霊泉寺温泉。知名度でいうと近くの鹿教湯温泉の影に隠れた感はあるが、お湯の良さではひけをとらない。そこの松屋旅館に一人旅で泊まってきた。昭和の懐かしさ漂う、ほっとする宿である。
新幹線の上田駅からバスで1時間。そこから徒歩15分。本当に静かで何もない霊泉寺温泉が待っていた。いやあ、(いい意味で)すごいですわ、ここ。雰囲気にすっかりノックアウトされつつ松屋旅館の前に立った。
ただ単に古いとか、伝統と格式とか、素朴な田舎の家とか、そういうのじゃなく、まさしく昔ながらのザ・旅館の趣。
こういうのを期待して行ったから、願ったり叶ったりである。いいよいいよー。
チェックインの際に出てきた宿帳が、よく見かけるカード用紙でなく、いかにも古ーい感じの、昔はどこもこんなだったんだろうなと瞬時に思いを馳せる感じの、年季の入った記帳簿なのがまた味わい深い。
こたつと布団で部屋はもう一杯だが一人のおこもりステイには十分だ。むしろ隠れ家感・ひみつ基地感があって楽しくなってくる。
部屋は古いが綺麗にされていて問題なし。泊まった部屋にトイレ・洗面はなく、すぐ近くの共同のを利用する。トイレだけは昭和じゃなく平成の21世紀風で新しかった(ウォシュレットはない)。
それと部屋には備え付けのティッシュがない。ポケットティッシュか箱ティッシュを持参しよう。
また入浴セットのタオルはリユースものらしい。もちろん新品同様に洗ってあるが、気になる場合は持参すべし。自分は気にせず可愛げな色柄のタオルを使わせてもらった。あとバスタオルはない。事前にわかっていたし問題はない。
扉はもともと外からかける鍵がなく、肝心の内鍵(古い民家にある懐かしいタイプ)も差し込み口がずれてしまって、かんぬきが通らない。一度強引に半分まで通したら固くて戻せなくなりかけて焦った。鄙び宿の洗礼のジャブだ。でもこういうの嫌いじゃない。
Let It Go, レリゴー。ありのままで運用するさ。すき間ができない程度まで扉は閉まるから、少~しも寒くないわ。金庫があるので金庫の鍵をしっかり管理しておけば貴重品は心配ない。
中は狭すぎることもなく、明確な貸し切り方式でもないのだが、なんとなく客同士の間で「脱衣所のドアが半開き=誰もいない/閉じている=使用中」を目安に、互いにかち合わないように融通しあう、暗黙の半貸切方式の空気感があった。
年末の繁忙期にしては、あまりセコセコ立ち回らなくても「大浴場の独り占め」が普通にできたのは、個人的にはありがたい。
脱衣所の分析書には「カルシウム-ナトリウム硫酸塩泉・低張性・弱アルカリ」と書いてある。石膏泉らしく、成分のうちではカルシウムの数字が突出していた。
ああ、やわらかい。いい感触だ。長湯できそう。調査通りぬるめではあるが程度はそれほどでもない。湯口に魚型の温度計が置いてあり、宿泊中に入った3回それぞれで計ってみると、夕方40℃→夜35℃→朝38℃だった。
入っていると、なんというか、とにかくほっとする。いい湯だ。白い析出物の塊がこびりつく湯口からダラダラと流し込まれた湯は、浴槽からあふれ出るままになっていて、源泉掛け流し情緒もあふれ出ている。いいよいいよー。
もう1面は外の景色が丸見え。3階からの見晴らしは気分がいい。逆に外からこちらも丸見え。でもご安心を。ガラスの加工や湯気などで外から中はクリアに見えないと思う。そもそも外に人がいません。
静かな環境でほっとする湯にゆっくりつかるのは最上の極楽気分。そこへ昼の明るさ、夜の闇、明け方の「ようよう白くなりゆく山際」、それぞれの趣が加わる。
内湯ではあるけれども、周辺環境と一体化して醸し出す味が魅力なのだと思われた。
当宿は朝夕とも部屋食。こたつに入りながら、土地の料理と燗酒を堪能した。いやあたまらんですな。食べ進んでから写真を撮り忘れたのに気づいた…。
信州らしく酢味噌でいただく鯉の洗いが目を引いた。ふだん口にするものではないから珍しさもあって酒とともにどんどん進む。その他も山の里料理という感じで大満足。
鍋まで進めばもう量は十分。しかもお米がおいしくて全部たいらげてしまったから、本当にお腹がパンパンだ。決して豪華絢爛な料理ではないものの、あの食材と味と量を庶民価格かつ部屋食でいただけるのだから、申し訳ないくらい。
朝食は、なんだっけかな、たしか川魚の甘露煮をメインとするシンプルな和食。写真だと品数・量とも控えめに見えるが、お米はたっぷりあるし、自分には十分すぎるくらいである。
そもそも夕食でお腹パンパンだったから、あまり多くても残す羽目になってしまう。これくらいがちょうどいい。
松屋旅館のお湯はいいし、昭和レトロな雰囲気と素朴なもてなしが気に入った。それでいて1万円で十分お釣りが来るお値打ち価格だから満足度は高い。
年明けにはご丁寧に年賀状をいただいた(たぶんおばあちゃんの直筆)。なぜか2通来たのはご愛嬌。山菜・松茸の季節になるかはわからないが、また訪れてみたくなる好宿である。
新幹線の上田駅からバスで1時間。そこから徒歩15分。本当に静かで何もない霊泉寺温泉が待っていた。いやあ、(いい意味で)すごいですわ、ここ。雰囲気にすっかりノックアウトされつつ松屋旅館の前に立った。
鄙び感あふれる松屋旅館
昔ながらのザ・旅館がお出迎え
松屋旅館は霊泉寺温泉に4軒ある旅館の中では最奥、共同湯施設の隣に位置する。温泉地の全体がそもそも「昭和にタイプスリップした感」満載なのだが、旅館の建物もその風景に完全にマッチして溶け込んでいる。ただ単に古いとか、伝統と格式とか、素朴な田舎の家とか、そういうのじゃなく、まさしく昔ながらのザ・旅館の趣。
こういうのを期待して行ったから、願ったり叶ったりである。いいよいいよー。
チェックインの際に出てきた宿帳が、よく見かけるカード用紙でなく、いかにも古ーい感じの、昔はどこもこんなだったんだろうなと瞬時に思いを馳せる感じの、年季の入った記帳簿なのがまた味わい深い。
おこもり向きの1人部屋
チェックインをすませると2階の部屋に通された。年末の時期、4畳半の部屋はこたつが用意されており、すでに布団が敷いてあった。こたつと布団で部屋はもう一杯だが一人のおこもりステイには十分だ。むしろ隠れ家感・ひみつ基地感があって楽しくなってくる。
部屋は古いが綺麗にされていて問題なし。泊まった部屋にトイレ・洗面はなく、すぐ近くの共同のを利用する。トイレだけは昭和じゃなく平成の21世紀風で新しかった(ウォシュレットはない)。
それと部屋には備え付けのティッシュがない。ポケットティッシュか箱ティッシュを持参しよう。
また入浴セットのタオルはリユースものらしい。もちろん新品同様に洗ってあるが、気になる場合は持参すべし。自分は気にせず可愛げな色柄のタオルを使わせてもらった。あとバスタオルはない。事前にわかっていたし問題はない。
おこもり部屋、封鎖できません
唯一問題があるとすれば、自分の泊まった1人用4.5畳部屋だけのことだと思うが、部屋の扉が完全に閉まらないんである。ガタツキがかなりきている。扉はもともと外からかける鍵がなく、肝心の内鍵(古い民家にある懐かしいタイプ)も差し込み口がずれてしまって、かんぬきが通らない。一度強引に半分まで通したら固くて戻せなくなりかけて焦った。鄙び宿の洗礼のジャブだ。でもこういうの嫌いじゃない。
Let It Go, レリゴー。ありのままで運用するさ。すき間ができない程度まで扉は閉まるから、少~しも寒くないわ。金庫があるので金庫の鍵をしっかり管理しておけば貴重品は心配ない。
じっくり楽しめる展望風呂
意外なフロアにある大浴場
松屋旅館くらいの規模だと浴場は1階にあるものなのだが、意外や意外、最上階の3階にあった。中は狭すぎることもなく、明確な貸し切り方式でもないのだが、なんとなく客同士の間で「脱衣所のドアが半開き=誰もいない/閉じている=使用中」を目安に、互いにかち合わないように融通しあう、暗黙の半貸切方式の空気感があった。
年末の繁忙期にしては、あまりセコセコ立ち回らなくても「大浴場の独り占め」が普通にできたのは、個人的にはありがたい。
脱衣所の分析書には「カルシウム-ナトリウム硫酸塩泉・低張性・弱アルカリ」と書いてある。石膏泉らしく、成分のうちではカルシウムの数字が突出していた。
長湯したくなる霊泉寺の湯
タイル張りの浴室は4~5人いけそうな浴槽と2人分の洗い場。昔懐かしケロリンの洗面器が山と並べてあった。洗い場で蛇口をひねっても温かい湯がなかなか出てこないため、体を洗うのに少し手間取りつつも、いよいよ霊泉寺の湯の中へ。ああ、やわらかい。いい感触だ。長湯できそう。調査通りぬるめではあるが程度はそれほどでもない。湯口に魚型の温度計が置いてあり、宿泊中に入った3回それぞれで計ってみると、夕方40℃→夜35℃→朝38℃だった。
入っていると、なんというか、とにかくほっとする。いい湯だ。白い析出物の塊がこびりつく湯口からダラダラと流し込まれた湯は、浴槽からあふれ出るままになっていて、源泉掛け流し情緒もあふれ出ている。いいよいいよー。
なんとなく展望露天風呂の気分に
男湯の浴室は2面がガラスになっていて日中はとても明るい。そのうち1面は女湯との仕切り。もちろん透けはしないが、気になるご婦人は男湯に誰かいるときはこの面に近づきすぎない方がよいだろう。もう1面は外の景色が丸見え。3階からの見晴らしは気分がいい。逆に外からこちらも丸見え。でもご安心を。ガラスの加工や湯気などで外から中はクリアに見えないと思う。そもそも外に人がいません。
静かな環境でほっとする湯にゆっくりつかるのは最上の極楽気分。そこへ昼の明るさ、夜の闇、明け方の「ようよう白くなりゆく山際」、それぞれの趣が加わる。
内湯ではあるけれども、周辺環境と一体化して醸し出す味が魅力なのだと思われた。
鯉がある、素朴な山の里料理
こたつで食事がたまらない
早めチェックインから風呂に入った後は、こたつでうたた寝。いやー極楽極楽。そうしてあっという間に夕食の時間である。当宿は朝夕とも部屋食。こたつに入りながら、土地の料理と燗酒を堪能した。いやあたまらんですな。食べ進んでから写真を撮り忘れたのに気づいた…。
信州らしく酢味噌でいただく鯉の洗いが目を引いた。ふだん口にするものではないから珍しさもあって酒とともにどんどん進む。その他も山の里料理という感じで大満足。
鍋まで進めばもう量は十分。しかもお米がおいしくて全部たいらげてしまったから、本当にお腹がパンパンだ。決して豪華絢爛な料理ではないものの、あの食材と味と量を庶民価格かつ部屋食でいただけるのだから、申し訳ないくらい。
SAKE CUPになぜかウケた
食後、お膳を下げてもらうついでに晩酌用のお酒をお願いすると、ワンカップでいいですかと持ってきてくれた。てっきりワンカップ大関のつもりでいたら、中野市の丸世酒造というところのだった。緑のラベルに「SAKE CUP」とタイトル文字が打たれているのが妙にかわいい。朝食は、なんだっけかな、たしか川魚の甘露煮をメインとするシンプルな和食。写真だと品数・量とも控えめに見えるが、お米はたっぷりあるし、自分には十分すぎるくらいである。
そもそも夕食でお腹パンパンだったから、あまり多くても残す羽目になってしまう。これくらいがちょうどいい。
また行きたくなる、素朴な宿
霊泉寺のお湯ですっかり元気を補充できた。チェックアウトのとき、かなりお年を召されたおばあちゃんが会計に出てきて、「春は山菜・秋は松茸がオススメだからまた来てね」とお土産にお米を渡してくれた。自家生産だろう。いただきます。松屋旅館のお湯はいいし、昭和レトロな雰囲気と素朴なもてなしが気に入った。それでいて1万円で十分お釣りが来るお値打ち価格だから満足度は高い。
年明けにはご丁寧に年賀状をいただいた(たぶんおばあちゃんの直筆)。なぜか2通来たのはご愛嬌。山菜・松茸の季節になるかはわからないが、また訪れてみたくなる好宿である。