近年は某元都知事の件で名前があがることの多かった湯河原温泉だが、もちろん温泉に罪はない。古くからの由緒ある格調高き名湯である。
その格の高さゆえ、大人の隠れ家的な、あるいは割烹・料亭的な高級旅館ばかりのイメージがあって、興味はあれど気楽な一人旅には敷居が高かった湯河原温泉。しかし調べてみると自分向きでなかなか評判の良い宿があった。
それがボクらの味方「旅館グリーン荘」だ。ここに2016年暮れ、「ひとり開発合宿」と称して2連泊したのでレポートする。
【本記事は2017年2月に公開した内容を再構成したものです】
湯河原駅に降り立つと、12月にもかかわらずポカポカと汗ばむくらいの陽気(東京の方も同様に暖かかったが)。天気も良くてみかん狩りが似合いそうな日だった。
駅から温泉街まではバスで10分、歩くと30分はかかる。グリーン荘は温泉街よりやや手前にあるけど徒歩20分と思ったほうがいい。でもバスを待つのがなんだか面倒になり、途中で良さげな食事処があったらランチにしようと思いつつ、歩いて行くことにした。
チェックインをすませて女将に案内された3階の部屋は、10畳+広縁のぜいたくな広さで、トイレ・洗面所付き。全般に少し古くなってきているが清掃は行き届いていて問題ない。
来る途中で昼食をとれなかったためコンビニでパンとお茶を買ってあった。荷物をおろすと、さっそくそれらを座卓に並べて食べ始めた。早いチェックインが可能だからこそなせる技である。
当宿はリーズナブルに・かつ気楽に過ごすのに最適な宿であって、いかにも文人の里にふさわしく演出された情緒を求めてはいけない。
どうしてもというなら外へ出て散歩しよう。すぐ近くになかなか雰囲気ある千歳川が流れている。川の向こうは静岡県熱海市だ。また川の上流へ15分も歩けば万葉公園やメインの温泉街に出会うことができる。
ドアが閉まっているのを気にせず入っていったとして別に咎められる筋合いはないけど、宿泊中にそうなる機会は一度もなかった。
当時は脱衣所の分析書を見る習慣がなかったが、グリーン荘のホームページによれば「ナトリウム-塩化物・硫酸塩泉」「弱アルカリ性、低張性、高温泉」とのこと。無色透明のやさしい系だ。
湯口からの投入量はチョロチョロって感じ。それで十分だと思う。足りなければ蛇口をひねって投入量を調節することはできる。でも後で述べるように下手に蛇口を触らない方がいい(風呂を出る前に蛇口を最小の位置に戻すよう張り紙がしてある)。
温度は自分の好みからするとやや熱めなのをさておいて一般の感覚でいうと、基本的には適温。基本的にと書いたのは、自分が前述の昼食後に入った初回だけは、ものすごくぬるかったからだ。このときは蛇口で投入量を増やして熱くしようとしても湯量が変わらなかった。
しかもご丁寧に浴室の窓を閉めきって出たため全開ドバドバのお湯により湯気もうもうでエラい状況だったそうだ。源泉貯め槽にお湯を補充するまで1時間ほど風呂が使えないと連絡があった。
そうかあ。もし自分のせいだったら申し訳なかったなあ。でも蛇口は元の位置に戻して出たし、窓は閉めきっていない。自分のせいではないと信じたい。なお2回目以降の入浴ではつねに適温(自分にとってはやや熱め)で特にトラブルはなし。怖いので蛇口も窓も触ってません。
事件のことはたまたまなんで抜きにすれば、温泉自体は万人に満足のいくものだと思う。なんとなくの半貸し切り方式のおかげでつねに独り占め状態で入れるのもGood。2泊3日の間に可能な限り、朝・昼・夕・夜というペースで入った。ちなみにシャンプーとボディソープははちみつ入りだった。こいつは効くぜ。
出される料理は女将特製の手料理って感じ。会席料理よりは家庭料理に近い。でもそれが気取ってなくて美味しくてすこぶる良いのだ。それに一人用の小さなものとはいえ舟盛りの刺し身はあるし、固形燃料で温める鍋物も出てくるから、旅気分は相応に味わえる。
1日目の夕食。いやっほー(写真を撮る前に食べ始めてしまった)。
2日目の夕食は写真を撮り忘れたようだ。舟盛りの構成を含めて1日目とはメニューをしっかり変えてあった。朝はアジとかの焼き魚がつく定番的な朝定食だった。
2日目の朝食。いやっほー(写真を撮る前に食べ始めてしまった)。
3日目の朝食は写真を撮り忘れたようだ。なお、朝夕とも量は十分だったし、滞在中はずっと部屋に引きこもって一切外に出ず体を動かしてないから、2日目の昼食は抜いた。
宿泊代を考えたら、この内容で部屋食はかなりお得なサービスといえよう。
近年のソフトウェア業界、とくにウェブ/モバイル業界では、チームメンバーが温泉宿に泊まってプログラム開発などの課題に取り組む「開発合宿」なる会社行事を催す動きが目につくようになってきている。開発合宿に対応したプランを用意している温泉宿もあるようだ。
一方で週末にホテル(主に都心)に泊まって一人集中して行う「ひとり合宿」なる活動もあるようだ。作業的には事業・戦略計画や企画の練り上げ、自己啓発面の課題と目標の設定が多い模様。
所詮は自己満足にすぎない真似事かもしれない。実のところ、売れっ子作家のように旅館にカンヅメになって創作活動を進める体験をしてみたかったという、子供じみた動機があったことは否めない。
自分は通信が必要になった時だけスマホのテザリングを使うことで解決した。もしWiFiを活用したければ2階がいいだろう。
(追記:2017年11月から3階でもWiFi通じるようになった模様。万歳)
総括すると、ひとり開発合宿はなかなか良い体験だった。カンヅメにこだわってずっと引きこもっていたが、それはそれでありだけど、ちょっと散策して気分転換を図ってからまた作業に集中する、ってパターンでもよかったかな。
元都知事も電車で行ってグリーン荘に引きこもって仕事してたらよほど捗っただろうし、文句も言われなかっただろうね。
その格の高さゆえ、大人の隠れ家的な、あるいは割烹・料亭的な高級旅館ばかりのイメージがあって、興味はあれど気楽な一人旅には敷居が高かった湯河原温泉。しかし調べてみると自分向きでなかなか評判の良い宿があった。
それがボクらの味方「旅館グリーン荘」だ。ここに2016年暮れ、「ひとり開発合宿」と称して2連泊したのでレポートする。
【本記事は2017年2月に公開した内容を再構成したものです】
旅館グリーン荘へのアクセス
湯河原温泉の最寄り駅はJR東海道線の湯河原。熱海の隣だし列車が頻発しているので東京近郊からだったら難なく行ける。新幹線を使うまでもないだろう。小田原のちょっと先と考えれば箱根に行くのと同じようなイメージだ。湯河原駅に降り立つと、12月にもかかわらずポカポカと汗ばむくらいの陽気(東京の方も同様に暖かかったが)。天気も良くてみかん狩りが似合いそうな日だった。
駅から温泉街まではバスで10分、歩くと30分はかかる。グリーン荘は温泉街よりやや手前にあるけど徒歩20分と思ったほうがいい。でもバスを待つのがなんだか面倒になり、途中で良さげな食事処があったらランチにしようと思いつつ、歩いて行くことにした。
旅館グリーン荘の部屋と環境
かなり早めのチェックインが可能
…良さげな食事処は見当たらないまま宿に到着。まだ正午過ぎだが、ここまで来たら、もう部屋に引きこもってしまおう。なんとグリーン荘は12時からチェックイン可能なのである(チェックアウトは10時とか11時半とか情報が錯綜していてよくわからない)。チェックインをすませて女将に案内された3階の部屋は、10畳+広縁のぜいたくな広さで、トイレ・洗面所付き。全般に少し古くなってきているが清掃は行き届いていて問題ない。
来る途中で昼食をとれなかったためコンビニでパンとお茶を買ってあった。荷物をおろすと、さっそくそれらを座卓に並べて食べ始めた。早いチェックインが可能だからこそなせる技である。
普通の市街地なのは割り切るべし
グリーン荘の環境について一応注意しておくと、立地は交通量の多い道路沿いにあって車の走行音が部屋まで届く(自分は気にならなかったが)。3階の窓からはわりと遠くまで見通せるが、周囲は風流な温泉街や“いとをかし”な自然ではなく、普通の町並みである。当宿はリーズナブルに・かつ気楽に過ごすのに最適な宿であって、いかにも文人の里にふさわしく演出された情緒を求めてはいけない。
どうしてもというなら外へ出て散歩しよう。すぐ近くになかなか雰囲気ある千歳川が流れている。川の向こうは静岡県熱海市だ。また川の上流へ15分も歩けば万葉公園やメインの温泉街に出会うことができる。
湯河原の源泉掛け流しを楽しめるお風呂
半貸切方式で独占チャンス大
グリーン荘のお風呂は源泉掛け流しを謳っている。1階に男湯と女湯が一つずつあり、はっきり明言されているわけではないが、ドアが半開きなら利用可能・閉まっていれば利用中という暗黙の了解のうえに半貸し切り方式で運用されている空気感があった。ドアが閉まっているのを気にせず入っていったとして別に咎められる筋合いはないけど、宿泊中にそうなる機会は一度もなかった。
当時は脱衣所の分析書を見る習慣がなかったが、グリーン荘のホームページによれば「ナトリウム-塩化物・硫酸塩泉」「弱アルカリ性、低張性、高温泉」とのこと。無色透明のやさしい系だ。
シンプルな浴室に見られる温泉らしさ
浴室はカランが2つと家庭用の3倍くらいの浴槽からなるシンプルな作り。源泉を注ぐ湯口のまわりは、析出物っていうんですかね、塩のような白い塊がこびりついていた。湯は浴槽からあふれるがまま、オーバーフローっていうんですかね、掛け流しをアピールしていた。湯口からの投入量はチョロチョロって感じ。それで十分だと思う。足りなければ蛇口をひねって投入量を調節することはできる。でも後で述べるように下手に蛇口を触らない方がいい(風呂を出る前に蛇口を最小の位置に戻すよう張り紙がしてある)。
温度は自分の好みからするとやや熱めなのをさておいて一般の感覚でいうと、基本的には適温。基本的にと書いたのは、自分が前述の昼食後に入った初回だけは、ものすごくぬるかったからだ。このときは蛇口で投入量を増やして熱くしようとしても湯量が変わらなかった。
蛇口の全開放置はご法度
その現象と関係があるのかどうか…初日の夜にちょっとした事件があった。宿の方で風呂場をチェックしたら、蛇口を全開にしたまま出た人がいたようで、源泉を貯めておく槽が空になってしまった、と。しかもご丁寧に浴室の窓を閉めきって出たため全開ドバドバのお湯により湯気もうもうでエラい状況だったそうだ。源泉貯め槽にお湯を補充するまで1時間ほど風呂が使えないと連絡があった。
そうかあ。もし自分のせいだったら申し訳なかったなあ。でも蛇口は元の位置に戻して出たし、窓は閉めきっていない。自分のせいではないと信じたい。なお2回目以降の入浴ではつねに適温(自分にとってはやや熱め)で特にトラブルはなし。怖いので蛇口も窓も触ってません。
事件のことはたまたまなんで抜きにすれば、温泉自体は万人に満足のいくものだと思う。なんとなくの半貸し切り方式のおかげでつねに独り占め状態で入れるのもGood。2泊3日の間に可能な限り、朝・昼・夕・夜というペースで入った。ちなみにシャンプーとボディソープははちみつ入りだった。こいつは効くぜ。
部屋食で舟盛りが付くお得感
グリーン荘のすごいところは食事が朝夕とも部屋食になる点だ。近年はどこも宿泊客全員を大広間や食堂に集める方式が普通で、個室や部屋食は相当プレミアムなサービスになっている。だからその点は大きなアドバンテージだ。出される料理は女将特製の手料理って感じ。会席料理よりは家庭料理に近い。でもそれが気取ってなくて美味しくてすこぶる良いのだ。それに一人用の小さなものとはいえ舟盛りの刺し身はあるし、固形燃料で温める鍋物も出てくるから、旅気分は相応に味わえる。
1日目の夕食。いやっほー(写真を撮る前に食べ始めてしまった)。
2日目の夕食は写真を撮り忘れたようだ。舟盛りの構成を含めて1日目とはメニューをしっかり変えてあった。朝はアジとかの焼き魚がつく定番的な朝定食だった。
2日目の朝食。いやっほー(写真を撮る前に食べ始めてしまった)。
3日目の朝食は写真を撮り忘れたようだ。なお、朝夕とも量は十分だったし、滞在中はずっと部屋に引きこもって一切外に出ず体を動かしてないから、2日目の昼食は抜いた。
宿泊代を考えたら、この内容で部屋食はかなりお得なサービスといえよう。
ひとり開発合宿でカンヅメ体験
ひとり開発合宿≠開発合宿+ひとり合宿
グリーン荘に2泊する間、ただ風呂に入ってごろごろしていたわけではない(それはそれで極上の娯楽だからやってみたくはあるが)。ひとり開発合宿と称してPCを持ち込んでプログラミングやテキスト打ちなどの作業に没頭した。それなりに捗ったと思う。近年のソフトウェア業界、とくにウェブ/モバイル業界では、チームメンバーが温泉宿に泊まってプログラム開発などの課題に取り組む「開発合宿」なる会社行事を催す動きが目につくようになってきている。開発合宿に対応したプランを用意している温泉宿もあるようだ。
一方で週末にホテル(主に都心)に泊まって一人集中して行う「ひとり合宿」なる活動もあるようだ。作業的には事業・戦略計画や企画の練り上げ、自己啓発面の課題と目標の設定が多い模様。
カンヅメになってみたかったから
今回の自称ひとり開発合宿は「一人旅×部屋にこもって開発をしますよ」という行為なので、一般的な意味での開発合宿ともひとり合宿とも異なる。所詮は自己満足にすぎない真似事かもしれない。実のところ、売れっ子作家のように旅館にカンヅメになって創作活動を進める体験をしてみたかったという、子供じみた動機があったことは否めない。
WiFiを利用するなら2階まで(追記:3階もOKに)
費用対効果面の疑義やそもそもナンセンスだとかいうことはさておき、PC作業環境について言及すると、グリーン荘はWiFi環境が導入されている。ただし残念ながら3階までは電波が届かない。宿のホームページによれば2階客室なら利用可能だ。自分は通信が必要になった時だけスマホのテザリングを使うことで解決した。もしWiFiを活用したければ2階がいいだろう。
(追記:2017年11月から3階でもWiFi通じるようになった模様。万歳)
総括すると、ひとり開発合宿はなかなか良い体験だった。カンヅメにこだわってずっと引きこもっていたが、それはそれでありだけど、ちょっと散策して気分転換を図ってからまた作業に集中する、ってパターンでもよかったかな。
元都知事も電車で行ってグリーン荘に引きこもって仕事してたらよほど捗っただろうし、文句も言われなかっただろうね。