガチ湯治客を想定しているんだと思う。バリアフリーが徹底されているし、和モダンなのは膝を曲げるのが辛いケースを考えたんじゃないかな。想像ですが。
なんにせよ部屋のしつらえは素晴らしく良くできており満足度は高い。
鹿教湯らしさを堪能できるお風呂
やさし~いお湯にゆったりと
みやこ旅館の玄関とフロントは実は2階にあり、1階が浴場フロアになっている。さっそく大浴場へ行ってみた。男湯に人の姿はまばらで我らグループの他には1名いるかどうかという感じ。脱衣所の分析書には「弱アルカリ性単純温泉」とあった。脱衣所と浴室との間には透明なガラスが張られており、中の様子がよくわかると同時に広さを感じさせる。
中は古びたところがなくむしろ新しい感じ。洗い場のカランは4つ。内湯の浴槽はそこそこの広さで、もし10室前後の規模で運営しているなら十分なサイズだ。湯口にはコップが置いてあって飲泉できるようになっていた。
お湯は完全に無色透明。湯の花的なものもない。入ってみると、そうそう、鹿教湯はこんな感じだった。色や匂いに特徴はない。でも家の沸かし湯とは感触が違う。やはりやわらかいというか、角が取れて丸くなった感じがする。適温~ぬるめ寄りなのとあわせて長湯に向いている。
庭園風の露天風呂
しばらくいい調子でつかっていたら、遠くでゴロゴロと鳴り始めた。夕立があるかもしれない。今のうちに露天へ行っておこう。みやこ旅館の建物は中庭を口の字型に囲むように建っている。内湯の奥の扉から外へ出ると中庭に作られた5名規模の露天風呂があった。
日本庭園風に石や草木を配した環境の中にある露天風呂はムードたっぷり。周囲の建物からの視線を気にしなければ(実際そんな視線は存在しない)、ゆっくりとリラックスできる場所だ。
お湯の具合は内湯と同じ。こちらにもコップが置いてあったので試しに飲泉してみた。マイルドで素直なぬるいお湯だからたくさん飲める。整腸作用があるそうだ。たしかに、うん、効いたね、整腸しちゃった。
なおこの露天風呂は本来混浴のようだ。混浴になる場面はそうそうないと思うが一応そのつもりで利用されたい。大浴場へは夜にも行った。やさしいお湯にゆっくりつかり、前日が万座の酸性硫黄泉だったから、ちょうどよい仕上げ湯となった。
畳敷きの貸切風呂・南角
翌朝は2つある貸切風呂の片方へ行ってみた(南角)。入口の札が「空」になっていれば予約なしでいつでも利用できる方式。札を裏返して中へ入り鍵をかける。1つのカランと2名でいっぱいの木造風呂があった。浴室の床が畳敷きになっている風呂の存在は知っていたが体験するのは初めてだ。お湯を流して良いものかどうか、わかっちゃいてもつい迷ってしまうね。
窓の外は例の中庭。おしゃれな庭園を見ながらやさしいお湯の源泉掛け流しを独占させてもらった。こりゃいいですなー。内湯・露天・貸切と、現在の運営規模からしたらとても贅沢で充実したお風呂環境といえよう。
特別室でいただく部屋食
家庭料理風の夕食
みやこ旅館の朝夕食は食事処に集まるのが基本。だが我々は特別室だったので部屋食となる。夕食は18時と18時半、朝食は8時と8時半から選択できた。夕食は配膳盆に乗せられての一度出し。よくある旅館の会席料理風というよりは素朴な家庭料理風。
野菜なんかは地元食材を使っていそうだが、信州らしさを演出する信州サーモン・鯉・馬刺し・きのこなどはない。固形燃料で温める鍋物や川魚の塩焼きもないから、ちょっと寂しく感じる人がいるかもしれない。
だが湯治滞在という観点で見れば合点がいくメニューだ。毎日会席料理ってわけにはいかないからね。ハレの要素が少なくてケの要素が多いというだけで、美味しくいただけることには変わりない。
食事にハレの要素を譲れない方は、もっと観光ホテル然とした宿を探した方がいいかもしれない。鹿教湯温泉街にそんなタイプがあるのかどうかわからないが。
適度な朝食
朝食も同様の素朴系の献立を部屋出し。朝食があんまり多いと腹がきついので、これくらいでちょうどいい。個人的に食事への不満はとくにないが、唯一、夕食時のお酒のメニューがもうちょっと多彩だとよかった。まあ宴会旅館じゃないから仕方ない。
静かに温泉を楽しみたい人にぴったり
みやこ旅館は昔ながらの湯治宿が設備を今風にして少しずつ変わっていこうとする模索の最中という印象。湯治客を大事にし、また宴会旅館とは対極の路線を行こうとしている様子なので、温泉目的の人や静かに落ちついて過ごしたい人にはぴったりである。さすがに鹿教湯のお湯はいい。とくに露天風呂や貸切風呂の雰囲気をぜひ味わっていただきたい。また飲泉もぜひ味わっていただきたい。
なお、夢と憧れを持っていた同行者に鹿教湯温泉の感想を聞いてみたところ、温泉街・旅館・泉質いずれにも満足しており上々の評価であった。よかった、張り切ってセッティングした甲斐があったぜ。
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