各地で桜がちらほら咲き始めた頃、とある仲間内にて関西ツアー企画が実行された。それに乗っかる形で、企画の現地集合日の前日に、単独行で滋賀県長浜の須賀谷温泉に一泊した。浅井家ゆかりの含鉄泉と広い広い部屋、そして(自分には)珍しい郷土料理が印象的な宿であった。
滋賀というと正直あまり温泉のイメージはなかったのだが、須賀谷温泉はなかなか本格的な温泉で、良い意味で意表を突かれた形となった。
外観は日帰り入浴施設のようにも見える。低層の建物で宿泊棟がないような印象を受けるからだろう。実際は奥の2階部分に客室を備えている。
だが反対にそういった特長を敬遠する人も一定数いる。その気持ちもわからなくはないので、一応フォローしておくと、館内で走り回る犬を見かけなかったのはもちろんのこと、鳴き声・足音・匂いなどを感じて気にする場面は一度もなかった。
10畳ほどの洋室の4割はリビングスペースとして小さい椅子+低いテーブル+テレビを置いてあり、残り6割はわずかに小上がりになっていて(スロープあり)幅広のダブルベッドがある。カーテンはおしゃれなロールスクリーンだ。
それだけじゃない。隣に4畳半の和室がついている。和室でくつろぐか、洋室のリビングスペースにするか、贅沢な悩みで迷ってしまった。
それだけじゃない。広めの廊下に広めの洗面所、ウォークインクローゼットまである。限られた空間にできるだけ多くの客室を作りたがる旅館業には珍しく、何もかもがゆったり大きめサイズに作られているのである。
なにせ広いし、たぶん改装して新しめ・おしゃれめになっているから、気持ちよく泊まることができる。トイレも新しめのウォッシュレット付きで大変結構。
ちなみにWiFiの案内は特になし。PCでアクセスポイントを探すとそれっぽいフリースポット名称は出てくるが、はっきりした確証が持てなかったので自分はスマホ+テザリングを使った。
浴場内に分析書があったかどうかは憶えていない。少なくとも部屋の案内冊子に分析書のページがあって、総鉄イオンが突出している湧出温度17℃の鉱泉とのことだ。
浴室には5つの洗い場と2つの浴槽があった。一つは3名規模の小さいぬる湯槽。お湯は無色透明だから「ん? 含鉄泉なのに無色? これは真水を沸かした湯なのか?」と思ってしまう。でも湯口のあたりに「源泉」と書いてあるし、湧出直後で酸化する前の源泉だから透明なんだという説明も成立するし、実際はよくわからない。
このように温泉気分を味わいにくい小浴槽であるが、ちょうどいい塩梅の心地よいぬるさが気に入って、何度も利用してしまった。それと炭酸成分なのか何なのか、湯口のあたりでかすかにプクプクと泡が立ち上っていた。
金色に近い濁り湯で黒っぽい小さい湯の花も見られる。鉄のような土のような匂いもする。特別な温泉に入ったー、という気分が盛り上がるのはやはりメイン浴槽だ。
途中で入ってきたおじいちゃんと男の子がメイン浴槽にしばらくつかった後、男の子が「このお湯、体の芯から温まるよー」とおじいちゃんに報告していた。少年よ、君の感想は正しい。
日帰り入浴を受け付けている割には、夕方の大浴場は自分の他に1~2名いるかどうかという状態。夜も朝も同様。混雑を気にせずゆっくり入れたのはよかった。
おしながきには(自分とっては)珍しい料理名がずらり。丁字麩、うろりの佃煮、のっぺい餡かけ茶碗蒸し、鮒の子付き、鰻のじゅんじゅん、琵琶湖産川海老、焼鯖そうめん、琵琶しじみ汁…どれもこれも初物づくし。
素材がよくて味付けもちょうどよくて美味なり。珍しいものを食べたという達成感もある。係の方が「地味なものばっかりですいません」的に謙遜していたが、そんなことはない。狙いはいいと思う。年取るとこういうメニューの方が嬉しいんだよね。
もっとエネルギッシュにいきたければ近江牛のコースがあるし、冬季は鴨鍋が名物みたい。お好みでどうぞ。
一般的な旅館の朝食風でありつつも、琵琶湖産とか長浜名物のものを織りまぜて郷土料理の特徴を出していた。いつものごとく写真を撮り忘れて食べ始めてしまった…。
温泉宿としての楽しみはもちろん、場所が場所だけに歴史好きには一層たまらないだろう。館内には浅井長政・お市の方ほか戦国関連のものが多数展示・掲示されている。旅館近くには小谷城址があってハイキングコースが整備されている。
ここならひょっとしてあり得るぞと、夢に浅井三姉妹が出てくることを期待して眠りについたのだが、残念ながら浅井三姉妹も若草の四姉妹も叶姉妹も出てきてくれなかった。まだまだ修行が足りぬのう。
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滋賀というと正直あまり温泉のイメージはなかったのだが、須賀谷温泉はなかなか本格的な温泉で、良い意味で意表を突かれた形となった。
一人には超贅沢な須賀谷温泉の広い部屋
須賀谷温泉へのアクセス
須賀谷温泉は北琵琶湖の観光拠点・長浜から北陸本線で2つ先の河毛駅が最寄り。東海道新幹線の米原からだと5駅・17分。ここから宿の送迎マイクロバスに乗って約10分。幹線道路から外れて奥まったところにある一軒宿で、宿の名前も須賀谷温泉。外観は日帰り入浴施設のようにも見える。低層の建物で宿泊棟がないような印象を受けるからだろう。実際は奥の2階部分に客室を備えている。
ペット(犬)と泊まれる温泉宿
駐車場は日帰り客と思われる車でそこそこ埋まっていた。そこへ新たに入ってきた車。中から犬連れのご婦人が現れた。そう、ここは犬と一緒に泊まれる宿でもあった。ワンちゃんの飼い主さんには願ってもないポイントだ。だが反対にそういった特長を敬遠する人も一定数いる。その気持ちもわからなくはないので、一応フォローしておくと、館内で走り回る犬を見かけなかったのはもちろんのこと、鳴き声・足音・匂いなどを感じて気にする場面は一度もなかった。
ゆったり広々のきれいな和洋室
部屋の広さについて記しておかねばなるまい。チェックインをすませて通された部屋は2階の一番手前、当宿では最も小さい部屋だと思われるけれども、一人では余ってしまうほど広いのである。10畳ほどの洋室の4割はリビングスペースとして小さい椅子+低いテーブル+テレビを置いてあり、残り6割はわずかに小上がりになっていて(スロープあり)幅広のダブルベッドがある。カーテンはおしゃれなロールスクリーンだ。
それだけじゃない。隣に4畳半の和室がついている。和室でくつろぐか、洋室のリビングスペースにするか、贅沢な悩みで迷ってしまった。
それだけじゃない。広めの廊下に広めの洗面所、ウォークインクローゼットまである。限られた空間にできるだけ多くの客室を作りたがる旅館業には珍しく、何もかもがゆったり大きめサイズに作られているのである。
一人で泊まっちゃっていいんですか…いいんです!
本来お二人様向けの部屋には違いないとしても、1名可のプランが用意されているし、須賀谷温泉のホームページにはこの和洋室について「一人旅のお客様に好評」とあるから、一人旅歓迎の宿だと理解している。なにせ広いし、たぶん改装して新しめ・おしゃれめになっているから、気持ちよく泊まることができる。トイレも新しめのウォッシュレット付きで大変結構。
ちなみにWiFiの案内は特になし。PCでアクセスポイントを探すとそれっぽいフリースポット名称は出てくるが、はっきりした確証が持てなかったので自分はスマホ+テザリングを使った。
体の芯から温まる、戦国武将も通った湯
心地よいぬるさの小浴槽
須賀谷温泉の大浴場は1階にある。男湯が長政の湯、女湯がお市の湯と名づけられている。さすがですな。入り口には「撮影禁止」の張り紙が。脱衣所にはカゴと鍵付きロッカーの両方があった。浴場内に分析書があったかどうかは憶えていない。少なくとも部屋の案内冊子に分析書のページがあって、総鉄イオンが突出している湧出温度17℃の鉱泉とのことだ。
浴室には5つの洗い場と2つの浴槽があった。一つは3名規模の小さいぬる湯槽。お湯は無色透明だから「ん? 含鉄泉なのに無色? これは真水を沸かした湯なのか?」と思ってしまう。でも湯口のあたりに「源泉」と書いてあるし、湧出直後で酸化する前の源泉だから透明なんだという説明も成立するし、実際はよくわからない。
このように温泉気分を味わいにくい小浴槽であるが、ちょうどいい塩梅の心地よいぬるさが気に入って、何度も利用してしまった。それと炭酸成分なのか何なのか、湯口のあたりでかすかにプクプクと泡が立ち上っていた。
メイン浴槽は金色の湯
もう一つが小浴槽よりひと回り大きいメイン浴槽。こちらは茶色く濁った適温の湯が掛け流しされている。「多くの戦国武将が傷を癒やしに入った」的な能書きが書いてあったと思う。金色に近い濁り湯で黒っぽい小さい湯の花も見られる。鉄のような土のような匂いもする。特別な温泉に入ったー、という気分が盛り上がるのはやはりメイン浴槽だ。
途中で入ってきたおじいちゃんと男の子がメイン浴槽にしばらくつかった後、男の子が「このお湯、体の芯から温まるよー」とおじいちゃんに報告していた。少年よ、君の感想は正しい。
緑を感じる露天風呂
さらに屋根付き露天風呂もある。アブ・ハチにご注意の張り紙があったから季節によっては注意が必要かも。こちらの湯は無色透明で特徴を感じられないが、近くまで林が迫っていて草の匂いがするからリラックスするにはちょうどいい。日帰り入浴を受け付けている割には、夕方の大浴場は自分の他に1~2名いるかどうかという状態。夜も朝も同様。混雑を気にせずゆっくり入れたのはよかった。
北近江の郷土料理オンパレード
初物づくしの夕食
須賀谷温泉の夕食は1階の食事処でとる。仕切りのある半個室風座敷に通してくれたから周囲を気にせず料理に集中できた。地酒のおすすめをたずねると七本鎗という、いかにも戦国武将な銘柄をすすめられたので、それを頼んだ。おしながきには(自分とっては)珍しい料理名がずらり。丁字麩、うろりの佃煮、のっぺい餡かけ茶碗蒸し、鮒の子付き、鰻のじゅんじゅん、琵琶湖産川海老、焼鯖そうめん、琵琶しじみ汁…どれもこれも初物づくし。
素材がよくて味付けもちょうどよくて美味なり。珍しいものを食べたという達成感もある。係の方が「地味なものばっかりですいません」的に謙遜していたが、そんなことはない。狙いはいいと思う。年取るとこういうメニューの方が嬉しいんだよね。
もっとエネルギッシュにいきたければ近江牛のコースがあるし、冬季は鴨鍋が名物みたい。お好みでどうぞ。
朝食にも郷土の特色あり
朝食は夕食と別の大広間にて提供される。畳の上にテーブル+椅子の方式だ。仕切りはないけどテーブル同士の間隔は十分にとってある。一般的な旅館の朝食風でありつつも、琵琶湖産とか長浜名物のものを織りまぜて郷土料理の特徴を出していた。いつものごとく写真を撮り忘れて食べ始めてしまった…。
温泉好きにも歴史好きにもおすすめ
須賀谷温泉は、お湯・食事・部屋いずれにも優れ、山の方に入った場所にあるから鄙びた素朴系と思わせて、実は意外と洗練寄りであるという点が面白い。温泉宿としての楽しみはもちろん、場所が場所だけに歴史好きには一層たまらないだろう。館内には浅井長政・お市の方ほか戦国関連のものが多数展示・掲示されている。旅館近くには小谷城址があってハイキングコースが整備されている。
ここならひょっとしてあり得るぞと、夢に浅井三姉妹が出てくることを期待して眠りについたのだが、残念ながら浅井三姉妹も若草の四姉妹も叶姉妹も出てきてくれなかった。まだまだ修行が足りぬのう。
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