ちょっとだけ昔の話…2015年末に下部温泉へ一人旅で行ってきた件を記憶を頼りに書く。当時はあまり深く考えず湯元ホテルに決めて泊まったのだが、今調べてみると、お湯自慢の源泉宿だった。我ながらなかなかの嗅覚である。
設備やサービスは昔ながらの温泉旅館だけれども、おかげで昔ながらの良質な温泉をそのまま味わうことができた。冷たく感じるくらいのぬる湯というのがまたパンチが効いている。
(補足)上の写真は2019年春に下部温泉を再訪した際に撮ったものです。
途中には下部温泉会館という共同浴場ぽい建物と、温泉地でよく見かけるリハビリ系と思われる病院があった。
やがて旅館や土産店が集中して立ち並ぶ一角が見えてきた。湯元ホテルもその中にあり、道路沿いではなく、ちょっとした橋を渡って川をまたいだ向こうにある。まだ15時前だったが、ひたすら温泉に入ってのんびりするつもりだったので、さっそくチェックイン。
部屋に浴衣でいると足元の冷えがちょっときつかった気がする。冬は足袋やステテコを持参するとよいだろう。
座卓の上には水の入ったデキャンタがでんと置かれている。下部のお湯は飲んでも体にいいいから、さあどうぞお好きなだけ、ということらしい。量はたっぷりある。自分は帰るまでに飲みきれなかった。
このように下部温泉は入ってよし・飲んでよしの名水なのである。地理的に「富士山の麓から湧き出る」イメージがあるから、まあ納得だ。単純弱アルカリ泉ってのがまたこの場合は好都合。特徴がなくて面白みに欠けると思いがちな単純泉だが、反面いろいろな意味で間口が広い。
大浴場の中は2つの浴室がつながった構造になっており、片方が洗い場と加温槽のある浴室。洗い場の記憶はもうないが不便や空かずに困ることはなかったと思う。
2つの浴室を仕切る壁にはドア1枚分くらいの大きさでくり抜かれた出入口が開いていて、そこを抜けると源泉かけ流しの加温なし大浴槽を備えた浴室に出る。この大浴槽がメインコンテンツだろう。
翌年に新潟のぬる湯の名湯・貝掛温泉や栃尾又温泉を体験したが、それらと比べても一段ぬるいと思われる。手加減なしのぬるさである。不感温度帯を下回っているのではなかろうか。
だがこの第一印象を乗り越えると、お湯のパワーが前面に出てくる。じっとつかっていると不思議なことに、かすかな「ぬくさ」を感じられるようになる('あったかい'は言い過ぎになるけどね)。そうなればしめたもの。あとはもういくらでも入っていられる。
単純泉のやさしいお湯に長くつかっている間にマインドフルネスぽい意識状態。お湯の生理的効能と心的作用。そりゃあ効くわな。
ときどき加温槽にも入って交互につかるのがおすすめだそうだ。自分もおすすめ通り交互に合計1時間程度入った。それを宿泊中に少なくとも4セットやったはず。
夕食のメニューは刺し身と天ぷらと煮物と鍋物と…典型的な旅館の会席風料理。まあまあの内容。値段を考えれば悪くない。温泉がいいから長湯治客もいると思うんだけど、毎日このメニューってわけにもいかないだろうし、どうしてるんでしょうね。湯治向けコースがあるのかな。
朝食もたしか典型的な旅館の和定食だったと思う。朝食の後にもきっちり入浴してからチェックアウトした。
湯元ホテルのホームページによれば、屋内に自然湧出口を3つも持っていて、湧出量は下部No.1とのこと。大浴槽にじゃんじゃん源泉かけ流しできるし、部屋に飲用水をじゃんじゃん飲んでくれと置いとけるわけだ。
最後に一点。川べりに建っていることにより、部屋にいると川の流れの音がよく聞こえる。サラサラというよりザーザーに近い。口コミには気になる・うるさいとの評も見られたけど、これもまた感じ方は人それぞれみたい。自分は自然のBGMとしてむしろ心が落ち着くように感じられたし、ぐっすり眠れたけどね。
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設備やサービスは昔ながらの温泉旅館だけれども、おかげで昔ながらの良質な温泉をそのまま味わうことができた。冷たく感じるくらいのぬる湯というのがまたパンチが効いている。
(補足)上の写真は2019年春に下部温泉を再訪した際に撮ったものです。
湯元ホテルへの道
JR身延線・下部温泉駅から湯元ホテルまでは徒歩15分くらい。川沿いの道を進んでいく。もちろんホテルが送迎の車を出してくれるけど、あえて歩いてみた。年末時期でも雪や凍結はない。ただ川が近いせいか空気は冷たくて一段と寒い。途中には下部温泉会館という共同浴場ぽい建物と、温泉地でよく見かけるリハビリ系と思われる病院があった。
やがて旅館や土産店が集中して立ち並ぶ一角が見えてきた。湯元ホテルもその中にあり、道路沿いではなく、ちょっとした橋を渡って川をまたいだ向こうにある。まだ15時前だったが、ひたすら温泉に入ってのんびりするつもりだったので、さっそくチェックイン。
湯元ホテルの部屋と自信の飲用水
…もはや記憶があやふや。部屋は2階か3階か、階段を登ったことは間違いない。部屋は6畳か8畳くらいの和室。トイレ付きだった。全般的に古さは否めないが、きれいに管理されているから大丈夫。こたつはなくヒーターで暖めていたと思う。部屋に浴衣でいると足元の冷えがちょっときつかった気がする。冬は足袋やステテコを持参するとよいだろう。
座卓の上には水の入ったデキャンタがでんと置かれている。下部のお湯は飲んでも体にいいいから、さあどうぞお好きなだけ、ということらしい。量はたっぷりある。自分は帰るまでに飲みきれなかった。
このように下部温泉は入ってよし・飲んでよしの名水なのである。地理的に「富士山の麓から湧き出る」イメージがあるから、まあ納得だ。単純弱アルカリ泉ってのがまたこの場合は好都合。特徴がなくて面白みに欠けると思いがちな単純泉だが、反面いろいろな意味で間口が広い。
大浴場でぬる湯を極める
2つの浴室でキャパ十分
湯元ホテルの大浴場は地階にある。もともと温泉目当ての客が多い、かつぬるいから長湯、かつ年末でほぼ満室ということもあってか、昼も夜も朝もいつ行ってもそれなりに人がいた。ただし芋洗い状態まではいかない。大浴場の中は2つの浴室がつながった構造になっており、片方が洗い場と加温槽のある浴室。洗い場の記憶はもうないが不便や空かずに困ることはなかったと思う。
2つの浴室を仕切る壁にはドア1枚分くらいの大きさでくり抜かれた出入口が開いていて、そこを抜けると源泉かけ流しの加温なし大浴槽を備えた浴室に出る。この大浴槽がメインコンテンツだろう。
「ぬるい」が「ぬくい」に変わるとき
大浴槽に体を沈めてみた…うぉー、つめてー。ぬる湯というのは調べて知っていた。頭ではわかっていた。しかし実際体感してみた第一印象は、ぬるいというよりも冷たい。想像していたよりも冷たく感じた。翌年に新潟のぬる湯の名湯・貝掛温泉や栃尾又温泉を体験したが、それらと比べても一段ぬるいと思われる。手加減なしのぬるさである。不感温度帯を下回っているのではなかろうか。
だがこの第一印象を乗り越えると、お湯のパワーが前面に出てくる。じっとつかっていると不思議なことに、かすかな「ぬくさ」を感じられるようになる('あったかい'は言い過ぎになるけどね)。そうなればしめたもの。あとはもういくらでも入っていられる。
長く入るほどに効く
へたに体を動かすと水の抵抗で冷たさを感じるから、じっとしているほかない。するとあれこれ考え事をしそうになるが、やはり不感ゾーンを少し外れたぬるさだから、嫌でもそちらへ意識を持っていかれる。長湯によってこの意識状態を続けることが、ちょうどいま流行りのマインドフルネス的効果を生んでいるような気がしなくもない。単純泉のやさしいお湯に長くつかっている間にマインドフルネスぽい意識状態。お湯の生理的効能と心的作用。そりゃあ効くわな。
ときどき加温槽にも入って交互につかるのがおすすめだそうだ。自分もおすすめ通り交互に合計1時間程度入った。それを宿泊中に少なくとも4セットやったはず。
おなじみな感じの食事
湯元ホテルは朝夕とも大広間での食事となる。座敷に椅子とテーブルというよくあるパターン。場数の足りない一人旅にとっては集団の中で浮いた気がして落ち着かない方式だ。それを察してか、自分の席を隅っこの目立たない位置にしてくれたのはありがたかった。夕食のメニューは刺し身と天ぷらと煮物と鍋物と…典型的な旅館の会席風料理。まあまあの内容。値段を考えれば悪くない。温泉がいいから長湯治客もいると思うんだけど、毎日このメニューってわけにもいかないだろうし、どうしてるんでしょうね。湯治向けコースがあるのかな。
朝食もたしか典型的な旅館の和定食だったと思う。朝食の後にもきっちり入浴してからチェックアウトした。
湯治気分で行きたい実力宿
昭和チックな風情をどう感じるかは人それぞれだろうが、個人的には嫌いじゃない(今風のも好きです)。ともあれ表面的な年季だけを見ていてはこの宿の実力を見損なう。のちに調べてみると、温泉に関してなかなかのツワモノなのだ。湯元ホテルのホームページによれば、屋内に自然湧出口を3つも持っていて、湧出量は下部No.1とのこと。大浴槽にじゃんじゃん源泉かけ流しできるし、部屋に飲用水をじゃんじゃん飲んでくれと置いとけるわけだ。
最後に一点。川べりに建っていることにより、部屋にいると川の流れの音がよく聞こえる。サラサラというよりザーザーに近い。口コミには気になる・うるさいとの評も見られたけど、これもまた感じ方は人それぞれみたい。自分は自然のBGMとしてむしろ心が落ち着くように感じられたし、ぐっすり眠れたけどね。
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